東京モーターショー 2013:日本メーカーの軽自動車と市販車
軽スポーツカー ダイハツ KOPEN &ホンダ S660、軽クロスオーバー スズキ HUSTLERなど
2013/12/10
要 約
![]() ダイハツのKOPENの外板を取り替えるショーの様子 |
第43回東京モーターショーは、2013年11月20日(水) から東京ビックサイトにて開催された。入場者数は前回を7%上回る90.3万人を数え、盛況のうちに12月1日(日)終了した。
本レポートでは日本の乗用車メーカーの軽自動車と登録車の市販(予定)車を中心に取り上げる(日本メーカーのコンセプトカーを取りあげたレポートはこちら)。
日本独自の規格である軽自動車は、近年販売を伸ばしており、2013年通年では過去最高の約202万台(2006年)を超える見通し。また、日本国内だけでなく、スズキ/ダイハツは軽乗用車をベースとした、もしくはその技術を用いた車をインドやインドネシアなどの新興国向けの車として販売している。今後、軽自動車の開発/生産で培った技術が日本メーカーの新興国展開を支える可能性もあり、海外メディアが軽自動車を取材する姿も目立った。
主な軽自動車の展示車として、ダイハツとホンダは、それぞれKOPEN、S660の、近々発売する軽スポーツカーのコンセプトカーを初披露。また、販売(予定)モデルとして、スズキは軽自動車初のクロスオーバー車 HUSTLERを、ホンダはNシリーズの4モデル目 N-WGNを、三菱/日産は共同開発のMitsubishi ek Space/Nissan DAYZ ROOXを展示した。
そして、二輪車を主な事業とするヤマハ発動機が、2010年代の発売を目指す四輪車のコンセプトMOTIVを初披露。
他に、市販(予定)車としてスポーツクーペLEXUS RC、高級スポーツセダン 日産SKYLINE、コンパクトSUV ホンダ VEZEL、日本専用ワゴン スバル LEVORGなどが展示された。
(注) 下記の表でモデル名に「*」がついているのは東京モーターショー2013で世界初披露されたモデルを示す。
関連レポート
▽東京モーターショー2013:
・日本メーカー:コンセプトカー編 | ・次世代パワートレイン技術と商用車 | ・海外メーカー編 |
・サプライヤー編 EV/HV関連部品 | ・サプライヤー編 安全装備、燃費向上 | ・EV/FCV/CNG車の最新動向 |
軽スポーツカーコンセプト:ダイハツ KOPENとホンダ S660
ダイハツとホンダは軽自動車サイズのスポーツカーのコンセプトカーを展示し、それぞれ2014年、2015年の発売を計画している。ダイハツは2012年まで先代のCOPENを発売しており、ホンダは1996年まで軽スポーツカーBEATを発売していた。
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Daihatsu KOPEN future included 写真正面がRMZ、左上端に少し写っているがXMZ |
Daihatsu KOPENの骨格部分(側面) 背後にあるオレンジのパーツが取り外された樹脂外板 |
Daihatsu KOPENの骨格部分(後方斜め上から) 樹脂外板を取り替え中 |
Daihatsu KOPENの骨格部分(正面から) |
Daihatsu KOPEN future included* | 2014年春頃の発売を目指す、軽オープンスポーツカーのコンセプト。RMZとXMZの名前を与えられた、2種類の異なるエクステリアデザインを持った車両を展示した。2つの車両は共通の骨格部分を持ち、全て樹脂化した外板部分を取り替えることでそれぞれのデザインを実現。インテリアのデザインも、変更可能となっている。 |
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外板部分を総樹脂化したことで大きく2つのメリットがある。1: 金型費用の安い樹脂を用いることで、多様なエクステリアデザインを提案できる。2: 車体の重心から遠いところを軽量化することで、車の取り回しの良さを実現。 会場では外板を着せ替えるデモンストレーションが行われ、はめるだけの作業で約5分で完了していた。市販時にはボルトなどで固定させるため、これほど簡単な取り外しはできないとのこと。 | |
全長は3,395mm、全幅は1,475mm、全高は1,275mm、ホイールベースは2,230mmのサイズを持つ。660ccの直列3気筒ガソリンターボエンジンを搭載。 | |
Honda S660 Concept* | 2015年の量産を目指す軽オープンスポーツカーのコンセプト。エクステリアデザインは2011年の東京モーターショーで披露されたEV STERを継承している。パワートレインは電動から変更され、ミッドシップに660ccのガソリンエンジン(最高出力 64ps)を積む。全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,150mm。生産は八千代工業に委託すると報道されている。 |
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新型軽自動車:スズキが軽初のクロスオーバーHUSTLERを発表、ホンダはN-WGNを初披露
スズキは、軽自動車初のクロスオーバーHUSTLERを発表した。斬新なデザインとアウトドアでの利用を訴求し、大きな関心を集めていた。また、同時にHUSTLERをベースとしたクーペもコンセプトモデルとして展示した。
ホンダは好調な軽自動車Nシリーズの第四弾であるN-WGNを初公開し、東京モーターショー開催期間中に発売した。
三菱自と日産は共同開発した軽自動車の第2弾Mitsubishi ek Space/Nissan DAYZ ROOXを展示、2014年初頭から発売する。
また、ダイハツは軽自動車の規格を最大限に活用したコンセプトモデルDeca Decaを公開した。
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スズキ
HUSTLER* | 軽自動車初のクロスオーバータイプのHUSTLERは、2013年12月24日に発売予定。ベースとなったワゴンRから最低地上高を2WD車で30mm上げ、180mmとした。エクステリアデザインはアウトドア利用のイメージを押し出している。インテリアも、助手席を倒せばテーブルになるようにするなどアウトドアでの利用を想定したものとなっている。 |
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急な下り坂を7km/hの一定速度で下ることができるヒルディセントコントロールと、雪道等の滑りやすい路面での発進を助けるグリップコントロールとを採用し、ラフロード走行を助ける機能を軽自動車として初めて装備した(4WD、CVT搭載車)。 | |
HUSTLER Coupe* | HUSTLERをベースにルーフラインが後ろに下がっていくデザインを与えた、軽クロスオーバークーペを提案するデザインコンセプト。全高がHUSTLERと比べて35mm低くなっている。後部ドアのドアハンドルはCピラーの部分に隠されたデザインとなっている。 |
Alto Eco | スズキはアルトエコを部分改良し2013年12月18日より発売する。燃費性能を同年3月の改良時の33.0km/Lから、ガソリン車でトップとなる35.0km/L(JC08モード)とした。改良点は、エンジンの圧縮比を11.0から11.2への引き上げ、新開発の低摩擦抵抗エンジンオイルの採用、CVTの制御変更など。 |
ホンダ、三菱/日産、ダイハツ
Honda N-WGN* | ホンダの新しい軽乗用車シリーズNシリーズの第4弾である、全高1,655mm(FF車)のハイトワゴン(注)。東京モーターショー開催期間中の11月22日に発売。内外装に上質感あるデザインを与えた。Nシリーズで初めて前後200mmのスライド幅を持つリアシートを採用。安全性能も高めており、ホンダの社内測定では、JNCAPで軽自動車初の5つ星を取る性能があるとしている。燃費性能は、2WD(FF)モデルで29.2km/L(JC08モード)。 |
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Nシリーズに用いている660ccのエンジンを改良して搭載。燃料の霧化を促進するために1気筒あたりのインジェクターを2つにした。また、ノッキングを抑えるため、熱伝導率に優れるナトリウム封入バルブをホンダの乗用車用エンジンとして初めて採用した。この改良型エンジンは他のNシリーズにも順次展開されていく予定。 | |
CVTも2011年発売のN BOXに用いていたものと比べて約3.9kg軽量化。ケースの薄肉化、デフケースとファイナルギアの軽量化、電動ポンプ無しで油圧を供給するシステム(アキュームシステム)の搭載などを施した。 | |
Mitsubishi ek Space/Nissan DAYZ ROOX* | 三菱自動車と日産自動車が共同開発した軽自動車の第2弾である、スーパーハイトワゴンタイプの軽乗用車。三菱はek Space、日産は DAYZ ROOXの名前で、2014年初頭から発売予定。家族向けに、後部座席では子どもが立ったまま着替えられる室内空間を確保し、後部ドアは両側にスライドドアを採用した。また、Aピラー部分に大きな三角窓を付け、運転手の視野を広げている。アラウンドビューモニターも設定可能。 |
アシストバッテリーと呼ぶ、減速エネルギーを電気に変えてニッケル水素電池に蓄電し、補機などへ電気を供給する機能を搭載。エンジンによる発電をできるだけ減らし燃費向上につなげる。 | |
Daihatsu Deca Deca* | 全高が1,850mmある「スーパースペース」軽乗用車のコンセプトモデル。両側観音開きのドアを採用し大型の荷物の乗せ降ろしが容易。サイドミラーの代わりにカメラをAピラーの上部に設置している。ダイハツは現在、同じ高さがある乗用バンATRAI WAGONを販売している(軽商用車HIJET CARGOの乗用車版)。 |
(注)ホンダによれば、ハイトワゴンは全高が1,550-1,700mm以下の軽乗用車を示す。また、スーパーハイトワゴンは全高が1,700mm超の軽自動車を示す分類。
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ヤマハが2010年代の四輪車事業への参入を表明、ホンダの超小型EV MC-β
二輪車を主力事業とするヤマハ発動機は2013年7月の事業説明会にて、三輪車/四輪車タイプの新しい「乗り物」を提案すると発表。今回の東京モーターショーでは、その新しい四輪車のコンセプトモデルを展示した。このモデルをベースとした四輪車の発売を2010年代のうちに発売する計画。同社は、トヨタ向けに自動車用エンジンを生産したり、オフロード走行専用の四輪車を販売しているが、公道走行が可能な四輪車の販売は行っていない。
また、ホンダは、日本国内で実証実験を行っている超小型EVのプロトタイプMC-βを展示し、試乗も行っていた。
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Yamaha MOTIV* | ヤマハが2010年代に四輪車事業への参入を目指して、開発中の四輪車コンセプト。MOTIVは2人乗りで、全長は2,690mm、全幅は1,470mm、全高は1,480mmとなっており、トヨタのiQ、スマートのfortwoより小型。ボディースタイルは展示車の他に、スポーツカータイプ、SUVタイプなどのバリエーションを持つとしている。 |
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パワートレインは展示車のEVの他、ガソリンエンジン、ハイブリッドなどに対応可能。車体後方に置かれたパワートレインが後輪を駆動する。スケルトンフレームは鋼管パイプと複合材料の組み合わせで構成され、iStreamというGordon Murray Design社が提唱するF1に源流を持つ設計思想に基づいて設計された。 | |
1人、または2人乗りの小型車が受け入れられる社会(先進国、特に日本)での販売を狙う。今後の課題は、安全衝突対策技術、生産技術、生産国の決定、販売網の構築にあるとしている。 | |
Honda MC-β* | 全長2,495mm、全幅1,280mm、全高1,545mmの超小型EV のプロトタイプ(βはいわゆるアプリケーションなどのβ版を意味する)。床下にリチウムイオンバッテリー、後部にモーター(最大出力11kW)を収めており、航続距離は80km以上。2013年11月より数十台のMC-βを用いて、熊本県(地方の中核市)、さいたま市(大都市部)、宮古島市(離島)の3カ所で社会実験を行っている。 |
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トヨタ/レクサス/日産の新型車:レクサス スポーツクーペ RC、日産 SKYLINE
トヨタは、レクサス ブランドの新型スポーツクーペ RCを世界初披露。スポーティでダイナミックなデザイン/カラーをアピール。トヨタブランドでは、国内専用モデルであるクロスオーバーSUV HARRIER(2013年12月2日発売)と、2014年初頭に発売予定のミニバンの兄弟車VOXY/NOAHのコンセプトモデルを展示した。
日産は、13代目 SKYLINE(海外名:Infiniti Q50)を日本初披露した。フロントグリルのバッチは「日産」のものではなく「Infiniti」のものが着けられ国内販売される。
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トヨタ・レクサス
Lexus RC* | 2014年後半に日本から発売予定の新型スポーツクーペ。スピンドルグリルをより強調したデザインを取っている。ISのクーペモデルの位置付けで、プラットフォームはISと同じく1つクラス上のGSのものを利用。 |
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ハイブリッドモデルであるRC300hには、筒内直噴とポート噴射を組み合わせたシステムD-4Sを搭載した2.5L 直4エンジンを採用(システム最高出力162kW)。RC350にはV6 3.5Lエンジン(最高出力234kW)と、手動での変速も可能なATである8速Sport Direct Shiftとを組み合わせる。 | |
Toyota HARRIER |
国内専用のクロスオーバーSUVをモデルチェンジして2014年12月2日に発売。2012年7月に生産を中止した先代と比べ全長で15mm、全幅で10mmだけ小型化(2WD車比較)。 |
ハイブリッドモデルの搭載エンジンはV6 3.3Lエンジンから、直4 2.5Lエンジンにダウンサイジングされ、車両総重量も約150kg軽量化された。ハイブリッドモデルの燃費は21.4km/L(JC08モード)以上。 | |
Toyota VOXY CONCEPT /NOAH CONCEPT* | トヨタのミニバンの兄弟車VOXY/NOAHの次期モデルをコンセプトカーとして世界初披露。2014年初めに発売される予定。現行モデルに設定されている2.0Lガソリンエンジンに加えて、1.8Lエンジン搭載のハイブリットモデルも設定する。 |
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日産
Nissan SKYLINE | 2014年2月に日本で発売する13代目のSKYLINE。国内ではハイブリッド専用の高級セダンとして販売され、日産バッチでは無くInfinitiのバッチがフロントグリルに飾られる。日本以外では、2013年のデトロイトモーターショーで初公開され、Infiniti Q50として既に発売済み。 |
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世界で初めてステアバイワイヤ技術「ダイレクトアダプティブステアリング」を搭載。今後も他の車種への展開を考えているが、スペースとコストの面で搭載車種は限られるであろうとのこと。 | |
Nissan GT-R | マイナーチェンジしたスポーツカーGT-Rを2014年モデルとして2013年12月に発売。同車は日本車としては珍しく毎年マイナーチェンジを行っている。今回は、LEDランプの採用やサスペンションの設定等を変更。また、エンジンの出力を550psから600psへ高めたGT-R NISMOを世界初披露し、2014年2月に発売する。 |
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ホンダ、富士重工、マツダの新型車:ホンダ コンパクトSUV VEZEL、スバル LEVORG、マツダ AXELA
ホンダは、コンパクトカーFitをベースとしたコンパクトSUV VEZELを世界初披露。日本では2013年12月20日より発売される。富士重工は、日本国内向けに開発されたワゴンLEVORGを初公開。2014年春に発売予定。
マツダは、SKYACTIV TECHOLOGYをフル搭載する3番目のモデル新型AXELAを展示した。
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Honda VEZEL* | ホンダのコンパクトカーFitをベースとしたSUV。SUVのもつ力強い足回り、クーペのようなエクステリアとインテリアデザイン、ミニバンの使いやすさを融合した新しいジャンルの車だとする。日本では、2013年12月20日発売を予定し、順次世界各地で販売していく。2013年のデトロイトモーターショーで展示されたUrban SUV Conceptがベースとなっている。 |
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ハイブリッド車には、1.5L「直噴」エンジンと7速DCTを組み合わせたSPORT HYBRID i-DCDを搭載した(Fit HVは1.5L エンジンとの組み合わせ)。また、1.5L直噴エンジン搭載のガソリン車も用意し、ハイブリッド・ガソリンモデルそれぞれに、FF車、4WD車を設定する。全長は4,295mmとFitより340mm長い。 | |
Subaru LEVORG* | LEVORGは、日本市場向けに開発された新型スポーツツアラー。現行の5代目Legacyは、米国市場向けに全長で4代目と比べて110mm(ワゴンタイプ)大型化した。そのため、日本市場を中心に大きすぎるとの声も多かった。そこで、LEVORGは、実質的に4代目Legacyの後継モデルとして開発され、サイズも4代目を少し大きくした程度(全長で10mm)にされた。2011年の東京モーターショーで発表された ADVANCED TOURER CONCEPTの市販版。2014年春に発売される。 |
搭載エンジンは、1.6Lと2.0Lの水平対向直噴ターボエンジンが用意され、燃費性能は17.4km/L(1.6Lモデル)。2013年10月に発表された次世代EyeSightが、EyeSight(ver.3)として初めて搭載される(詳細はこちらのITS世界会議レポートをご覧下さい)。 | |
Mazda AXELA | マツダの「魂動-SOUL OF MOTION」デザインと「SKYACTIV TECHNOLOGY」を全面的に取り入れた商品の第3弾である小型車。セダンタイプとハッチバックタイプが用意されている。セダンタイプには、トヨタのハイブリッド技術と2.0Lガソリンエンジン(SKYACTIV-G 2.0)とを組み合わせたSKYACTIV-HYBRIDをマツダ車で初めて設定される(燃費性能30.8km/L(JC08モード))。 |
さらに、新開発の排気量1.5L直噴ガソリンエンジンであるSKYACTIV-G 1.5搭載モデルも設定される。ほかに、2.0L直噴ガソリンエンジンSKYACTIV-G 2.0、デーゼルエンジンSKYACTIV-D 2.2搭載モデルもあり、多彩なパワートレインのラインナップをそろえた。ハイブリッドモデル、ガソリンモデルは2013年11月より日本国内で販売されている。 |
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