日産自動車:Renault・日産新型車の80%以上をCMFベースで開発

Renault・日産の主要機能を統合、Daimler、三菱自との提携も強化

2014/04/03

要 約

CMFのイメージ図
CMFのイメージ図

 日産は、Renaultと共同でCMF(Common Module Family)戦略を推進する。2013年にCMF-C/DカテゴリーのX-Trail、Rogue、Qashqaiを投入し、次いでCMF-A、CMF-Bカテゴリーでの適用を進める。Renault・日産の新型車の80%以上をCMFベースで開発し、2020年までに日産・Renault車の70%をCMFベースで生産する計画とされる。

 併行して、Renault・日産アライアンスは2014年4月1日よりアライアンスの研究・開発、生産技術・物流、購買、人事の4つの機能を統合する。少なくとも年間43億ユーロ(6,000億円強)にのぼるシナジー効果創出を目指す。

 既に提携しているDaimler、三菱自動車との協力分野も拡大する。

 このように、Renault・日産は、アライアンス内および提携するパートナーとのシナジー効果を積み上げ、生産・販売台数で上をいくトヨタ・VWに対抗する方針。因みに、2013年の日産・Renault・AVTOVAZの世界販売台数は、826万台に前年比2.1%増加した。


関連レポート:日産自動車:2013年4~12月期販売費と品質コストが増加、北米と新興国で減益(2014年2月掲載)

                      トヨタ:TNGAの導入で商品力の向上と原価低減を同時に達成 (2014年1月掲載)



2020年までにアライアンス生産台数の70%をCMFベース車とする

 Renault・日産アライアンスはCMF(Common Module Family)の導入を進めている。2020年までにアライアンス生産台数全体の70%の車種に適用し、1モデル当たりの開発費を最大40%低減、部品購入コストを最大30%削減するとしている。Renault・日産は、CMF導入により、規模で上回るトヨタ、VWに対抗する。

 削減した経費は、日産の商品に新たな付加価値を加えることに用いる。例えば2013年にCMFベースで開発した新型Rogue、X-Trail、Qashqaiでは、Lane departure warning、Around-view monitorとAutomatic parkingを設定した。2020年までに、CMFを活用し開発した車両を、世界10カ国以上で生産する計画。CMFは3つのカテゴリーで進めるとしている。

CMFの内容と目的

 CMF(Common Module Family)は、車全体をエンジンコンパートメント、コックピット、フロントアンダーボディー、リアアンダーボディー、電気/電子アークテクチャーの5つのゾーンに分け、それぞれのゾーンについて"Big modules"を複数開発する。開発担当技術者はこれらのBig modulesを組み合わせることにより、かってないほど多様な車種を開発することが可能になる。
 従って、CMFは従来のプラットフォームを共有する仕組みではなく、複数のプラットフォームを包含する"Modular architecture system"だとしている。
 CMFによる車両アーキテクチャの導入や顧客に見えない部分の共通化は、コスト削減に大きく貢献する。これにより、環境・安全や新技術を全ての顧客に届けるという戦略の推進が可能になった。

 

CMFを適用する主要3カテゴリー

CMF-A  高成長市場向けの、小型で燃費性能に優れる超低価格モデルを生産する。
CMF-B  日産March、Renault ClioなどBセグメント車が対象。
CMF-C/D  大型乗用車、多くの日産・RenaultのSUV、Crossover車が対象。

資料:Renault-Nissan Media Room
(注)ブランドでは、Renault、Nissan、Dacia、Datsunが対象となり、Infinitiは含まない。

 

 



CMF-C/D、CMF-A、CMF-Bカテゴリーの新型車を順次投入

 Renault・日産は、2013年からCMFを適用したC/Dカテゴリーの新型車投入を開始した。次いで2015年にCMF-Aを採用して超低価格車をインドで開発し、2015年に生産開始する計画。

 さらに次の段階として、Bカテゴリーの日産March、Note、Renault Clioなどの次期型車をCMFベースで開発し、2016年に次期型Marchなどが投入される見込み。

 

新型X-Trail
CMF-C/Dベースで開発した新型X-Trail
(東京モーターショー2013から)
redi-GOコンセプト
CMF-Aベースで開発する超低価格車
Datsun "redi-GOコンセプト"
(2014年2月インドで開催された12th AUTO EXPO 2014から)

 

CMF-C/Dカテゴリー:2013~2014年に投入

 Renault・日産は、CMF(Common Module Family)を適用する開発計画を2013年6月に発表した。まずコンパクトとラージセグメント(C/Dセグメント)から着手し、年間160万台、14モデル(Renaultグループ11モデル + 日産3モデル)をカバーする。2013~2020年の間に段階的に適用車種を拡大する。

 

Renault・日産がCMF-C/Dベースで開発するモデル

発売時期 車種
日産車 2013年後半 Qashqai(英国工場で生産)/Rogue(北米テネシー工場)/X-Trail(日本他)
Renault車 2014年後半 Scenic(MPV), Espace(MPV),Laguna(セダンとワゴン)

 

CMF-Aプロジェクト:超低価格車を開発し2015年に生産開始

CMF-A車を
インドで開発
 日産は2013年7月、CMF-Aと称するプロジェクトで、CMF採用車の中で最も手ごろな価格帯の製品を開発すると発表した。2015年に、インド・チェンナイ工場で生産を開始する。CMF-A車は、タタ自動車が「ナノ」を生み出したようにインドの低コスト開発力に期待し、開発から生産まで全てインドで実施する。生産する超低価格車は東南アジアや中南米へも輸出する計画。
 Renault・日産は、インドのBajaj Autoと2500ドル程度の超低価格車プロジェクトを進めていたが、方針の不一致から2012年に提携を解消した。超低価格車をCMF-Aベースで開発・生産することに変更した。
Datsun i2  日産がAuto Expo 2014に出展したDatsun「redi-GOコンセプト(日産の社内コードはDatsun i2)」は、ハッチバックの利便性とSUVのエッセンスを融合したクロスオーバー車。手ごろな価格に設定し、新車を初めて購入する層がターゲット。価格は20~30万ルピーとされ、Maruti 800などのライバル車となる(2014年3月にインドで発売した"Datsun GO"の価格は312.270ルピーから)。
Renault A-Entry  Renaultは「redi-GOコンセプト」をベースに超低価格車を開発してインド工場で生産し、インドおよび南米で販売する計画。

 

CMF-Bカテゴリー:2016年に発売

 Renault・日産は、日産March、Renault ClioなどBセグメントの次期型車をCMFを活用して開発し、2016年にも生産を開始する。最大で年間300万台規模の車両が対象となる見込み。Bセグメント車間で、部品を5割程度共通化する方針。
 現在インド工場で生産している日産Micraは、2016年からRenaultのフランス工場で年間82,000台の規模で生産する(2013年4月発表)。インド工場は、Datsun GO、GO+、redi-GOコンセプトベース低価格車の生産が加わりフル稼働になる見込み。

 

 



Renault・日産:主要4機能を統合

 Renault・日産は、2014年4月1日付で研究・開発、生産技術・物流、購買、人事の4 機能を統合すると発表した。各機能を、新任のアライアンス副社長が統括する。「研究・開発」と「生産技術・物流」を担当するアライアンス副社長には日産出身役員が就任し、購買と人事を担当する副社長には、Renault出身の役員が就任した。

 両社は、これまでもプラットフォームの共有などを進めてきたが、プロジェクトごとの協力関係であった。今回は組織を統合して、両社それぞれの独自性や企業文化を維持しながら、Renault・日産アライアンスの年間800万台を超えるスケール・メリットをより強力に発揮して、トヨタ、VWに対抗することを狙う。2016年までに少なくとも年間43億ユーロのシナジー効果の創出を目指すとしている。

Renault・日産:主要 4機能を統合

研究・開発  Renaultと日産は研究・開発部門において、CMF(Common Module Family)開発、先行開発、パワートレイン開発(EVを含む)、システム開発、実験施設および実験機能を統合する。また両社の開発分担領域を住み分けて、重複投資を避ける狙いもある。
 開発部門では、統合後の新組織に全開発担当者の6割にあたる約2万人が所属し、残りの4割の担当者は、日産、Renaultそれぞれの車両の個性につながる部分を担当する。
生産技術・物流  アライアンス共同生産組織は、グローバル生産戦略(アライアンス外からの調達を含む)、生産工程技術、生産管理およびサプライ・チェーン・マネジメントを担当する。
 両社の工場はそのまま残し、引き続き独自の生産計画を立案するが、生産部門の責任者を一本化して一体管理できる体制に移行する。また物流やサプライチェーン、生産手法などを統一、両社の工場で日産車もRenault車も生産できるようにし、アライアンス内で生産能力を融通できる体制を整える。
購買  両社の共同購買組織は、設立から10年経過した。研究・開発と生産の機能統合に伴い、さらなる購買におけるシナジー効果の増大と、より大きなスケール・メリットを見込んでいる。
 これまでは、プラットフォームを共有していても、部品の発注先は別であることが多かったが、今後は同一サプライヤーに同一部品を発注する割合が増加し、発注量の増加により多くのコスト削減効果が期待できる。
人事  Renaultと日産は、アライアンス共通のタレント・マネジメント(注)方針を含め、アライアンス全体を網羅する共通の人事プロセスを導入する。
 アライアンス間で幹部の人事交流を進める。両社の幹部約2,000人のデータベースを構築して、新工場の立上げなどの際に両社から適材適所の人材を送り込めるようにする。

(注)タレント・マネジメントは、人を資源として捉え、育成・開発していくための「採用、能力開発、評価、報酬などを戦略的に進める取り組みやシステム」を指す。

 

 



Daimlerとの協業を拡大

 Renault・日産とDaimlerは、2010年4月に資本持合いを含む提携を結んだ。

 日産によると、2013年9月時点で10項目の重要プロジェクトが進行している。新たに、日産の商用バン「NV350アーバン」をDaimler傘下の三菱ふそうに供給すると発表した。提携は、Infinitiブランド車に関連する高級車分野が多いが、Smart/Twingoなどの小型車、商用車からFCV共同開発まで広い範囲におよんでいる。

Renault・日産とDaimlerの共同プロジェクト

ガソリンエンジンの
共同生産
 日産の米国Decherdエンジン工場に新建屋を建設し、2014年半ばからMercedes-Benzの4気筒エンジンを生産。Daimlerの米国アラバマ州Tuscaloosa工場で生産するMercedes-Benz C-Classと新型Infiniti車が搭載する。
ターボエンジンの
共同開発
 ターボチャージャー付直噴3気筒・4気筒エンジンファミリーの共同開発は計画通り進んでいる。
Infiniti Q50
ディーゼル車
 Daimlerの協力の基、2.2L ディーゼルエンジンとATを組み合わせ搭載するInfiniti Q50を、2013年秋欧州で発売した。
SkylineにM-Benz製
エンジンを搭載
 SkylineにM-Benz製ターボ2000ccエンジンを搭載し、2014年内にも日本国内で発売する計画(現在国内で発売するSkylineは、3500ccガソリンエンジン + ハイブリッドシステム搭載車のみ)。Infiniti Q50も搭載し輸出すると見られる。(2014年4月報道)
Infiniti Q30  Daimlerのコンパクトモデルの構成部品を使った「Infiniti Q30コンセプト」ベースの車両を2015年から発売する。英国のSunderland工場で生産する。
小型高級車
共同生産
 日産のメキシコ第3工場で、小型高級車を共同生産することを協議中と発表。2014年4月初め時点では、計画の具体化は進行していない模様。
Smart/Twingo  4人乗りSmartとRenault Twingoを、スロベニアのRenaultノボメスト(Novo Mesto)工場で生産し、2014年後半に発売する。4人乗りSmartのコンセプトモデル「Smart Fourjoy」は、2013年Frankfurt Motor Showで公開された。
 次世代のSmart/Twingoを、共通の設計思想で開発中。
M-Benz Citan  Renault Kangooベースの小型商用バン。2013年に発売された。
FCV  Renault・日産、Daimler、Fordが、FCVを共同開発中。日産は2017年に共同開発車を投入、Daimlerも2017年に生産を開始する予定。
商用車  Daimler傘下の三菱ふそうが、2トンクラストラックを日産へ供給、日産は1.5トンクラスのトラック「アトラスF24」をふそうに供給している。
 2014年中をめどに日産が海外向け商用バン「NV350アーバン(日本での商品名はNV350キャラバン)」を三菱ふそうに供給し、ふそうは「キャンターバン」として中東、アジア、南米などの新興国で販売する。

(注)今後高級車の分野では競合することも想定されるが、日産とDaimlerは「InfinitiとMercedes-Benzの顧客層の重複は限定されており、また協力から得られるプラス面がマイナス面より多ければ提携を続ける意味がある」としている。

 

 



三菱自動車と軽ベースグローバルエントリーカーの共同開発を検討

 日産と三菱自動車は2011年6月に、軽乗用車を共同で開発・生産する株式会社NMKVを設立し、既に日産デイズ・デイズルークス、三菱eKワゴン・eKワゴンスペースを発売した。

 2013年11月、Renault・日産アライアンスと三菱自動車は協業する分野を拡大し、なかでも軽自動車のプラットフォームをベースとする新たなグローバルエントリーカー共同開発を検討すると発表した。

Renault・日産と三菱自動車:協力関係を拡大

Renault車ベースに三菱ブランドセダンを開発 Dセグメント車  Renaultの車両をベースにした三菱ブランドのDセグメント・セダンを開発し、米国およびカナダで販売する。Renault Samsungの韓国釜山工場で生産し、米韓のFTAを活用して北米へ輸出する。ベースとするRenault車はLagunaとされる。
Cセグメント車  グローバル市場に投入するCセグメントセダンを開発する。生産工場は協議中。ベースとするCセグメント車はMeganeとされる。
グローバルエントリーカー  両社の合弁会社である株式会社NMKVを発展・強化し、日本で両社が販売している軽自動車のプラットフォームをベースに新たなグローバルエントリーカーを開発する。電気自動車バージョンも含めて検討中。
軽商用EV  軽商用EVの日産への供給を検討中。
資料:Renault・日産・三菱自動車共同広報資料 2013.11.5
(注) 1. 上記の発表と同日に発表された三菱自動車の2014~2016年度中期経営計画「ニューステージ2016」では、「協業を通じた経営リソースの有効活用」を謳っている。
2. 三菱自は、既に日産の高級セダンFuga/CimaのOEM供給を受け、三菱Dignity/Proudiaとして販売している。セダンについてはRenault・日産に全面的に委ねることとなる。

 

 



Renault・日産の2013年世界販売は826.5万台

 Renault・日産アライアンス(ロシアのAVTOVAZを含む)は、前年比2.1%増の8,264,821台で過去最高。Renault・日産は、アライアンスの一体運営を深め、800万台を超えるスケール・メリットを活かしてシナジー効果を高めていく方針。

Renault・日産アライアンスの世界販売台数

日産 Renault AVTOVAZ Renault・日産合計
2012年 4,940,133 2,550,286 606,778 8,097,197
2013年 5,102,979 2,628,208 533,634 8,264,821

資料:Renault・日産広報資料 2013.2.4/2014.2.7
(注)提携を強化している三菱自動車の世界販売は、2012年度98.7万台、2013年度見込み106.5万台で、三菱自を含めた総合計台数は900万台を超え、トヨタ(2013年998万台)、VW(同971万台)に対抗できる台数となる。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>