中国/タイのテレマティクス最新事情:Telematics Japan 2014

中国はインターネット三大巨頭時代へ、タイでのテレマティクスの実用例

2014/10/31

要 約

 Telematics Updateが主催する、Telematics Japan 2014が2014年10月15、16日両日にわたってヒルトン東京で開催された。本レポートでは、中国・タイ両国における最新のテレマティクス事情、エンドユーザーがどのようなコンテンツを求めているかの観点からの、講演内容についてまとめた。

中国:インターネット 三大巨頭BAT時代へ
 従来、地図サービス会社(NavInfo(四維図新)、AutoNavi(高徳)など)が中国のテレマティクス市場を引っ張ってきた。しかし、2013年以降、スマートフォンの急激な普及と地図アプリの無料化、中国のインターネット三巨頭BAT(百度(Baidu)、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent))による地図サービス会社の買収・出資という大きな変化が起きた。今後、このBATが中国のテレマティクス市場を引っ張っていくことになる。

タイ王国:タクシーのGPS情報を使った渋滞情報提供サービス
 豊通エレクトロニクスタイランドは、TSquare Trafficという渋滞情報サービスを、バンコク市内を中心に2012年から開始。政府機関による精緻な渋滞情報が得られないため、約9千台のタクシーにGPSをつけ、その位置情報を数秒おきに集め・分析することで、独自の渋滞情報を提供。2015年にはインドネシアでもサービスを開始する計画。

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進化する中国のテレマティクス事情

講演者:パイオニア株式会社 カーエレトロニクス事業統括部 テレマティクス事業部 田島 惠介氏

アジェンダ

中国では、従来地図サービス会社がテレマティクス市場を先導してきた。巨大IT企業の参入により、プレイヤーが代わりつつあり、エコシステム(収益構造)の構造変化が期待される。
百度(Baidu)、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent)などの巨大IT企業の参入で、配送管理、緊急路上支援など、テレマティクスを生かすO2O(Online to Offline: 注)連携サービスが今後どのように展開されるのか?
地図サービス会社の買収・合併の影響で中国のテレマティクスエコシステムはどのように変わっていくのか?

(注)オンライン上のサービスから、実際(オフライン)の店舗へ誘導するなどのサービス形態の総称。

 

中国でのテレマティクスの展開

中国テレマティクスの黎明期
(2002年から)
2002年にNavInfo(四維図新)が、中国でカーナビ用電子地図を商用化。続いてAutoNavi(高徳)も参入。両社合わせて、OEMで90%のシェアを持つ(2014年1月現在)。一方、携帯地図/ナビ市場のシェア(2014年第1四半期)を見ると、高徳地図が27.7%、百度地図が23.3%、谷歌地図が15.9%となっている。
(地図を作成する許可を得た)国家資格を持つ地図会社の選択と、その地図会社の品質、事業の継続性、地図の整備方針が、協業会社を選ぶポイントであった。
現在は合計12社が国家資格を持っている。
地図アプリの急成長と無料化 2013年1月:AutoNavi(高徳)のユーザーが1億人を突破。NavInfo(四維図新)は2012年頃、主要顧客のNokia、日系自動車メーカーの低迷から影響を受けていた。
2013年8月:百度ナビと高徳ナビが相次いで無料化。背景には中国でスマートフォンの販売が急増したことにある。2012年の第1四半期にはスマートフォンの販売台数は約3100万台で、携帯電話全体の5割弱を占めていたが、2014年の第1四半期にはスマートフォンが約1億台と全体の9割を超えるまでになった。

 

IT三大巨頭 (BAT) の時代:百度(Baidu)、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent)

BATによる

電子地図会社

の買収

・百度(Baidu):長地万方(ブランド名:道道通)を2013年9月に完全子会社化。
・阿里巴巴(Alibaba):AutoNavi(高徳)を2014年2月に完全子会社化。
・騰訊(Tencent):NavInfo(四維図新)の株式11.28%を2014年5月に購入し第2位株主に。
BAT3巨頭の時代へ

BATのサービス範囲

BATは、地図サービス、ソーシャルネットワークサービス、検索機能を(無料で)提供することで、自社のオンライン店舗などに誘導して、そこで有料のサービス、物品の販売などを行っている。
(注:インターネット大手Googleも同様に、世界各国で地図サービスからテレマティクスに参入しようとしているが、中国では同社は2010年に撤退している)。

  百度(Baidu) 阿里巴巴(Alibaba) 騰訊(Tencent)
オンライン
















オフライン
(自社サイトへの)
誘導
地図
ソーシャルネットワーク  
検索
コンバージョン 団体購入
電子商取引  
タクシー配車  
生活情報
旅行
決裁 決裁システム
(実店舗など)
オフライン上の資源
自社店舗など
提携業者
波及する店舗・サービス
フィードバック 顧客による評価の共有

(資料)パイオニアプレゼンテーション資料よりMarklines作成。

百度(Baidu)のテレマティクス分野へのアプローチ

百度(Baidu)は、「Baidu Inside」と銘打って、メーカーにプラットフォーム・技術の提供をしていく(2014年発表)。
具体的にはクラウド技術、音声認識サービス、販売ネットワーク、データ、位置情報、などをメーカーに提供。メーカーは、その技術を使った製品を、「Baidu Inside」マークをつけて販売していく。家電製品などのネットワーク化などを支援していくことが一つの狙い。自動車関連ではヘッドアップディスプレイなどが検討されている。
メーカーの立場から言えば、魅力的に映るシステム。「Baidu Inside」の文字が商品に入ってしまうけれども。

 

阿里巴巴(Alibaba)のテレマティクス分野へのアプローチ

自動車業界との連携 阿里巴巴(Alibaba)は、2014年2月にAutoNavi(高徳)を10.45億ドルで完全子会社化。
2014年7月には、上海汽車とスマートカー分野での戦略提携を発表。
スマートフォンOS GoogleのAndroidのオープンソースを利用したOS 阿里雲(Aliyun)を開発(注)。
将来 Aliyunを使って車載OSを開発し、テレマティクス分野に参入してくるのではないか?
(注) Googleは、Aliyun OSはAndroidプロジェクトの成果を利用しているが、互換性のないパージョンだとして、同OSを搭載した台湾Acer社のスマートフォンの発売中止を2012年に求めた。

 

騰訊(Tencent)の路宝盒子(Lubao Box)

路宝盒子(Lubao Box):OBD-IIコネクターに差しこみ、Bluetoothを経由してスマートフォンと接続し、車両の情報を収集する機器。2014年5月に発表され、同年10月に正式発売。発売前であった9月時点の予約台数は42万台。
専用のアプリを通じて、自動車の故障状況、ガソリン残量、アクセル量などを収集・確認ができる。ドライビングスコアをTencentのソーシャルネットワークサービスを通じて共有できたり、救急要請も可能。利用者の情報を使って、中国21都市の道路状況も提供する。
タクシー会社、保険会社、ロードサービス会社とも提携。

 



タイ王国での事例:高品質の交通情報サービスを活用した交通渋滞への対応

講演者:豊通エレクトロニクスタイランド General Manager Itti Rittaporn氏

TSquare Traffic:バンコクでタクシーのGPS情報を使った渋滞情報提供サービス

TSquare Traffic アジアの大都市では渋滞が大きな問題となっているが、政府は精度の高い渋滞情報を収集するインフラを持っていない。民間がどのように収集するのかが課題となっている。
豊通エレクトロニクスタイランド(TTET)では2011年から、この課題に取り組んだ。2012年にはスマートフォン向けに渋滞情報の配信を開始。2013年には車載器向けに日本/中国で標準採用されているVICS/RTIC方式で配信を開始した。
TSquare TrafficのタクシーのGPS情報を使った渋滞情報提供システム バンコク中心部の渋滞情報
TSquare TrafficのタクシーのGPS情報を使った渋滞情報提供システム バンコク中心部の渋滞情報

 

交通流データ収集方法 約9千台のバンコク市内のタクシーにGPSをつけて、データを収集。3秒または5秒おきにデータを集め、日に最大6千万のデータを集めている。また、250台のトラックにもGPSをつけて郊外地域のデータも集めている(5千台に拡大予定)。これらの情報をサーバーに集め、分析して、インターネットやFMを通じて、消費者の車載ナビ、スマートフォンなどに提供している。
バンコク市内の主要な道路の情報を集め、70%の精度を確保。政府の渋滞情報を使って、無料で展開している同業他社は40-50%程度の精度。
(TTETも一部は無料で使えるようにしている)。
洪水情報 政府機関からの洪水の情報を得て、水没している道路の状態も提供。
今後の展開 天頂衛星を利用して位置情報をより正確にすることで、車線ごとの渋滞情報の提供を目指す。今後実証実験を行う予定。
2015年にはインドネシアに展開する予定。また、他の東南アジア諸国、マレーシア、フィリピン、などにも拡大していきたいとしている。
洪水情報の提供
洪水情報の提供

 

協業の模索

 TTETは TSquareを活用して、テレマティクス業界、コンテンツ業界との協業を模索している。テレマティクス業界向けには、渋滞情報を集める過程で生まれた、GPS情報、交通流情報の提供、もしくは分析結果の提供が可能だとしている。また、コンテンツ業界むけには、コンテンツ(駐車場、レストラン情報など)をTSquare上に表示することを提案。

テレマティクス業界向け ビッグデータの提供 位置情報;日に最大6千万件のGPSデータ。
移動時間データ:3年間の交通履歴データに基づくデータ。
ビックデータ分析サービス 1.タクシーの平均スピード分析:渋滞指標、移動時間予測
2.タクシーの乗客人数、乗降場所、需要地域、需要予測
3.道路ごとのタクシースピード
4.異常・事故地点分析(平均スピードとの乖離分析による)。
5.交通量予測。
コンテンツ業界向け ドライバーの車内での行動分析 500人のスマートフォンを持ったドライバーのアンケート網を整備。ドライバーが車内で何を行っているのか?どんなアプリを使っているのか?渋滞中にどんなことを望んでいるのか?を調べることが可能。
コンテンツ提供パートナーの模索 (例)駐車場情報:TSQUARE上で、Nippon Parking Developmentと提携して、バンコク市内14箇所の駐車場の空き状況を提供。近いうちに100箇所まで拡大予定。
TTETが協業を模索している分野
TTETが協業を模索している分野

 

 

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>