コネクティビティおよびユーザーエクスペリエンスの未来:TU-Automotive Detroit 2016より

コネクティビティを進化させる次世代技術、自動車用アシスタントシステム、Volvoの哲学

2016/07/15

要約

TU-Automotive Detroit 2016 の展示会場の様子
TU-Automotive Detroit 2016 の展示会場の様子

 TU-Automotive Detroit 2016カンファレンスは、2016年6月8日・6月9日に米国ミシガン州Noviで開催された。今後、自動車市場でより多くの技術が車両に統合されるにつれて、データを収集し、伝達するシステムがますます重要になる。コネクティビティは、V2Xコミュニケーションと、車両への情報提供の両方において不可欠である。

 本レポートでは、コネクティビティおよび車内のユーザーエクスペリエンスに関連してTU-Automotive Detroit 2016で行なわれたプレゼンテーションを中心に取り上げる。本レポートのトピックには、未来の自動車技術と所有エクスペリエンスにおけるコネクティビティの役割、コネクティビティの将来に影響を与える可能性のある技術、ユーザーインターフェイスおよびユーザーエクスペリエンスシステムの変化が含まれている。

 本レポートは、TU-Automotive Detroit 2016の討論セッションに関する詳細を報告する3本のレポートの第3弾である。これまでに発表したレポートでは、自動運転車とその技術およびモビリティの展望に関するプレゼンテーションに重点を置いて紹介した。

関連レポート: TU-Automotive Detroit 2016
・自動運転車の展望:起亜・日産など、多様な企業・機関が自動運転車に関する概念や技術を紹介
・モビリティの進歩がもたらす自動車産業の変化:若者のモビリティに対する考え方と、カーシェアリング会社 Zipcar/パナソニック/Fordの考える世界



自動車市場におけるコネクティビティの重要性

将来の自動車開発の基礎となるコネクティビティ

セッション: 我々はつながっている!次に自動車に導入されるものは何か?
企業名 講演者 役職名
INRIX Bryan Mistele CEO
自動車の動向および具体的な例を表した図
自動車の動向および具体的な例を表した図
出典: INRIX
Survey results showing usage and interest of connected services based on purposeSource: Accenture
目的に基づくコネクテッドサービスの利用と関心を示す調査結果
出典: Accenture

 「我々はつながっている!次に自動車に導入されるものは何か?」と題したセッションでは、INRIX社のBryan Mistele氏が自動車業界におけるコネクティビティの重要性について述べるとともに、自動車業界が以下の4つのポイントで、現在、転換点にあると述べた。その4つとは、自動運転車、コネクテッドビークル、電気自動車、および車両共有システム(カーシェア)である。

 4つの動向すべてに共通するはデータの重要性である。コネクティビティにより、車両がデータを収集して送信することが可能になるが、これは、他の3つ(自動運転、電気自動車、カーシェア)のためにも利用される。Bryan Mistele氏は、コネクティビティを、混雑や利便性のソリューションビジネスと組み合わせることで、この技術的転換点が生まれたと考えているとのこと。

 Bryan Mistele氏は、コネクテッドカーには現在200~400個のデータ収集用のセンサが搭載されていると述べた。コネクテッドカーで利用されるデータ量を強調するために、同氏は、INRIXがどのようにコネクテッドカーに情報を提供してドイツ、ケルンのドライバーを支援したかというケーススタディに関するデータを視覚化して紹介。このケーススタディでは、リアルタイムの交通状況、道路の天候、路上駐車などの情報がコネクテッドカーを介してどのようにドライバーに伝達できるかを実証した。

 コネクティビティの重要性は、一般市民がこの技術に対して肯定的なイメージを持っていることからもわかる。2015年に実施されたAccentureの調査によると、過半数の人々が生産性、娯楽、情報に関連するコネクテッドサービスに関心がある、あるいはこれらのサービスをすでに利用していると答えた。

 現在、コネクテッドカーが直面している問題の1つに、コネクティビティの共通プラットフォームまたは規格がないということがある。または、開発されるプラットフォームが自動車市場に対して最適化されていないという問題もある。したがって、ソフトウェア開発者はさまざまなプラットフォームに適応させるために、往々にして複数のバージョンのプログラムを開発することが必要となる。INRIXは考え得る解決策として、オープンカープラットフォームを提案した。そのオープンプラットフォームは、自動車メーカーが自社のソフトウェアを設計して、独自の機能を実装するためのフレームワークおよび開発ツールとなる。

 

「所有する喜び」に対するコネクテッドカーの影響

セッション: 固定オポテュニティプラットフォーム: コネクテッドカーの「所有する喜び」の変革
企業名 講演者 役職名
XTime Mir Baqar Vice President, Product Solutions
Cox Automotive David Liniado Vice President, New Ventures
所有エクスペリエンスに関する調査結果
「所有する喜び」に関する調査結果
出典: Cox Automotive
コネクティビティオポテュニティカテゴリー
コネクテッドカーによってできること
出典: Cox Automotive

 「固定オポテュニティプラットフォーム: コネクテッドカーの「所有する喜び」の変革」と題したプレゼンテーションでは、ビジネスでの所有体験の重要性を強調し、コネクテッドカーがドライバーの「所有する喜び」にどのような影響を及ぼすかについて説明した。

 XTime社のMir Baqar氏はディーラーでの顧客のサービスを受けた経験がビジネスにどのような影響を与えるかを示す一連の統計を紹介した。例えば、85%の消費者が、将来もう1台の車両を購入する場合、同じディーラーおよびブランドから購入するかどうかを左右するのは、自身がどのようなサービスを受けたかであると答えている。

 消費者は主にディーラーと対話するが、ディーラーはディーラー自身とOEMの両方の代理を務める。ディーラーが顧客に価値および価値ある体験を提供できれば、ディーラーはカスタマーロイヤルティの向上および定着によって将来のメリットが得られる。

 David Liniado氏はある調査結果を紹介し、一般消費者の14%が「コネクテッドカー」という用語の意味を理解しており、62%が車内に新技術が装備されていても抵抗がないことを示した。コネクテッドカーと言う言葉は、「所有する喜び」を向上させるさまざま機会を提供できる技術をイメージさせる。

 このような「コネクテッド:つながること」で可能になることとして、センサを使用して車両に関する情報を提供すること、ナビゲーション情報を共有することによってドライバーエクスペリエンスを向上させること、音楽、ビデオあるいは他のメディアで同乗者に娯楽を提供すること、目的地の近くの場所を示すことによって、世界との通信を確立することが挙げられる。「所有する喜び」を最適化するために、コネクテッドカーは、パーソナライズされた便利で状況に応じた、車両と一体化したサービスを提供していく必要があるとした。

 整備点検、ロードサービス、リコール情報などを提供することにより、運転以外の「所有する喜び」に影響を与えることもある。特にDavid Liniado氏はある統計に触れ、その統計では、ディーラーからの情報を信じると答えた人が15%であったのに対し、車両から提供される情報を信じると答えた人は85%であったと述べた。これは、顧客が車両からの情報をデータと見なし、ディーラーからの情報を商取引と見なす傾向が強いことを示している。Mir Baqar氏は、コネクテッドカーがアフターサービスをどう支援したかによっては、顧客の定着度が10~14%増加するとした調査結果を紹介した。OEMとディーラーの双方がコネクテッドカーから得られる恩恵を受けるには、上手く顧客が情報を受け取ることができるように協力する必要がある。



技術を通してコネクティビティを強化する:フラットパネルアンテナ技術と5G次世代携帯通信システム

コネクティビティを強化するKymetaのフラットパネルアンテナ技術

セッション: 「ファイバー・ツー・カー」: クラウドをクルマで機能させる
企業名 講演者 役職名
Kymeta Tom Freeman Senior Vice President, Land Mobile
INRIX Joel Karp Senior Director, Product Management
VoiceBox Technologies Rich Kennewick President
Kymetaアンテナ取り付け部分を示したトヨタMiraiのルーフ
Kymetaアンテナ取り付け部分を示したトヨタMiraiのルーフ

 Kymeta社のTom Freeman氏が将来のコネクテッドカーについて論じたとき、最新のスマートフォンを1960年代に持って行くことになぞらえた。スマートフォンでは電話をかけることができると同時に、テキストメッセージの送信、場所の追跡、音楽の再生などを行うことができる。同様に、未来のクルマも特定の場所から特定の場所へ移動することができると同時に、基本的な輸送以外の多数の機能を備えているであろうと。

 Kymetaの新開発のフラットパネルアンテナは、コネクテッドカーのできることを拡大する2つの要素が特徴である。1つはこのアンテナが大量のデータを伝送できるという点である。Kymetaのアンテナは各車両に1ヶ月あたり1テラバイトのデータを伝送できる。

 2つ目は、このアンテナは小型で車両に簡単に設置できるという点である。このアンテナは、静止衛星の方が地上モビリティ用途のものよりはるかに多くのスペクトルが得られるという原理で動作する。さらに、データ転送では人工衛星の周波数専用のスペクトルの方が効率的である。

 セッションの後半では、Kymetaのアンテナなどによって収集される、大量のデータを利用する用途を中心に解説が行われた。VoiceBox Technologies社のRich Kennewick氏は帯域幅こそが次世代のAIシステムの原動力であると述べ、大量のデータを活用できる第3世代の音声認識システムを紹介した。このシステムはあらかじめプログラミングされているフレーズ以外の言語表現を解析、予測、学習、理解するために、ディープニューラルネットワークおよび学習機械を利用する。

 もう1つは、INRIXのリアルタイムのコネクテッドドライバーサービスである。特に、INRIXのオートインテリジェント技術によって機械学習とコネクティビティを組み合わせることで、車内でのユーザーの行動と車外でのユーザーの行動が一体化されるとのこと。これにより、変化する道路状態を予見してドライバーに警告するだけでなく、ドライブ習慣に基づいて予想される走行および推奨ルートに関する情報を提供することによって、高度にパーソナライズされた体験が可能になる。

 

通信規格が4Gから5Gへ移行することによるコネクテッドカーへの影響

セッション: コネクティビティの4Gから5Gへの径路 - コネクテッドカーに対する影響
企業名 講演者 役職名
Ericsson Juergen Daunis Sales Director, Automotive
電気通信規格の歴史
電気通信規格の歴史
出典: Ericsson
5G実装に関するパフォーマンス要件
5G導入に関するパフォーマンス要件
出典: METIS
5G実装のロードマップ
5G導入のロードマップ
出典: Ericsson

 

 プレゼンテーションの冒頭、Juergen Daunis氏は、2014年に全世界で135億個であった接続デバイスが、2020年には260億個に増加すると見込まれ、その増加分の大半がマシン・ツー・マシン(M2M)デバイスによるものであると述べた。これはInternet of Things(モノのインターネット)における増加に対応するだけではなく、産業界が初めてネットワークの開発に影響を及ぼすようになったことを表す。

 このように、第五世代(5G)携帯通信技術は、消費者の要求というよりむしろ、産業界の要求によって推進されている面が大きい。Juergen Daunis氏は新世代の携帯通信技術がおよそ10年ごとに開発されることを指摘した。特に、5Gがそれ以前の世代と比べて新しいインフラシステムを必要としないという点で、4Gから5Gへの移行はユニークなことである。むしろ、4Gから5Gへの転換は現存するLTE技術の発展であるとしている。

 コネクテッドカーに関して言えば、5Gを導入することにより、多様な使用事例が可能になる。

  • センサーのユビキタスな使用(車内・車外の両方)
  • すべての場所にメディア(HDオーディオ、ビデオ)を配信
  • スマートビークルの操作(車内通信とデータ収集の両方)
  • 通信、監視およびインフラの制御
  • 各種装置の遠隔操作
  • 人とモノのインターネットとの対話

 5Gの実装要件は、その使用の性質に基づいて2つのカテゴリーに分けることができる。その一つの極端な例が、最小の待ち時間が要求される重要な通信で、ここでは信頼性を最大化する必要があり、通信速度は不可欠である。もう一つの極端な例が、大量の情報伝達が必要な場合である。このとき、データ転送レートと効率的なデータ伝送がより重要となる。

 最後に、Juergen Daunis氏は5G無線通信の開発ロードマップを提示した。注目に値するタイミングとして、2017年までにAT&TとVerizonの試験と、2018年に韓国の平昌オリンピック開催期間中に実施予定の大規模試験の2つがある。Ericssonは2019年までに通信事業者の73%が5Gに向けた試験を進め、最初の商用化が2020年の東京オリンピック開催期間中に実施されると見込んでいる。Juergen Daunis氏は、産業界の要求によって5G標準化が推進されているため、コネクテッドカーが自動車業界の変化とバリューチェーンにおいて重要な役割を果たすと繰り返し述べた。









ユーザーエクスペリエンスにおける変化の原動力:自動車用アシスタントシステム、Volvoの哲学

自動車用アシスタントシステムによってドライバー支援の技術範囲を拡げる

セッション: 知的で、臨機応変な自動車用アシスタントシステムを実現する
企業名 講演者 役職名
Nuance Eric Montague Senior Director, Product Marketing & Strategy Automotive

 パーソナル・アシスタント・システムは現在スマートフォンなどのデバイスに搭載されているが、Nuance社のEric Montague氏は自動車用のアシスタントシステムが達成できなくてはならない3つの目標について述べた。

  • システムは走行終了までドライバーを絶えず支援可能でなければならない。システムは走行中に支援を提供するだけでなく、走行を計画および準備し、あらゆる駐車ニーズに対応し、必要に応じて、車両の駐車場所から最終目的地までドライバーを支援すべきである。
  • このシステムはドライバーのあらゆる運転に関連するニーズを完全に満たすことができなければならない。これには、ナビゲーション情報の提供、娯楽の提供、車両に関するあらゆる問題のドライバーへの通知、状況に応じてドライバーの関心のありそうな場所の提供が含まれる。
  • システムはドライバーに変わって考え、ドライバーが運転に集中できるようにしなければならない。システムがドライバーに代わって判断を下し、問題を解決することによって、ドライバーの精神的負担を軽減する能力を備えていることが理想的である。

 Eric Montague氏は、自動車用アシスタントシステムがこのような能力を発揮するには、このシステムが対話技術、AI(人工知能)、および知識ベースのシステムの3種類の技術を利用する必要があると説明した。対話技術はドライバーがシステムと意思疎通するためのインターフェイスを提供し、この技術には音声認識、音声生体認証および自然言語理解能力などのツールが含まれる。AIは、アシスタントシステムに考えて判断を下す能力を与え、これには機械学習、文脈による推論が含まれる。最後に、システムはその判断の基礎となる情報データベースとして、知識ベースシステムを使用する。アシスタントシステムはデータを、センサ、クラウド、文脈上の手がかり、そしてドライバーの嗜好からさえも取得する。

 自動車用アシスタントシステムがどのように機能するかについて、駐車場所を探すという要求が例として示された。アシスタントが提案を行い、これに対してドライバーがより具体的なことを要求することによって返答する。このプロセスは、ドライバーがアシスタントの提案に同意するまで繰り返され、この間、ドライバーはアシスタントが処理できるように別の要求を出すことができる。この例を示すフローチャートを以下に示す。Eric Montague氏はまた、CES 2016で発表されたNuanceのDragon Drive Automotive Assistantも紹介した。Dragon Drive Automotive Assistantは幅広い機能を提供するために、同社の音声、クラウドおよびコネクティビティコンポーネントを組み合わせたものである。Dragon Driveプラットフォームは、すでに1億4000万台の車両に導入されている。

自動車用アシスタントとのインタラクションプロセスについて詳しく解説したフローチャート
自動車用アシスタントとのインタラクションプロセスについて詳しく解説したフローチャート
出典: Nuance

 

Volvoのユーザーインターフェイス開発と未来のコネクティビティ

セッション: 未来のVolvoショールーム内で
企業名 講演者 役職名
Volvo Car Group Petter Hörling Director, US R&D Tech Center
Volvoユーザーエクスペリエンスのピラミッドモデル
Volvoユーザーエクスペリエンスのピラミッドモデル
出典: Volvo Car Group
XC90インテリアイノベーション
XC90インテリアイノベーション
出典: Volvo Car Group

 Petter Horling氏はプレゼンテーションの冒頭、顧客のニーズおよびその考え方に主眼を置く、Volvoの顧客中心の設計哲学を強調した。そこで、Volvoはユーザーエクスペリエンスを向上させるためのピラミッドモデルを開発した。Volvoによると、肯定的なユーザーエクスペリエンスは、信頼性が高い、機能的なシステムを作り出すことによって最初に不満を取り除くことが基本である。そのことが達成されたら、開発が満足を生み出す改良に焦点を当てることで、顧客の感情に訴えることができる。

 Volvoの哲学は、新型XC90のインテリアデザインに見られる。XC90には、HUD、インストルメントクラスターおよびセンターディスプレイの3つの車両情報表示システムがある。速度や安全性に関する警告のように、ドライバーが直ちに必要とする情報はHUDに表示される。その理由は、一般にHUDがドライバーの視線に最も近いからである。

 インストルメントクラスターには、ナビゲーションや自動運転機能などの差し迫って重要でない情報が表示される。それに対して、センターディスプレイはエンターテイメントオプションやコンフォートコントロールなどの、緊急度の低い情報に使用される。さらに、インテリアにはインターフェイスの使いやすさを高めるさまざまなオプションが装備されている。例えば、センタタッチスクリーンには、4つのタイルに分割されたホーム画面が使用されており、これにより、ナビゲーション、メディア、電話およびユーザーが選んだ機能に素早くアクセスできる。

 Petter Horling氏はまた、コネクテッドカーと得られるデータによって作り出されるビジネスチャンスについて指摘した。企業はこのデータを活用して、使用行動、ユーザーの関心をモニターしたり、リモート診断を実行したり、特定のデータセットを収益化したりできる。しかし、同氏は、データのプライバシーに関する問題、企業間の協力が欠如、あるいはデータに関する規格がないために、自動車業界がこれらを実施できていないことも指摘している。

 Volvoが現在進めている他のプロジェクトの一つに、Drive Meプログラムがある。これは、2017年に100台の自律走行車を走行させる世界初の大規模な公道試験である。他に、同社は氷で覆われた路面を検出して、その情報をクラウドに送ることができるコネクテッド・セーフティ・プログラムも推進しており、これによって、他の車両がこの情報をダウンロードして、迂回する道路を知ることができる。特に、このソリューションは他の車両やインフラのセンサを統合することによって、簡単に拡大することができる。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>