SAE 2016 World Congress:トヨタ、現代自、Ford、ホンダ、FCAの出展

新型低燃費/高性能エンジン、HV/PHV用パワートレインを展示

2016/05/20

要 約

SAE 2016 World Congressにおけるヨタ・アイシン合同展示

SAE 2016 World Congressにおける
ヨタ・アイシン合同展示

 SAE 2016 World Congressは、米国ミシガン州デトロイトで2016年4月12日から14日まで開催された。今回のSAEショーのテーマは “Powering Possibilities”。このテーマは、自動車産業における新技術の可能性の探求を指すと同時に、自動車産業の進展には革新技術が必要であることを示している。おそらくこのような革新技術を示す分野の一つとして、SAEショーに参加した自動車メーカーは、様々なパワートレインおよびパワートレインを支える技術を紹介していた。参加自動車メーカー全5社は、1台または複数の環境対応車を出展。トヨタ、ホンダ、Ford、現代自/起亜自は各社の展示場に多様なエンジンを展示し、性能と効率性の進歩を紹介した。


 本レポートは、SAE 2016 World Congressに参加した自動車メーカーの展示概要を紹介する。今回のSAEに参加した自動車メーカーは、トヨタ、ホンダ、Ford、現代自/起亜自、FCAの5社である。






トヨタ:PriusとMIRAIのカットモデル、新型エンジンを展示

2016年型トヨタPrius

トヨタPrius
トヨタPrius
トヨタPriusのカットモデル
トヨタPriusのカットモデル

 トヨタは、2015年9月にラスベガスのプレスイベントで初公開した4代目Priusに、展示場の大きなスペースを割いた。通常の展示モデルのほか、Priusのカットモデルとリチウムイオンおよびニッケル水素バッテリーパックも出展した。4代目Priusのニッケル水素バッテリーの容積は約10%、リチウムイオンバッテリーは約6%小型化され、リヤシートの下にすっぽり収まっている。これにより、Priusのラゲージルームは502リットルから約10%増の558 リットルに拡大した。また、リチウムイオンバッテリーはニッケル水素バッテリーと同等の性能を提供するが、重量は35ポンド軽い。その結果、燃費を犠牲にすることなく、Priusの上級モデルに多くの装備を搭載することができる。

 

ニッケル水素バッテリー
ニッケル水素バッテリー
リチウムイオンバッテリー
リチウムイオンバッテリー


 Prius関連のその他の展示には、改良型1.8L直列4気筒エンジンと新型パワーコントロールユニット (PCU) がある。新型エンジンは、吸気ポート形状の改良、EGR(排ガス再循環装置)分配通路の構造変更、シリンダーボア壁内に追加したウォータージャケットスペーサー等により、最大熱効率40%を達成した。新型PCUは、両面冷却機構、「2 in 1」のパワーカード、コンパクトな制御基板等により、旧バージョンより容積が4.2L少ない小型化を実現。また、低損失の半導体部品を採用し、旧バージョンより電力損失を約20%低減した。

 

Priusに搭載する1.8L直列4気筒エンジン
Priusに搭載する1.8L直列4気筒エンジン
Priusのパワーコントロールユニット
Priusのパワーコントロールユニット

 

4代目Priusの分解レポートについては下記をご覧ください。

4代目トヨタプリウス車両分解調査(上)(中)(下)(写真集)

 

2016年型トヨタMIRAI

 トヨタは、MIRAIのカットモデルと、水素タンクおよび燃料電池スタックのカットモデルを展示し、燃料電池車の開発の開始時から今日までの変遷と進展を紹介した。たとえば、トヨタMIRAIは約3分間で燃料を充填できるが、2008年型FCHV-adv ははるかに長い時間を要した。水素タンクは、プラスチックライナーと層構成の変更により軽量化され、炭素繊維の使用量が40%低減された。MIRAIの燃料電池スタックの体積出力密度はFCHV-advの2.2倍、最高出力は155 hp である。現在、MIRAIは日本全国および米国と欧州の特定地域で販売中。

 

トヨタMIRAIのカットモデル
トヨタMIRAIのカットモデル
燃料電池スタック
燃料電池スタック

 

エンジン・ラインアップ

 トヨタの展示には、4代目Priusに搭載された1.8Lエンジンに加え、数基の新型エンジンが出展され、熱効率を向上させる技術が紹介された。Sientaに搭載された1.5L直列4気筒エンジンは、Priusのエンジンと同様、シリンダーボア壁内にウォータージャケットスペーサーを採用し、燃焼室の温度を最適化するとともにエンジンノッキングを防止する。Pradoに搭載された新型2.8L直噴ターボディーゼルエンジンは、特許を有する尿素水噴射装置を採用し、最大99%のNOxを浄化する。また、このディーゼルエンジンは、現行の他のターボチャージャーより30%小型化した、自社開発の可変ジオメトリー型ターボチャージャーを使用する。

 

1.5Lガソリンエンジン
1.5Lガソリンエンジン
2.8Lターボディーゼルエンジン
2.8Lターボディーゼルエンジン

 

エンジン 1.2L直噴ターボエンジン
8NR-FTS
2.8L直噴ターボディーゼルエンジン
1GD-FTV
2.0L直噴ターボエンジン
8AR-FTS
1.5Lガソリンエンジン
2NR-FKE
最高出力 114 hp 174 hp 235 hp 107 hp
最大トルク 136 lb-ft 332 lb-ft 258 lb-ft 100 lb-ft
圧縮比 10.0 15.6 10.0 13.5
搭載モデル Toyota Auris Toyota Prado (Land Cruiser) Lexus NX Toyota Sienta

 

uBoxコンセプトカーとi-Roadパーソナルモビリティ

 トヨタは未来のモビリティの例として、米国サウスカロライナ州のClemson大学の大学院生達と共同開発したuBoxコンセプトカーを発表した。これは、「ジェネレーションZ」と呼ばれる次世代の自動車購入者を対象として設計されたコンセプトカーで、活動的で力強い外観と、様々な形に変更できる多機能な室内を融合させた車である。uBoxが採用している曲面のガラスルーフは、アルミニウムに接合した炭素繊維複合材のレールで支えられているが、これは業界初の製造技術を利用したものである。もう一つの未来のモビリティを示す車、トヨタ i-Roadは、展示ホールの一角で試乗を行っていた。リチウムイオンバッテリーを搭載し、航続距離は31マイル、最高速度は時速28マイル。新開発の「アクティブリーン」技術は、左右の前輪が上下に動き、旋回時には自動的に車体の傾きを制御し、傾斜路面では車体を水平に維持する。

 

トヨタ uBoxコンセプトカー
トヨタ uBoxコンセプトカー
トヨタ i-Road
トヨタ i-Road


現代自/起亜自:ハイブリッド用エンジン、Ioniq Electric、コネクティビティ技術を出展

ハイブリッド用エンジン

Nu 2.0L GDI PHEVエンジン
Nu 2.0L GDI PHEVエンジン

 規制強化により燃費の改善が必要であることを踏まえ、現代自/起亜自は2基のハイブリッド用エンジンを出展した。その一つはNu 2.0L GDI PHEVエンジンで、67 hpのモーターと組み合わせ、2016年型Hyundai Sonataプラグインハイブリッドのパワートレインとなる。このエンジンは、効率性と性能の改善のため、アトキンソンサイクルを採用し、圧縮比を13.5:1としている。吸排気連続可変バルブタイミングシステムも、燃費と性能の向上に寄与している。旧型と比較すると、Nu 2.0L GDI PHEVエンジンは燃費が6.5%向上している。

 

Kappa 1.6L GDIエンジン
Kappa 1.6L GDIエンジン

 展示されたもう一つのハイブリッド用エンジンは、2015年10月の現代自/起亜自 年次国際パワートレイン会議で初公開されたKappa 1.6L GDIエンジンである。この新型エンジンは、拡大しつつある中型HVおよびPHVセグメント向けに設計されたエンジンで、アトキンソンサイクル、クールドEGR(排ガス再循環装置)システム、ロングストローク仕様を組み合わせ、熱効率を向上させている。Kappaエンジンのもう一つの特徴は、2個のサーモスタットを使用してシリンダーヘッドとシリンダーブロックを分離冷却することにより、燃費の改善とノッキングの抑制を図っていることである。この新型エンジンの最高出力は104 hp、最大トルクは199 lb-ftである。

 

2017年型Hyundai Ioniq Electric

 Hyundai/KiaがSAEショーに出展したモデルは、2016年ジュネーブモーターショーで初公開した2017年型Ioniq Electric。同一の専用プラットフォームに3種類の電動パワートレインを設定したバージョンの1つで、この種のモデルは自動車業界初である。Ioniq Electricのモーターの最高出力は120 hp、最大トルクは215 lb-ftで、1速リダクションギアトランスミッションと組み合わせる。蓄電容量28 kWhのリチウムイオンポリマーバッテリーを搭載し、航続距離は約110マイル。リチウムイオンポリマーバッテリーは、ポリマーを使用しないバッテリーより軽量で、フレキシブルな形状にできるため、車内のパッケージングを最適なものにすることができる。

 

Hyundai Ioniq Electric Hyundai Ioniq Electricのエンジンコンパートメント
Hyundai Ioniq Electric Hyundai Ioniq Electricのエンジンコンパートメント

 

コネクティビティおよびインフォテインメント技術

 現代自はSAEショーにコネクティビティ・コックピット・コンセプトを出展し、ドライバーの快適性と利便性を向上させる多様な先進技術を紹介した。センターディスプレイでナビゲーション、インフォテインメント、オーディオ、空調を選択する時や、フロントシートの背に装着されたスクリーンでエンタテインメントプログラムを操作する場合は、ジェスチャーコントロールを利用することができる。センターディスプレイのもう一つの特徴は、上方にスライドさせることにより、インテリアトリムで画面を2つに分け、よりフレキシブルにデータを表示できることである。たとえば、下側の画面はカーオーディオの操作に使用し、上側の画面には、助手席側のディスプレイから転送されたナビゲーションデータを表示することができる。

 

コネクティビティ・コックピット・コンセプト
コネクティビティ・コックピット・コンセプト
Connectivity Cockpit Concept sliding central display
コネクティビティ・コックピット・コンセプトの
スライド可能なセンターディスプレイ

 

Display Audio infotainment system
ディスプレイ・オーディオ・
インフォテインメントシステム

 また、ディスプレイ・オーディオ・インフォテインメントシステムが今年も出展され、Apple CarPlayとAndroid Autoシステムの両方を使用するオプションが紹介された。このシステムにより、スマートフォンを車に接続し、車のヘッドユニットを使用してスマートフォンのシステムやアプリケーションにアクセスすることが可能になる。現在、Android AutoはSonata, Elantra, Santa Fe, Santa Fe Sportで利用できるが、CarPlayは2017年型Elantraでのみ利用可能である。












Ford:C-MAX Hybrid、GT350/Focus RS用エンジンを出展

2016年型 Ford C-MAX Hybrid

Ford C-MAX Hybrid
Ford C-MAX Hybrid

 小型MPVのC-MAX Hybridは2011年のデトロイトモーターショーで初公開されたモデルだが、現在もハイブリッド車として注目すべき技術を備えている。Fordの北米初のハイブリッド専用車であるC-MAX Hybridは、リチウムイオンバッテリー、トラクションモーター、アトキンソンサイクル型ガソリンエンジンを組み合わせる。システム全体の最高出力は188 hp、最大トルクは121 lb-ft。C-MAXは動力効率を最大限にするため、パワースプリット(動力分割)機構を採用する。同機構により、走行速度にかかわらずエンジンを動かすことができ、必要に応じて車載バッテリーを充電したり、車輪に動力を伝えたりすることができる。北米の顧客向けのC-MAX Hybridは、米国ミシガン州Wayneにあるミシガン組立工場で生産されている。

 

高性能エンジン

 Fordは2基の高性能エンジンも出展した。2016年型Ford Focus RS用2.3L Ecoboostエンジンと、2016年型Ford Shelby GT350用5.2L V8エンジンである。2.3L Ecoboostエンジンの最高出力は350 hp、最大トルクは350 lb-ft。このパワーを実現するため、気流と出力を増加させる大型の圧縮機ホイールを備えた、低慣性ツインスクロールターボチャージャーを採用している。また、インテークマニホールドとターボチャージャーハウジングを最適な形状とし、出力をさらに高めている。Ford Shelby GT350に搭載される5.2L エンジンは、最高出力が526 hp、最大トルクが429 lb-ftで、フラットプレーンクランクシャフトを使用したFord初の量産エンジンである。フラットプレーンクランクシャフトは、クランクピンを180度の間隔に置くため、気筒が右側と左側で交互に点火する。その結果、気筒の吸排気が改善し、エンジンの性能が向上する。このエンジンは、Fordの自然吸気エンジンの中で最もパワフルであり、V8エンジンの中で最も回転数が高いエンジンでもある。

 

2.3L Ecoboostエンジン 5.2L V8エンジン
2.3L Ecoboostエンジン 5.2L V8エンジン

 

その他の技術

デスクトップ車両NVHシミュレータ
デスクトップ車両NVHシミュレータ

 Fordが出展したその他の技術には、デスクトップ車両NVH(騒音・振動・ハーシュネス)シミュレータとパワートレインアクティブノイズコントロールシステムがある。デスクトップ車両NVHシミュレータは、様々なシナリオに基づき仮想車両が走行する中で、NVHデータを検査・評価する開発ツールである。シミュレータで変更可能な変数には、エンジン、マウント、インテーク、エキゾースト等のコンポーネントと路面状況などがある。パワートレインアクティブノイズコントロールシステムは、車室内のエンジンサウンドのレベル調整に使用される技術である。コントロールモジュールが車載オーディオシステムを使用して、不要なエンジン音を消音するために逆位相の音波を生成し、より静かな室内を実現する。また、これとは逆に、コントロールシステムがエンジンから出る排気音を強め、スポーティな音を響かせることもできる。






ホンダ:Civicのエンジンとカットモデルを展示

2016年型ホンダCivic

 ホンダの展示の中心は、2015年ニューヨークオートショーで公開された2016年型ホンダCivicである。展示モデルと、ホワイトボディを一部切断したカットモデル、そしてCivicに搭載された新型1.5Lターボエンジンが展示された。この直噴ガソリンエンジンは、ダブルオーバーヘッドカムシステム、吸排気連続可変バルブタイミング・コントロール機構、電動ウェイストゲート付ハイレスポンスモノスクロールターボチャージャーを使用する。最高出力は174 hp、最大トルクは162 lb-ftで、複合燃費は35 mpgを達成。

 

ホンダCivic ホワイトボディのカットモデル
ホンダCivic ホワイトボディのカットモデル
1.5Lターボエンジン
1.5Lターボエンジン

 

ホンダCivic ホワイトボディのカットモデル 車内
ホンダCivic ホワイトボディのカットモデル 車内

 展示されたホワイトボディのカットモデルは、Civicの車体に多様な素材が使用されていることを示した。特に高強度鋼の使用は多く、2016年型ホンダCivicの車体における使用率は58%で、旧モデルの55%を上回った。新素材と共に様々な製造技術が採用され、重量を抑制しながらサイズを拡大し、剛性が高められた。たとえば、2016年型Civicでは熱間鍛造を施した超高強度鋼の使用率が1%から14%に増加した結果、重量は15ポンド以上低減。曲げ剛性は旧モデル比19%、ねじり剛性は同25%向上した。

 

2016年型Acura NSX

Acura NSX
Acura NSX

 Acura NSXは、その高い性能が称賛されているが、Sport Hybrid Super Handling All-Wheel-Drive (SH-AWD)システムを積んだハイブリッド車でもある。このシステムは、前輪側に2個のモーター、後輪側に1個の駆動用モーターを備える。V6ツインターボエンジンと組み合わせたパワートレイン全体の最高出力は573 hp、最大トルクは476 lb-ft。SH-AWDシステムはNSXのハンドリングを向上させるとともに、トルクベクタリングによるダイレクトなヨーコントロールを可能にする。同システムが生み出すもう一つの性能上の利点は、モーターによる瞬間的な加速で、ドライバーに「持続的なGフィール」を与えることができる。












FCA:新型Chrysler PacificaのPHVバージョンを出展

2017年型Chrysler Pacifica

 FCAはSAEショーに、2016年初頭のデトロイトモーターショーで初公開したChrysler PacificaのPHVバージョンを出展した。PHV用パワートレインを搭載した初のミニバンであるPacifica Hybrid(バージョン名はハイブリッドだがパワートレインはPHV)は、EV走行での航続距離が30マイル、総航続距離が530マイル、ガソリン等価換算燃費が80 MPGeである。Pacifica Hybridは、燃費性能を高めるため、Pacificaのベースモデルが使用する3.6L Pentastar V6エンジンのアトキンソンサイクル版を使用する。このPHV用エンジンは、最高出力が248 hp、最大トルクが230 lb-ft。ピストンの独特な動きにより12.5:1という圧縮比を達成し、熱効率をさらに向上させている。

 

Chrysler Pacifica
Chrysler Pacifica
Chrysler Pacificaのエンジンコンパートメント
Chrysler Pacificaのエンジンコンパートメント

 PHV用パワートレインのもう一つの重要なシステムは、FCAのelectrically variable transmission(EVT)である。EVTが搭載する2個のモーターは、EV走行中、ワンウェイクラッチにより車輪にトルクを伝達することができる。Pentastar V6エンジンと組み合わせると、パワートレイン全体では最高出力が約260 hpに達する。蓄電容量16 kWhのリチウムイオンバッテリーパックは2列目シートの下に配置されたため、車内には余剰スペースが生まれ、3列目シートのStow ’n Go機能(座席の床下収納機能)は維持されている。バッテリーパックは、240ボルト電源なら2時間でフル充電が可能。Chrysler Pacifica Hybridはカナダのオンタリオ州にあるWindsor組立工場で生産され、2016年下期に発売される。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>