人とくるまのテクノロジー展2014:自動車メーカーの最新パワートレイン技術

ホンダ次期NSX/日産スカイラインのハイブリッドシステム、マツダ REレンジエクステンダーなど

2014/05/30

要 約

人とクルマのテクノロジー展2014の様子  2014年5月21日~23日にパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2014」(公益社団法人 自動車技術会主催)における、自動車メーカーの出展をまとめた。
  今年の出展社数は、自動車メーカー、部品サプライヤーなどを含めて過去最高の491社(前年比16社増)、来場者数(主催者発表)も過去最高を更新する約8.8万人(同1.0万人増)となり、昨年を上回る盛況を博した。

 自動車メーカーの展示も、例年と比べて力の入っていたものであった。トヨタは、東京モーターショーで初披露した燃料電池車のベアシャシーを展示したのに加え、HVの燃費向上に資する新しいパワー半導体を初披露した。
  日産は新型スカイラインに搭載したハイブリッドシステムとステアバイワイヤ技術、2014年のジュネーブモーターショーで世界初披露した、スマートルームミラーを日本初披露。ホンダも、東京モーターショーでは展示していなかった次期NSXのパワートレインを出展し注目を集めていた。

 今年は、自動車メーカーはハイブリッド技術を含む、パワートレイン技術の展示が多かったのが目を引いた。

 本レポートでは、その自動車メーカーの最新パワートレイン技術を、前編としてお送りする。日産のスマートルームミラーや富士重工のEyeSightなどの安全運転支援技術、軽自動車、商用車の最新技術については後編として近日中に掲載します。

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ハイブリッド技術:ホンダ次期NSXと日産スカイラインのパワートレイン

次期NSXのハイブリッドシステム
ホンダ 次期NSXのハイブリッドシステム

次期NSXのハイブリッドシステムのエンジンとトランスミッション
次期NSXのハイブリッドシステムのエンジンとトランスミッション

ホンダ

NSX Conceptの
パワートレイン
2015年に北米で発売予定のスーパースポーツカー NSXのハイブリッドシステムを展示。スポーツハイブリッドSH-AWD(下記)の改良版で、前輪を2つのモーター、後輪を縦置きの新開発V6ツインターボエンジン、DCTで駆動する(エンジンの排気量と変速機の段数についてはコメントできないとのこと)。
スポーツハイブリッドSH-AWD ホンダの中大型乗用車向けの3モーター・ハイブリッドシステム。前輪を横置きの3.5L V6エンジンと1モーター搭載の7速DCTが駆動し、後輪を2つのモーターが駆動する。NSXとは配置が前後逆になっており、エンジンの配置も縦置きと横置きで異なっている。発進は後輪モーター(最高出力27 kW×2)で行い、通常の走行はエンジンが行うシステムとなっている。そのため、主にモーターで走行する2モーター・ハイブリッドシステム(i-MMD)のモーター(最高出力124kW)と比べて出力は小さくなっている。
後輪の2つのモーターは独立にトルクを発生する。コーナーリング時には、外輪側に大きなトルクを、内輪側には小さなトクルもしくはマイナスのトルクを与えることができ、コーナリング性能を高めた。
ホンダは、このスポーツハイブリッドSH-AWDを搭載したAcura RLXを2014年春に米国で発売予定も、2014年5月末現在で未発売。燃費性能(EPA)は28/32/30mpg(city/hwy/combined)。

 ホンダのハイブリッドシステム

ホンダ フィットなどに搭載されている1モーターハイブリッドシステム i-DCD
ホンダ フィットなどに搭載されている
1モーターハイブリッドシステム i-DCD
詳しくはこちらの分解レポートもご覧下さい
ホンダ アコードに搭載されている2モーターハイブリッドシステム i-MMD
ホンダ アコードに搭載されている
2モーターハイブリッドシステム i-MMD
詳しくはこちらの分解レポートもご覧下さい

日産

スカイライン 2014年2月末に日本で発売された、13代目のスカイライン(当初はハイブリッドモデルのみ)。フロントグリルには、日産バッチでは無くInfinitiのバッチが飾られている。日本以外では、Infiniti Q50として先行して販売。世界で初めてステアバイワイヤ技術「ダイレクトアダプティブステアリング」を搭載。日本では発売後約2カ月で約5300台の受注を獲得した(月販目標は200台)。
日産は2014年5月26日に、スカイラインに2.0L ターボエンジンを搭載したモデルを同年6月に日本で発売すると発表。ターボエンジンは提携先のDaimlerから供給を受ける。
スカイラインに
搭載のハイブリッドシステム
13代目のスカイラインに搭載されているハイブリッドシステムは、フーガに搭載されている1モーター2クラッチハイブリッドシステムの進化版。ハードは同じものを用いているが、加速性能を高め、0-60mphの加速タイムを0.4秒短縮し4.9秒とした。また、EV走行時間を増やすことで、燃費性能を向上させた(JC08モードで10%)。
温度制御を緻密にすることで、モーターの最大トルクを270Nmから290Nmへ引き上げ、バッテリーの最大出力(瞬時)を60 kWから75kWへ引き上げた。また、モーター内蔵の変速機とエンジンを繋ぐクラッチの応答性/制御も改善。エンジンについてはアトキンソンサイクル化を行った。
13代目のスカイライン
13代目のスカイライン
スカイラインに搭載のハイブリッドシステム
スカイラインに搭載のハイブリッドシステム


トヨタの最新技術:高効率パワー半導体、FCV、ノア ハイブリッド カットモデル

トヨタの給電用のコネクター
新開発したSiCトランジスタ(左側)とSiCダイオード(右側)
三菱のMiEV power box
従来のシリコンパワー半導体を使ったPCU(左側)と
SiCパワー半導体を使ったPCUのサイズ模型(右側)

 

高効率
パワー半導体
トヨタは、新素材SiC(注)を使った高効率のパワー半導体を、デンソー、豊田中央研究所と共同で開発し、初披露した。HV車両の全体の電力損失の約20%はパワー半導体によるものだとしており、効率化を図ることで燃費改善につなげる。
1年以内に公道での走行実験を開始。将来的には、現在のシリコンパワー半導体と比べて、HVの燃費の10%向上、PCUは1/5の小型化を目指す。
FCVベアシャーシ 2015年に市販を予定している、セダンタイプの燃料電池車(FCV)のベアシャーシ。フロント部分にパワーコントロールユニット(PCU)とモータが収められ、前部座席下部分に燃料電池と昇圧コンバーターを収納。東京モーターショー2013で初公開された
ノア ハイブリッド
カットモデル
2014年1月に発売したミニバン ノアのハイブリッド車のカットモデルを展示。新開発の低床パッケージを採用することで、広い室内空間を実現。車高を従来モデル比25mm下げながらも、床面高を85mm下げることで、室内高は60mm高くした。ハイブリッドシステムの駆動用ニッケル水素電池は、前席下に収めて、車室の使い勝手を高めた。
燃料タンクは床面下に収められているが、床面を低くするため、薄型化した。薄型化すると、車体が傾いたときに燃料ポンプと燃料計が燃料につからなくなり、正常に作動しなくなる恐れがある。そのため、燃料ポンプと燃料計をスリットの入った桶のようなものの中に設置。桶の中に燃料が貯まることで、この2つの機器が正常に機能するようにした。

注:Silicon Carbide。シリコンと炭素の化合物。

 

トヨタの給電用のコネクター
トヨタ FCVベアシャーシ

トヨタ FCVベアシャーシ正面から
トヨタ FCVベアシャーシ正面から。ラジエターは3枚あり、燃料電池、二次電池、PCUの冷却用にそれぞれ備えられているとされる。モーターは別の方法で冷却するとみられる。
ノア ハイブリッド カットモデル
ノア ハイブリッド カットモデル

ノア ハイブリッドの燃料タンク
ノア ハイブリッドの燃料タンク。タンク内、中央にあるのが燃料計で、右側にあるのが燃料ポンプ。
写真左上に、前席下収められたニッケル水素電池が写っている。


マツダのロータリーエンジン採用のレンジエクステンダー

 ロータリーエンジン採用のレンジエクステンダー Infiniti Q50のホワイトボディ
ロータリーエンジン採用のレンジエクステンダー ロータリーエンジンの主要パーツ。
写真下側に並べてあるのが、レンジエクステンダー用に開発された330ccのロータリーエンジンのもの。
写真上側は従来のロータリーエンジンのもの。

 

ロータリーエンジン レンジエクス
テンダー
ロータリーエンジンを使った、全てのEVに装着可能な発電装置(レンジエクステンダー)を開発。ロータリーエンジンを採用したのは以下の理由から。1)静粛性が高い。2)シングルローターを水平方向に設置することで、システムの高さを抑えることができ、既存EVの後部のフロア下にトランクスペースを犠牲にせず装着できる。
このレンジエクステンダーを搭載したデミオEVの航続距離は200kmから380km(JC08モード)となった。
ロータリーエンジンは新開発され、発電用の設計のため、従来のものと比べて排気量は約半分の330ccにされた。このエクステンダーを搭載したデミオEVは1台だけ試作され、今後の展開は未定とのこと。
アクセラ
ハイブリッド
マツダの「魂動-SOUL OF MOTION」デザインと「SKYACTIV TECHNOLOGY」を全面的に取り入れた商品の第3弾である小型車のハイブリッドモデル。2013年11月に発売。SKYACTIV-HYBRIDを搭載し、トヨタのハイブリッド技術とマツダの2.0Lガソリンエンジン(SKYACTIV-G 2.0)とを組み合わせた(燃費性能30.8km/L(JC08モード))。

ロータリーエンジン・エクステンダーの主要諸元

排気量 330ccシングルローターロータリーエンジン
エンジン最高出力 22 kW@4500rpm
発電機 定格最大20 kW
燃料タンク容量 約9L
XV ハイブリッドのエンジンルーム
ロータリーエンジンエクステンダーを
搭載したデミオEV
トヨタ クラウン ハイブリッドのカットモデル
ロータリーエンジンエクステンダーは
後部のフロア下に搭載されている。
日産のFF車向けHVシステム
アクセラ ハイブリッド


三菱自動車のプラグインハイブリッドシステム

アウトランダー PHEV
アウトランダー PHEV
フロントモーターとジェネレーター
アウトランダー PHEVのエンジンルーム内に設置されるフロントモーター(右上)と、ジェネレーター(中央下)、冷却用油圧ポンプ類(左下)。
アウトランダー PHEV 2013年1月に日本で発売した、アウトランダーのPHEV版。前/後輪にそれぞれモーターを備えた「ツインモーター4WD」システム採用。エンジンは主に発電用に用いられ、高速走行時には車輪に駆動力を伝える。複合燃費は67.0km/L(JC08モード)。2014年5月にはマイナーチェンジを行い、一部内外装を変更した。
モーターとジェネレーターのシステム 三菱は、アウトランダーPHEVの技術をアピールするため、前輪部にあるモーターとジェネレーターのシステムなどを展示。後輪用の駆動モーターは軽EV i-MiEVと同じく水冷型であるが、この前輪のシステムは油冷式。エンジンの隣に設置するために小型化しており、また、エンジンルームは高温であり非常に冷めにくいため、油冷式を採用した。また、油はモータのベアリングの潤滑油も兼ねている。
駆動用バッテリーモジュール
アウトランダー PHEVに搭載される駆動用バッテリーモジュール
車載充電器とDC/DCコンバーター
アウトランダー PHEVの車載充電器とDC/DCコンバーター


富士重工/スズキ/日産の最新パワートレイン技術

富士重工:レヴォーグとダウンサイジング直噴ターボエンジン

レヴォーグ 2014年6月20日に発売予定の新型スポーツツアラー。1.6Lと2.0Lの水平対向直噴ターボエンジンが用意される。カメラの認識範囲の拡大・カラー化など、機能が向上した、先進運転支援システムEyeSight(ver.3)を初めて搭載。EyeSight(ver.3)ユニットの量産体制を万全にするために、発売日を当初より一ヶ月遅らせ6月20日まで延期した。
5月時点での予約台数は1.2万台で、1.6L モデルが約7割、2.0Lモデルが約3割となっており、EyeSightの装着率は99%とのこと。
1.6Lターボ付
水平対向
エンジン
レヴォーグ向けに新開発された、ダウンサイジング直噴ターボエンジン。燃費性能は17.4km/Lで、最高出力は125kW、最大トルクは250N・m。レギュラーガソリン仕様。
燃費を向上させるために、富士重のターボ車として初めて、アイドリングストップシステムを搭載。他に、タンブル流を強化する新開発のTGV(Tumble Generator Valve)、EGRガス量を増加できる新開発のEGRクーラーを採用した。
新型レヴォーグ
新型レヴォーグ
新開発 1.6Lターボ付水平対向エンジン
新開発 1.6Lターボ付水平対向エンジン

スズキ:1.2L デュアルジェットエンジンと5速AMT

1.2L デュアル
ジェットエンジン
ハイブリッド、直噴、過給などのコストのかかるシステムを使わずに、燃費と走りの両立を図るため、熱効率の向上を狙って開発したエンジン。2013年7月に、小型車Swiftにこのエンジンを搭載したグレードを新たに設定した(最高出力67kW、最大トルク118N・m、燃費性能 26.4km/L:JC08モード)。
1)デュアルジェットシステム:1気筒当り2本のインジェクターを左右のそれぞれのポートに配して、噴霧ターゲットの自由度を向上させ、ノック抑制効果と燃費改善に最適なインジェクター配置を取ることができた。
2)燃焼改善:燃焼室の球形状化、筒内流動の強化により、熱効率を向上。
3)ノック抑制:水冷式クールドEGRシステムをスズキとして初めて採用。
4)メカニカルロス低減:タイミングチェーン、ピストンなどに摩擦抵抗を抑える工夫をした。
5速AMT
オートギアシフト
新しい5速MTに、クラッチとシフト操作を自動で行う、電動油圧式アクチュエーターを搭載。2014年2月に行われたデリーモーターショーで初公開。現地で生産する新型コンパクトカー セレリオに搭載して発売されている。今後欧州でも発売される予定。
1.2L デュアルジェットエンジン
1.2L デュアルジェットエンジン
5速AMT オートギアシフト
5速AMT オートギアシフト

 

日産:ミラーボアコーティング

アルミ製エンジンのシリンダー内に、鋳鉄製シリンダーライナーを挿入する代わりに、溶けた鉄をシリンダーに吹き付けて薄い皮膜を形成し、鏡面加工する技術。ピストンとの摩擦を低減すると同時に、軽量化、冷却効率の向上も図ることができる。今後、量産車向けエンジンにグローバルに採用を進めていく。
ミラーボアコーティングを施したシリンダー
ミラーボアコーティングを施したシリンダー
従来の鋳鉄ライナーを挿入したシリンダー
従来の鋳鉄ライナーを挿入したシリンダー

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>