EV対FCV対CNGV;エネルギー地図を塗り替えるのはどの燃料か?

東京モーターショーでの各社の主張とその検証

2013/12/26

要 約

 東京モーターショーに出展されたコンセプトカーの傾向として、EVの顕著な減少が認められた。エンジンは低燃費化によって当面なお多数派を維持するが、次代を継ぐのはEV、FCV、CNGVのいずれであろうか。社会的ニーズと関連づけ、各技術が原理的に有する得失を比較した。また、シェールガスの採掘技術の進歩で天然資源の分布図は塗り替えられたが、これを燃料とするCNGVは先進国、新興国ともに普及が認められる。その燃焼特性の良さ、低価格とあいまって、天然ガスは環境対応車に最適な燃料となる可能性を秘めている。

関連レポート
▽東京モーターショー2013:

・日本メーカー:コンセプトカー編 ・日本メーカー編 軽自動車と市販車 ・日本メーカー編 エンジンと商用車
・サプライヤー編 EV/HV関連部品 サプライヤー編 安全装備、燃費向上 ・海外メーカー編

 



本稿のねらい:各種新エネルギーの得失を探る

 電気自動車(以下EV)の市場が、期待に反して拡大していない。バッテリー能力の限界がもたらす、車としての使い勝手の悪さと価格・維持費の高額さが大きな障害となっているためである。これに相対するように、トヨタ、ホンダが相次いで燃料電池車(以下FCV)の2015年発売を表明した。発電装置(Fuel Cellは電池でなく発電機である)を搭載することで航続距離の改善をはかろうとする試みである。しかしながら、その価格はバッテリーEVをむしろ上回るうえ、市場ニーズを充足するだけの生産量も計画されていない。

 電動車両の展開にこうした行き詰まりが感じられる今、世界を見渡せばもうひとつ注目されているクリーンカーがある。それが圧縮天然ガスを燃料とする自動車(以下CNGV)である。メタンを主成分とする天然ガスは、後述する数々のメリットのため各種産業で広く利用されている。さらに、近年の採掘技術向上から大量に出回るようになったシェールガスによって、価格下落と産油国依存からの脱却が革命的といえるほどに進行しつつある。

 本稿では、上記3種の環境対応車それぞれの得失を考察するとともに、大きな利点をもつにもかかわらず語られることの少ないCNG車について詳細に紹介する。

 



東京モーターショー2013:様変わりしたコンセプトカーの動力

 インターネット情報が氾濫する今日にあっても、国内メーカーの将来の行方を知るうえでモーターショーが大きな意味を持つことに変わりは無い。そこは自動車の製造・販売、そして購入・使用両者の双方向コミュニケーションの場なのである。第43回を迎えた東京モーターショー2013年の大きなトピックのひとつは、冒頭に述べた新エネルギーについての各社の方針である。直前に開催されたフランクフルトショーとの比較も、欧州の動向を知るうえで興味深い。

 将来エネルギーに関して、各社の開発や市販化の方針はもはや総花的内容ではない。対象を絞らなければ開発工数や費用が膨大となり、大手メーカーといえども耐えられるものでは無い。つぎに示す表は、各ショーで展示された国産メーカーのコンセプトカー台数を原動機種別に比較したものである:

 

東京モーターショー フランクフルトショー
2013
2013 (2011)
ガソリン :
ハイブリッド :
EV :
FCV :
CNGV  :
16台
7台
3台
2台
1台
( 3台)
( 3台)
(10台)
( 2台)
( 0台)
12台
8台
2台
0台
4台

(マークラインズ集計による概数。乗用車のみ、市販車および競技車両を除く)


 その市場での復権を象徴するように2013年に絶対多数を占めたのは通常エンジン車であった。最近の低燃費化は著しく、ハイブリッド車に迫るものがある。一方ハイブリッドは、燃費志向から動力性能(瞬時に電動力を付加し加速性能を向上)を重視するものが増えてきた。

 その他動力の車両についての傾向を以下にまとめる:


 *EV:出展数の凋落も著しいが、2011年東京でのEVショーモデルが通常サイズ、形状の乗用車中心であったのに対し、2013年東京の3台は超小型モビリティやトレッドの狭隘な変形車両のみで、電動車両がニッチな領域に追いやられる構図を示唆する様にも映る。

i-ROAD MC-β ブレイドグライダー

(左よりタンデム2座のトヨタ i-ROAD, 全長2.5m x 全幅1.3mに収まる2座のホンダMC-β, 前輪トレッドが極端に狭い3座の日産ブレイドグライダー)


 *FCV:東京に出展したのは両回ともトヨタとダイハツのみであった。2010年代半ばの市場投入を絶対命題として継続的な開発がつづけられているが、その時点で他の動力に対する競争力が備わる訳ではない。FCVを推進する背景は水素社会の実現に対する産業界や行政の期待であり、水素の商業ベース生産の牽引役を自動車が押し着せられた格好である。

 トヨタは、2008年に限定販売したSUVベースの車に対し、2015年の一般販売対応のため通常の乗用車パッケージングでまとめてきた。これはFCスタックのサイズ当り出力倍増、燃料タンク数半減、そしてコスト低減など要素技術を磨いた成果である。

 ホンダの燃料電池車は東京でなく、同時期のロサンジェルスショーで披露された。今回特に技術的なブレークスルーの発表はなく、車両はモックアップであるし仕様(スタック出力密度 3kW/l , 総出力 1000 kW 以上、航続距離480km以上、水素タンク再充填3分)は判で押したように上記トヨタ車と同等である。今回発表は意思表示以上のものではない。

 上記2車が水素燃料を前提としているのに対し、ダイハツが非水素燃料を検討していることは特筆に値する。その狙いは、水素使用に不可避なFC内プラチナ触媒と高圧タンクの廃止であり、軽自動車用として搭載面およびコスト面で魅力があろう。開発に要する期間は水素FCより長期と予想され、2015年近傍の発売は計画されていない。

# # #

ダイハツのFCVコンセプトカー、FC凸DECK ー 外観(左)、座席下に搭載されたFC(中)、FCスタックのカットモデル(右)


*CNGV:
フランクフルトでは、CNG乗用車販売の2強であるフィアットとVWグループに加えオペル、ダイムラーらも新型CNG乗用車を展示した。国内での関心の低さから東京でCNG車の展示は予期しなかったが、1台のCNGエンジン試作車がマツダブースに出展された(詳細は後述)。 


 エネルギー源に関する国産各社の方針を類似点で整理するなら、次のとおり2社ずつの4グループに分けると把握しやすい:

1.  EVの市販化で先行した電気自動車組
   日産:EV用途を商用車や超小型車に展開
   三菱:電動駆動系とエンジンを併用(PHEV)してEVの欠点を補完
2.  EVの量産を見送り、環境対応の所信表明を求められるグローバルメジャー組
   トヨタ:燃料電池車を2015年に発売する旨、発表
   ホンダ:ロサンジェルスにおいてトヨタと同様に2015年に市販化の意思表示
3.  当面、内燃機関の燃費改善をすすめる軽自動車主力組
   スズキ:電動化はエンジン主体のハイブリッドにとどめる模様
   ダイハツ:非水素燃料のFCEVを試作、水素インフラへの対案としている
4.  ファン・トゥ・ドライブ重視組
   スバル:EV市販計画は延期、好調な現行製品の路線を維持
   マツダ:あくまで内燃機関重視、エタノールやCNGなど新燃料への展開

 

<マツダ 3 スカイアクティブ-CNG コンセプトの概要>

 新型アクセラ(海外ではマツダ 3 と呼ばれる)は世界戦略車として、さまざまな原動機を搭載し各国燃料事情に対応する"マルチソリューション"のベースとなる。ガソリン、ハイブリッド、ディーゼルに続きエタノール(混合率85%のE85燃料)およびCNGへの対応が表明されており、今回のモーターショーではCNG版の試験車両が展示された。主な仕様を以下に列挙するが、未だ試験段階(認証取得未)につき変更される可能性もある:

*ガソリンまたはCNGいずれでも運転可能なバイフュエル・エンジン
   ‐ベースのガソリン系統と、吸気菅内にCNGを供給するガス系統を併設
   ‐燃料切り替えは運転席ATセレクターレバー根元のスイッチにて行う
   ‐下記タンクやインジェクタ―など、CNG専用部品のサプライヤーは米国Quantum Technologies(マークラインズ推定)

*天然ガス車載には、内圧20 MPa, 75リッターの高圧ガスタンクを使用
   ‐天然ガスの液化搭載は試みず、早期の市販を意図
  (一部長距離トラックメーカーは -162℃保温が可能な液化タンクを検討している)

# #
上左:CNG系統を追加したエンジンルーム
上右:エンジンを含めベース車はアクセラ
左:エンジンルーム内で視点をやや下に取ったショット。
  2種の燃料系が見て取れる
# 左:"GAS"の表示のあるボタンで燃料を切り替える
セグメント様の曲線はタンク内CNGの残量表示
#

 

 



天然ガスとメタンの一般的特性

 マツダが試みるCNGは、シェールガス革命とも表現される資源量の豊富さから世界的に脚光を浴びつつある燃料であり、モーターショーの場でのアピールは注目に値する。メタンを主成分とする天然ガスの利用自体は特に新しいものではないが、その利点の大きさを理解しておくことは非常に重要であるため、ここに総括する:

<物性と資源量>

 メタンは分子構造が炭化水素としては最もシンプル(CH4)であるため、自然界のさまざまな場所で生成・埋蔵されている:
   ‐油田、炭坑、シェール層などの化石燃料由来の天然ガスの主成分
   ‐地下ハイドレート層からの解凍分離
   ‐有機物の発酵など自然界での常時発生
   ‐石油と異なり、人工的にも生産可能

<実用上の利点>

 単純・均質・低炭素割合といった化学的特性によって以下の優れた長所をもつ:
*埋蔵量の多さ、生成の容易さから供給量が多く長期にわたり枯渇の心配がない。
*同じ理由から、燃料価格が安い。
*資源量が豊富で地域的偏りが少なく、エネルギー自給が狙える
*燃焼特性がよい
   ‐CH4は石油と同じ炭化水素で、ガソリンやディーゼルエンジンをベースに小変更でエンジンが設計でき、また使用・維持・修理も既存技術で対応できる
   ‐排気がクリーンである--- 対ガソリン比でCO: 70-90%, NMOG(HC): 50-75%, NOx: 75-95% の削減が可能である。また、排気煙(すす)はほとんど発生しない。
   その理由は、分子内にCが1個、Hが4個 と水素の割合が高いこと、ガス状で燃焼室に供給されるため極めて均一な混合気が形成されること、CH4は光化学反応にあずからないため規制対象外であること等が挙げられる。
   ‐オクタン価が高いうえ均一な混合気が形成されるため、ノッキングせず静粛な運転ができる:
   メタン RON 118 に対しガソリンは国内レギュラーで RON 91
   ‐燃料消費、CO2排出が少ない:メタン性状に帰する削減率は20%といわれている。


 一方、デメリットとして挙げられるのは発熱量の少なさ、ガス運搬の非効率性である:
*LPGと異なり液化に非常な高圧/低温を必要とする。よってガス状で搭載されるためタンク容積が大きくなる。
*発熱量が 8000 kJ/リッター と低い (ガソリンは32520kJ/リッター)
*エンジンで吸気管にガス状供給した場合、エンジン容積効率が10-15%低下する。
  これは、同一排気量で比較すると最高出力が10-15%低下することと等しい。

 しかしながらこれらデメリットは、EVの航続距離ほど技術的に困難な問題ではなく、必要に応じエンジンの排気量アップやタンク増設で実用上の許容範囲内に納めることができる。国内で市販されたことがあるCNG乗用車の出力は 190kW (258馬力)に及ぶものもあり、航続距離は300-350km (10-15 モード)程度のものが多かった。

<各国でのCNGV普及状況>

 こうした大きなメリットをもつ天然ガス車両は、各国で普及の途上にある。現状をCNGV台数順に上位13ヵ国および自動車先進国であるドイツ、日本を示した。フランス、イギリス、スペインの保有台数は日本の1/4以下である。

 

国名 CNGV 台数 CNG スタンド数
すべての自動車 乗用車、小型商用車 総数 公営 私営
Iran 3,300,000 3,293,948 1,992 1,957 35
Pakistan 2,790,000 2,609,500 2,997 2,997 0
Argentina 2,244,346 2,244,330 1,916 1,916 0
Brazil 1,743,992 1,743,992 1,793 1,793 0
China 1,577,000 1,089,070 3,350 3,150 200
India 1,500,000 1,469,004 724 405 319
Italy 846,523 843,023 959 912 47
Colombia 450,633 427,173 692 692 0
Uzbekistan 450,000 450,000 213 213 0
Thailand 413,047 345,881 488 462 26
Ukraine 388,000 19,400 324 132 192
Bolivia 254,722 254,722 156 156 0
USA 250,000 231,400 1,438 535 903
...
Germany (19位) 96,349 94,707 915 844 71
...
Japan (23位) 42,590 16,564 314 274 40
NGV countries 17,730,433 16,310,105 22,162 19,779 2,383

出展:NGVA Europe 2013.9.23


 この表から認められる傾向は次の通りである:
*普及は先進国、新興国を問わない。
*天然ガス車が多い国で台数の牽引役となっているのは、ウクライナと日本を例外として小型車両である。
*天然ガススタンド数の順位は車両数とやや異なるが、車両が多い国はインフラも概ね普及している。ドイツのみは台数の割に公営スタンド数が多い。

 日本では、一定経路を運行する路線バスやゴミ収集車など大型車両が多数を占めている。

 



環境対応車3種の比較のベース - Well to wheel効率

 EV, FCEV, CNGVが次世代に好適とみなされる背景は、自動車としての運動性能が高いからではなく、エネルギー資源の有効利用、さらにエネルギーセキュリティの観点からである。したがってその優劣を論じるにあたっては、比較の指標がその観点に整合していなければ判断を誤ることになる。

 まず必要なことは、天然資源の採取(Well)から自動車の走行(Wheel)まで、切れ目なく経路に沿った効率評価である。これを以下に図示する:

天然資源から車両までの総合効率比較


      トヨタ自動車発表の資料をもとにマークラインズで作成
      効率数値の出典は下記による:
      *黒字:トヨタ自動車調べ
      *赤字:日本エネルギー経済研究所の経済産業省へのレポート
      *青字:東京電力(発電第一ステージの排気廃熱を利用したコンバインドサイクルの例)


 いきなり結論めくが、上図は「同じ天然資源をもとにする限りいずれの原動機を使用しても総合効率に大差がない」ことを示している。この他にもさまざまな効率の数値が報告されており、上記出典は行政が引用する例を複数示したものである。車に充填するまでのエネルギー製造技術が流動的で効率に大きな幅があり、さらに車上での効率もエンジン、FC、モーターの特性から、使用負荷域によって大きく異なる。したがって現時点では、各効率は数%の差で優劣を云々できる精度にはない。

 さらに、理解を誤りがちな重要点を、図上でいくつか指摘しておきたい:

*EVの効率は決して高くない
 電動車両のオンボード効率(図の肌色の部分)は確かに高く、EVの長所としてアピールされることも多いが、エンジンの熱効率と直接比較することはできない。モーターに入力される電気エネルギーはすでに燃料のような保存状態になく、発電機で励起された状態にある(故に燃料のように安定して貯蔵できない)ため、発電効率を含めることが正しい取り扱いである。

*高圧燃料の充填に費やされるエネルギーは、想像されるよりはるかに大きい
 FCの最新の仕様によればタンク圧は70 MPAという稀に見る高圧であり、車両への補給のため圧縮するだけで水素自体のエネルギーの 15% を消費する。これは動力として回収されず、FCで常圧に戻る際に失われる。

*エネルギーは貯蔵中にも失われる
 気化した水素は非常に漏れやすく(ボイルオフと呼ぶ)、その値は日当り4%にも及ぶ。また、電気エネルギーは燃料のように安定した保存ができずバッテリーの自己放電のかたちで失われる。これら損失は貯蔵期間によって異なるため単純に算入できないが、実用上 EVやFCEVの総合効率を低下させる要因のひとつである。

 

 



3種の環境対応車についての得失

 さきにも述たべが、現時点で数%の効率差をもって優劣を論ずることは困難であるため、CO2排出の大小は断定できない。新エネルギーへの社会的要請もその点でなく根本的なエネルギー転換によるセキュリティ向上である。ここでは、その点に注目して各車両の得失を列挙する:

1.天然資源の持続性およびエネルギーセキュリティ

 EV:発電はさまざまなエネルギーから行えるため、持続可能性は最も高い。また、自然エネルギーやバイオマスなど、化石エネルギーの乏しい地域でも選択肢は大きい。

 FCV:電力を、貯蔵可能な水素に転換するというのが水素社会の基本的発想である。したがって上記の電力の長所はFCVにも同様に当てはまる。ただし、利用エネルギーのフレキシビリティは高いが、水素製造の効率が低いため電力は直接利用が好ましことは言うまでもない。一方、発電所の種類によっては細かな起動/停止が行えないため、需給の差から余剰電力が発生する。また自然エネルギーは間歇的で系統合流に好適ではない。これら電力を利用するのであれば水素を製造する意義はあろう。

 CNGV:メタンの供給源は天然ガスだけではない。さまざまな形で地中に埋蔵されており、また自然界の発酵現象をはじめ、生成も可能であり長期にわたる安定供給が見込める。

 

2.インフラ整備

 EV:EVオーナーは住宅毎にコンセントを設置する傾向にあるため、台数の増加が充電ポイントを確実に増やしてゆく。スマートメーター(高度電力消費計)の普及によって、通りすがりの車両への個人宅での充電と支払いも技術的には可能になるだろう。

 FCV:水素を充填するスタンドが必要となるが、水素製造がビジネスとして成立するのかは検証を要する。埋蔵資源や電力は、エネルギー有効利用の点では水素に改質せずそのまま使用するべきである。また、余剰分や自然エネルギー発電を超える量の電力供給は経済的観点から期待できない(即時使用分のエネルギーは需要者への電力直接供給の方が利益が大きい)。この限られた不均一な電力をもとに商業ベースの水素製造が可能か試算する必要があろう。

 CNGV:CNGスタンドは増加しつつあるが、高圧ガス貯蔵設備であることからガソリンスタンド経営者が法規上手軽に増設することができない。こうした人為的障害を簡素化してゆくことで普及にいっそうの拍車がかかるものと思われる。また、忘れてならないのは各戸に行き渡っている都市ガスである(成分は熱量を調整した天然ガス)。小型コンプレッサーがあれば技術的には家庭でのタンク充填が可能で、そうしたポータブルコンプレッサーはすでに海外では商品化の例がある。

 

3.安全性:

 EV:リチウムイオン電池を使用する車両では対策が必要である。この電池は充放電制御が完全に停止したとき、あるいは衝突などで物理的に変形し内部短絡が生じたとき原理的に爆発的発火が生じる。発火は電解質として内蔵する可燃物(有機溶媒)の分解と燃焼によるが、非有機溶媒の電解質は実用化できていない。

 FCV:高圧水素は、航続距離確保の要求から70MPaという高圧で充填される。また水素はCNGや他の石油系燃料と異なり、極めて希薄でもまた濃厚でも燃焼が可能である(可燃限界4~78%)。この性質のため燃料経路への逆火やタンク破損時に水素が瞬時に爆発するファイアーボール(火の玉)といった現象が生じ得る。

 CNGV:上記の様な危険は無い。衝突事故の際にタンクが破損しても、メタンは空気より軽いため可燃混合気を多量に作ることなく散逸する(車内の様な密室に充満することは危険)。ただし、20MPaのガスのもつ噴出力の取り扱いは要注意。


 EV、FCV、CNGVの比較にあたっては、現時点で確定的な効率比較が容易でないことから、原理的に動かし難い得失をベースとしたロバストな判断をすべきである。特に、高圧水素タンクを搭載するFCVについては現時点で水素社会の推進以外、特にメリットが感じられない。安全性の懸念もあり、バランスの取れた判断が必要であろう。また、車上、地上とも原動機/原動所の効率向上がすすんでいることも考慮する必要がある。

 また、本稿では触れなかったが、CNGの低価格メリットを本来享受できるのは大口消費車つまり大型トラックである。国内メーカーが大型トラックのCNG車の販売を中止した後、レトロフィットでCNG車に改造する業者が現れている。2017年のシェールガス国内輸入開始後はCNGの低価格がいっそう際立つことになり、トラックメーカーでは -162℃保温が可能な液化タンクを搭載し長距離運航が可能な天然ガス車の開発を検討している。今後もCNGに関する動向からは目が離せない。


以上

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>