インド(下)OEMの戦略:市場の将来性をにらんで、新型車を積極投入
低迷気味のTata/Mahindra、GM/Ford/VWもシェア拡大を目指す
2014/10/27
- 要 約
- Tata Motors:幅広く新型車を投入
- Mahindra & Mahindra:UVラインアップを強化、米国技術センターを開設
- 現代自動車:欧州向け数万台の輸出を減らしてインド国内販売に注力
- トヨタ:Etiosベースの中型セダンを計画
- Renault・日産:ダットサンGOを投入するも、販売は苦戦
- ホンダ:2014年4~9月期に、47.9%増の88,200台を販売
- いすゞ:インドでピックアップトラックを生産、MPVも開発するとの報道
- GMとFord:シェアが下降しているインド市場で巻き返しを計画
- VW:今後数年の間にインド事業に150億ルピーを投資
- 欧州のLuxury 3ブランド:富裕層の需要に支えられ販売好調
要 約
本レポート「インド(下)」は、参入している各OEMの動向について報告する。
参入している自動車メーカーは、インド市場の成長性は大きいと見て、積極的に新型車を投入、あるいは中長期でインド事業を強化する方針を発表している。ここ3~4年シェアが伸び悩んでいる地場系のTata Motors、Mahindra & Mahindra、欧米自動車メーカーのGM、Ford、VWもシェア拡大を目指しており、さらなる競争の激化が予想される。
シェア第1位のMaruti Suzukiは、2014年10月に中型車CIAZを発売。今後も小型車が事業基盤になるが、SUVやMPVのラインアップを拡充、LCVの投入も検討する。現代自動車は、2014-15年度から欧州への輸出を減らして、インド市場向け新型車を増産する。
地場系のメーカーでは、Tata MotorsはNanoの販売が不振で、他の新型車も不足してシェアを落としてきたが、幅広い車種を投入する方針に転換した。Mahindra & Mahindraは、得意分野のUVを強化している。
日系自動車メーカーでは、ホンダがここ1~2年の間に投入した新型車の成功により販売を伸ばしている。トヨタは近くIMVシリーズのSUVとミニバンを更新し、また中型乗用車を開発中とされる。日産は、2014年3月に新興国向け戦略車ダットサンGOを投入したが、2014年4~9月の販売は8,503台にとどまっている。いすゞは、2016年からピックアップトラックを現地生産する計画。
欧米自動車メーカーのGM、Ford、VWは、3社ともシェアを下げているが、それぞれインド市場に適合した新型車を投入し、巻き返しを計画している。
Maruti Suzukiが2014年10月に発売した中型セダンCIAZ (2014年2月に開催されたAuto Expo 2014より、以下の写真も同様) | Tata Motorsが2014年8月に発売したCompactセダンZest |
トヨタが5月に発売したEtiosベースのCrossover車Etios Cross | GMがFord EcoSportやRenault Dusterに対抗して開発したAdraコンセプト(Auto Expo 2014より) |
なお、Maruti Suzukiの最近動向、およびインド市場の概観、各社のマーケットシェアおよびSIAM(Society of Indian Automobile manufacturers)のセグメント分類については、下記のレポートをご参照ください。
関連レポート:
スズキ:インドで300万台販売を目指し、東南アジアでも現地生産化 (2014年9月掲載)
インド(上):国内販売は2014年6月から前年超え、4~9月は1.2%増の回復 (2014年10月掲載)
Tata Motors:幅広く新型車を投入
Tata Motorsは、インド最大の財閥Tata Group傘下の総合自動車メーカーで、商用車では5割前後のシェアを誇る。2013-14年度の売上高は389億ドル。2008年に、Jaguar、Land Roverを買収した。
2009年に、超低価格車Nanoを発売したが期待した成果が上がらず、他に有力な新型車を出せなかったため、Passenger Vehicleの販売台数は、2011-12年度の370,834台(シェア14.2%)から2013-14年度は198,812台(シェア7.9%)に急減した。
Tata Motorsは、乗用車を幅広く投入する方針に転換し、2014年にIndicaベースのセダンZest、ハッチバックBoltを発売する。また、価格を30万~40万ルピーに抑えた新しい量販車からPremiumハッチバックまで幅広く新モデルを投入する計画。
Tata Motors:幅広く新型車を投入
Movus | 2014年6月に、新しいエントリークラスUVのMovusを発売した。全長4421mm、全幅1780mm、全高1940mm、乗車定員は7~9人。2200ccディーゼルエンジンを搭載し、燃費は15.6km/L。Ex-showroom価格(注1、2)は69.9万ルピーから。Sumo Grandeの後継車として発売した。 |
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Zestセダン | 2014年8月に、CompactセグメントのセダンZestを発売した。全長3995mm、全幅1706mm、全高1570mmで、1193ccターボガソリンエンジンまたは1248ccターボディーゼルエンジンを搭載。変速機は5速MTを標準装備するが、ディーゼル車はMagneti Marelliと共同開発した5速AMTも設定する。Ex-showroom価格は、ガソリン車は46.4万ルピーから、ディーゼル車は56.4万ルピーから。 |
Boltハッチバック | 2014年秋に、ZestベースのハッチバックBoltを発売する。全長とエンジンはZestと共通、変速機は5速MTを搭載する。価格は、42万~66万ルピー。現在販売しているハッチバック車 Indica Vistaの後継車とされる。 |
Nexon Concept | Delhi Auto Expo 2014に、Compact SUV "Nexon Concept"を出展した。全長を4m未満とし、低率物品税の対象となるSUVを開発する計画。 |
新しいCompact 量販車 | Tata Motorsは、新しい量販車を開発する。Nanoの上にランクされるが、価格を30万~40万ルピーに抑えてMaruti Wagon Rなどに対抗する狙いで、2015年にも投入する見込み。Nanoの増産のために月2万台の設備を構築したSanand工場を、有効活用する狙いもあるとされる。 |
Premium ハッチバック | Tata Motorsは、Boltより上級のハッチバックを、2016年末~2017年初に投入すると報道されている。新プラットフォームと新しいガソリンおよびディーゼルエンジンを開発し、このハッチバック車および派生モデルに搭載する計画。 |
(注) 1. | Ex-showroom価格は、ディーラーの仕入れ価格 + マージン + 税金で、登録費用や保険料を含まない。 |
2. | Mahindra車の価格は、Mumbai市での価格。他は全てDelhi市での価格。 |
Mahindra & Mahindra:UVラインアップを強化、米国技術センターを開設
Mahindraは、インドのUVトップメーカー。2013-14年度のUVセグメントで41.7%、2014年4~9月期は36.6%のシェアを持つ。2010年に、Reva Electric Vehiclesを買収し、EVにも注力している。2011年には、韓国のSUVメーカーSsangyong Motorを買収した。
2014年9月に新型Scorpioを発売し、他にUV 3車種を開発中。
Mahindraは、今後10年以内に、トップレベルのグロ-バル自動車メーカーに成長することを目指している。2014年5月には、米国ミシガン州に技術センターを開設した。
Mahindra & Mahindra:新型UV 4車種を開発
新型 Scorpio | SUV Scorpioは、Mahindraが2002年に発売し、累計45万台を販売した人気車種。2014年9月に、新型車を発売した。トランスミッション、フロントサスペンションなどを含めプラットフォームを刷新した。2200ccディーゼルエンジンを搭載。GPS内蔵の、タッチスクリーン式インフォテインメントシステムなど最新装備を設定した。ベースモデル"S2"のMumbai 市でのEx-showroom価格は79.8万ルピーから。 |
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他にUV3車種を 開発 | さらに、2016年までに発売する予定のUV 3車種を開発している。Ford EcoSportに対抗するコンパクトSUV(2015年に発売予定)、2011年買収したSsangyongのX100とプラットフォームを共有するより上級のSUV、そして次期型Boleroの3車種。 |
北米技術センター | Mahindraは2014年5月、米国ミシガン州に、"Mahindra North American Technical Center (MNATC)"を開設した。当初約40名の技術者を採用し、Mahindraが世界市場で販売する車のプラットフォームを開発する。まずMPVを開発し、Mahindraは、2017年からインドをはじめ世界で販売する計画。 |
Chakan工場に 追加投資 | 2014年8月、今後7年間に、Chakan工場に400億ルピーを追加投資すると発表した。400億ルピーの資金は、工場インフラの整備、商品開発、生産能力拡張などに向けられる。Chakan工場への累計投資額は800億ルピーとなり、生産能力は年75万台に増強される。 |
Mahindraは、Mahindraの全ての領域の自動車を、プレス、塗装工程から最終組立まで一貫して生産するとの構想で、Maharashtra州Chakanに新工場を建設し、2010年3月に生産を開始した(生産開始時の年産能力は30万台)。現在は、中大型商用車を中心に生産している。Mahindraは、Chakanの他に、Maharashtra州NashikとUttarakhand州Haridwarに工場がある。 |
現代自動車:欧州向け数万台の輸出を減らしてインド国内販売に注力
現代自動車は、インドでMaruti Suzukiに次ぐ第2位の自動車メーカーだが、輸出は第1位。2013-14年度に、インド国内で38万台販売、25.3万台を輸出した。しかし2014-15年度は、欧州向けのi10、i20の欧州向け数万台の輸出をやめて、インド国内の販売に注力する方針。インド国内向けに2014年1~8月に新型車4車種を投入したため、それら車種を生産する余力を確保。インド消費者の購入意欲が回復してきたと見て、インド市場に注力する。インド乗用車市場での2014年4~9月のシェアは、前年同期の15%から16.2%に上昇した。
欧州向けi10、i20は、インドからの供給を減らす分をトルコ工場とチェコ工場から供給する。現代自は、グローバルでの生産能力の有効活用を図るとしている。また、インド工場の労使関係は必ずしも安定していないため、現代自にとって重要な欧州向け供給が遅れたりすることのないようにとの配慮もあるとされる。
現代自動車:SUVやCompact/Miniセグメントの新型車を投入
Santa Fe | 2014年2月、新型(第3世代)Santa Fe SUVをAuto Expo 2014に出展し、発売した。これまで韓国から輸入してきたが、新型車からインドで生産する。7人乗り車で、2200ccディーゼルエンジンと6速MTまたは6速ATと組み合わせる。 |
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Xcent | 2014年3月、CompactセグメントのファミリーセダンXcentを発売した。ハッチバックの「グランドi10」のセダンタイプ車で、全長3995mm。1100ccガソリンエンジンと、1100ccターボディーゼルエンジンを設定。5速MTと組み合わせるが、ガソリン車には4速ATも設定。価格は、46.6万ルピーから73.8万ルピー。 |
Eon 1.0L車 | 2014年5月、MiniセグメントのハッチバックEonに、従来の800ccエンジン車に加えて 1.0L車を設定し発売した。変速機は5速MT。デリーでのEX-Showroom価格は38.3万ルピーから。Eonは全長3495mmのMiniセグメント乗用車。 |
Elite i20 | 現代自が、2014年10月Paris motor showに出展した第2世代i20のインド仕様車を8月に発売。Premium感を強調するため、インド販売車にはEliteのサブネームを付けた。全長3985mmで、1.2Lガソリンエンジンと1.4Lディーゼルエンジンを設定。5速MTと組み合わせる。デリーにおけるEx-showroom価格は、ガソリン車が489,900ルピーから、ディーゼル車が609,900ルピーから。 |
トヨタ:Etiosベースの中型セダンを計画
トヨタは、インドで年産31万台の生産能力を持つ。乗用車のCorolla Altis、Camry、Etios sedan、EtiosベースのLiva hatchbackを生産。またIMVシリーズのInnova(MPV)、Fortuner(SUV)を生産している。PriusとLand Cruiser Pradoを輸入販売。
しかし2013-14年度のPassenger Vehicles(IMVシリーズを含む)の販売台数は、2014年3~4月に賃金交渉が難航し1カ月間インド工場の操業を停止した影響もあり、前年度の165,504台から128,811台に減少、シェアも6.2%から5.1%に下降した。
2014年5月に、新型Corolla AltisとEtiosシリーズのCrossover "Etios Cross"を発売した。
インドでの今後の計画としては、2015年にも次期型IMVを投入、またCorolla AltisとEtiosの中間となるMid-sizeセダンを開発する計画とされる。また、2020年をめどに、TNGA(Toyota New Global Architecture)計画の一環として新しいディーゼルエンジンを投入するとされる。
トヨタの商品計画:IMVシリーズを更新、新型中型セダン開発を計画
Corolla Altis | トヨタは、2014年5月、新型Corolla Altisを発売した。1800ccガソリンエンジンと1400ccディーゼルエンジン、CVTまたは6速MTを搭載する。Ex-showroom価格は、ガソリン車が119.9万~168.9万ルピー、ディーゼル車が130.7万~166.8万ルピー。 |
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Etios Cross | 2014年5月、EtiosシリーズのCrossover車Etios Crossを発売した。既にブラジルで発売し、好評とのこと。全長3895mm、1200cc/1500ccガソリンエンジンまたは1400ccディーゼルエンジンを搭載し、若い顧客層をターゲットとする。Ex-showroom価格は、ガソリン車59.5万~73.5万ルピー、ディーゼル車71.4万~74.4万ルピー。 |
IMV | トヨタは、IMVシリーズを2015年にも更新する計画。インドでは、SUV FortunerとミニバンInnovaを生産・販売している。 |
新型中型セダン | トヨタは、インド市場向け新型中型セダンを計画中と報道されている。新型車は、Corolla AltisとEtiosの中間の位置づけとし、Etiosのプラットフォームで開発、2016年末の発売を見込む。 |
このセグメントは、SIAMの分類では"Mid-size"となり、2014年4~9月の総販売台数は77,408台で、うちホンダCityが35,047台、現代自のVernaが17,857台。 |
Renault・日産:ダットサンGOを投入するも、販売は苦戦
Renault・日産は、2013-14年度に、インド工場で22万台生産し、インド国内販売は9.6万台だが、13.1万台を輸出した。
日産は、2014年3月、インドで「ダットサンGO」を発売した。車両サイズ(全長3785mm)やエンジン排気量(ガソリン1200ccエンジン)はCompactセグメント並みだが、価格はその下のMiniセグメント並(デリー市のEx-showroom価格は31.2万ルピーから)に設定した。日産は、3車種のダットサンをインドに投入する計画で、「ダットサンGO」に加えて、2014年後半に7人乗り「ダットサンGO+」、2015年には超低価格車(20万~30万ルピーとされる)を投入する。
しかし、2014年4~9月の販売台数は8,503台にとどまった。同期間のTata Nanoの販売台数は6,365台で、7月と9月にはNanoの販売がダットサンGOの販売を上回った。販売低迷の理由としては、Tata Nanoと同様に「低価格車」のイメージが裏目の出ているとの報道もある。日産は、ダットサンブランド車のインド販売での比率を1/3から1/2へ引き上げ、乗用車市場でのシェアを2013-14年度の1.5%(2014年4~9月期は2.1%)から2016-17年度に10%に引き上げるとしている。
因みに、5月にインドネシアで発売した多目的車ダットサン「GO+ Panca」は、6~8月の3カ月で6,062台販売し、9月に販売を開始したハッチバック「GO Panca」も好評とされる。ダットサンブランド車は、販売する国別に開発されている。
Renaultは、2014年4~9月にインドで21,073台販売し(前年同期比31.9%減)、うち9割強が低価格SUVの Dusterであった。
ダットサンブランド車の販売台数
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | ||
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インド | Datsun GO | 3,433 | 2,691 | 1,992 | 1,097 | 607 | 1,098 | 1,018 |
インドネシア | Datsun GO+ Panca | 1,024 | 1,886 | 1,935 | 2,241 | - |
資料:MarkLines Data Center
日産のダットサンブランドの詳細については、マークラインズ市場・技術レポート日産自動車:新興国向け戦略車「ダットサン」をインドなど4カ国に投入(2014年4月掲載)をご参照ください。
ホンダ:2014年4~9月期に、47.9%増の88,200台を販売
ホンダは、ディーゼルエンジンを搭載するAmaze(2013年4月発売)、新型City(2014年1月発売)が貢献し、2013-14年度に前年度比82.8%増にあたる134,339台を販売した。さらに2014年7月に7人乗りMPV Mobilioを発売し、2014年4~9月期に前年同期比47.9%増の88,200台を販売した。ホンダは、インドで2016年に30万台販売を目指している。
2014年に年産12万台の第2工場でAmazeの生産を開始、7月にはCityの生産も第1工場から第2工場に移管した。
ホンダは、2013年4月にCivicの生産を、12月にAccordの生産を中止した。販売が低迷したためで、当面は売れ筋車種のAmazeやCityの販売に注力する方針。また、2015年3月までに新型Jazz(Fit)を発売する。
ホンダの新型車投入
Brio (ハッチバック) | 2011年9月 | 1200ccガソリンエンジンを搭載。インドで現地生産。 |
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Amaze (Brioベースのセダン) | 2013年4月 | 1500ccガソリンエンジンと1500ccディーゼルエンジンを設定。 |
新型City | 2014年1月 | 全長4440mm。1500ccガソリンエンジンと1500ccディーゼルエンジンを設定。 |
Mobilio (BrioベースのMPV) | 2014年7月 | 7人乗りMPV Mobilioを発売。1500ccガソリンエンジンと1500ccディーゼルエンジンを設定。ホンダのタイ開発拠点で開発した。全長4386mm、全幅1683mm、全高1603mmのスポーティーなスタイルと広い空間、快適性、実用性を両立させた。 |
新型Jazz | 2015年3月 までに発売 | コストを現行モデル比20~30%削減する見込み。 |
インド第2工場が稼動開始
2014年2月、ホンダはRajasthan州Tapukaraに建設したインド第2工場でAmazeの生産を開始した。鍛造、プレス、溶接、塗装、樹脂成型の各工程と、パワートレイン生産工程を備える。完成車年産12万台の能力を持ち、インド全体の生産能力は24万台に増強された。9月に、Cityの生産を第1工場から移管した。 |
いすゞ:インドでピックアップトラックを生産、MPVも開発するとの報道
いすゞは、LCV事業について、タイを「LCV拠点」、インドを「LCVサポート拠点」としている。
これまでタイで生産してきたピックアップトラックと派生SUVについて、2013年3月にインドでの輸入販売を開始し、現在、Hindustan Motorsに委託してCKD生産を行っている。さらに自社工場を建設し、2016年から生産を開始する計画。
いすゞは、自社工場で2016年から7人乗りMPVも生産すると報道されている。
いすゞ:2016年からインドでピックアップトラックを生産、廉価版生産も計画
輸入車販売と 委託生産 | いすゞは2013年3月、インドでピックアップトラックD-MAXとSUV MU-7の輸入車販売を開始した。さらに現地の自動車メーカーHindustan Motorsに委託し、2013年12月にCKD生産を開始(CKDセットをタイから輸入)。販売網を構築し、2016年の自社工場生産車販売に繋げる計画。 |
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インドでピックアップトラックを生産 | いすゞは2013年3月、インド南部のAndhra Pradesh州政府と、同地域への生産事業進出に関する覚書を締結し、LCV本格展開のベースとなる新工場用地を確保した。いすゞによると、インドにおけるピックアップ市場は、年間20万台に拡大している。 |
新工場は2016年春に稼動予定で、当初は年5万台の能力で、タイで生産しているD-MAXと派生車のSUV MU-7を生産する。2020年までに年産12万台に拡張し、D-MAXより価格を2~3割下げた廉価版も投入する計画。部品現地調達率は当初約70%だが、3年以内に100%としコスト競争力を高める。 |
新型MPVを開発するとの報道
いすゞは、2016年10月から、Andhra Pradesh州のSri Cityに建設中の自社工場で、7人乗りMPVを生産する計画と報道されている。インドのMPV市場は年間13~14万台の規模で、トヨタのInnovaが強く、2013-14年度に3.1万台販売した。 |
GMとFord:シェアが下降しているインド市場で巻き返しを計画
2014年4~9月期、GMのインド乗用車市場でのシェアは2.3%で、2009-10年度の4.5%から年々下降している。Fordのシェアは3.3%で、やはり最近のピークであった2010-11年度の3.9%から下がり気味である。両社とも低価格志向の強いインド市場への対応が十分でなく、また欧米や中国というはるかに大きな市場に注力しているため、インド市場に十分な戦力を投入できていないとされている。また2013年にインドでGMが11.4万台、Fordが30万台近くをリコールしたことも響いた。
両社は、インド市場で巻き返しを図る方針で、Delhi Auto Expo 2014に、GMはAdra SUVコンセプト、FordはFigoセダンのコンセプトを出展した。
中期的には、GMは今後6年間で、インド市場に20の新型車または改良型車を投入する計画。Fordは、2014年9月、今後アジアに積極的に投資し、中国、タイとインドをアジアの3大生産拠点とする構想を発表した。
GMとFord
GM | Adra Concept | GMはDelhi Auto Expo 2014に、コンパクトSUVのコンセプト車"Adra"を出展した。急速に拡大するこのセグメントで、Ford EcoSport、Renault Dusterに対抗するとされる。 |
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Ford | Figo セダンConcept | Fordは、Delhi Auto Expo 2014に出展したFigoセダンConceptを、1年以内に発売する見込み(現在販売しているFigoはハッチバック)。本コンセプト車は、Fordの"One Ford"の方針に沿って開発した。全長4m未満で、ホンダAmazeやMaruti Suzuki DZIREに対抗する車種とされる。2015年中にインドで生産される見込み。 |
VW:今後数年の間にインド事業に150億ルピーを投資
VWの2014年4~9月期の乗用車市場でのシェアは、2.2%(前年同期は3.3%)に下降した。2010~2011年に発売したVW Vento、Skoda Rapid(両モデルともSIAMの分類ではMid-sizeセグメント)の成功で2011-12年度にはシェアが4.4%となったが、その後、インド政府による小型車の物品税率引き下げ政策への対応が遅れている。現在VWグループがインドで販売している全長4m未満の車種はVW Poloだけで、コンパクトSUVも販売していない。
2014年7月に、VWは今後5~6年の間に150億ルピー(250百万ドル)を投資し、インドでの生産能力を年13万台から20万台に拡張すると表明した。商品面では、全長4m未満の新たな乗用車およびSUVの投入を検討している。Delhi Auto Expo 2014に、小型車up!ベースのSUVコンセプトカーTaigunを出展した。
また、輸入関税を節約するため、インド工場で1500ccディーゼルエンジンを生産する計画。
欧州のLuxury 3ブランド:富裕層の需要に支えられ販売好調
Mercedes-Benz、BMW、VWグループのAudiの3Luxuryブランドは、インドの富裕層の需要に支えられて好調。
Mercedes-Benzは、2014年1月に、1994年以来の20年間で累計5万台生産を達成した。今日までにC-、E-、ML、GL-Classを現地生産してきたが、2014年3月からS-Classの生産を開始。A-ClassとB-Classも現地生産する計画でインドChakan工場の生産能力を1万台から2万台に倍増する。
BMWは、2013年9月に1-Series、2014年5月に新型X5を、Chennai工場で生産し発売した。現在1-Series、3-Series、5-Series、7-Series、X1、X3とX5をChennai工場で組立生産している。生産能力は年11,000台だが、14,000台に拡大する計画。
VWグループのAudiは、2014年7月にA3セダンの生産を開始した。A6、A4、Q5、Q7、Q3に続く6番目の現地生産モデル。2013年にLuxuryブランドとしてインドで初めて年間1万台を販売した。
<自動車産業ポータル、マークラインズ>