人とくるまのテクノロジー展2015:Post2025年の乗用車用パワートレーンの主流は?(欧州動向編)

低CO2時代に内燃機関は、生き残れるか?AVL、ETASからの講演

2015/06/24

要 約

AVL上席副社長G.フライドル博士 ETAS 社長W.シーネル工学博士
(AVL上席副社長G.フライドル博士) (ETAS 社長W.シーネル工学博士)

 人とくるまのテクノノロジー展2015で開かれたフォーラム「Post2025年の乗用車用パワートレ-ンの主流は?(低CO2時代に内燃機関は、生き残れるか?)」について、本稿では、欧州の開発動向としてAVL、ETAS社の発表内容をまとめた。(日本メーカー、トヨタ、日産、ホンダ、マツダの講演内容は人とくるまのテクノロジー展2015:POST2025年の乗用車用パワートレーンの主流は?(日本メーカー編)をご覧ください。)内燃機関は生き残れるかという問いに対し、AVLはガソリン、デイーゼルエンジン共に技術の相互乗り入れ、48V電源での電動化と合わせて進化していくとしている。エンジン、トランスミッション、ソフトウエア、モーター、バッテリー等がパワートレーンモジュールとして進化していくと発表。ETAS社は、内燃機関は生き残るとした上で、キーとなるのは、複雑多様化するパワートレーンの制御ソフトウエアのバーチャル開発化であるという。欧州では自動車業界(OEM、TIER1、2)、大学、研究機関、政府が一体となってネットワークを作り将来課題の解決について研究しており、標準化が進められている。

注記) AVL :オーストリアに本拠を置く個人所有で世界最大のパワートレーンエンジニアリング会社
ETAS:ボッシュのグループ会社、自動車制御システム開発支援、ツール開発、販売会社

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AVL:ガソリンとデイーゼル技術は相互乗り入れし、進化する

内燃機関は生き残れるか?

『生き残りは可能である。 その為に、全方位の開発  を効率よくモジュール化して  実行しなくてはならない。

 

2020年以降のパワートレーン動向

 パワートレーン仕様は、欧州では顧客の嗜好からダイレクトな加速フィールとシフトフィールが好まれ、ダウンサイズターボ、MT・DCT、パラレルハイブリッドが多くなる。

 また現在検討されている新欧州走行モードではエンジンの高負荷域をより多く使用する為、過給やトランスミッションの多段化が増加していく傾向がある。(日本ではスムーズな加速フィールとシフトフィールが好まれ、自然吸気エンジンとCVT・AT、スプリットハイブリッド(例 トヨタハイブリッドシステム)が増加していく)

 欧州では電源電圧として48Vを使ったアイドルストップ、減速時エネルギー回収、電動CVT、EV化等、電動化が進み、エンジン構造が大きく変っていく可能性がある。

 

電動化 可変圧縮比
電動化 VCR
(AVL資料) (AVL資料)

 

全方位の燃費向上開発

 欧州2021年以降のCO2 95g/km~70g/km燃費レベルを達成するには、均質リーンバーン、アトキンソンサイクル、可変動弁機構(VVT/VVL)、クールドEGR、リーン雰囲気での後処理装置、可変圧縮比機構、排熱回収等、「燃焼システムからエンジン本体まで」全方位の燃費向上開発をガソリンエンジンで実行する必要がある。デイーゼルエンジンで採用してきた直噴ターボ、リーン燃焼技術がガソリンエンジンで普通に使われるようになり、ガソリンで採用してきた可変動弁機構などがデイーゼルにも使われるようになりガソリン⇔デイーゼル間で技術の相互乗入れが進む。

 

AVL資料 AVL資料
(AVL資料) (AVL資料)

 

モジュール開発

 上記で述べたように、ガソリンエンジンとデイーゼルエンジンが同技術を共通に使い、従来はガソリンとデイーゼルで異なっていたエンジン構造が同一に近づく。エンジン、トランスミッション、ソフトウエア、モーター、バッテリー等をモジュールとして数種類設計し、それらを組み合わせパワートレーンを同時に多種類作り上げていく「パワートレーンのモジュール開発」がこれからは重要になる。

 

AVL資料 AVL資料
(AVL資料) (AVL資料)

 

 



ETAS:パワートレーンの適合開発プロセスは新しい段階に入る

内燃機関は生き残れるか?

『生き残りは可能である。    内燃機関制御システムは複雑化の一途を辿る  為、ソフトウエアの開発を効率よくやる必要     があり、バーチャル開発が有効な手段となる。

 

バーチャル化によりパワートレーンの適合開発は新しい開発プロセスに変革される

 燃費・排気規制、開発期間短縮、車載イーサーネット増加、新機能追加、ソフトウエアのアーキテクチャー更新などにより、電子コントロールユニット(ECU)のラベル数は1997年の4,000から、2010年には25,000に増加。車の複雑化する電子技術、電子システムは開発リソースを消費し開発コストを急速に引き上げる。

 ある欧州OEMによると開発期間の60%は実験車がなく、グローバルカー開発では実車で評価できるエンジニアの割合は10%以下。さらに、OEM、TIER1、2の地球的規模の拡大によりECU試作品を実物でやり取りする時間とコストは莫大化している。またECU開発費の40%は実験と検証に費やされる。ソフトウエアの修正は開発後期になるほどコストが膨らむ。("10倍ルール":1フェーズ開発が進むと修正コストは10倍)

 

ETAS資料 (ETAS資料)

 

バーチャル開発が決め手

 バーチャル化により、実車テストを削減できる。実際のコントロールユニットをバーチャルユニットに置き換えPC上で事前検証やソフトウエアのバグなどを確認していく。これにより開発リードタイムを各段階(単体・ソフト・コントロールユニット・サブシステム・システムとECUネットワーク)で短縮できる。

 

ETAS資料 (ETAS資料) (注記) エンジンコントロール(EMS) モーターコントロール(MCU) バッテリーコントロール(BMS) トランスミッションコントール(TCU)
↓
ETAS資料 (ETAS資料)

 

効果

 ETAS社によるとバーチャルモデルを使用する事で、シミュレーションとベンチテストを増やせば実車を使った実験バリデーションが大幅に低減可能(70%⇒40%)との事。VWがDoEに報告した例ではバーチャル化により、開発段階で発生するCO2の2-4%の削減効果が得られ従来8週間かかっていた実験が1.5日で完了するようになった。

 

ETAS資料 (ETAS資料)

 

 欧州ではこのようなバーチャル開発手法なども、自動車業界(OEM、TIER1、2)、大学、研究機関、政府が一体となってネットワークを作り課題の解決を研究しており、標準化が進められている。日本でも昨今NewA.C.E Institude.Co.LTD(株式会社新エイーシーイ)などにみられるように、将来の共通課題を産官学で研究する仕組みができつつある。

 

ETAS資料 (ETAS資料)

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>