一帯一路:中国OEMの海外進出、アジア、アフリカを中心に展開

各社とも輸出から現地生産への転換を図る

2018/09/21

要約

 中国が国家戦略として掲げている「一帯一路」は、2013年9月にカザフスタンで提起された「シルクロード経済ベルト」、10月にインドネシアで提起された「21世紀海のシルクロード」を合わせた略称である。中国商務部の発表によると、2018年上半期における「一帯一路」エリアの55カ国に74億ドルの新規投資を行ったとのことである。2018年9月には、3年ごとに開催される「中国アフリカ協力フォーラム」が北京で開催され、約600億ドルの経済協力が表明された。

 中国自動車メーカーも「一帯一路」の国家戦略に則り、アジア新興国やアフリカを中心に、輸出及び現地化を推進している。上海汽車グループはタイ及びインドネシアで現地生産を行っており、新たにインドでの生産も推進。東風汽車グループは、乗用車から大型トラックまで幅広い車型を展開する。北京汽車グループは、中国自動車メーカーで過去最大の海外投資を行った工場を南アフリカに稼働させた。傘下の北汽福田汽車は、ピックアップトラックから大型トラックまで、幅広い地域に展開する。広州汽車グループは、英国に研究開発拠点やデザインセンターを設置するとともに、2019年に米国市場への参入を発表した。中国国内で販売が好調な吉利汽車グループは、プロトンへ資本参加を行い共同開発モデルをマレーシアに投入。将来的にはマレーシアを輸出拠点とする役割を計画。また、コネクテッドカーを展開する「Lynk & Co」ブランド車をベルギーで生産する。BYDは、欧州/北米/南米でEVバスの生産拠点を設立。モロッコやブラジルでは、公共交通領域へ参画している。

 本レポートでは、2018年上半期販売台数における上位グループを中心に取り上げた。


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タイ:2018年生産予測は200万台、輸出減だが内需は拡大 (2018年4月)
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インドネシア:市場規模110万台水準に回復、現地生産化が進展 (2017年8月)



上海汽車:東南アジアで工場建設、市場ニーズに沿ったモデルを投入

 上海汽車グループの海外における自主ブランド車の販売・輸出台数は、2015年に減少したもののその後2年連続で増加。2017年は前年比31.8%増の17万台。海外での主力モデルは、上汽乗用車のMGブランド車、上汽大通汽車のMaxusブランド車となっている。近年は東南アジアを中心に積極的に工場を建設し、セダン、SUV、MPV、ピックアップトラックなど幅広い車型を投入している。

 2017年にはタイ語対応の車載ネットワークシステム「i-Smart」を搭載したMG ZSを発表。本モデルの2018年2月単月の販売台数は1,139台となり、タイのサブコンパクトのSUVセグメントで最量販モデルとなった。2017年のタイにおけるMGブランド車の販売台数は、前年比38%増の1.2万台。

 インドネシアでは、中国の最量販MPVモデルを製造する上汽五菱汽車が生産能力12万台の工場を建設。インドネシアで人気が高い車型MPVの「Confero」と「Cortez」を投入している。

 インドでは、2017年5月にインド市場撤退を発表したGMの工場を改修し、MGブランド車を製造する。2018年9月に開催された「MOVE Summit 2018」では、新製品の研究・開発のためにMG Motor Indiaに5億ドルの投資を行うと発表した。

各国/エリアでの動向

タイ
(販売ネットワーク、ピックアップトラック市場への参入)

・CP Motor Holdingと上海汽車(SAIC)との合弁会社「上汽正大(SAIC Motor-CP)」の2018年上半期(1-6月)の販売台数は前年同期比103%増の1.2万台。上海汽車グループの2018年上半期報告書によると引き続き「自主ブランドのタイプロジェクト」を継続中。現在タイでは、年産10万台規模の工場でMGブランド車を生産している。

・2015年時点で30拠点余りだったディーラーネットワークが2017年時点では80余りに増加した。SAIC Motor-CPで販売されているMGブランドのモデルは、SUV及びセダンを中心に現在5モデルを展開している。
・2018年8月にEVやピックアップトラック市場への参入を準備していると、一部メディアで報じられた。導入予定のピッアップトラックは上汽大通(SAIC Maxus)のモデル。
インドネシア
(工場稼働)

・GMとの合弁会社である上汽通用五菱汽車の西ジャワ州チカラン工場が2017年7月に稼働し、MPV「Confero」の販売を開始。11月には建屋とサプライヤーパークが完工した。2018年2月にはMPV「Cortez」を投入。

・生産能力12万台、従業員数は約3,000人。
・販売網は2018年末までに80カ所に拡大する予定。
インド
(工場建設、研究開発のための投資)
・グジャラート州ハロルにある元GMの工場を改修し、MGブランド車を製造する。
・サプライヤー商業地区の建設も行われており、コネクテッドカーのSUVモデルが2019年に量産・販売開始となる計画。また、EVモデルの投入も検討している。
・2018年9月の「MOVE Summit 2018」で新製品の研究・開発のためにMG Motor Indiaに5億ドルの投資を行うと発表。
ナイジェリア
(工場稼働)
・傘下の商用車メーカー上汽依維柯紅岩商用車(SAIC-Iveco Hongyan Commercial Vehicle)が、2017年3月にCKD生産の大型トラックをラインオフした。ナイジェリアを拠点に他のアフリカ諸国へ展開する。
グローバルKD運営センター ・重慶市両江新区で上汽依維柯紅岩グローバルKD運営センターの着工式が行われた。販売台数が増えている重要地域で、完成車の輸出形態ではなく、KD/CKD生産方式が求められている。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

MG GS MG3
MG GS (バンコクモーターショー2018) MG3 (バンコクモーターショー2018)


東風汽車:幅広い製品ラインナップを展開、アジアを中心に現地生産化を推進

 2017年発表の中長期計画では、2020年までに海外販売15万台を目標に掲げており、欧州市場への参入も計画している。東風汽車グループは、幅広い製品ラインナップを強みに海外でも、乗用車から商用車(ピックアップトラックから大型トラック)まで展開する計画。2019年から2020年には海外への電動車の投入も視野に入れる。なお、2017年の輸出台数は前年比68%増の5.3万台となった。

 近年、東風汽車グループは輸出主体の海外展開のみならず積極的に現地生産を行っている。2017年11月にインドネシアに年産5万台の合弁会社を開所し、小型ピックアップ及び小型SUVを生産。2019年には新型SUVの投入も計画。販売網を充実させるとともに、インドネシアでのブランド向上を図る。さらに、パキスタンに小型商用車のKD工場開設を2018年7月に発表した。すでにKD生産を行っているイランでは、東風汽車グループの重点戦略拠点と位置づけ、乗用車及び商用車を展開。今後は資本提携しているPSAグループのノウハウを活用するとしている。ただし、米トランプ政権がイラン核合意の離脱を表明した影響により、2018年6月にPSAはイラン事業からの撤退を表明。今後の方向性は不透明である。

2018年海外への投入予定モデル

SUV Fengshen AX4、Glory 580
MPV Fengxing S500、Fengshen 370
ピックアップトラック Rich
小型トラック Sokon
中型トラック Captain
大型トラック Kinland

各国/エリアの動向

インドネシア
(合弁工場、SUVの投入)
・年産5万台の工場が2017年11月に開所。投資金額1億ドル。東風小康(DFSK)の小型ピックアップトラック「Super Cab」及び小型SUV「Glory 580」を生産。
・DFSKの2018年販売台数目標は5,000台。販売網も現在の25店から2018年内に50店まで拡大する計画。

・インドネシアの大都市でGlory 580より大型モデルの投入が2018年7月に発表された。(2019年に新型SUVの投入が計画されている。)

パキスタン
(KD工場の開設)
・2018年7月にパキスタンのラホールにDFSKの小型商用車のKD工場を開設すると発表。大手2輪車組み立てメーカーのRegal Automobiles Industries Limited (RAIL)と組み、100億パキスタンルピーを投資。Princeブランドで販売する予定。
・工場は、年産5,000台(1直)で稼働し、市場の需要により2直までの増産まで対応が可能。
ロシア
(フラッグシップ店設立、輸出)
・2016年に現地のディーラーを買収。2017年7月にモスクワでフラッグシップ店のオープニングセレモニーが行われた。ロシア経済の回復にともない、ロシアを重点市場の一つと捉える。2017年12月時点で販売網は40拠点。
・成都からロシアに向けて2017年8月に国際定期貨物列車により、コンパクトSUVのFengshen AX7が輸出された。
イラン
(CKD生産の開始)
・イランを中東地域の要と捉え、PSAの提携先である現地メーカーのIran KhodroとSAIPAでKD生産を展開。中期的には10万台規模の生産拠点を目指す。
・2017年の生産台数は、小型乗用車「Fengshen H30」を生産するIran Khodroが2.9万台、ピックアップトラック Richを生産するSAIPAが0.4万台。なお、Fengshen H30は、中国で2010年に投入されたモデル。
・東風商用車有限公司の大型トラック「DONGFENG KX」が2017年3月にCKD生産となった。
・イランへの商用車の累計輸出台数は5万台(2016年)。
アフリカ地域
(ディストリビューター契約)
・2017年10月にベルギーのディストリビューターSMTとアフリカ市場開拓に関する協業契約を締結。将来的には商用車のKD生産も視野に入れている。なお、海外で販売されている商用車は2018年5月時点で120モデル。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

風神AX4 Glory 580
Fengshen AX4 (中国市場モデル) Glory 580 (中国市場モデル)


第一汽車:イラン市場で積極的に展開

 第一汽車グループは、2017年5月時点で15余りの生産拠点を展開しているが、そのほとんどが中・大型トラックである。各拠点の生産能力は500-5,000台程度となっている。
 他の大手中国系OEMと比べて、乗用車モデルの海外市場展開が遅れている。他社が各国市場のニーズをくみ取り、魅力的な製品を投入するなか、中国国内で自主ブランドの立て直しに注力していることも海外展開が遅れている要因の一つに挙げられる。このような状況の中、グループ傘下の一汽海馬が2017年2月にイランで、NEVや新型車、パワートレイン等の事業における戦略提携に合意した。イランを拠点に中東地域へ輸出する予定。

各国の動向

ロシア(KD生産の開始) ・カリーニングラード市のAvtodor(ロシア高速道路公団)の工場で2017年2月にKD生産が開始された。初のKD生産モデルはBesturn X80、ロシアでは3グレードを展開。なお、2017年の生産台数は700台程度。
イラン(戦略提携、輸出) ・一汽海馬汽車とIran Khodroは2013年よりCKD生産を締結。2017年2月に新たに戦略提携(共同開発やNEV、新型車、パワートレイン等の事業での協力)及び中東市場への輸出(1万台以上の 中型SUV「S7」)について合意した。S7は既に2016年7月にMashhadでラインオフされている。
・イランでのS7の2017年生産台数は0.9万台。一汽グループは、S7以外にBesturn、Velaなどの乗用車を展開している。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)



長安汽車:小型モデルを海外で投入、パキスタンに工場建設計画

 長安汽車の海外生産拠点は7カ国で展開している。2013年以降に海外で生産されている主な車型は、小型商用車が中心であったが、2017年に小型SUVのCS35を投入。イランでは年間1万台超の販売台数となった。
 イラン進出により海外市場の足固めとし、その後にロシアやインドなどに展開、2020年までに欧米市場への進出を目標に掲げる。
 2018年6月時点で海外子会社は6社あり、イタリア、英国、日本、米国の4拠点では研究開発を行っており、ロシアとブラジルは販売子会社として展開している。なお、ロシアでは負債比率を下げ運営を向上させるために、2018年5月に増資することが正式に発表された。
  

各国の動向

ベトナム (KD工場) ・ベトナム・エンジン農業機械総公社 (VEAM)の工場でKD生産を展開。2017年6月のベトナム最大の商用車ショーで小型商用車「長安之星」が発表された。
パキスタン
(工場建設計画)
・2017年7月に商用車の製造や販売を手掛けるMaster Motor Corporation (Pvt.) Limitedと小型商用車及び乗用車におけるKD生産の枠組み協定に調印。年産3,000-5,000台の工場を建設する計画。
・今後、NEVの導入も視野に入れている。なお、Master Motor Corporation (Pvt.) Limitedは、北汽福田汽車やYutongとも提携している。
ロシア
(子会社への増資)
・2016年末にLipetskにSKD工場が稼働。2018年5月にロシアで直営ディーラーが開設。5年以内に10余りの直営店の設立が計画されており、将来的には50余りの設立を目指す。なお、2017年の生産台数は2,178台。
・ロシア子会社への2.5億元の増資を2018年5月に正式に発表。負債比率を下げ運営力を向上させる。
パラグアイ (KD工場) ・二輪車の部品輸入事業などを手掛けるREGUERA MOTORSとのKD工場で2017年に小型商用車M-1027がラインオフ、2017年10月に発売開始となった。なお、パラグアイは2018年8月時点で長安汽車にとって南米で唯一の生産拠点である。
アルゼンチン(市場参入) ・大手ディーラーCar One Groupを通じて、2018年末までにアルゼンチン市場に長安ブランド車が導入される予定。Car One Groupでは、長城汽車のモデルも販売している。
エジプト (生産開始) ・2017年9月にエジプト・カイロにある大手自動車メーカーSeoudi Investment Group (SIG)とのKD工場でSUV「CS35」がラインオフ。少量生産を開始した。
・工場の敷地面積は18,000平方メートル、最終的な完成は2018年末を予定、完成後は年産8,000台-1万台の工場となる。将来的にはSUV「CS95」やセダン「Alsvin V7」の生産も予定している。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)



北京汽車:中国OEMで過去最大の工場を南アフリカに建設

 北京汽車グループは、2020年までに海外販売台数を17.5万台に掲げている。4大生産拠点は、メキシコ、イラン、南アフリカそして中国雲南省瑞麗(対象地域は東南アジア)。2018年時点で、乗用車KD工場は世界19の国と地域に展開、商用車KD工場は世界20余の国と地域に展開している。
 南アフリカのポートエリザベス工場で中国自動車メーカーとして過去最大の投資規模の工場が建設された。2018年7月に小型SUVがラインオフ、2022年までに年産5万台を目指す。
 一方、20億ドル以上の投資を計画していたメキシコ新工場の建設の発表が延期され、引き続きCKD工場で対応することになった。

各国/エリアの動向

メキシコ
(新工場建設の延期)
・2018年6月に20億ドル以上の投資を計画していた新工場建設の発表が延期された。引き続きCKD工場での生産で対応する。新工場の建設を2018年末、もしくは2019年初めまで延期と地元メディアでは報道された。なお、2018年8月時点で具体的な時期は明言されていないが、新工場建設は行うと北京汽車のメキシコ法人は表明している。
パキスタン(工場稼働) ・北京汽車とパキスタン企業JW SEZグループとの合弁会社であるJW ForlandのラホールKD工場が2018年6月に稼働。
・生産能力3万台規模、Forlandブランドの小型商用車を生産する。
イラン
(EVと自主ブランドの展開)
・Diar KhodroのKD工場で電動車SabrinaとSenovaを生産。一方、北汽福田(Foton)のピックアップモデルは、Iran Khodroで生産されており、2017年の生産台数は約3千台。
南アフリカ
(KD工場の建設)
・2016年8月に起工式が行われたポートエリザベス工場で、2018年7月に小型SUV X25がラインオフした。2022年までに年産5万台を目指す。
・本工場は、南アフリカ工業発展公社(IDC)との共同による8億ドル投資で、中国自動車メーカーの海外投資規模では世界最大の工場。生産、営業、ブランド確立などを行い、南アフリカを拠点にその他アフリカ諸国へ展開する。
福田汽車 フィリピン(工場稼働) ・12億フィリピンペソが投資されたPampanga州の組立工場が2016年2月に稼働した。Fotonブランドの軽型トラック、大型トラック、乗用車を生産。2020年には2万台の販売目標としている。フィリピンのみならず、東南アジア各国等への輸出を計画。
・新工場の敷地面積は11万平方メートルで、ユニット組立を行うA棟、倉庫と出荷前検査を行うB棟、ボディ生産を行うC棟の3つの施設を備える。Fotonブランドの小型・大型商用車に加え、乗用車も生産。第1ラインの生産能力は年間1万2,000台。
タイ(新工場の建設)

・ピックアップトラックや軽型トラックなどを生産するバンコクのKD工場以外にFoton新工場の建設を計画していると報じられた。2019年にバンコク・ミンブリー区(Min Buri)のバーンチャン工場団地(Bangchan Industrial Estate)に18億バーツを投資して建設。敷地面積は3万8,000平方メートル、年間生産能力は4万台。関係者によると、2018年9月時点で、新工場の具体的な動きはなく、SUVの生産計画はないとのこと。
・2025年の販売台数目標は2,700台。(ピックアップトラック「Tunland」1,000台、バン「View CS2」400台、軽型トラック「Aumark 4」400台、「Aumark 6」400台、重型トラック500台)

パキスタン(工場稼働) ・北京汽車とパキスタン企業JW SEZグループとの合弁会社であるJW ForlandのラホールのKD工場が2018年6月に稼働した。
・生産能力3万台規模の工場で、Forlandブランドの小型商用車を生産する。
アルジェリア(合弁会社設立) ・2017年4月にFotonとアルジェリアでディーラーを展開しているKIVグループと生産・販売に関する合弁会社設立の調印が行われた。出資比率は、アルジェリア側が51%、中国側が49%、投資金額5,000万ドル。
・2017年11月にFotonとKIVグループの合弁会社がアンナバ県バルグガに建設した工場で2018年3月までに生産を開始すると発表されたが、2018年8月時点で具体的な報道はない。
インド
(自動車産業パークの設立)
・インド市場に対して、2020年までにCUVなどの乗用車を導入。2023年までにCUV、SUV、バンのモデルを導入。2023年以降は、重型トラック、中型トラック、軽型トラック、微型トラックと順次導入し、2027年には販売台数41.7万台、売上410億元を目指す。
・2017年3月マハラシュトラ州政府とプネに自動車産業パークの設立について合意。2018年に稼働開始予定だが、延期に関する報道が一部メディアで報じられている。
ブラジル(生産開始) ・2016年2月に年産約2万台の第2工場の建設が発表された。当初2016年に生産開始予定だったが、2017年に変更となった。2018年8月に新型トラック2車種(3.5トンのミニトラックと10トンのシティトラック)を発売した。なお、工場建設は継続中。
ジンバブエ(生産開始) ・2017年3月にウィロベイル・モーター(WMI)とパーツディーラーのASTOLとのSKD工場でピックアップトラックがラインオフされた。
アフリカへの投資

・2016年12月に中国アフリカ発展基金と「アフリカとポルトガル言語の国家及び地区の戦略的投資プロジェクト」の覚書に調印した。
・KD生産、ディーラーネットワークやサービスセンターの設立、輸出入、融資/リースなどの領域で共同で事業を推進する。具体的には、2016-2020年の期間に、アルジェリア、ケニア、エジプトなどの8カ国に、KD工場、販売会社、訓練センター、コールセンター、貿易会社、部品会社などを設立する。(ケニアでは、2014年7月にKD工場が稼働済み。)

・イタリアの大手二輪メーカーピアッジオと4輪小型商用車の開発及び生産に関する契約を2018年5月に合意を発表、7月に締結。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

拓陸者 (Tunland) BX5
Tunland BX5


広州汽車:2019年に米国及びロシア市場に参入

 デトロイトモーターショーに2018年を含め4年間で3回出展した広州汽車は、2019年の米国市場への参入を表明した。米国のシリコンバレーに開設した研究開発センターでは、自動運転やNEVなどの領域に取り組み、ロサンゼルスの先行デザインセンターでは、広汽デザインのグローバル化を推進するために、元欧米OEM出身のデザイナーが指揮をとっている。さらに、デトロイトにも研究開発拠点を設立。
 また、2018年8月にロシア市場への参入を発表し、広汽乗用車初の海外販売子会社が運営開始。広汽集団の2018年上半期報告書によると、ロシアの販売子会社の事業項目は、自動車の販売のみならず、自動車及び自動車部品の製造なども登記されており、KD工場の建設も視野に入れている。一方、当初「十三五計画」期間に重点拠点として挙げていたイランについては、現時点では工場建設等の動きはない。

各国の動向

米国
(研究開発拠点、デザインセンター)
・2017年4月にシリコンバレーに研究開発センター、さらに先行デザインセンターを2018年4月にロサンゼルスに設立。また、デトロイトにも研究開発拠点を設立。
・研究開発センターでは、先進技術や自動運転、NEVなどの領域の研究開発を行っている。
・Renault、VW、Kia、直近ではFaraday Futureでのデザイン経験を持つPontus Fontaeus氏が、先行デザインセンターのディレクターとなり、広汽デザインのグローバル化を推進。
・2017年に続き2018年のデトロイトモーターショーにも出展。さらに2019年に米国市場への参入が発表された。
・中国OEMブランドとして2018年3月の全米自動車ディーラー協会 (NADA)の展示会に初参加した。
ロシア
(市場参入、販売ネットワーク)
・2018年8月のロシアモーターショーで2019年にロシア市場への参入を発表。広汽乗用車初の海外販売子会社が運営開始された。Trumpchiブランド車の輸入を展開、販売ネットワークも構築する予定。3-5年間でロシア市場で中心的な自動車ブランドを目指す。
・広汽グループの海外子会社は、2018年6月末時点でロシアと米国。なお、ロシアのモスクワにある子会社「広州汽車集団乗用車ロシア有限責任公司」では、自動車販売のみならず、自動車及び自動車部品の製造、乗用車のレンタル・リースなどが事業項目。
・また、ロシア及びCISにてKD工場建設の計画も一部メディアで報道されている。
ナイジェリア
(工場建設)
・現地ディーラーのCIG Motorsとともに2016年にSKD工場を建設。ナイジェリアを足掛かりとし、アフリカ市場に進出する計画。
海外事業統括会社の設立

・2018年5月に海外事業の管理統括会社GAC International Companyが設立された。

・海外子会社及び地域事務所の統括やKD工場の管理などを行う。2018年末までに海外18余りの国/地域で、GS3、GS7、GA4、GM8のモデルを発売する予定。なお、2018年1月時点で、14余りの国/地域で展開している。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

Trampchi GS7
Trumpchi GS7 (上海モーターショー2017) GAC Enverge concept (デトロイトモーターショー2018)


吉利汽車:プロトンと共同でモデル開発、ベラルーシの工場が稼働

 吉利汽車の2017年の輸出台数は、前年比46%減の11,755台で吉利汽車グループの販売台数の0.9%を占めた。輸出先の上位は、ベラルーシ(4,071台)、スリランカ(1,455台)、イラン(900台)。販売台数の上位の車型は、SUV「Boyue」、セダン「King Kong」、小型ハッチバック「Panda」。2018年上半期(1-6月)の輸出台数は、前年比126%増の8,699台で吉利汽車グループの販売台数の1.1%を占めた。なお、輸出先トップのベラルーシでは、2017年10月に新工場が稼働している。
 輸出国は、2017年の20カ国から2018年6月には24カ国に増えた。販売ネットワークも231拠点から297拠点に増加。吉利汽車グループは、中国での市場占有率の上昇が海外進出の良いきっかけになるとしている。
 近年次々と海外OEMを傘下に収める吉利汽車グループは、2017年5月にプロトンの株式取得を発表、10月にはロータスの買収手続きを完了させた。2018年7月にはプロトンとの共同開発モデルを公開している。なお、吉利汽車グループの親会社の「Zhejiang Geely Holding Group (ZGH)」は、2018年2月にDaimler、2018年7月に商用車メーカーVolvoなどを統括するAB Volvoの株式の一部を取得し筆頭株主になった。
 

各国の動向

マレーシア
(プロトンへの資本参加、新型車の投入)
・2017年5月にプロトンの49.9%の株式取得を発表。2017年10月にプロトン傘下のロータスの買収手続きが完了した。
・2018年8月にプロトンと中国市場向けの車両生産及び販売に関する合弁会社設立に合意、2019年前半の設立を目指す。新エネルギー領域についても協業する。
・プロトンとの初めての共同開発モデル新型SUV「X70」を2018年9月7日にマレーシアのメディアに公開。当モデルはGeelyの「博越(Boyue)」がベース。アセアン地域を含めたグローバルでの販売を考慮しているため、モデル名はアルファベットと数字の組み合わせとなっている。
・X70は、2019年半ばにペラ州のタンジュンマリム工場でCKD生産開始予定。また、同工場は、右ハンドルの輸出モデルの生産拠点としての役割も担う。
・商品とアフターセールスに関しては、日本ブランド車を目標に改善を推進、吉利汽車の主導で毎年1車種の新型車の投入を計画。
ベラルーシ
(新工場の稼働)
・2017年11月に合弁工場でGeely「Atlas NL3」がZAO BelGeeの新工場で生産開始となった。約120ヘクタール、従業員750人。第1期CKD生産のフル稼働時には年間6万台を生産。2018年に約50%の現地化を目標とする。また、間接子会社Limited Liability Company Borisov Engine Plant(Geely)も展開する。
・MarkLinesデータベースによると2018年1-7月の生産台数は1,067台。なお、ベラルーシ共和国政府の発表によると、2017年11月時点での生産計画は、2018年が2.5万台、2019年が3.5万台。
ブラジル
(輸入業務の停止)
・工場建設の検討も視野に入れていたが、ブラジル経済の悪化に伴い販売台数が伸びず、2018年4月輸入会社Geely Motors do Brazilがブラジル市場での輸入業務停止を発表した。
ベルギー
(新ブランド車の生産開始)
・2018年5月に吉利汽車グループ傘下のブランドでVolvoと共通プラットフォームで開発された「Lynk & Co」は2019年後半よりベルギーのヘント工場での生産を行うと発表。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

GeelyのBoyue
GeelyのBoyue


長城汽車:ロシアに大規模投資、オーストラリアのリチウム資源会社への出資を発表

 長城汽車の2017年輸出台数は前年比139%増の3.7万台。2012年の9.5万台をピークに減少し続けていたが、2017年は上昇に転じた。投入モデルのほとんどをSUVが占める長城汽車は、輸出台数も7割以上がSUVを占める。
 モスクワ南部に年産8万台の工場を建設中で2018年6月時点のプロジェクトの進捗状況は約59%。2019年に量産開始予定となっている。
 2016年1月には初の海外技術センターを日本の横浜市に設立。また、2018年には欧州の研究開発拠点をオーストリアに設立している。

各国の動向

ロシア
(大規模投資、工場建設と導入モデル)
・SUVモデルを展開するHavalブランドの2017年のロシアにおける販売台数は1,822台。2018年上半期は前年同期比31%増の1,138台。2020年に2万台の販売を目指す。
・2018年6月現在販売拠点は18カ所で、2018年末には35拠点、2019年には60-70拠点への拡大を計画。
・2018年8月、トランスミッションを中国からロシアへ積極的に輸入すると発表。コスト削減を推進すべく現地調達も検討しているが、トランスミッションについては現地生産の計画はない。
・2021年に現地調達率60%を目標とする。第一段階は30%とし、まずはシートとガラスについて現地化を推進。2020年には現地調達率50%で、エンジンとインストルメントパネルの現地化を推進する。
・2019年上半期に完成予定のモスクワ南部のTula地域のUzlovaya経済特区の工場建設は、長城汽車における海外最大規模のプロジェクトである。投資金額は約5億ドル、総面積は216万平方メートル、生産能力8万台。2018年6月現在プロジェクトの進捗状況は59%。
・最初の生産モデルはHaval H6、その後はHavalの新モデル。2021年にはFシリーズを生産開始、2020年から2025年の間にラグジュアリーブランドWEYシリーズを生産する計画。
マレーシア
(工場拡張)
・2021年までに、KD工場のアップグレードを行うと一部報道があった。これにより、SUVモデルの生産とEEV(Energy-Efficinent Vehicle)の生産を加速する。工場はケダ州 Gurun。
メキシコ
(工場建設)
・メキシコのヌエボ・レオン州、またはサンルイスポトシ州で組立工場の建設を検討していると2017年4月5日付けのMexico-Nowで報じられた。約5億ドルを投資し2018年に工場建設が開始されるとのことであったが、2018年8月時点ではその後の進捗は報道されていない。
オーストリア
(研究開発拠点)
・2018年1月に長城汽車の全額出資で研究開発の子会社を開設した。
・欧州における重要な研究開発センターとして、NEV及びNEV関連部品に焦点を当てる。初期段階にはNEVバッテリー及び制御関連製品の研究開発に重きを置く。

日本
(研究開発拠点)

・長城汽車で初の海外技術センターとして、新横浜エリアに2016年1月に長城日本技研株式会社が開設された。
オーストラリア
(資源会社へ出資)
・全額出資子会社を通じてオーストラリアのリチウム鉱物を産出する資源会社「Pilbara Minerals」へ3.5%出資することを2017年9月28日に発表した。第1期は年産30万トンの規模。第1期が2018年上半期、第2期が2020年上半期に稼働。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

フルモデルチェンジされたHaval H6
Haval H6 (上海モーターショー2017) HavalブランドのFシリーズ (北京モーターショー2018)


奇瑞汽車:ブラジル拠点を合弁会社に転換

 奇瑞汽車の2017年の輸出台数は10.77万台で、15年連続で中国OEMで最も多く乗用車を輸出した企業である。2018年上半期(1-6月)は、前年同期比24.2%増の6.75万台となった。
 2014年にサンパウロ州Javareiで稼働した完成車工場は、労働争議が続き、部品調達等も遅延、2017年10月には生産が中断。2017年11月に現地会社と合弁を締結し新たな一歩を踏み出した。ブラジル以外の生産拠点は、イランやエジプト、ロシアなどに展開している。
 奇瑞汽車は、ドイツ・フランクフルトで開催されたIAA 2017に欧州市場向けのSUVモデルのChery EXEED TXを発表。早ければ2020年に欧州市場での投入を予定している。また、フランクフルト近郊に研究開発センターの設立も計画。

各国の動向

ブラジル
(拠点の一部株式売却と合弁会社設立)
・サンパウロ州ジャカレイの車両組立工場で、2016年にレイオフが行わた。2017年10月には従業員による賃金アップのストライキが発生し、生産が中断した。約1ヵ月にわたるストライキが行われ、その後ブラジル拠点の株式50%を売却。
・2017年11月にディーラー及び自動車の委託生産を展開するブラジルのカオア(Caoa)グループとの合弁会社設立を発表。2017年以降の5年間で共同開発と生産ラインの統合に20億ドルの投資を計画。
・2018年3月にジャカレイ工場で小型SUV「Tiggo 2」の生産を開始し、同月に発売。Tiggoの現地調達率は11%。
・アナポリス工場で2018年末までに「Tiggo 4」を生産開始。また同じ工場では「Tiggo 7」も生産予定。
ロシア
(カーシェアリング)
・ロシアのカーシェアリングサービス「YouDrive」に、「Tiggo 2」が2018年8月に導入された。
イラン(工業団地の建設) ・2016年に自動車工業団地建設を発表。2017年7月にSUVのフラッグシップモデルTiggo 7 がラインオフされた。生産能力は6万台で、現在は年間生産能力10万台の第2期を建設中。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

瑞虎7 Chery EXEED TX
Tiggo 7 (北京モーターショー2016) EXEED TX (IAA2017)


BYD:各国でEVバスの工場建設と公共交通領域への参入

 2017年中国NEV販売台数No.1のBYDは、世界50余りの国と地域で展開している。海外ではEVバスの導入が主な事業だが、2017年からは中国で導入済みの「都市公共交通電動化」ソリューションの海外展開にも注力している。
 2017年12月に欧米、南米に続き、BYDにとって初のアフリカ地域であるモロッコでの工場建設を発表した。モロッコ政府と国家戦略の「グリーン交通戦略」に調印し、EVバス/EVトラックのみならず、中国で展開しているモノレールも戦略プロジェクトに含まれる。また、モノレール導入プロジェクトに関して、ブラジルでは工事の着工まで進捗している。
 米国工場は2017年10月に2期拡張工事が完了し、2018年3月にはアトランタ政府と契約。EVバス及び重型トラック、タクシーなどを含めたEVのサプライヤーとなった。

各国の動向

米国
(EVバス工場の拡張、アトランタで契約)
・Lancaster工場の第2期EVバス工場拡張工事が2017年10月に完成した。敷地面積4.1万平方メートル、年産1,500台。
・2018年3月にジョージア州アトランタのEV公共交通領域に関する入札を獲得した。EVバスを中心に、重型トラック、タクシーなどを含めたEVのサプライヤーとなった。
フランス
(工場建設)
・パリ北方のBeauvais近郊のAllonneに投資額1,000万ユーロ、1期敷地面積32,000平方メートルの工場建設を2017年3月に発表。EVバス生産の他、メンテナンス及び物流センター、バッテリーのテストセンターなどを併設。2期完成後には、年産200台 (1直)となる計画。2018年上半期に操業予定だったが、2018年第4四半期になる予定。
ハンガリー
(新工場の稼働)
・ハンガリー北部のKomarrom市に、EVバス、フォークリフト、軽型商用車を生産する新工場が2017年4月に稼働。欧州向けの車両を生産。総投資額2,000万ユーロ、敷地面積66,000平方メートルで年産400台の生産能力を計画。R&Dセンターやバッテリーテスト施設も設置。
ブラジル
(幅広い領域に進出)
・Campinas工場の2017年のEVバスの生産台数は約900台。約30%の部品を現地化している。将来的には70%まで引き上げることを目指す。
・2017年7月に太陽光パネルと年産720台のEVバスシャシー工場の拡張を発表。
・2018年5月にバイア州サルヴァドール市に世界初となる海峡モノレール建設を発表。1期は2020年中に、2期は2020年末に完成予定。
アルゼンチン
(工場建設)

・2017年7月にアルゼンチンのサルタ州政府とEV新工場の建設合意書に署名。新工場は、建設済みのバッテリー生産拠点に近いサルタのGeneral Guemes Industrial Parkに建設中。(2018年4月)

エクアドル
(工場建設)
・2017年5月にエクアドル工業生産部とEV工場建設の了解覚書(MOU)に署名。生産モデルは、EVバスと小型EVトラック。投資額6,000万ドル、年産300台、従業員数300人規模。
・2017年9月にBYDエクアドル分公司とエクアドル国家理工学院が戦略協定に調印。双方はEVに関する協業を強化し、EV領域におけるエンジニア教育などを行う。
モロッコ
(国家戦略に調印、工場建設)
・2017年12月にモロッコ政府の戦略「グリーン交通戦略」に調印。モノレール、EVバス、EVトラックなどの広範囲に及ぶソリューションに協力する。また、北部タンジェにEV製造工場を設立すると正式に発表した。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)



商用車メーカー

 上記OEMグループに属さない一部の商用車メーカーを下記に取り上げる。

陝西汽車

アルジェリア
(工場稼働)
・2018年5月アルジェリアのセティフ(Setif)のMazouz自動車産業パークのKD工場で最初の重型トラック「Shacman」がラインオフした。
・組立工場は、陝西汽車とアルジェリアの自動車ディーラーが共同出資し建設したもので、第1期建設の敷地面積は約20万平方メートル。生産能力は3,000台。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)

金龍汽車

ナイジェリア
(工場稼働)
・完成車の輸入関税が2016年に大幅に上昇したため、金龍汽車は現地ディーラーと共同でKDプロジェクトを推進。2016年5月にKD生産した商用バン「Jinlong Haice」をラインオフした。

(メーカー発表及び各種報道より、MarkLinesが作成)


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一帯一路、上海汽車、東風汽車、第一汽車、長安汽車、北京汽車、広州汽車、吉利汽車、長城汽車、奇瑞汽車、BYD、陝西汽車、金龍汽車、NEV、電動車、輸出、工場、KD生産、アフリカ、中東、タイ、インドネシア、米国、欧州

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