自動運転車の展望:TU-Automotive Detroit 2016より

起亜・日産など、多様な企業・機関が自動運転車に関する概念や技術を紹介

2016/07/07

要約

TU-Automotive Detroit 2016 の展示会場の様子
TU-Automotive Detroit 2016 の展示会場の様子

 TU-Automotive Detroit 2016は2016年6月8日-9日に米国ミシガン州Noviで開催され、期間中、3,000人以上が来場し、自動運転車、モビリティ、コネクティビティなどを主題とした各種プレゼンテーションが行われた。今回のテーマは、「Collaborate to put Auto in the IoT (Internet of Things) Driving Seat(自動車を走るIoT (モノのインターネット) にするための連携)」である。自動車は世界中を物理的に移動できる数少ないIoT製品の1つであり、自動車以外の製品との具体的な接続を確立できる。このような自動車の商品としての特性を活用することにより、自動車業界がIoTにおいて牽引役となるチャンスが得られる。

 本レポートでは、TU-Automotive Detroit 2016で行われた自動運転車および自動運転技術に関連する発表を中心に取り上げる。本レポートには、起亜および日産の自動運転車開発に向けた包括的理念と活動、自動運転に恩恵をもたらす技術、自動運転の開発に関して自動車に関する背景を持たない政府機関および企業からの観点が含まれている。

 本レポートは、TU-Automotive Detroit 2016の討論セッションについて報告する3本のレポートの第1弾である。モビリティおよびコネクティビティを主眼としたレポートは後日掲載する予定。



起亜と日産の自動運転に関する理念および計画の概要

起亜:自動運転車開発の背後で鍵を握るもの

セッション: ゲームチェンジャーであるという認識を捨て、世界を変えるような画期的なものであると認識する
企業名 講演者 役職名
Kia Motors America Henry Bzeih氏 チーフ・テクノロジー・ストラテジスト/ヘッド・オブ・コネクテッド・ビークル
Visualization of key drivers of automated technologiesSource: Kia
自動化技術における重要な要素の視覚化
出典: 起亜

 「Forget Game Changer: This is a World Changer (ゲームチェンジャーという認識を捨て、これがワールドチェンジャー (世界を変える画期的なもの) という認識を持て)」と題された本セッションでは、Henry Bzeih氏が自動運転車の開発における起亜の展望について述べた。この発表の冒頭で、Henry Bzeih氏は自動化技術の開発を促進させる以下の4つの要因を挙げた。

  • 車両の利用と車両の所有に関する社会の動向。これは、Uber、Zipcar、Lyftなどのサービスの拡大に伴って見られるようになった。
  • ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭生まれの世代)は米国の人口において最大の割合を占める世代であり、米国内の顧客層においても大きな割合を占める。この世代は独特の傾向および特性を持ち、各自動車メーカーはこのことを踏まえてこの世代を顧客として獲得する必要がある。
  • 最終的に道路上での死亡事故ゼロを達成するという目標。
  • モノのインターネットの開発。

 上記の要因を把握することで、自動運転車開発の展開およびビジョンがより明確になる。

  自動運転車の技術を解説する際に、Henry Bzeih氏は技術を4つのカテゴリに分類した。その4つとは、センサと認識、判断と制御、HMIシステムとV2V/V2Iコミュニケーションである。自動車を完全に自動化するには、4つのカテゴリすべての技術が必要となる。これらの技術により、車両は自動運転を達成するための5段階のプロセスを実行できる。

  1. 検知
  2. 認識
  3. 判断
  4. 行動
  5. 結果

 先進ドライバーアシストシステムでも、自動運転ほどの強靱性は要求されないが、作動時にこのような階段を経ている。現在、起亜モデルに搭載されている自動運転機能の例として、インターバルオートノマスドライビング(専用道路での自動運転)、緊急停止システム、渋滞アシストおよびナローパス(隘路)アシストなどが挙げられる。

 Henry Bzeih氏はまた、自動運転の車両試験における起亜の取り組みと、自動運転車開発に関する将来の計画についても説明した。起亜では、自動運転車に対して、カリフォルニアおよび韓国の同社施設内で過酷な環境試験を実施している。また近年制定された法律に従い、同社は自動運転車の試験をネバダ州の公道上でも実施している。以下の自動化ロードマップに示すように、起亜はラスベガスで開催されたCES 2016で条件付きではあったが、高い自動化レベルを実演することができたため、将来において車両の完全自動化に期待している。

起亜の自動化技術ロードマップ
起亜の自動化技術ロードマップ
出典: 起亜

 

 

日産、企業の理想とモビリティ開発を融合

セッション: 日産の未来像: 電気自動車、コネクテッドカー、自動運転車のインテリジェントモビリティへの移行
企業名 講演者 役職名
日産 John Schnoes氏 プログラム・ディレクター- ビークル・インフォメーション・テクノロジー&オートノマス・ドライブ
フィードバックに基づいた一般な顧客の期待に関するテーマ
フィードバックに基づいた一般な顧客の期待に関するテーマ
出典: 日産

 日産のプレゼンテーションでは、技術革新と刺激を与えるという企業哲学および顧客中心のアプローチをインテリジェントモビリティ開発にいかに取り入れたかに主眼が置かれた。John Schnoes氏は、顧客重視という概念は単に顧客に機能を提供することだけでなく、顧客に品質の感触をいかに伝えるかを理解することに繋がると述べた。

 技術の向上に伴って、顧客は高品質の車両から何が新たに得られるのかという期待を抱いている。例えば、顧客から日産に寄せられたフィードバックでは、ユーザーはスマートフォンやタブレットからユーザーのクルマのインフォテインメントシステムへ移行する場合、あるいはその逆の場合にシームレスな接続を確立できるかに関心を寄せている。顧客はまた、安全性であれ、アクセシビリティオプションであれ、機能の信頼性であれ、あるいは別の基準であれ、自分のクルマに対して安心感を求めている。

 John Schnoes氏は自動運転と手動運転の両方にメリットがあり、顧客はその両方に関心を持っているかもしれないと述べた。自動運転とは、乗員の安全性を向上させて精神的負担を軽減することで、時間を車内の他の活動に自由に活用できるようにすることを意図している。手動運転モードのメリットは、ドライバーが運転の楽しみを体験できるという点であり、これはフィードバックとして日産に寄せられたもう1つの顧客に共通する関心事である。日産のインテリジェントモビリティ開発の目標の1つに、自動運転モードから手動運転モードにスムーズに移行して顧客が両方のモードを楽しむことができるソリューションを見いだすことがある。

 2015年に発表されたIDSコンセプトは、日産のインテリジェントモビリティのビジョンを表している。IDSコンセプトでは自動運転プラットフォームをフルに活用して、2016年夏に日本で公道試験を開始する予定であり、この試験は、今後数年間にわたり、車線変更機能などの自動運転機能を拡張して実施される。IDSコンセプトのインテリアは乗員重視を反映したものであり、乗員がシートを回転させることで対面することができる柔軟なシートアレンジと、乗員に車両からの情報を伝える多数のスクリーンが特徴である。IDSコンセプトは、歩行者や他車にメッセージを表示できるフロントガラスを含めて、車外の人々と通信するシステムも特徴である。

ニッサンIDSコンセプト
ニッサンIDSコンセプト
出典: 日産


自動運転を補完する技術:全地球航法衛星システムと地図

自動運転の可能性を秘めた技術としてのGNSS(全地球航法衛星システム)

セッション: GNSS(全地球航法衛星システム)を使用した自動運転車の測位
企業名 講演者 役職名
U-blox Brad Sherrad氏 上級副社長

 「GNSSを使用した自動運転車の測位」と題したプレゼンテーションでBrad Sherrad氏が述べた主題の1つが、車両の自動化水準が高まるにつれて、車両の移動において自律システムへの依存度が高まるというものであった。自律レベルが発展する過程には、補助が絶対的依存になる臨界点がある。依存が必要となると、車両にはセンサやGNSSなどの情報収集システムが必要となる。システムを完全に自動運転車に使用するには、そのシステムは以下の3つの要件を満たす必要がある。

  • いつでも使用可能であること
  • どのような条件下でも使用可能であること
  • 信頼性が完全とは言わないまでも、非常に高いこと

 現在、これら3つの要件をすべて同時に満たす技術が存在しないため、測位において3つの条件をすべて達成するには、GNSSを含む複数の技術を組み合わせる必要がある。

 注目すべきことは、GNSSは現在、絶対位置、すなわち、固定リファレンスフレームに基づいた位置に関する情報を提供できる唯一のシステムであるという点である。これにより、自律システムが絶対速度や方角のような追加情報を計算できるようになる。GNSSは、ある物体の相対地位、すなわち、別の物体の位置を基準とした位置のみを提供するカメラやレーダーのようなシステムと対比することができる。例えば、GNSSでは車両の位置を緯度と経度で表示できる。それに対して車両のレーダーシステムは車両前方100mに歩行者がいるなどの情報を提供できる。GNSSでは、相対測位方式しか使えないという制約を取り除く、相対測位方式から得られた情報を強化する、さらには相対測位方式そのものに対する依存度を下げるというメリットが得られる。またGNSSには、屋内、トンネル内、あるいは植物の群生する場所では作動しないなどの欠点があるため、他の技術が必要である。GNSSの使用事例を以下の図で確認できる。この左図では、システムはフリーウェイ上で車線変更する車両を識別できる。自動運転でGNSSを使用するための要件も以下に記載する。

車線変更を識別するGNSSシステムの例
車線変更を識別するGNSSシステムの例
出典:u-blox
自動運転に必要なGNSS要件のリスト
自動運転に必要なGNSS要件のリスト
出典:u-blox

 

 

ソフトウェアベースのマップの開発

セッション: マップの制御: ADAS、ナビゲーションおよびテレビゲーム技術
企業名 講演者 役職名
Mapbox Eric Gundersen氏 CEO

 「Taking Control of the Map: ADAS, Navigation, and Video Game Tech (マップの制御: ADAS、ナビゲーションおよびテレビゲーム技術)」と題されたプレゼンテーションでEric Gundersen氏は、Mapbox社の概要を説明し、同社の新製品であるMapbox Driveで自動運転車市場において自社の地位をいかに確立するかについて述べた。ソフトウェア開発を本業とする企業であるMapbox社は、携帯電話およびソフトウェアの市場で培った経験を自動車分野に活かそうと考えている。Mapbox社は、自社の顧客にアプリケーションプログラミングインターフェイス(API)とソフトウェア開発キット(SDK)の両方を提供する。このSDKにより、Mapbox社は、リアルタイムセンサのネットワークとして機能しMapboxアプリケーションを使用するデバイスからデータを収集でき、同社が使用するデータをオープンデータの地図であるオープンストリートマップへ拡張できる。Mapbox社は、方向性や交通情報のリアルタイム更新などの特定のマップレイヤを備えることで、自社のユーザーに追加機能を提供できるようにこのデータを収集して匿名化する。

 Mapboxソフトウェアの重要な要素は地図をカスタマイズできるという点である。開発者が外観と地図の機能の両方をカスタマイズできるため、自動車メーカーは顧客にどの情報をどのように表示するかを高度に制御できる。例えば、ある企業では地図を車線のセンターラインに沿った半自動運転に適したものにしたり、別の企業では、ターンバイターンナビゲーションを重視した地図にしたりできる。電気自動車に主眼を置く自動車メーカーでは、充電ステーションの場所を表示することができ、またグローバルプレゼンスを重視するメーカーではディーラー場所を強調することもできる。さらに、地図は毎秒60フレームのフレームレートで表示される。Mapbox Driveは6月1日に発表された。本プレゼンテーション中、Eric Gundersen氏は、MapboxがOEMとの大型契約を締結し、近い将来その内容について発表する予定であることも述べた。

Mapbox地図のカスタム視覚化のサンプルMapbox地図のカスタム視覚化のサンプル
Mapbox地図のカスタム視覚化のサンプル
出典: Mapbox


自動車市場以外の自動運転車に関する展望

自動運転車開発に対する政府の見解および考察

セッション: Guidelines and Regulations: Catching Up With the Pace of Autonomous Technology(指針と規制:自動運転技術に後れを取らない)
企業名 講演者 役職名
サウス・カロライナ大学法学部 司会: Bryant Walker Smith氏 准教授
国家道路交通安全局(NHTSA) Mark Rosekind博士 シニア・アドミニストレーター
ネバダ・デパートメント・オブ・モーター・ビークル Jude Hurin氏 DMVアドミニストレーター
ミシガン・デパートメント・オブ・ステート James Fackler氏 アシスタント・アドミニストレーター・フォー・カスタマー・サービス・アドミニストレーション

 「Guidelines and Regulations: Catching Up With the Pace of Autonomous Technology(指針と規制:自動運転技術に後れを取らない)」と題したパネルセッションでは、自動運転技術の開発時に関与するさまざまな行政機関の展望について考察した。セッションの冒頭に、3名のパネリストの各人が関与した最近の活動について概要を説明した。NHTSAは、1月のAnthony Foxx長官の発表に基づいて、自動運転開発の具体的な各要素の詳細を示した4つの文書を2016年7月に発表する予定である。これらの文書では、自動運転車の展開と操作、モデルケースとなる州、法規の解釈および免除の構造化、自動運転技術を加速するための新しいツールおよび当局の認定に関するガイダンスに焦点を合わせる。

 ミシガン州は試験のみを実施する州として、試験対象をドライバーレスカーにまで拡大し、最終的に実用化に移行することに期待を寄せる。このほか、現在検討中の項目には、商用車および非商用車の隊列走行や、自動運転車が一般大衆の目に触れる機会を増やすために自動車メーカー主導のライドシェアリングプロジェクトなどがある。ネバダ州が取り組んでいるプロジェクトの1つに、先進モビリティセンターがある。このプロジェクトでは、ネバダ州が自動運転に関する規制でその指導力を維持できるようにあらゆる政府機関が行政の垣根を越えて協力する。ネバダ州は、試験走行および商用化に関する規制も改訂すると同時に、隊列走行および自動運転タクシーの調査も行っている。

 パネルセッション中、繰り返し取り上げられた主要主題の1つに、すべての当事者が協力することの重要性と必要性があった。後でメリットを考えた場合、別の方法でできえば良かったと思ったことは何かないかとか尋ねられたときに、Jude Hurin氏の答えがその一例であった。Jude Hurin氏は、規制制定後もすべてのステークホルダーが関与したかを確認しなかったという誤りについて言及した。技術を安全面に配慮して展開するうえで、各政府機関および団体が関与することが重要である。Mark Rosekindは、協力関係が増えるにつれて技術を配置する最善の手法が見つかる機会も増えるため、連邦政府が各者との協力に関心を示していると説明する。

 提起されたもう1つの概念は、「どの程度安全であれば十分であるか?」について認識するという問題であった。Mark Rosekindは、自動運転環境で安全性を計測するための新たな基準とデータソースが必要となると示唆している。例えば、自動運転車が急制動技術によって衝突を回避するケーススタディを想定することが挙げられる。この場合、データ記録装置はイベントを「回避された衝突」としてではなく、危険な「急制動」イベントとして表示することになる。同氏はまた、自動運転車のメリットとしての安全性を促進するには、自動運転車が安全性において同等であるだけでは不十分であり、より高い基準が必要であるとも述べた。Jude Hurin氏は、安全性の向上にはゆっくりと段階的に進める方法が最も効果的であることを示唆している。James Facklerはこのような危惧にもかかわらず、自動運転の技術が拡大することで、自動運転の試験を目的に多数の企業や組織が自動車産業に新規参入し、期待と興奮に満ちた雰囲気が生まれていると述べている。

 

ロケット開発の経験を自動車業界で活かすうえでの考慮事項

セッション: ロケットは乗用車に何を語ったのか?宇宙から得られた自動運転車に活かせる教訓
企業名 講演者 役職名
Wind River氏 Marques McCammon氏 コネクテッド・ビークル・ソリューション担当ジェネラルマネージャー

 「What Did the Rocket Say to the Sedan? Lessons from Space for the Autonomous Car (ロケットは乗用車に何を語ったのか?宇宙から得られた自動運転車に活かせる教訓)」と題したMarques McCammon氏のプレゼンテーションでは、自動運転車の開発に応用できる航空宇宙分野での経験から得られた一般化に焦点を当てて説明がなされた。本プレゼンテーションの主題は、「何か」ではなく、「いかにして」に重点を置いたものである。開発では、いかにして危険を軽減するか、いかにして複雑さを管理するか、またはいかにして価値を最大にするかなどの解決策の発見が重視されるべきである。重要なのは、プロジェクトの目的が大きくなりすぎないようにすることである。自動運転に伴う複雑さが増すにつれて、あまりに多くの目標を一度に達成しようとすると、プロジェクトの成功率が低下したり、遅れが生じたり、コストが増加したりする。自動化運転は、一般大衆がある程度警戒している新技術であるため、どのような技術的な失敗であっても自動運転車の採用および認識にダメージを与えることになる。

 同氏はまた、企業はシステムにおいて価値が生まれるところに焦点を合わせるべきであるとも示唆している。Marques McCammonは、家の購入との類似点を挙げている。この類似点とは、家の購入者が建物の土台よりむしろ部屋や大きさを重視するというものである。自動車産業で言えば、価値はユーザーの経験に基づいて創出される。もう1つの一般化では、システムのアーキテクチャの重要性が強調された。一般に、開発プロセス全体でシステムのアーキテクチャを定義し、把握し、絶えず再考することがプロジェクトの成功をつながる。Marques McCammon氏は、このことが行われなかったDodge NeonおよびPT Cruiserの開発におけるケーススタディを示した。クライスラーはNeonと同じプラットフォームからPT Cruiserを生産することを決定していたのだ。しかし、開発が継続されるにつれて、PT Cruiserのアーキテクチャは独自のプラットフォームに進化したため、同社の当初の目標は失敗に終わった。自動運転の開発に関して、Marques McCammon氏は、システム学習を可能にするための仕組みとともに、認識の統合、内容と状況との関連付けに基づいたアーキテクチャを取り上げた。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>