フィアット・クライスラー:販売好調も低収益、フェラーリを分離へ

新車計画を先延ばし、マルキオンネCEOは合併を模索

2015/07/17

要 約

FCA グローバル生産予測 本レポートはフィアット・クライスラー(FCA)の最近の動向について報告する。

 FCAは2014年5月に新5カ年計画を発表、2018年にはグローバル販売で700万台を目指す野心的な計画を明らかにした。計画の核となるのが、ジープのグローバル展開とアルファロメオの拡販である。

 2014年の販売ではジープの販売が100万台を超えるなど実績を上げた。しかしながら、LMC Automotiveをはじめ、多くの自動車業界アナリストは2018年にFCAが目標通り700万台のグローバル販売を達成できるかについて懐疑的である。LMC Automotiveは、グローバル生産ベースで2018年は約540万台と予測している。

 FCAの収益状況は、販売が好調な割には低収益である。2015年に入ってから、マルキオンネ(Marchionne) CEOが自動車業界は合併によって効率化を図り、無駄な資金投入をやめるべきと主張。GMへ合併を働きかけたが断られた。

 資金調達のために超高級車部門のFerrari SpAの分離を計画しており、2015年内に実施する予定。また、2015年6月になって、FCAは多くの新車計画を先延ばしていることが明らかになった。

FCAの5カ年計画(2014年5月発表)
概 要 
販売目標700万台  販売台数は、2013年実績の約440万台から、2018年には700万台の販売を目標とする。ブランド別の販売では、ジープのグローバル生産・販売体制を推進するとともに、高級車ブランドのマセラティとアルファロメオの拡販を図る。
地域別販売中国と
北米で拡販
 地域別販売では、アジア太平洋地域の販売を2013年の約20万台から2018年には110万台へ5倍以上拡販する。この大半はジープ車の中国での合弁事業の貢献を見込んでいる。また、北米地域でも5割増の販売を目指す。
高級車拡販
マセラティと
アルファロメオ
 マセラティは、高級SUVセグメントにも参入し、6車種で高級車市場セグメントの全てをカバーする。販売目標は2018年7.5万台(2013年の1.5万台)。アルファロメオは、2018年までに8車種の新型車を投入し、2013年の7.3万台から2018年には40万台の販売を計画。
ジープ拡販
2018年190万台
 2013年の79.8万台から2018年には190万台へ110万台の拡販を期待。2013年時点で北米の4工場で5車種を生産していたが、2018年には6カ国の10工場で6車種を生産する。
財務目標2018年
純利益50億ユーロ
 売上高目標は2018年に1,320億ユーロ(2013年実績は866億ユーロ)、純利益は50億ユーロ(2013年実績は19.5億ユーロ)を設定している。新商品開発と生産工場に、5年間で480億ユーロを投資する。

出所:FCA Investor Day Presentations 2014年5月6-7日

5カ年計画の進捗状況(2015年7月時点)

概 要 
販売目標700万台  販売台数は、2013年実績の約443万台から、2014年には7.2%増の475万台を販売した。700万台達成のためのペース(年率10%増)には届いていないが、主要量販自動車メーカーの中では最も高い伸び率だった。
中国と北米で拡販  アジア太平洋地域の販売を2013年の約20万台から2014年は26.7万台へ34.2%拡販。ジープ車の中国での合弁事業生産開始は2015年第4四半期。また、北米地域ではシェアを11.4%からも12.4%へ1%ポイント増を達成した(目標2018年14.4%)。
マセラティとアルファロメオ  マセラティは、高級中型SUV「Levante」を2015年第4四半期に投入予定。2013年実績1.5万台に対して2014年実績は3.3万台。アルファロメオは、量販が期待できる新型セダン「Giulia」を2015年11月から生産開始予定。アルファロメオの販売は2013年実績の7.3万台から2014年は6.7万台へ減少した。
ジープ拡販2018年190万台  2013年の79.8万台から2014年は100万台へ拡販。2013年時点で北米生産のみだったが、イタリア、ブラジルに加えて、中国でも2015年中に生産を開始する。
財務目標2018年純利益50億ユーロ  売上高は2013年実績866億ユーロに対して2014年実績は10.7%増の961億ユーロ、年率9%増の目標は達成。純利益は2013年実績19.5億ユーロに対して2014年実績は6.3億ユーロ。調整後純利益は2013年実績9.43億ユーロに対して2014年は9.55億ユーロであまり増えていない。

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