インドネシア:2015年の販売は前年と同水準の120万台の見込み

三菱は新工場を計画、GMは自社工場を閉鎖・上海汽車と合弁工場を建設

2015/03/06

要 約

インドネシアの自動車生産・販売台数 インドネシアの2014年の販売台数は前年比1.8%減の121.0万台。景気回復が遅れるタイを抜いて、東南アジア最大の自動車市場となった。しかし、経済成長の減速、ルピア安、ルピア安抑制のための金利高、燃料補助金の削減等の影響で、2009年以来5年ぶりに前年比マイナスとなった。

 ローコストグリーンカー (LCGC) 適合車の2014年販売は17万台と、インドネシア自動車製造業者協会 (GAIKINDO) の目標12万台を上回り好調だったが、主力の多目的車 (MPV) をはじめ他のすべてのセグメントでは販売が減少した。

 2015年の販売台数について、GAIKINDO は、原油安はプラス要因となるが、ルピア安や景気低迷の影響は続くと見られ、前年並みの120万台との見通しを示した (1月時点) 。

 LMC Automotiveは、中長期的には、人口が多く、若年層と中間層が急拡大しているインドネシアは、東南アジア諸国の中で最も自動車販売が伸びる可能性が高いと予測している。同社によると、2014年は市場が低迷したが、2015年から2018年までは毎年7~9%増加し、2018年には1,575,165台となる見込み。

 2014年10月に大統領に就任したジョコ・ウィドド氏は、就任前にLCGC政策に反対の意を表明していたが、新政権としては同政策を継続する方針を示した。2015年に実施される予定のASEANの経済統合を前に、国内の自動車産業を振興し、輸出拡大を図るとしている。また、財政を圧迫していた燃料補助金については、公約通り削減に踏み切り、2015年1月からはガソリンの補助金を撤廃、軽油は補助金を固定化した。ただ、原油安のおかげで、ガソリンと軽油の公定価格は2014年末より低下している。政府は、従来の補助金向け予算をインフラ整備や社会保障に振り向ける計画。

 2014年の生産台数は前年比7.5%増の129.9万台で過去最高を記録。完成車輸出台数も18.4%増の20.4万台と拡大した。インドネシアおよびその周辺地域の中長期的な成長を見込んで、自動車メーカー各社は同国を生産・輸出拠点とする動きを加速させている。トヨタは2016年に新エンジン工場を稼働、ダイハツは開発機能を強化している。スズキは2015年以降、三菱自動車は2017年に新工場を稼働する計画。海外メーカーでは、GMは上海汽車と合弁工場を建設すると発表(既存の自社工場は2015年6月に閉鎖予定)、VWも新工場建設を検討している模様。

 
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市場シェア:トヨタグループは5割弱、ホンダは好調なMobilioでシェア拡大

インドネシアの自動車市場シェア(2014年) インドネシアのメーカー別市場シェア

 2014年のインドネシアにおけるメーカー別市場シェア (大型商用車を除く) は、トヨタが第1位の33.7%、ダイハツが第2位の14.8%で、トヨタグループのシェアは前年の5割超から48.5%に低下した。新興国向け小型セダンのトヨタVios、LCGC適合車のトヨタAgyaとダイハツAylaの販売は増加したが、主力のMPVのトヨタAvanzaとダイハツXeniaの販売が23~30%減少した。

 2014年は市場全体が低迷する中、ホンダは大きく販売台数を伸ばし、市場シェアも5.3ポイント増の13.5%に拡大。2014年1月に投入した低価格のMPV Mobilio の好調が販売を牽引した。

 日本メーカーのシェアは9割超だが、GMが上海汽車との合弁工場を建設し、Wuling (五菱)ブランドの低価格MPVを生産・販売する計画があるなど、今後は海外メーカーとの競争も激しくなる見込み。

 カテゴリー別の販売台数では、2014年にLCGC適合車の販売が17.2万台で、市場全体の14.2%を占め、GAIKINDOの目標である12%を超えた。モデル別ではトヨタAgyaが6.7万台でトップ、続いてダイハツAyla、ホンダBrio Satyaが続く。GAIKINDOは、2015年のLCGC適合車の販売は、経済成長率が5%程度なら2014年と同水準の17万台、市場シェアも約14%にとどまると予測している (2015年2月)。

 一方、主力セグメントのMPVを含む"4x2 Type" は13.7%減少し、市場シェアは64.0%から56.3%に低下した。MPVセグメントでは競争が激化し、トヨタAvanzaとダイハツXeniaのシェアにホンダMobilioとスズキErtigaが食い込もうとしている。

インドネシア:自動車国内生産/国内販売/輸出台数

(台)
2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (見通し)
国内生産 464,816 702,508 837,948 1,065,557 1,208,211 1,298,523
国内販売 483,548 764,710 894,164 1,116,230 1,229,904 1,208,019 1,200,000
輸出 CBU 56,669 85,796 107,932 173,368 170,907 202,273
CKD 53,140 55,624 83,709 100,122 105,380 108,580

資料:インドネシア自動車製造業者協会 (GAIKINDO) (注) 2015年 (見通し) は、GAIKINDOが2015年1月に発表した予測。

 

インドネシア:カテゴリー別自動車販売台数
(台)
カテゴリー 2011年 2012年 2013年 2014年 2014年
(前年比) (市場シェア)
Sedan 25,741 34,221 34,199 21,614 -36.8% 1.8%
4x2 569,768 739,168 787,712 679,856 -13.7% 56.3%
4x4 5,521 7,396 6,416 5,871 -8.5% 0.5%
Bus 3,853 4,472 4,054 3,834 -5.4% 0.3%
Pick up/Truck 270,205 311,609 328,378 313,237 -4.6% 25.9%
Double Cabin 17,815 19,364 17,962 11,487 -36.0% 1.0%
Affordable Energy Saving Cars 51,180 172,120 236.3% 14.2%
その他 1,261
Total 894,164 1,116,230 1,229,901 1,208,019 -1.8% 100.0%

資料:GAIKINDO (注) Affordable Energy Saving Cars は LCGC適合車を指す。

 

 



インドネシア政府:石油燃料への補助金政策を転換

新政権は燃料への補助金を削減・撤廃へ

2014年11月 補助金削減  2014年10月に発足したジョコ・ウィドド新政権は、大統領選の公約通り、同年11月18日から石油燃料への補助金を削減し、ガソリンや軽油の値上げに踏み切った。ガソリンは1リットル当たり6,500ルピアから8,500ル ピアに31%値上げされ、軽油も5,500ルピアから7,500ルピアに36%引き上げられた。政府はこれまで、燃料補助金の増加により財政が圧迫されていた。
2015年1月 補助金撤廃  2015年1月1日にインドネシア政府は石油燃料への補助金の新政策を発表。ガソリンの補助金を撤廃し、軽油は補助金を固定して売価を変動させる。低品質レギュラーガソリンは補助金が撤廃されるが、原油安により、1月の公定価格は従来の8,500ルピアから7,600ルピアに下がった。燃料補助金の予算は276兆ルピアから81兆ルピアに縮小。政府は、補助金削減分の予算をインフラ整備や社会保障に振り向ける計画。
自動車販売への 影響  GAIKINDOは、補助金削減による石油燃料値上げ後に自動車販売は10~15%減少すると予測していた。ただ、減少は短期的で、2カ月後には元に戻ると考えている (2014年11月時の予測)。

 

 



主要自動車メーカーの生産状況

 インドネシアでは、中長期的な国内需要と輸出市場の成長を見込んで、メーカー各社の生産拠点拡充や生産車種拡大の動きが続いている。

 トヨタは第1・第2工場を合わせて年産能力25万台を有するほか、トヨタ車体の工場でも車両を生産する。2016年初めには年産能力21.6万基の新エンジン工場を稼働させる計画。ダイハツは2014年内にKarawang工場とSunter工場を合わせた年産能力を53万台に拡充。Karawang工場内の開発機能も強化した。また、2015年夏にはエンジン工場で新ラインを稼働させる。

 スズキは新工場を2015年以降に稼働させ、既存工場との合計年産能力を15万台から20万台に拡大、将来は25万台にまで引き上げる計画。エンジンと変速機を一貫生産する新パワートレイン工場は2014年2月から順次稼働を開始している。ホンダは2014年に第2工場を稼働させ、第1・第2工場合わせて20万台の年産体制を整備した。

 三菱自動車は三菱商事と現地企業との合弁で新工場を建設し、2017年に稼働させる計画。年産能力は16万台で、将来は24万台まで拡充可能。日産は2014年5月に第2工場を稼働。フル生産時には、第1工場と合わせた年産能力を現行の10万台から25万台に増強する計画。

 日系メーカー以外では、GMが上海汽車と合弁で2017年に年産能力15万台の工場を稼働させ、Wuling (五菱) ブランドの低価格小型MPVを生産する計画。一方でGMは2013年5月に再開したBekasi工場の採算が取れないとして、再び閉鎖する計画を明らかにした。VWは2017年頃までに、インドネシアに工場を新設する計画と報じられている。

 2014年末のインドネシアの年産能力は約140万台。GAIKINDOは、三菱自動車やVWが新工場を建設すれば、2017年には同国の年産能力は220万台に拡大すると見込んでいる。

インドネシアの主要自動車メーカーの生産状況 (中大型商用車は除く)

OEM 工場 年産能力 (1000台) 生産実績 (2014年) (1,000台) 生産車種
トヨタ Karawang 1 130 704 Toyota Kijang Innova, Fortuner
Karawang 2 120 Toyota Etios Valco, Vios, Limo, Yaris
トヨタ車体 6 Toyota NAV1
ダイハツ Sunter 330 Daihatsu Terios/Toyota Rush, Daihatsu Xenia/Toyota Avanza, Daihatsu Gran Max/Toyota Lite Ace/Hiace/Town Ace, Daihatsu Luxio
Karawang 200 Daihatsu Xenia/Toyota Avanza, Daihatsu Ayla/Toyota Agya
ホンダ Karawang 1 80 194 Honda Jazz (Fit), CR-V, Freed, Brio Satya, HR-V
Karawang 2 120 Honda Mobilio
スズキ Tambun 150 137 Suzuki SX4, Grand Vitara (Escudo), Karimun Wagon R, Carry, Mega Carry, Suzuki Ertiga/Mazda VX-1, Suzuki APV/Mitsubishi Maven
Cikarang 0→50(2015) →100 (予定) - 2015年以降に稼働開始Suzuki Ertiga, Karimun Wagon R を生産する予定
日産 Purwakarta 1 100→ 250(フル生産時) 93 Nissan Grand Livina, Livina, X-Trail, Serena, March, Juke, Evalia
Purwakarta 2 Datsun Go+ Panca, Go Panca
三菱自 生産委託 80 63 Mitsubishi Colt T120, Colt L300, Outlander Sport
新工場 0→160(2017) →250 (予定) - 2017年上期に稼働開始新型小型MPV, Colt L300, Colt T120を生産する予定
マツダ 生産委託 n.a. 6 Mazda VX-1
いすゞ Bekasi 42 (Panther) 7 Isuzu Panther, 中型トラック
Karawang 未定 - 2015年以降に稼働開始
GM Bekasi 40 n.a. 2013年に生産再開したが2015年6月までに閉鎖予定
上海汽車との合弁工場 0→150 (2017) - 2017年に稼働開始Wuling (五菱) ブランド車を生産する予定
VW 生産委託 2 1 VW Touran, Golf, Transporter; Audi A4, A6
新工場 未定 - 2017年頃までに稼働開始 (報道)生産車種は未定
Daimler Bogor 20 5 M-Benz C-, E-, S-, A-, B-, ML-, GL-Class, 商用車
BMW 生産委託 n.a. 2 BMW 3 Series, 5 Series, X1, X3, X5;
Hyundai Bekasi 12 6 Hyundai Atoz (Atos), Accent, Excel, Avega, H-1 (Starex)
Sunter 5 3 Kia Carens
(注) 1. 当該自動車メーカーが工場に出資していない場合は"生産委託"と記載した。
2. 年産能力は各社ウェブサイトや各種報道による。2014年の生産実績はProlianceによる。

 

 



トヨタグループ (トヨタ、ダイハツ) のインドネシアでの動向

トヨタ:Avanzaの中東向け輸出拡大、2015年にIMVを全面改良

新エンジン工場 を建設  トヨタは2015年2月、Karawang工場において新エンジン工場の建設を開始した。2016年初めから稼働し、年産能力は21.6万基。その半数を輸出する予定。投資額は230億円。
Avanzaの輸出 拡大  トヨタは2014年6月、インドネシア製Avanzaの中東向け輸出を2014年5月~2015年4月に5,000台に拡大するという目標を明らかにした。既にヨルダン、レバノン、シリアで販売しているが、新たにサウジアラビア、オマーン、クウェート、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、イエメンにも輸出する。これで、Avanzaの輸出先は世界44カ国に達する。2014年の輸出実績は約38,600台。
 トヨタはインドネシアを世界の生産・供給拠点とする方針。2014年の輸出台数は11.8万台で、アジア、アフリカ、中南米、中近東の70余の国に輸出した。生産台数に対する輸出比率は約20%だが、今後は30%に引き上げるとしている。また、同国はエンジンの重要な供給拠点でもあり、同国製のIMV用ガソリンエンジンの約40%をアジア、アフリカ、中南米の車両生産工場に輸出している。
IMVの全面改良  トヨタは2015年に新興国向け戦略車 IMV シリーズを11年ぶりに全面改良する見通し (2015年2月報道)。IMVは1つの車台からピックアップのHilux、SUVのFortuner、MPVのInnovaの3車種を生産し、年間約100万台を販売する。トヨタは約1,000億円を投資して車台を改良し、燃費や排ガス性能を高める方針。今後、強化が見込まれるアジアの環境規制に対応する。まず、2015年春にタイでピックアップなど新型車の生産を開始し、その後、アルゼンチンやインドネシアでも生産を開始する計画。
新型NAV1を発売  Toyota Noahベースの小型MPV。2014年5月に発売。2.0L 4気筒ガソリンエンジンとCVTを搭載。トヨタ車体のBekasi工場で生産。価格はAlphardとKijang Innovaの間の3億8,665万~4億600万ルピア。

 

ダイハツ:生産能力・開発機能を強化

Karawang工場の
生産能力を拡充
 ダイハツは2014年内にKarawang工場の年産能力を従来の約2倍の20万台に引き上げた。既存ラインの生産速度の向上により、LCGC適合車のDaihatsu Ayla/Toyota Agya, トヨタと共同開発したMPVのDaihatsu Xenia/Toyota Avanza の生産を拡大。Sunter工場は現行の33万台で据え置く。
開発機能の強化  ダイハツは2012年に新設したKarawang工場内にR&Dセンターを一部開設していたが、2014年内に設計実験棟とテストコースの悪路コースを開設。市場ニーズを取り入れた商品と技術開発を行う方針。日本の開発拠点でインドネシア人エンジニアの研修も行い、現地のエンジニアも増やしていく。
Copenを投入へ  軽自動車のスポーツ車。投入時期は未定。ジャカルタモーターショー2014に出展。日本から輸入する。大家族向けMPVが主流のインドネシアで、走りの楽しさを訴求。ダイハツならではのコンパクトカーの広がりをアピールする。
エンジンを
中国メーカーに供給
 ダイハツは2015年内に、中国の第一汽車にインドネシアから年約10万基のエンジンを供給するとされる (2014年11月報道)。また、東風汽車にも排気量1,000cc前後のエンジンを年約5万基供給する計画 (2015年3月報道)。中国では今後環境規制が強化され、低燃費エンジンの需要が伸びる見込み。ダイハツは中国社への供給拡大により、インドネシアのエンジン工場稼働率の向上を目指す。

 

 



ホンダ、スズキ、三菱、日産のインドネシアでの動向

ホンダ:2015年の販売目標は17万台、HR-V・新型Jazz・新型Cityを投入

2015年目標  ホンダは2015年2月、インドネシアにおける同年の販売台数 (出荷ベース) を前年比約7%増の17万台とする目標を表明した。市場は停滞気味だが、ディーラー数の拡大 (前年末から約3割増の195~200店) や、2015年1月に投入した小型SUVの HR-V (日本名:Vezel) の拡販等で販売を拡大する。さらに、2016年の販売目標は30万台としている。
HR-Vを発売  2015年1月に小型クロスオーバー HR-V (日本名:Vezel) の納車を開始した。1.5LエンジンにはMTまたはCVT、1.8LエンジンにはCVTを組み合わせる。ジャカルタでの販売価格は1.5Lモデルが2億4,300万~2億8,800万ルピア、1.8Lモデルが3億5,500万ルピア。西ジャワ州Karawang工場で生産。
新型Jazzを発売  2014年6月、全面改良した小型ハッチバックの新型Jazz (日本名:Fit) を発表。1.5L i-VTECエンジンにCVTを組み合わせる。旧モデルより全長が55mm長く、安全装備を強化。販売価格は1億9,900万~2億4,800万ルピア。
新型Cityを発売  2014年4月、全面改良した小型セダンの新型Cityを発表。1.5L i-VTECエンジンとMTまたはCVTを組み合わせる。旧モデルよりホイールベースを50mm伸ばし、安全装備を強化。販売価格は2億7,700万~3億2,100万ルピア。

 

スズキ:Wagon Rをパキスタンへ輸出、新パワートレイン工場と組立工場を稼働へ

LCGCを輸出  スズキは2014年6月、LCGCの Karimun Wagon R のパキスタンへの輸出を開始した。2014年は月間1,200台、年間2万台をノックダウン (CKD) 方式で輸出する。スズキはインドネシアからの輸出を拡大する方針で、2018年までに年間5万台 (完成車3万台、CKD 2万台) とする計画 (2013年実績は2.5万台。内訳は完成車2.3万台、CKD 0.2万台)
新パワートレイン工場  ジャカルタ東方のGIIC工業団地内に建設していたエンジン・トランスミッション工場は、2014年2月より順次稼働を開始した。同工場の稼働に伴い、既存工場からエンジン生産の一部を移管する。
新組立工場  GIIC工業団地に建設している四輪車組立工場は、2015年以降に稼働する予定。当初の年産能力は5万台で、将来は10万台にまで引き上げる。既存のTambun工場の年産能力は15万台で、2015年にスズキのインドネシアでの年産能力は20万台(将来は25万台)となる見込み。

 

三菱自動車:2017年に新工場を稼働、部品配送体制の強化

新工場建設  三菱自動車は2015年2月、三菱商事や現地パートナーのKrama Yudha Group と合弁でインドネシアに新工場を建設する計画を発表した。出資比率は三菱自51%、三菱商事40%、Krama Yudha 9%。新型車開発費を含めた投資額は約600億円。ジャカルタ東方のBekasi県GIIC工業団地内に建設し、2017年4月に稼働予定。年産能力は16万台で、将来は24万台まで拡大可能。現在、三菱自動車は、Krama Yudha Ratu Motorに生産委託しており、その年産能力は8万台。
 同社は、インドネシア市場の成長を確実に取り込むため、従来の小型商用車中心から乗用車への展開拡大を進めて行く計画。新工場では、生産委託工場から移管する小型商用車のColt L300 (2代目三菱Delica) に加え、新たに開発する小型MPVと、新型SUVのPajero Sportを生産する。車両の一部は、ASEAN各国にも輸出する計画。
部品配送体制を強化  三菱自動車のインドネシアでの総販売代理店、Krama Yudha Tiga Berlian Motors (KYB)は、2014年4月に西ジャワ州Bekasi県に部品倉庫を設置し、新たなスペアパーツセンターとして稼働させた。ここから直接商品を送る販売店は115カ所で、うち4割に24時間以内に配達可能。新しい部品センターの設置により、部品を迅速に配送する態勢を強化している。

 

日産:第2工場の稼働を開始、LCGC適合車Datsun Go+ Panca/Go Pancaを投入

新工場の 稼働開始  日産は2014年5月、西ジャワ州Purwakartaで第2工場の稼働を開始。同時にLCGCプログラムの認可も取得し、新工場でDatsun Go+ Pancaの生産を開始した。330億円を投資して建設した第2工場は、エンジン、車体、塗装、組立工場を擁し、インドネシア向けDatsun車両の生産専用の工場となる。日産の第1工場の年産能力は10万台。フル生産時には、第1・第2工場を合わせて年産能力を25万台とする計画。
Datsun Go+ Pancaを発売  LCGC適合車の3列シートMPV。2014年5月から納車開始。1.2Lエンジンと5速MTを搭載。西ジャワ州のPurwakarta工場で生産する。ジャカルタでの販売価格は8,500万~1億300万ルピア。
Datsun Go Pancaを発売  LCGC適合車の5人乗りハッチバック。2014年9月から納車開始。1.2Lエンジンと5速MTを搭載。Purwakarta工場で生産する。ジャカルタでの販売価格は9,600万~1億100万ルピア。

 

 



GM、VW、BMW、Protonのインドネシアでの動向

GM:上海汽車と合弁で新工場を建設、2013年に再開したBekasi工場は閉鎖へ

合弁工場を建設  GMと上海汽車の合弁会社 SAIC-GM-Wuling (上汽GM五菱) は2015年2月、インドネシアに新工場を建設し、Wuling (五菱) ブランドの低価格小型MPVを生産する計画を発表した。政府の許可が出れば、2015年内にジャカルタ近郊で新工場の建設を開始する計画。新工場で生産する車両は主にインドネシア国内向けだが、将来は他のASEAN諸国に輸出する可能性もある。投資額は7億ドル、生産開始は2017年、年産能力は15万台と報じられている。
Bekasi工場を 閉鎖へ  GM は2015年 6月までに、インドネシアで小型 MPV Chevrolet Spin の生産を中止し、Bekasi 工場を閉鎖して従業員 500人を解雇する計画を明らかにした (2015年 2月)。GMは、2005年3月より生産を停止していたBekasi 工場に1億 5,000万ドルを投じて、2013年5月に生産を再開した。年産能力は 4万台だが、2014年の生産台数は 1万台未満。Spin の国内販売は 8,412台、輸出は 3,000台だった。販売網の未整備で販売が想定通り伸びず、部品調達網も不十分で生産コストが増加し、収益を圧迫していた。

 

VW:2017年頃までに新工場建設を計画

 VWは2017年頃までにインドネシアで工場を新設する計画とされる (2015年2月報道)。年産能力、投資額、生産車種、国産化率等は不明。VWは2014年に工場建設を開始する予定だったが、ルピア安の進行を理由に延期している。

 

BMW:2015年にX6, 7 Series, X5M, X6Mを投入

 BMWの2014年のインドネシアでの販売台数は前年比62.4%増の5,600台。5 Seriesや X5 など新たなモデルを数多く投入したことにより、販売が拡大した。2015年も引き続き X6, 7 Series, X5M, X6M等を投入していく方針。

 

Proton:インドネシア企業とインドネシア国民車の開発・生産で協力

 マレーシアの国民車メーカーProtonは2015年2月、インドネシアのPT Adiperkasa Citra Lestari (ACL) 社とインドネシア国民車の開発・生産に関して協力関係を構築するとの覚書に調印した。調印式はマレーシアで開催され、同国のナジブ首相、インドネシアのジョコ大統領、Protonのマハティール会長らが参列した。覚書は双方の意図を表明するもので、拘束性はない。今後は事業化調査を行うが、これにはインドネシアにおける開発・生産の可能性も含まれる。

 

 



大型商用車メーカー:日野、三菱ふそう、UDトラックスの動向

日野自動車:モジュール化により開発した中型トラックモデルを発表

 日野自動車は2015年1月、モジュール化による市場適格車 (同社は市場ごとに異なるニーズに合わせたモデルを「市場適格車」と呼称している) の第1号モデルをインドネシアで発表した。新モデルの生産を海外で立ち上げるのは、日野にとって初めて。同国での販売の半数を占める中型トラック 500シリーズの重量車で、中型車のキャブと大型車の足回りを組み合わせた。
 日野自動車は2012年4月に公表した中期経営計画で、モジュール化による市場適格車の開発を進めると表明。車両をコア部品とユーザーの要望に応じて変更される周辺部品とに分割し、コア部品を共通化して日本で集中生産し、周辺部品を中心に現地調達を増やして、多様なモデルを短期間で提供する。

 

三菱ふそう:インド製の新興国向け戦略車を発売、マイクロバスを投入

新興国向け 戦略車を発売  Daimler 傘下の三菱ふそうは2014年9月、新型FUSO FJ (GVW25t) およびFUSO FI (GVW12t) のインドネシアでの販売を開始した。アジア・アフリカ向け戦略車で、インドにあるDaimler India Commercial Vehiclesの工場で生産されている。同戦略車は既にケニア、スリランカ、ザンビア、タンザニア、ジンバブエ、バングラデシュ、ブルネイに投入しており、インドネシアは8カ国目。
マイクロバスを 投入  三菱ふそうは2014年11月、マイクロバス Espasio をインドネシアに投入した。小型商用車 Colt Dieselシリーズ (日本名:Canter) の FE 71 Long Bus chassis をベースとする。乗車定員は17名。公共交通機関、通学バス、企業向け。販売価格は3億9,200万ルピアから。

 

UD Trucks:東カリマンタン州に部品倉庫、東ジャワ州に販売・整備拠点を開設

 Volvo Group 傘下のUD Trucks は、2014年9月までに鉱山向け大型トラック需要の多い東カリマンタン州に部品倉庫を建設。大型トラック Questerの鉱山向け車型の部品を迅速に供給する。経済が発展する東ジャワ州では、2店舗目となる販売・整備拠点を開設。同州で物流効率の向上を支援し、成長需要を取り込む。UD Trucksはこれまでに22の販売拠点、整備拠点や部品倉庫を含めると44拠点を展開している。

 

 



LMC Automotive 生産予測:インドネシアの生産台数は2018年に158万台となる見込み

(LMC Automotive社、2015年1月予測)

インドネシアのグループ別ライトビークル生産予測 インドネシアの2014年の生産は前年比8.5%増の1,177,979台となり、過去最高を更新した。

 しかし、LMC Automotiveは2015年1月、インドネシアの生産台数に影響する国内販売と輸出の従来の見通しを下方修正した。その理由は、原油等の商品価格の下落や燃料の値上げにより市場が衰退していることと、輸出先の最新の需要見込みに基づいて輸出台数の見通しが引き下げられたためである。輸出モデルの中では、トヨタAvanza、ホンダFreed、スズキErtiga等の2015年または2016年以降の輸出見込みが下方修正された。

 ただ、中長期的には成長が見込まれる市場であるため、メーカー各社は生産拡大を続ける見通し。LMC Automotiveの予測によると、2015年のインドネシアの生産は前年比9.2%増の1,286,682台。2016年から2018年までは毎年6~8%増加し、2018年には1,579,035台となる見込み。

インドネシアのブランド別ライトビークル生産予測

(台)
SALES GROUP GLOBAL MAKE 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018
Total 963,639 1,085,535 1,177,979 1,286,682 1,388,334 1,480,227 1,579,035
Toyota Group Toyota 424,810 467,371 403,917 380,314 402,319 427,920 455,395
Daihatsu 174,131 214,055 271,643 277,801 299,017 319,795 342,373
Hino 2,425 3,207 4,527 12,989 14,352 14,981 15,244
Toyota Group sub-total 601,366 684,633 680,087 671,104 715,688 762,696 813,012
Honda Group 63,855 76,681 158,892 205,011 229,104 245,194 262,849
Suzuki Group 98,863 132,465 128,015 155,936 204,628 217,752 232,236
Renault-Nissan Group Nissan 72,068 67,139 67,875 67,164 71,158 73,786 77,354
Datsun 0 0 19,316 44,931 50,638 54,508 58,913
Dacia 0 23 147 78 89 100 110
Renault-Nissan Group sub-total 72,068 67,162 87,338 112,173 121,885 128,394 136,377
Mitsubishi Motors 82,213 74,053 80,146 101,882 71,574 76,814 82,237
Isuzu Motors 19,145 13,189 12,175 12,437 13,824 14,751 15,570
Daimler Group Fuso 12,508 14,436 12,767 9,872 10,544 11,300 12,062
Mercedes-Benz 3,280 2,816 2,125 1,853 1,989 2,118 2,270
Daimler Group sub-total 15,788 17,252 14,892 11,725 12,533 13,418 14,332
General Motors Group 0 11,850 10,928 11,024 12,102 13,325 14,185
Tata Group 0 0 0 2,807 3,822 3,984 4,105
BMW Group 1,886 2,288 2,218 1,799 1,912 2,024 2,165
Hyundai Group 6,136 3,948 2,456 617 646 686 731
PSA Group 0 18 20 155 145 147 150
Mazda Motors 0 747 812 12 12 12 12
BAIC Group 810 746 0 0 0 0 0
Volkswagen Group 0 0 0 0 459 1,030 1,074
Geely Group 1,233 503 0 0 0 0 0
Chery Group 276 0 0 0 0 0 0
Source: LMC Automotive "Global Automotive Production Forecast (January 2015)
(注) 1. データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2. 本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要となります。
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