スズキ:インドで300万台販売を目指し、東南アジアでも現地生産強化
次世代軽量プラットフォーム、マイルドハイブリッドモデル投入
2014/09/29
- 要 約
- 事業戦略:コストを追及した、小さな車の「地産地消」を進めていく
- 技術戦略:次世代軽量プラットフォーム、ディーゼルエンジンとハイブリッドも自主開発
- インド事業戦略:300万台をめざし、Gujarat新工場建設発表も難航
- インド:政権交代後の景気回復期待を背景に、2014年4-6月の販売台数は12.6%増の30.0万台
- 世界戦略車:小型車セレリオ、ワゴンR、中型セダンAlivio、クロスオーバー S-CROSSなど
- 日本市場: 2013年度販売は過去最高の72.8万台
- 2014年度の世界販売見通し:インドを中心にアジアで増加し、過去最高の276万台へ
- 2014年度業績見通し:営業利益は過去最高の1,880億円を狙う
- LMC Automotive 生産予測:スズキの2017年の生産台数は314万台見込み
要 約
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インド、東南アジアが戦略拠点
スズキは、2013年度に過去最高の販売台数・営業利益を計上し、2014年までの中期目標を1年前倒しでほぼ達成した。VWのとの提携が不調に終わった中、スズキは、自社の優位性がある小さな車に注力し、更なる発展を狙う。特に、最大シェアを握るインド市場、発展が期待される東南アジアがその戦略の拠点となる。
技術戦略を発表
四輪車の技術戦略を2014年4月に発表。次世代軽量プラットフォームを開発し、2014年内に投入予定。また今まで外部調達に頼ってきたディーゼルエンジンも自社開発。
マイルドハイブリッドシステムを搭載した軽自動車を、日本で2014年8月に発売済み。コストを追求しながら、環境性能を高める独自の技術で、商品力を向上していく。
インドでは長期的300万台販売を目指す
インドでは、現地合弁会社マルチ・スズキは、長期的に300万台の販売を目指す方針を発表。SUVやMPVなどを新たに発売して、モデルラインナップを拡大していく。
生産能力を強化するために、2017年稼働のGujarat新工場の建設を2014年1月に発表。しかし、同工場の建設はマルチ・スズキの出資ではなく、スズキ単独出資で行われる。
2014年度の見通し
2014年度の販売は前年度比1.7%増の275.6万台と過去最高を更新する見通し。消費税増税前の駆け込み需要の反動減の影響で日本での販売は減少するが、インドを中心にアジア販売は前年度比5.8%増の169万台となる見込み。連結業績見通しは、売上高が微増の3兆円、営業利益は過去最高を僅かに更新する1,880億円を目指す。
LMC Automotive社によれば、2014年のスズキのライトヴィークル生産台数は前年比5.0%増の269万台となり、2017年には2013年比22.5%増の314万台となる見込み。
なお、VWとの資本・業務提携の包括契約解除をめぐる国際仲裁裁判所での係争は、2014年9月時点でまだ解決していない。年内に一定の結論が出るとも報じられている。
関連レポート
デリーモーターショー2014 マルチ・スズキの展示 (2014年3月)
北京モーターショー2014 スズキの展示 (2014年5月)
事業戦略:コストを追及した、小さな車の「地産地消」を進めていく
商品開発方針 |
---|
・環境性能トップを目指す。 |
・コスト追求:小さな車を中心に、お求めやすい価格で提供。 |
・トップクラスの喜びのある商品 |
スズキは、環境性能トップの小さな車を、コストを追及して開発していく方針を商品戦略として掲げている。また、戦略地域として、母国 日本、同社にとって最大市場のインド、そして東南アジア、中国、欧州を定めた。
「地産地消」の考え方に基づき、海外生産、特にアジアでの生産能力強化に取り組んでいる。そして、2013年度から2017年度までに日本では16モデル、インドでは14モデルを投じていく。
地域別戦略
地域 | 戦略 | 2013-17年度の投入モデル数 | |
---|---|---|---|
日本 | ・軽自動車の将来性は高く、既存モデルの更新を含めて積極的に新製品を投入。 ・営業社員の増員と育成、代理店拠点の拡充強化。 | 16 | |
インド | ・最重要市場。 ・中間所得層の増加、嗜好の多様化、地方都市への潜在購買層拡大を背景に、目標シェア40%(2013年度は42%)。 ・現地合弁会社の長期戦略「Maruti 2.0」を2014年8月に発表。長期的に300万台の販売を目指す(下記参照)。 | 14 | |
商品力強化 | 毎年少なくとも1モデルを投入し、コンパクト、セダン、SUVを充実させる。 | ||
販売網強化 | 販売・サービス・中古車拠点の強化(特に郊外地域)。 | ||
生産体制の拡充 | グジャラート新工場。 | ||
研究開発体制の強化 | インド開発センターを建設し、スズキとマルチが一体となった開発体制を構築する。 | ||
輸出強化 | アフリカ、中東、中南米向け輸出拠点化。 | ||
東南アジア | 有望市場であり、次の柱として育てる。 | 9 | |
商品力・販売網の強化 | 毎年少なくとも1モデルを投入。営業力、サービス網の強化を図る。 | ||
生産体制の強化 | アセアン域内での相互供給体制を強化。構成部品の、現地での製造、調達を強化する。 | ||
インドネシア | 新工場を930億円を投じて建設中。エンジン・ミッション工場は先行して2014年11月に全工程稼働開始予定。車両組立工場は、既存のTambun工場から、MPV Ertigaの生産を移管し2015年1月に稼働開始の予定。新工場の稼働により、2015年度にはインドネシア全体で25万台の生産能力となる計画。 | ||
タイ | 年産能力を2014年に5万台から10万台へ増強。タイ政府のエコカー政策に合致した2車種目のセレリオを生産開始。 | 7 | |
中国(注) | ・スズキが得意とするA、Bセグメントの販売が低迷。市場の嗜好にあったCセグメント車を投入する。 | 7 | |
SX4 S-CROSS | スズキ初のCセグメントSUV。2013年末より重慶長安スズキで生産し、販売。 | ||
啓悦(Alivio) | Cセグメントのセダン。2014年末より重慶長安スズキで生産し、販売する予定。 | ||
欧州 | 梃入れを図るため、2013年にCセグメントクロスオーバーSX4 S-CROSSをハンガリーで生産を開始し、2014年のパリモーターショーでは、新型SUVビターラを発表し2015年に発売予定。 | 7 | |
開拓市場 | 将来の成長に備え、販売網構築の布石を打つ。 | - | |
中東・アフリカ市場 | インドに本部を設置。コスト、品質、距離などを考慮して供給していく。 | ||
中南米市場 | 従来は日本製モデルを輸出していたが、インド、インドネシア、タイ、ハンガリーからグローバルモデルを投入する。 |
資料:東京モーターショー投資家説明会 説明資料 2013年11月19日
(注)2014年6月、スズキと合弁を組む長安汽車は同社の持つ長安スズキの株式1%分をスズキに譲渡すると発表。これにより、長安スズキの持ち分は長安汽車側、スズキ側とも50%ずつとなる。
技術戦略:次世代軽量プラットフォーム、ディーゼルエンジンとハイブリッドも自主開発
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(東京モーターショー2013 説明パネルより)
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スズキは、2014年4月、四輪車の技術戦略を発表。新たに、軽量化を図ったプラットフォームを開発し、種類を3種に統合していく。
ガソリンエンジンについては平均熱効率40%に2020年までに挑戦し、1.4L以下の4つの排気量のエンジンに開発資源を集約する。また、現在外部から調達しているディーゼルエンジンも排気量800ccのものを自社開発した。
電動化に関しても、独自のマイルドハイブリッドシステム「S-enecharge」を開発し、2014年8月に発売。ストロングハイブリッドシステムについても開発していく方針。
次世代軽量プラットフォームの開発
プラットフォーム統合 | 軽、Aセグメント、Bセグメントの3種類に統合。SX4に採用している現行のCプラットフォームは、Bプラットフォームに統合する。既に開発は完了しており、2014年内に発売される次期アルトから採用すると見られる。 | |
---|---|---|
モジュール化 | 機能部品をモジュール化し、セグメントを超えて共用化し、開発効率を向上させる。サスペンションは4種類、空調システムは2種類、フロントシートフレームは3種類に集約。 | |
軽量化 | 主要構造や部品配置を変更することで、車両全体で最大15%軽量化し、曲げ剛性、ねじり剛性を30%向上させた。 1)プラットフォームの骨格からできるだけ屈曲部を減らして、滑らかな形状を採用。補強材の廃止や鋼材の肉厚を減らす。 2)骨格部分を、(車体の前から後ろに向けて)連続化し、少ない部品で剛性を確保。 |
パワートレイン技術
エンジン開発 | ガソリンエンジン | 2020年までに平均熱効率40%の達成に挑戦。 ・圧縮比アップ(デュアルジェット噴霧など)、損失の低減(クールドEGR、低フリクション化)。 開発は軽用及び、1.0L、1.2L、1.4Lに集約。 ・軽用660ccエンジンはR04Aの1機種に統合。 ・小型用エンジンはベースエンジンを共通として、自然吸気・直噴過給エンジンをそろえる。 |
---|---|---|
ディーセルエンジン | 主にインド市場向けに自社製エンジンを開発(注1) ・793cc 直列2気筒エンジンを開発し、2015年までに小型商用車に搭載して投入する予定。 | |
トランスミッション開発 | Auto Gear Shift | 5速MTをベースに、クラッチ、シフト操作を自動化したAMT。インドのCelerioに初搭載(2014年2月)。日本でも2014年8月に軽商用車Carryに搭載。2014年内に発売する欧州向けCelerioにも搭載される予定。 |
ハイブリッドシステム(注2) | Enecharge | 2012年9月に発売した新型Wagon Rに初搭載した、減速エネルギー回生システム。発電能力が従来型比2倍あるオルタネータと、急速充電可能なリチウムイオン電池、鉛電池を組み合わせたシステム。減速エネルギーで発電し充電することで、走行中のエンジンを使った発電を減らし燃費を改善できる。 |
S-enecharge | 従来のEnechargeに、高効率なスタータージェネレータ(ISG)を組み合わせ駆動アシストする機能を追加した、マイルドハイブリッドシステム。減速時のエネルギー回生量を約30%増加させて、利用できる電力を増やすことで、加速時のモーターによるアシストを可能とした。2014年8月に一部改良したWagon Rに搭載。 |
(注 1) | 現在、インド市場向けのディーゼルエンジンは、フィアットからの調達とライセンス生産を行っている。 |
2. | 中長期的にはストロングハイブリッドシステムも開発するとしている。 |
インド事業戦略:300万台をめざし、Gujarat新工場建設発表も難航
スズキのインド連結子会社Maruti Suzukiは、今後30年の戦略を描く「Maruti 2.0」を2014年8月に発表。2013年度に約116万台の販売台数を、長期的に300万台まで伸ばしていくことを掲げた。
それに先立ち、2014年1月に、生産能力を高めていくため新たにGujarat工場を建設することを発表。マルチ・スズキの親会社であるスズキが単独出資での建設を発表したため、マルチ・スズキの少数株主の反発を招いた。スズキ側はいくつか譲歩することになり、2014年11月に少数株主の承認を得るための投票が行われる予定。
Maruti 2.0:今後30年の戦略
生産/開発/調達体制 | ・Gujarat新工場の建設を進める。2014年時点の、既存工場の生産能力は150万台で、現在の見込みでは、2015-16年には稼働率が100%になり、生産能力が不足するとしている。 |
---|---|
・研究開発体制の強化(研究設備と人員の強化)。北部Haryana州Rohtakに200億ルピーを投じ、R&Dセンターとテストコースを建設。燃費向上のほか、ディーゼルやCNG、LPGなど代替燃料の研究開発を行う。 | |
・現地での調達/原価低減機能の強化。 | |
販売戦略 | ・販売、アフターサービス網の強化(ショールーム、物流拠点)。 ・インド市場の今後の成長は、都市部以外の郊外地域にかかっているとして、当該地域での販売網の整備。 |
商品戦略 | ・モデルラインナップを現状の約2倍の25モデルまで拡張していく。 ・SUV(2015年初)や、コンパクトSUV、MPV、小型商用車などの新しいセグメントに参入して行く。 ・AMTやインフォテインメントシステムなどの新しい技術の導入。 |
(注)マルチ・スズキは現在、売上高の約 6%をロイヤリティーとしてスズキに払っているが、インドでの開発業務が増加するのに伴い引き下げられ、支払通貨も日本円からインドルピーに変更されると報じられている。
Gujarat工場建設プロジェクト、2014年11月に承認投票へ
Gujarat工場建設プロジェクト発表(2014年1月) | スズキは2014年1月、インド西部Gujarat州にスズキが全額出資する四輪車生産会社「Suzuki Motor Gujarat Private Limited (SMG)」(仮称) を設立し、2017年に生産を開始する予定と発表した。SMGはマルチ・スズキと生産委託契約(下記)を締結し、車両の販売はマルチ・スズキが行う。当初の年産能力は10万台の予定で、段階的に増加させていく。現在、マルチ・スズキはGurgaonとManesarに工場を持ち年産150万台の生産能力を持つが拡大の余地がなく、今後のインド市場の拡大及び輸出拡大に備える。 |
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当初は、4月に設立予定であったが、マルチ・スズキの少数株主がマルチ・スズキの利益にならないとして反対を表明している。マルチ・スズキはいくつかの譲歩案を提示、11月の少数株主の投票で賛否を決する投票を行う予定。また、市場の状況が良くないとして稼働を一年遅らせるとも報じられている。 |
Gujarat工場とマルチ・スズキの生産委託契約概要(2014年6月現在)
SMGの生産量と価格 | ・製造物はマルチ・スズキ以外には販売せず、生産量はマルチ・スズキが決定する。 ・生産能力はマルチ・スズキと相談のうえ、拡張する。 ・マルチ・スズキへ販売する価格は、SMGが利益も損失も無い水準に毎年決定する。 |
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マルチ・スズキの利益 | マルチ・スズキは生産能力拡大ための資金負担を減らすことができる。SMGの総投資額は1850億ルピーの予定で、スズキからの資金と減価償却費の積み立てによって賄われる。 |
マルチ・スズキは15年の契約で、約1,050億ルピーの利益を得ることが見込まれ、自社の販売事業などの投資に振り向けることができる。 |
インド:政権交代後の景気回復期待を背景に、2014年4-6月の販売台数は12.6%増の30.0万台
スズキのインド連結子会社マルチ・スズキの2013年度(2014年3月期)の輸出を含む総販売台数は、輸出の不振で前年度比1.4%減の115.5万台。
売上高は微増の4,264億ルピー、純利益は16.3%増の278億ルピーとなった。販売台数は減少したものの、国内販売は微増を保ったこと、ルピー安、インドでの現地調達を進めたことで、業績が改善した。
インドの自動車市場は、景気の停滞やここ2~3年インフレ抑制のためにとってきた高金利政策の影響を受けて伸び悩んできた。しかし、2014年4月に入り、自動車に対する減税措置が延長されたことと、5月の政権交代に伴う景気回復期待により、市場は回復しつつある。
マルチ・スズキの2014年4-6月の業績も回復し、総販売台数は前年同期比12.6%増の30.0万台、売上高は7.1%増の1,208億ルピー、純利益は20.7%増の76億ルピーとなった。
Maruti Suzuki の業績 |
(台・100万ルピー) |
2007 年度 | 2008 年度 | 2009 年度 | 2010 年度 | 2011 年度 | 2012 年度 | 2013 年度 | 2013 年度 4-6月 | 2014 年度 4-6月 | |
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総販売台数 | 764,842 | 792,167 | 1,018,365 | 1,271,005 | 1,133,695 | 1,171,434 | 1,155,041 | 266,434 | 299,894 |
国内販売 | 711,818 | 722,144 | 870,790 | 1,132,739 | 1,006,316 | 1,051,046 | 1,053,689 | 245,346 | 270,643 |
輸出 | 53,024 | 70,023 | 147,575 | 138,266 | 127,379 | 120,388 | 101,352 | 21,088 | 29,251 |
売上高 | 178,603 | 203,583 | 289,585 | 358,490 | 347,059 | 426,125 | 426,448 | 112,722 | 120,750 |
純利益 | 17,308 | 12,187 | 24,976 | 22,887 | 16,351 | 23,921 | 27,831 | 6,316 | 7,623 |
純利益率 | 9.7% | 6.0% | 8.6% | 6.4% | 4.7% | 5.6% | 6.5% | 5.6% | 6.3% |
資料:Maruti Suzuki Financial Reports (注) インドルピー は、2014年9月下旬時点で約 1.79円。
世界戦略車:小型車セレリオ、ワゴンR、中型セダンAlivio、クロスオーバー S-CROSSなど
セレリオ:インド・タイで生産し、グローバル展開を予定の小型車
インド | 2014年2月発売。新開発のAMTオートギアシフトを搭載した、 5ドアハッチバック車。1.0Lエンジンの改良、車体の軽量化などで23.1km/Lの低燃費を実現。全長3,600×全幅1,600×全高1,560mm。CNGモデルを2014年5月に発売。 |
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タイ | 2014年5月発売。1.0Lエンジンを搭載し、ガソリンにエタノールを20%以上混合した「E20」に対応する。MT車、CVT車が設定。同モデルはSwiftに続くタイ政府のエコカー認定車となる。 |
欧州 | 欧州向けには、タイで2014年後半から生産される予定。AMTオートギアシフトも搭載され、インドから輸出している「Aスター(A Star)」の後継モデルとして投入する。85g/kmの低CO2排出量を実現した。 |
インドネシア | 2014年9月開催のインドネシアモーターショーに参考出品された。 |
新型コンパクトカー Celerio 2014年デリーモーターショーにて | 新型AMT オートギアシフト 2014年デリーモーターショーにて |
ワゴンR:
インドネシア | スズキは、インドネシアのローコストグリーンカー(LCGC)政策に適合した、Karimun Wagon Rを2013年11月発売。1.0Lのエンジンを搭載するために、エンジンルームを日本のワゴンRと比べて205mm伸ばした。同社のタンブン(Tambun)工場で生産。2014年5月までの累計販売は1万3,702台。 |
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パキスタン | 2014年4月、インドネシア製Karimun Wagon Rのパキスタン向け輸出を開始すると発表した。 パキスタンでは完成車(CBU)の輸入関税が高いため、ノックダウン(CKD)方式で輸出。2014年は月間1,200台、年間2万台を輸出する計画。 |
アジア向けに開発した中型セダン:AlivioとCiaz
啓悦(Alivio) | アジア向けに開発された中型セダンで、2013年上海モーターショーで発表したコンセプトカー「AUTHENTICS」をベースにした。Alivioは中国を中心に販売する計画で、早ければ2014年末までに発売する。長安鈴木汽車有限公司で生産。全長4,545×全幅1,730×全高1,475mm、ホイールベースは2,650mm。パワートレインは、高効率エンジン「G-INNOTEC」に6速ATを組み合わせる。 |
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Ciaz | マルチ・スズキが2014年9月より予約を受付始めた中型セダン。Alivioのインド版。1.4Lディーゼルエンジンまたは1.3Lガソリンエンジンを搭載し、燃費性能はディーゼル車が26.21km/Lでインドで最も低燃費となり、ガソリン車も20.73km/Lで同クラスの低燃費トップになるとしている。 |
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2014年の北京モーターショーに展示したAlivioのコンセプト車 | 2014年のデリーモーターショーに展示したCIAZのコンセプト車 |
SX4 S-CROSS:Cセグメントのクロスオーバー
ハンガリー | スズキは2013年9月、CセグメントのクロスオーバーSX-4 S-CROSSの生産をハンガリー工場で開始。1.6Lガソリン/ディーゼルエンジンを搭載し、同社の新しい4WDシステムALLGRIPを搭載。欧州だけでなく、世界戦略車として大洋州、アジア、中東、中南米などにも輸出していく計画。 |
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中国 | 中国では、2013年12月より、長安スズキの重慶工場で中国仕様車を生産開始。 |
新型SUV VITARA
新型SUV VITARA(ビターラ)は2013年のフランクフルトモーターショーに出展したコンセプトカー iV-4を基にした量産車。2014年10月のパリモーターショーで初披露される予定。 |
日本市場: 2013年度販売は過去最高の72.8万台
2013年度の国内販売は、前年度比8.3%増の72.8万台と、過去最高の販売を記録。スペーシア、キャリー、ハスラーなどの新モデル投入に加えて、消費税率引上げ前の駆け込み需要が大きな要因。
2014年度の販売見通しは、反動減で7.3%減の67.5万台としている。2014年度第1四半期(4-6月)の販売台数は、受注残があったことから前年同期比10.2%増の18.4万台となった。
スズキはWagon R を2014年8月に一部改良しマイルドハイブリッドを搭載したモデルを発売するなど、燃費の改善、安全装備の追加など商品力強化を、フルモデルチェンジにとらわれずに積極的に行っている。次世代軽量プラットフォームを利用した次期型アルトエコを2014年内に発売する見込み。
スズキの国内新車販売 |
(1,000台) |
2006 年度 | 2007 年度 | 2008 年度 | 2009 年度 | 2010 年度 | 2011 年度 | 2012 年度 | 2013 年度 | 2014 年度 | 2013 年度 | 2014 年度 | |
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(計画) | 4-6月 | 4-6月 | |||||||||
軽自動車 | 606 | 587 | 579 | 554 | 521 | 516 | 586 | 647 | 600 | 148 | 165 |
登録車 | 85 | 86 | 85 | 67 | 68 | 80 | 85 | 81 | 75 | 19 | 19 |
国内合計 | 690 | 673 | 665 | 622 | 588 | 596 | 672 | 728 | 675 | 167 | 184 |
資料:スズキの決算参考資料
スズキ:日本市場における主な新型車投入
モデル | 発売年 | 概要 |
---|---|---|
アルトエコ | 2013年11月 | 一部改良。従来から採用している、エネチャージ、新アイドリングストップシステム等に加えて、エンジン/パワートレインの改良により、燃費性能を33.0km/Lから35.0km/L(JC08モード:以下同)へ向上させた。 |
2014年内 | 2014年内にフルモデルチェンジの予定。スズキの新たな軽自動車用プラットフォームが採用される見通しで、燃費性能はダイハツのミライースの35.2km/Lを大きく上回るとされる。 | |
ワゴンR | 2013年7月 | 一部改良して、エンジンの摩擦抵抗などを改良して燃費性能を、従来の28.8km/Lから30.0km/Lへ引き上げた。衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などの安全装備も搭載。 |
2014年8月 | 新開発のマイルドハイブリッドシステム「S-エネチャージ」を搭載した機種を設定する一部改良を行い、燃費性能をさらに32.4km/Lまで引き上げた。 | |
ハスラー | 2013年12月 | 軽自動車初のクロスオーバー。月販目標は5千台であったが、発売後約8カ月で6.4万台を販売するなど販売は好調。2014年9月のインドネシアモーターショーにも出展された。 |
キャリー | 2013年8月 | 軽トラックを14年ぶりにモデルチェンジ。居住性を高め、新型エンジンの採用、約50kgの軽量化により、2WD・5MT車で18.6km/Lの燃費性能を達成。 |
2014年8月 | 5速MTをベースに、クラッチ、シフト操作を自動化したAMT「Auto Gear Shift」を搭載したモデルを設定。燃費性能は19.4km/L(2WD)。 |
2014年度の世界販売見通し:インドを中心にアジアで増加し、過去最高の276万台へ
2013年度の海外販売台数は、198.3万台と微減。インドでは市場が縮小する中、小型車の堅調な販売により、微増の105.4万台にとどまった。国内・海外を合わせた2013年度の販売は271.1万台となり過去最高となった。
2014年度の販売は1.7%増の275.6万台と過去最高を更新する見通し。消費税増税前の駆け込み需要の反動減の影響で日本での販売は減少するが、インドを中心にアジア販売は前年度比5.8%増の169万台となる見込み。
2013年度の生産は国内が減少し、合計では0.7%減の285.7万台。海外生産比率はやや増加し65%となった。
2014年度の生産見通しは、国内向け・輸出車の減少で日本での生産は減少、海外はアジアを中心に増加する見込みで、前年度比2.7%増の293.3万台となり、2年ぶりに過去最高を更新する見通し。海外生産比率は66%に高まる見込み。
スズキの新車販売台数 |
(1,000台) |
2010年度 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 (計画) | 2013年度 4-6月 | 2014年度 4-6月 | ||
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日本 | 588 | 596 | 672 | 728 | 675 | 167 | 184 | |
欧州 | 244 | 223 | 197 | 205 | 208 | 49 | 49 | |
北米 | 33 | 32 | 30 | - | - | - | - | |
アジア | インド | 1,133 | 1,006 | 1,051 | 1,054 | 1,086 | 245 | 271 |
中国 | 290 | 296 | 253 | 233 | n.a. | 53 | 67 | |
インドネシア | 75 | 94 | 139 | 165 | n.a. | 37 | 40 | |
タイ | 6 | 10 | 33 | 40 | n.a. | 12 | 6 | |
他 | 120 | 144 | 112 | 105 | n.a. | 27 | 29 | |
計 | 1,625 | 1,550 | 1,588 | 1,598 | 1,690 | 374 | 413 | |
その他 | 153 | 160 | 174 | 180 | 183 | 45 | 45 | |
合計 | 2,643 | 2,560 | 2,661 | 2,711 | 2,756 | 636 | 691 |
資料:スズキの決算参考資料 | |
(注) 1. | スズキブランド車 (一部ライセンス車を含む) の販売台数。2014年度計画は2014年 5月発表。 |
2. | 2013年度海外販売台数には一部予想値を含む。 |
スズキの生産台数 |
(1,000台) |
2006 年度 | 2007 年度 | 2008 年度 | 2009 年度 | 2010 年度 | 2011 年度 | 2012 年度 | 2013 年度 | 2014 年度 | 2013 年度 | 2014 年度 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(計画) | 4-6月 | 4-6月 | |||||||||||
国 内 生 産 | 国内向け | 軽自動車 | 608 | 588 | 590 | 545 | 513 | 519 | 593 | 636 | 627 | 152 | 175 |
登録車 | 83 | 82 | 79 | 58 | 63 | 76 | 86 | 79 | 74 | 17 | 19 | ||
輸出車 | 388 | 415 | 331 | 219 | 259 | 244 | 184 | 151 | 131 | 43 | 38 | ||
OEM供給車 | 134 | 134 | 139 | 138 | 159 | 181 | 182 | 131 | 157 | 25 | 37 | ||
合計 | 1,212 | 1,219 | 1,139 | 959 | 994 | 1,020 | 1,044 | 998 | 989 | 237 | 269 | ||
海 外 生 産 | 欧州 | 189 | 252 | 260 | 180 | 164 | 174 | 151 | 171 | 151 | 30 | 46 | |
北米 | 22 | 28 | 7 | 1 | - | - | - | - | - | - | - | ||
アジア | 987 | 1,138 | 1,088 | 1,406 | 1,720 | 1,609 | 1,683 | 1,686 | 1,791 | 394 | 443 | ||
合計 | 1,199 | 1,418 | 1,355 | 1,586 | 1,884 | 1,782 | 1,834 | 1,859 | 1,944 | 424 | 490 | ||
世界生産 | 2,412 | 2,637 | 2,494 | 2,545 | 2,878 | 2,802 | 2,878 | 2,857 | 2,933 | 661 | 759 |
資料:スズキの決算参考資料 (注) 国内生産は完成車生産台数 + CKD生産台数。海外生産は現地ラインオフ台数 (CKD組立てを除く)。
2014年度業績見通し:営業利益は過去最高の1,880億円を狙う
スズキの2013年度の連結決算は、国内売上高が前期比8.8%増、海外売上高が17.4%増で、連結売上高は14.0%増の2.94兆円。営業利益は29.9%増の1,877億円と過去最高。売上高2.94兆円、経常利益率6.7%となって、2014年度までの中期目標(売上3兆円、経常利益率6%)も、ほぼ達成。国内の四輪車販売、為替の影響が貢献した。
2014年度の連結業績見通しは、日本の駆け込み需要の反動減を予想し、微増の売上高3兆円、営業利益1,880億円を目指す。
スズキの連結業績 |
(100万円) |
2008 年度 | 2009 年度 | 2010 年度 | 2011 年度 | 2012 年度 | 2013 年度 | 2014 年度 (計画) | 2013 年度 4-6月 | 2014 年度 4-6月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
売上高 | 3,004,888 | 2,469,063 | 2,608,217 | 2,512,186 | 2,578,317 | 2,938,314 | 3,000,000 | 675,800 | 710,402 |
国内売上高 | 965,500 | 952,559 | 937,452 | 986,774 | 1,040,948 | 1,132,732 | 1,050,000 | 240,237 | 255,983 |
海外売上高 | 2,039,300 | 1,516,504 | 1,670,765 | 1,525,411 | 1,537,369 | 1,805,581 | 1,950,000 | 435,562 | 454,418 |
営業利益 | 76,926 | 79,368 | 106,934 | 119,304 | 144,564 | 187,747 | 188,000 | 44,092 | 50,919 |
経常利益 | 79,675 | 93,841 | 122,502 | 130,553 | 155,593 | 197,842 | 198,000 | 47,184 | 59,309 |
純利益 | 27,429 | 28,913 | 45,174 | 53,887 | 80,389 | 107,484 | 115,000 | 27,032 | 37,525 |
設備投資 | 216,200 | 120,200 | 130,300 | 126,700 | 169,300 | 213,600 | 230,000 | 41,600 | 42,600 |
減価償却費 | 141,200 | 141,800 | 138,400 | 103,100 | 93,700 | 117,200 | 125,000 | 23,800 | 30,900 |
研究開発費 | 115,000 | 108,800 | 104,100 | 109,800 | 119,300 | 127,100 | 130,000 | 25,200 | 28,000 |
為替 (ドル) | 101円 | 93円 | 86円 | 79円 | 83円 | 100円 | 100円 | 99円 | 102円 |
為替 (Euro) | 144円 | 131円 | 113円 | 109円 | 107円 | 134円 | 135円 | 129円 | 140円 |
為替 (ルピー) |
(未発表)
|
1.68円 | 1.54円 | 1.68円 | 1.65円 | 1.79円 | 1.72円 |
資料:スズキの決算参考資料 (注) 2014年度見込みは、2014年5月発表。
LMC Automotive 生産予測:スズキの2017年の生産台数は314万台見込み
(LMC Automotive社、2014年8月) |
LMC Automotive社の最新の予測(2014年8月)によれば、2014年(暦年)のスズキのライトヴィークル生産台数は前年比5.0%増の269万台となる見込み。
同社の最大市場であるインドでは、前年比6.3%増の125万台となると予測されており、母国の日本でも3.9%増の87.5万台になる見込み。日本での増産は、消費税増税前の駆け込み需要に伴う日本の販売増と、ハスラーの増産に支えられている。 一方、タイでの生産の増加はセレリオの生産開始後になる見込み。欧州向けのセレリオの生産は7月には始まっている模様。
中長期的には、2017年のスズキのライトヴィークル生産台数は2013年比22.5%増の314 万台となる予想。インド市場の継続的な拡大とマルチスズキの存在感によって、インドでの生産は2013年比39.0%増の163万台に達し、スズキの総生産台数の半数以上を占めると予測される。LMC Automotive社は「このような一つの市場に頼りすぎることは理想的ではないが、スズキのラインナップは小型車が多いためこのような規模の拡大を他の市場に求める選択肢は無い」とコメントしている。
スズキの国別ライトビークル生産予測 |
(台) |
CY2011 | CY2012 | CY2013 | CY2014 | CY2015 | CY2016 | CY2017 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Total | 2,420,622 | 2,540,890 | 2,562,056 | 2,690,220 | 2,531,901 | 2,838,403 | 3,137,253 |
India | 1,126,143 | 1,156,838 | 1,172,282 | 1,245,743 | 1,233,442 | 1,424,673 | 1,630,033 |
Japan | 787,447 | 885,828 | 842,612 | 875,326 | 673,871 | 616,917 | 635,162 |
China | 298,972 | 250,007 | 223,014 | 251,769 | 210,097 | 209,636 | 206,640 |
Hungary | 129,476 | 127,752 | 143,061 | 148,363 | 153,533 | 237,117 | 277,389 |
Indonesia | 64,556 | 91,728 | 119,415 | 134,277 | 164,774 | 210,290 | 217,155 |
Thailand | 0 | 16,978 | 52,876 | 24,268 | 82,791 | 123,323 | 155,476 |
Malaysia | 4,939 | 5,750 | 4,064 | 3,854 | 3,728 | 3,804 | 3,839 |
Iran | 4,780 | 2,643 | 753 | 2,441 | 3,419 | 3,478 | 4,191 |
Vietnam | 2,968 | 1,742 | 2,308 | 2,374 | 2,701 | 2,912 | 3,111 |
Brazil | 0 | 0 | 1,671 | 1,805 | 1,358 | 1,034 | 1,082 |
USA | 1,340 | 1,624 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
Philippines | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
Spain | 0 | 0 | 0 | 0 | 2,187 | 5,219 | 3,175 |
Source: Global Automotive Production Forecast (August 2014) | |
(注) 1. | データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。 |
2. | 本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要となります。 |
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