48V電源ハイブリッド:欧州各メーカー2016年以降一斉に製品化

オートモーティブワールド 2015講演/低コストで低燃費を狙う本命技術

2015/02/02

要 約

コストバランスよく、燃費大幅向上を狙う技術として、欧州各メーカー、サプライヤーが2016年以降の製品化をめざして一斉に48V電源のハイブリッドシステムを開発している。2015年のオートモーティブワールドでは、BOSCHとValeoの2社が専門セミナーで48V電源ハイブリッドシステムについて講演した。48V電源ハイブリッドは、高電圧ハイブリッドに比べ低コストながら10~15kWのジェネレーターモーターで回生とブーストを行う。また消費電力の大きいクーリングファンやEPSユニット等の電装品を高電圧化することで損失を減らすことも可能で、7~20%燃費向上を狙っている。また、様々な技術との組み合わせでさらなる燃費向上も検討している。本レポートではその講演内容より48V電源の特徴と、両社が開発中のハイブリッドシステムを紹介する。

Jochen Schaeferling氏
BOSCHプロダクトマネジメント&マーケティング ガソリンシステム
Jochen Schaeferling氏
Michel Forissier氏
Valeoパワートレインシステムダイレクター
Michel Forissier氏


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 人とクルマのテクノロジー展2014 ハイブリッドシステムの出展



48Vシステム開発の背景とニーズ

電動化による消費電力増加への対応

First reason for 48V
資料:Valeo

 現在の自動車の電装システムでは実際に使える電流は300Aが限度と言われており、14V(12V)システムの場合は4kWが限度となっている。最近の車両では、パワーステアリングは油圧から電動に代わり、エアコンコンプレッサーも電動化が始まり、プレミアムカーは様々な電動装備が増加しており、4kWに収まらなくなってきている。これに対し電装品の電圧を48Vに上げることで、電流を下げることが可能になり、消費電力の増大に対応が可能になる。電流が下がることで損失が減り、燃費向上にもつながる。今後さらに燃費向上のための電動化を進めていくためには、高電圧化への対応が必要となってきていると、ValeoのパワートレインシステムのダイレクターMichel Forissier氏は解説している。


欧州燃費規制:2021年CO2 排出量目標95gの達成

Second reason for 48V
資料:Valeo

 欧州での2015年時点の燃費規制は、メーカーごとに販売した新車のCO2総平均値(欧州公式認証試験NEDCのCO2値)を130g/km以下と定めている。さらにこの規制値は2021年には、95g/kmまで下げることが決定されている。現在のVW Golf欧州仕様の最も燃費の良いディーゼルの1.6TDI仕様が99g/kmで、ハイブリッド車のトヨタプリウス欧州仕様がかろうじて、89g/kmで規制値をクリアしているレベルである。まだ数年あるとは言え95 g/km の規制値はとても高いレベルである。特にSUVや高級車を含めたラインナップを持つプレミアム車メーカーがメーカー平均値を95g/km以下にすることは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの燃費改善だけでは到底不可能であり、ハイブリッド化、電動化が必要となっている。


 

 



BOSCH 社の48Vハイブリッドシステム

 BOSCHの48Vシステムについて、プロダクトマネジメント&マーケティングのJochen Schaeferling氏の技術プレゼンテーション内容を以下に紹介する。

シンプルなシステム構成

48V-Boost Recuperation System
資料:BOSCH

 48Vシステムでは、右図の右側部分の従来の電装品とバッテリーが14Vシステムのままで、左側にジェネレーターモーターとバッテリーが48Vシステムで追加される構成である。その2つのシステム間をDC/DCコンバーターでつなぎ、48Vと14Vの両方向相互に降圧と昇圧ができる仕組みになっている。

 

14Vシステムの4倍のエネルギー回生が可能

 右図グラフに示すように、従来の14V鉛電池のシステムに比べて、48Vシステムでは約4倍のエネルギー回生が可能になる。BOSCHのJochen Schaeferling氏の解説では、14Vに対し48Vシステム化により、欧州認証試験のNEDCモード(New European Driving Cycle)においては、従来の14Vで50Wh前後の回生電力が200Whに、同じくWLTCモード(Worldwide harmonized Light vehicle Test procedures)では、100Whが400Whを上回るエネルギー回生ができるという。


回生・ブースト用モーター出力の向上

Evolution of Electrification
資料:BOSCH

 現在の14Vマイルドハイブリッドの回生充電用のジェネレーター出力は3kW前後までとなっている。ここで48Vシステムを採用することで、ジェネレーターモーター出力を約15kwまで大きくすることができる。モーターの出力が15kWになると、ある程度のEV走行が可能になる。BOSCHのJochen Schaeferling氏の解説では、このシステムで10km/hまでのEVクリープ走行、30km/hまでの加速を含むEV走行、60km/hまでのEV一定速走行が可能になるという。


BOSCH48Vシステムの構成部品

 オートモーティブワールド2015国際カーエレクトロニクス展に展示された、BOSCH社開発中の48Vハイブリッドシステムの構成部品を紹介する。

 

48Vインバーター付きBRSモーター
48Vインバーター付きBRSモーター(BRM)
48Vリチウムイオンバッテリー
48Vリチウムイオンバッテリー
パワーコンバージョンユニット
パワーコンバージョンユニット(PDU)
DC/DCコンバーター(48V-14V)
ECUエンジンコントロールユニット
ECUエンジンコントロールユニット

 

4タイプの48Vシステム

 BOSCHのシステムとしては、ジェネレーターモーターの配置方法で4つタイプの紹介があった。

48V-Powertrain Topologies
資料:BOSCH


① エンジンマウントタイプ(ICE mounted : e.g.belt)
従来のエンジンに取り付けられている14Vジェネレーターの代わりに48Vで10kWのジェネレーターモーターを取り付け、ベルトで駆動する。ベースモデルからの変更が少なくトランスミッションやエンジンの基本構造を変更せずにすむため、コストが安い。従来の14Vマイルドハイブリッドに比べて、ジェネレーターモーターの出力を10kW程度に向上することで、回生とブーストで使える範囲が大きく向上できる。ただし、ジェネレーターモーターはエンジンのクランクシャフトと常にベルトで繋がっているため、エンジンを停止してEV走行することはできない。このシンプルなシステムでもCO2を9-12%改善できるという。

② クランクシャフトマウントタイプ(Crankshaft mounted : ISG )
クランクシャフトの同軸上にジェネレーターモーターを配置することで、さらに一回り出力を15Kwまで大きくすることができる。エンジンとモーターの間にクラッチを設ければ、状況に応じてエンジンを停止することで、エンジン回転分のエネルギー節約ができるが、今回の図示ではそのためのクラッチの設定はないようである。このシステムで、CO2を9-13%改善する。

③ トランスミッションマウント(Transmission mounted : eMT/eAMT/eCVT)
トランスミッションから10-15kWのジェネレーターモーターを駆動するシステムで、駆動方法はベルトとギヤの両案が考えられる。エンジンとトランスミッションの間にクラッチが設定されており、必要に応じてエンジンを停止してエネルギーロスを節約することができる。またエンジンを止めた状態でモーターだけでEV走行することが可能になる。このシステムでCO2を12-19%改善する。

④ トランスミッションマウント(Transmission mounted : eDCT)
基本は上記③のシステムと同じ構成で、トランスミッションがeMT/eAMT/eCVTであったのに対して、 DCTと組み合わせたシステムである。48V15kWのジェネレーターモーターをトランスミッション内の駆動軸に接続する。詳しい説明はなかったが、ホンダフィットのハイブリッドi-DCDと同様に、DCT奇数段シャフトに配置されていると思われる。フィットのi-DCDが173Vという高電圧システムで22kWのモーターを駆動するのに比べ、48Vシステムでも15kWのモーターが使えることが特徴である。このシステムでCO2を12-19%改善する。

 

 



Valeo社の48Vハイブリッドシステム

 Valeoの48Vシステムについて、パワートレインシステムのダイレクターMichel Forissier氏の技術プレゼンテーション内容を以下に紹介する。

STEP1:ベルトスターターゼネレータータイプ

STEP1
資料:Valeo 資料:Valeo


 このシステムは従来のエンジンにマウントされた14V(12V)オルタネーターの代わりに、ベルト駆動の48Vジェネレーターモーターを取り付け、48VバッテリーとDC/DCコンバーターを搭載した一番シンプルなシステムである。従来の電装系は14V(12V)系統でそのまま残し、エネルギー回生とブーストのみ48Vで制御し、従来の14V(12V)系統と48V系統を併設する。

 このシステムで、Bセグメント車ではNEDCモードで15%、WLTCモードで12%の燃費向上が見込める。

 

STEP2:ギヤボックスモータージェネレータータイプ(48V beltless engine)

STEP2 STEP2
資料:Valeo 資料:Valeo


 エンジンに取り付けられていたスターター、ジェネレーター、ウォーターポンプ、エアコンコンプレッサー等を取り払い、ウォーターポンプ、エアコンコンプレッサーはモーターで駆動し、ジェネレーターモーターをトランスミッション駆動としたシステム。モーターでの駆動時は、エンジンとの間のクラッチをきることで、エンジンを停止して完全なEV走行が可能になる。エアコンコンプレッサーは48Vモーターで駆動し、さらに従来14V(12V)で使用していたユニットのうち、消費電力の大きい電装品も48Vに変更することで、高電圧化のメリットとして、同じ消費電力でも電流を減らすことで損失が減るため、効率向上が図れる。

 

15%の燃費向上(CO2低減)が可能

STEP2
資料:Valeo

 Michel Forissier氏の解説によれば、BMW750での開発実験例では、右図のようにコンベンショナルなシステムでCO2発生量が219g/kmだったものが、ベルト駆動スタータージェネレーターシステムで6.8%の改善、ギヤボックス駆動ジェネレーターモーターに電動エアコンコンプレッサーの採用で、15.5%改善するという。


 

STEP3:48Vブースター付きハイブリッド

STEP3
資料:Valeo

 STEP2に加えて、電動スーパーチャージャーで過給するシステム。実車実験で、20%の燃費向上とディーゼルのNOxを7%低減可能としている。

 また、Valeo社は、さらなる発展形として48VマイルドハイブリッドにメカニカルフライホイールのKERSシステムを組み合わせた技術の開発も進めている。


 

システムコストの目標はディーゼル並みを狙う

STEP3
資料:Valeo

 現在のフルハイブリッドは約1800ユーロのコストが必要で、そのため欧州ではなかなか普及が進まない状況である。ディーゼルエンジンがガソリンエンジンに対しコストアップが約800ユーロであることから、ディーゼル並みのコストに抑えることが、普及させる条件になると、ValeoのMichel Forissier氏は講演で語っている。ただし、コストの中でバッテリーの割合が非常に大きく、バッテリーのテクニカルコストが下がってきているが、システムとしてバッテリー容量をどれだけ小さくできるかが、800ユーロで収まるかどうかのキーとなるとのことである


 

48Vシステムの将来

STEP3
資料:Valeo

 ValeoのMichel Forissier氏は48Vシステムの将来について、消費電力の大きい電装品の増加への対応として48V化が進むこと、エンジンからベルト駆動のコンプレッサーやポンプをなくしそれらの電動化が進むこと、そしてCO2低減に対するコスト効率は高電圧ハイブリッドシステムに比べて、48Vシステムが優れていることから、48Vシステムへのニーズが高く、その技術はさらに進化していくだろうと語り講演を締めくくった。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>