西欧市場:経済情勢が落ち着き、自動車市場は安定化する見込み

緩やかだが着実な成長の兆し、事業のさらなる再編は必要

2013/10/17

要 約

西欧乗用車販売予測
資料: LMC Automotive Global Car and
Truck Forecast, September 2013

 西欧の自動車市場は、ようやく底を打ったという兆しを見せている。今後数年は経済全般が上向き、徐々に販売が増加する見込み。自動車メーカーの経営トップからも、西欧市場は安定化してきた、とする楽観的な声が聞こえる。この情勢に対応するべく、各社は今後数年の間にモデルの改良や新モデルの投入を行うと発表している。一方、西欧における過剰な生産能力は現在も問題で、一部のメーカーは需要に見合った規模にするため、大規模な再編を実施している。


 LMC Automotive社も、西欧の乗用車市場は中・長期的に見て、緩やかに成長する可能性があると予測している。「しかしながら、2013年の西欧の乗用車販売は1,140万台の見込みで、2007年より350万台も少なく、2014年も若干の増加しか見込めない」と同社は述べている。2013年の販売予測は2012年実績より3.2%減少し、2014年はわずか1%強だが増加に転じる見込み。

関連レポート:
・フランクフルトモーターショー 2013 (1):BMW、VW、Daimlerの展示取材, 2013年9月
・フランクフルトモーターショー 2013 (2):欧州・アジアメーカーの展示取材, 2013年9月
・欧州6社2013年上半期実績と通期見通し:独3社は世界販売記録更新を見込む, 2013年8月
・VW:2013年上半期の新車販売は480万台, 2013年7月
・PSA:欧州依存からの脱却を目指し、新興市場へ展開, 2013年6月
・FIAT:2016年までに欧州市場で収支均衡の達成を狙う, 2013年5月
・欧州メーカーのEV/HV計画:VWとDaimlerがPHVを積極投入, 2013年4月
・Renault:2013年は自動車部門の黒字化を目指す, 2013年4月
・欧州6社:域外市場への進出とコスト削減を目指す, 2013年3月



LMC Automotive 販売予測:西欧経済は安定化、LMC Automotive社は西欧の緩やかな成長を予測

(LMC Automotive社、2013年9月予測)

 2013年第2四半期における予測によると、LMC Automotive社はユーロ圏の経済指標が安定化の兆しを見せているとしている。域内の消費者の自信も上向き傾向にある。「ユーロ圏の経済は2013年下期に緩やかな成長に戻り、自動車市場を支えるだろう」と同社は述べている。西欧では、緊縮政策の緩和が叫ばれてはいるが、緊縮財政が続く可能性が大きく、急速な回復は期待できない。その結果、2013年通年の西欧の乗用車販売予測は修正された。2013年8月時点での通年販売予測は、前年比3.2%減の1,140万台。今後、数年間は経済が緩やかに成長すると考えられる。LMC Automotive社は、西欧での販売がピークを示した2007年の1,680万台の水準には、2010年代中に達することはないと予測している。

西欧の国別乗用車販売台数(2010-2016年*)

Country 2010 2011 2012 2013 2012
-2013
前年比
2014 2015 2016 2013-
2016
増減率
Germany 2,916,260 3,173,634 3,082,502 2,961,389 (3.9%) 3,031,739 3,072,319 3,081,037 4.0%
UK 2,030,846 1,941,252 2,044,589 2,198,727 7.5% 2,238,394 2,259,701 2,296,666 4.5%
France 2,251,786 2,204,628 1,898,769 1,776,414 (6.4%) 1,813,682 1,846,757 1,941,838 9.3%
Italy 1,960,318 1,757,646 1,410,852 1,303,010 (7.6%) 1,282,911 1,378,765 1,591,769 22.2%
Spain 982,019 808,059 692,646 711,427 2.7% 643,479 683,028 776,268 9.1%
Belgium 547,354 572,211 486,732 485,294 (0.3%) 494,907 509,091 513,621 5.8%
Netherlands 483,947 556,089 502,502 371,771 (26.0%) 406,682 456,286 520,981 40.1%
Austria 328,572 356,145 336,010 311,006 (7.4%) 313,851 316,835 319,441 2.7%
Switzerland 290,757 315,680 325,883 297,604 (8.7%) 294,554 293,688 293,578 (1.4%)
Sweden 289,684 304,984 279,479 261,975 (6.3%) 267,286 275,411 290,139 10.8%
Denmark 153,613 170,435 171,267 179,417 4.8% 165,597 159,620 155,837 (13.1%)
Norway 127,754 139,684 137,966 140,645 1.9% 145,793 156,963 163,507 16.3%
Portugal 223,451 153,491 95,367 103,253 8.3% 102,693 107,671 133,548 29.3%
Finland 111,893 126,041 111,170 101,825 (8.4%) 115,753 128,024 148,354 45.7%
Ireland 88,423 89,896 79,498 81,707 2.8% 85,490 91,069 100,965 23.6%
Greece 140,691 97,528 58,296 55,498 (4.8%) 60,940 68,064 80,404 44.9%
Luxembourg 48,989 48,905 48,214 50,194 4.1% 50,916 51,687 52,606 4.8%
West Europe
Total
12,976,357 12,816,308 11,761,742 11,391,156 (3.2%) 11,514,667 11,854,979 12,460,559 9.4%
*2013-2016年は予測台数
資料:LMC Automotive "Global Car and Truck Forecast (September 2013)"
(注) 1. ( )」内の数値はマイナス値を表す。
2. データは自家用小型車の数値で、小型商用車の数値は含まない。
3. 本表の無断転載を禁じます。転載にはLMC Automotive社の許諾が必要となります。
モデル別やパワートレインタイプ別等のより詳細な予測データのご用命、お問い合わせはこちらのページへ

 

欧州メーカー:域外販売が健全な業績に貢献

 西欧市場の長引く不振にもかかわらず、大半の欧州メーカーは2012年に利益を計上した。これに寄与したのが域外、特に中国と米国における販売と、生産効率の向上である。西欧を拠点とするメーカーで、赤字を計上したのはPSAのみ。同社は現在、域外販売、とりわけ新興国市場での販売比率を拡大しようとしている。Fiat-ChryslerとRenault-日産は、域外の提携会社による販売が堅調で、黒字となった。VWとBMWは過去最高の利益を出し、Daimlerも高い利益を確保した。

 

米国メーカー:事業の再編を推進

 米国メーカーのGMとFordは、それぞれ欧州部門の再編を進めている。これには、過剰生産能力の削減、コスト低減、新型車への投資等が含まれる。両社とも再編が進展し、2013年第2四半期の赤字幅は予想よりも縮小した。GMはこのままのペースで行くと、前年の赤字を「若干」縮小するという目標を達成できそうである。Fordは、2013年7月の発表によると、2015年に通年業績が黒字転換する見込み。

 

アジアメーカー:各社の業績に差異

 日本メーカーの多くは、過去数年間に既に欧州部門の再編を実施。コスト構造の改善と事業の再編を進め、効率化を図ってきた。トヨタの欧州部門は、2013年3月期に6年ぶりに黒字となった。マツダは、1ユーロ100円の時代に事業を再編。1ユーロ130円の現在は、欧州事業が同社の利益に大きく寄与している。その一方、2013年か2014年に欧州部門の黒字転換を目指していたホンダは、2013年3月にこれを見直し、2016年までに黒字化することを目標としている。


 韓国の現代自動車は2013年9月、欧州事業がかろうじて黒字となったと発表した。同社は欧州市場シェアを3.5%から5%に引き上げるとする中期目標を掲げていたが、その達成期限を2015年末から2019年末に延期した。

 

各社幹部が慎重だが楽観的な見通しを表明

 ここ数週間、各社の幹部が、西欧の自動車市場はついに底を打ったと発言している。ただし、今後の成長は長期にわたり緩やかなものになると予想される。以下は、西欧市場に関する主要自動車メーカーの幹部の発言である。

GMのDan Akerson CEOは、欧州に「成長の芽生え」が見えると話した。
GM EuropeのトップであるKarl-Thomas Neumann氏は、市場は底を打ったと考えており、「トンネルの先に光が見える」と述べている。
Ford of EuropeのStephen Odell CEOは「確かに市場は底を打ったようだ」と話す。しかし、景気後退以前の販売水準に戻るには何年もかかるだろう、とも感じている。
Ford of Europeの販売・マーケティング部門を率いるRoelant de Waard氏は「最悪の時期は終わった」と考えている。しかし、今後の見通しは明るくなったものの、市場が上向きになっているかどうか判断するのは時期尚早だ、と話した。
PSAのPhilippe Varin CEOは、2014年に欧州市場が若干成長すると予測しており、「最悪の時期を脱した」と述べた。
Fiatの欧州・中東・アフリカ部門の最高執行責任者 Alfredo Altavilla氏は、市場は安定傾向にあるが、「上向きになっているというのは時期尚早」と語った。
欧州トヨタのDidier Leroy CEOは、同社の見通しについて、「本物の持続的成長だ」と話した。
日産の取締役副社長 Trevor Man氏は、楽観的な見通しを持つのは妥当だが、「回復はゆっくりしたものになるだろう」と考えている。
マツダの欧州部門のトップであるJeff Guyton氏は、同社は欧州で良いポジションにいるとし、「事業は上向きになっている」と語った。

 

ドイツと英国は改善の兆し、他の主要市場は不振が続く

西欧主要市場の乗用車販売台数
資料: LMC Automotive Global Car and
Truck Forecast, September 2013

 国別に見ると、ドイツ経済は2013-2014年に引き続き緩やかに拡大する見込み。失業率は7%未満と低く、家計収支は良好である。しかし、消費者は依然として慎重で、2016年まで販売は横ばいが続くと予想される。一方、英国は2012年に消費者支出が回復して以降、販売が着実に増加している。賃金の増加と低いインフレ率により購買力が強化され、自動車に対する消費者支出が増加している。


 西欧の他の主要市場では、高い失業率により支出全般が落ち込み続けている。イタリアとフランスでは失業率が高く、消費者支出が打撃を受けている。従って、両国の乗用車販売は2014年まで不振が続き、その後、財政と賃金の緊縮が徐々に緩和され、長期的には少しずつ増加すると予測される。スペインでは、失業率が28%前後を推移しているにもかかわらず、2013年の自動車販売は若干増加する見込み。この多くは、政府の自動車買い替え促進策によるものである。





 

 



生産能力削減のため工場を閉鎖、一部メーカーは輸出市場にシフト

 OEMの中には、西欧における過剰な生産能力への対応を開始したところもある。GM, Ford, Volvo, PSAは2014年末までに西欧の完成車工場を閉鎖する計画を明らかにした。これに先立ち、Opelは既にベルギーのAntwerp工場、FiatはイタリアのTermini Imerese工場を閉鎖している。このような措置により生産能力は削減されるが、LMC Automotive社は、工場の稼働率を適正レベルまで引き上げるには、さらなる能力削減が必要だとしている。

西欧における事業再編と工場閉鎖に関する主な発表

OEM 概要
GM
(Opel)
Antwerp (ベルギー):GMは2010年末にOpelのAntwerp完成車工場を閉鎖した。同工場はピーク時には7,000人を雇用し、Opel/Vauxhall Astraを生産していた。2010年初頭の従業員数は約2,600人だった。
Bochum (ドイツ):Opelは2014年末にBochum工場を閉鎖する計画。ミニバンZafiraの生産は、現在Astraを生産しているRusselsheim工場に移管される。次期Astraは2015年から、Opelのポーランド・Gliwice工場と英国・Ellesmere Port工場で生産される。次期Astraの生産に伴い、Ellesmere Port工場は新たに700人を雇用し、年16万台以上を生産する。
Ford Dagenham (英国):Fordは能力削減計画の一環として、2013年にDagenham工場のプレス部門と生産設備部門を閉鎖した。英国のSouthampton工場とDagenham工場は、合計約1,400人の時間給および定額給の従業員を雇用していた。
Genk (ベルギー):Fordは2014年末までにベルギーのGenk工場を閉鎖し、同工場での完成車生産を中止する計画。これにより、約4,300人の人員が削減される。次期Mondeo, S-MAX, Galaxyの生産は、スペインのValencia工場に移管される見込み。
Southampton (英国):英国のSouthampton工場における最後のTransitは、2013年7月15日に生産ラインに乗り、7月26日に生産ラインを離れた。Transitの生産は、トルコのKocaeli工場に統合される予定。
Fiat Termini Imerese (イタリア):Fiatは2011年末に、Lancia Ypsilonを生産していたシチリア島の工場を閉鎖した。同工場は約1,600人を雇用していた。
PSA Aulnay (フランス):PSAの2013年8月30日の発表によると、同社はAulnay工場におけるCitroen C3の生産を同年11月初頭に中止する。それ以降もAulnay工場で一部の部品生産は継続する。同工場の従業員は3,000人。C3の生産はPoissy工場に移管される予定。
Meudon (フランス):PSAは、経費削減計画の一環として、パリ郊外のMeudon-la-ForetにあるR&Dセンターを閉鎖する、と2013年5月に発表した。従業員660人の大半は、Velizy近郊のR&D本部に異動する。一部の従業員は、パリ西部のPoissy組立工場に勤務することになる。
Rennes (フランス):PSAは2012年7月、フランス西部にあるRennes工場の従業員5,600人のうち1,400人を削減する業務改善計画を発表した。同工場はPeugeot 508, Citroen C5およびC6を生産しているが、大型セダンの販売減少により人員削減に踏み切る。
Volvo Uddevalla (スウェーデン):2013年6月、スウェーデンのUddevalla工場で最後のVolvo C70 convertibleが生産ラインを離れた。このVolvo CarとPininfarina S.p.A.の合弁工場では、2011年に10,000台弱の車両が生産されていた。
Honda Swindon (英国):2013年3月、ホンダはSwindon工場の生産シフトを2直から1直に削減した。ホンダは2013年1月、欧州での需要減により、同年第2四半期までにSwindon工場の従業員を800人削減する計画を明らかにしていた。

 

新商品生産などで過剰生産能力を活用

 一方、一部のOEMは、工場の稼働率を高めるために輸出市場に目を向けている。具体的には、ドイツの高級車ブランドのMercedes-BenzやBMWは、景気後退時にも比較的安定した生産量を維持していた。LMC Automotive社が述べているように、「西欧での需要不振を受け、各社は西欧での生産量を確保するために輸出に目を向けている。輸出拡大により、最近は西欧での生産が増加し、高級車メーカーの中には、輸出需要に対応するために夏期閉鎖期間の短縮を発表したところもある。」特に、堅調な米国や中国の市場が、輸出需要の拡大に寄与している。


 他の欧州メーカーは、余剰生産能力を上級ブランドの生産に活用するという計画を発表した。たとえばFiatは、稼働率が低い工場にMaseratiとAlfa Romeoの高級車の生産を追加する。Fiatは、2016年までにAlfa Romeo車の世界販売を30万台以上 (2012年の販売実績は10万1,000台)、2015年までにMaserati車の世界販売を5万台 (2012年の販売実績6,000台の8倍以上)に拡大することを目指している。Fiatは、利益率の高い高級車に対する域外の需要により、稼働率の低いイタリア工場での雇用を維持しようとしている。しかし、上記のような強気の目標を達成できるかどうかは、現時点では不明である。詳細については当社の関連レポート「FIAT:2016年までに欧州市場で収支均衡の達成を狙う」(2013年5月) をご参照ください。


 VWも工場の稼働率の適正化を図っている。2009年にはベルギーのBrussels工場を閉鎖する計画だったが、傘下の高級車ブランドAudiが同工場を買い取り、2010年からA1を生産している。2011年には、VWの子会社であるSEATの過剰能力を緩和するために、AudiはSEATのMartorell工場 (スペイン) で小型プレミアムSUV のQ3 の生産を開始した。

 

Alfa Romeo 4C
Alfa Romeo 4C
Nissan Micra
Nissan Micra


 また、量産車メーカーの中にも、価格競争力が向上した欧州に生産をシフトしているケースがある。Renaultは、日産の小型車 Micra の次期モデルを、フランスのFlins工場で生産すると発表した。今回の決定は、労働組合との合意に伴うものである。現在、欧州向けのMicraはインド・チェンナイのOragadam工場で生産されている。GMは2014年に、欧州向け小型SUVのOpel/Vauxhall Mokkaの生産を、韓国からスペインのZaragoza工場に移管する。欧州各国はそれぞれ自動車産業のてこ入れを図っているが、欧州工場の稼働率を引き上げる新たな方法が見つかれば、長引く過剰能力問題の軽減につながるだろう。

 

西欧における設備投資・拡充計画

欧州メーカー
OEM 概要
VW Crewe (英国):2013年7月、Bentleyはイングランド北西部のCreweにある主力工場で、同社初のSUVの生産を開始すると発表した。新型SUVはBentleyの4車種目のモデルで、2016年に発売する予定である。この生産準備のため、Bentleyは今後3年間に8億ポンドを投資する。同モデルの生産に伴い、新たに1,000人余を雇用する見込み。
IngolstadtおよびNeckarsulm (ドイツ):2013年2月、Audiは同年3月からドイツの2工場で生産を拡大すると発表した。セダンのA6、クーペのA7、SUVのQ5 等の受注増に対応するため、IngolstadtおよびNeckarsulm工場で計12の生産シフトを追加する計画。
Leipzig (ドイツ):Porscheは約5億Euroを投資して、Macan用の車体工場と塗装工場を建設する。2013年7月には塗装工場の完成を発表した。Porscheの小型SUV Macanの第1号は2013年12月に生産ラインを離れる予定。Macanの生産に伴い、同地域では新たに1,400人が雇用される。
Pamplona (スペイン):2013年1月、VWは今後5年間にPamplona工場に7.85億Euroを投資すると発表した。投資の大半は、次期Poloと将来のPoloの後継車の生産準備のために使用される。VWのPamplona工場の日産能力は1,400台、従業員は4,600人である。
Stuttgart (ドイツ):2013年9月、Porscheは今後5年間にStuttgart工場に7億Euro (9億2,380万ドル) 以上投資すると発表した。Porscheは同工場で911, Boxster, Caymanを生産している。
Fiat Melfi (イタリア):2013年7月、Fiat-Chryslerは、イタリアでFiat/Jeep ブランドの小型SUVを年間最大28万台生産する計画を発表した。Jeepブランド車 (モデル名は未定) の生産を2014年6月に開始し、その3カ月後にFiat 500Xの生産を始める。Jeep車の年産台数は15万台、Fiat車の年産台数は13万台の予定。Fiatは、この小型SUVの生産準備のため、イタリアのMelfi工場に10億Euro以上投資する計画。
Mirafiori (イタリア・トリノ):Fiatは、2014年末までにMaserati のSUVの生産を開始するため、10億Euro近くを投資してMirafiori工場の設備を更新する計画。トリノのMirafiori工場は、米国・アジア市場への輸出向け高級車を生産している。
FiatおよびPSA Val di Sangro工場 (Sevel社):2013年7月、FiatとPSAは、イタリアで生産される新型商用バンの開発に共同で出資すると報じられた。Fiatが5.5億Euro、PSAが1.5億Euroを出資し、大型バンのFiat Ducato, Peugeot Boxer, Citroen Jumperの4代目の開発を行う。

 

北米メーカー
OEM 概要
GM
(Opel)
Kaiserslautern (ドイツ):2013年9月、Opelはエンジン・部品工場の機械設備更新のために1.3億Euro (1億7,540万ドル) を投資すると発表した。
Russelsheim (ドイツ):2013年4月24日、GMはRusselsheimのOpel本社にある欧州製品開発センターとDudenhofenにある性能試験場の新試験施設に、2.3億Euroを投資すると発表した。投資は、今後3~4年間に行う予定。
Zaragoza (スペイン):Opelは、2014年下期に小型SUV Mokkaの生産をスペインのZaragoza工場に移管すると発表した。OpelはまずZaragoza工場に8.000万ドルを投資し、韓国のBupyeong工場から輸入するCKDキットを使用して組立生産を開始する。その後、徐々に現地調達率を引き上げる計画。
Ford Bordeaux (フランス):2013年5月24日、Fordは地方当局との合意に基づき、フランス南西部のBlanquefortにあるトランスミッション工場において、1,000人の雇用を維持すると発表した。Fordは1.25億Euro、地方当局は1,250万Euroを投資し、欧州で小型車用の次世代トランスミッションを生産する。その引き換えとして、Fordは5年間、同工場の従業員の雇用を保証する。
Cologne (Koln), (ドイツ):2013年9月5日、Fordは1.0L EcoBoostエンジンの日産台数を倍増させ、1,000台以上にすると発表した。これは、欧州での小型MPV B-MAXに対する需要増に対応するもの。Cologne工場でのエンジンの年産能力は、10万基から2013年に16.5万基、2014年には20万基に拡大される見通し。

 

アジアメーカー
OEM 概要
トヨタ Valenciennes (フランス):2013年5月16日、トヨタは北米市場向けの小型車Yarisの生産をフランスのValenciennes工場で開始したと発表した。年間の輸出台数は2万5,000台前後の見込み。北米仕様のYarisを生産するため、トヨタは1,000万Euroを追加投資した。
日産 Barcelona (スペイン):日産のe-NV200は、2014年半ばからBarcelonaのZona Francaで生産される予定。そのため、日産は同工場に1億Euroを投資し、700人余を新たに雇用する。さらに日産は、1,400万Euroを投じてBarcelona工場における1トンピックアップの年産能力を拡充するほか、600万Euroを投じて日産Leafおよびe-NV200向け減速機の組み立てを開始する。
Sunderland (英国):2013年9月に、Sunderland工場を拡張し、Infinitiブランド車を欧州で初めて生産することが承認された。この拡張は、先にInfinitiが発表した2.5憶ポンドの投資計画の一環である。これにより、英国の自動車産業に1,000人余の新たな雇用が創出される。Infiniti Q30は2015年から生産される計画。生産が開始すれば、Infinitiは英国で量産される23年ぶりの新ブランドとなる。
Tata (Jaguar Land Rover) Solihull (英国):2013年7月の報道によると、Jaguar Land Rover (JLR) はエントリーレベルの新高級車シリーズを計画しており、まず2015年に小型セダンを発売、その後クロスオーバーSUVやステーションワゴンを投入する。同シリーズの生産のため、Solihull工場で生産ラインを建設中で、約1,500人を新たに雇用する見込み。JLRは設備投資予算を年間27.5億ポンドに引き上げたが、その一部を新シリーズ投入のための投資に充てる予定。
Wolverhampton (英国):2013年3月、JLRは新しいエンジン生産センターに対する投資を5億ポンド余に増額し、1,400人の雇用を創出すると発表した。同センターは、先進技術を採用した、軽量・低排出で4気筒の新世代ディーゼル/ガソリンエンジンを生産する。エンジンの生産は2015年に開始される予定。

 

 



西欧での生産実績は長期的に減少傾向、独メーカーのみ生産拡大

 2007~2012年の西欧における生産台数の推移を見ると、ドイツメーカーのみが同期間に生産を増やしている。域外市場への輸出が堅調で、域内では高級車ブランドが量産車メーカーから市場シェアを奪っていることが、ドイツメーカーの強さに寄与している。


 他の主要メーカーでは、Renault-日産, PSA, GM (Opel), Fiat-Chrysler, Ford Europeが工場閉鎖やシフト削減を行っており、同期間の生産台数が二桁減少を記録。これらのメーカーは、2011-12年も生産が縮小し、2013年1-7月も引き続き減少した。日本メーカーのホンダとトヨタは、2011-12年に生産が上向いた。

西欧の自動車生産台数 (2007-2012年)

自動車メーカー 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2011-12
前年比
2007-
2012
増減率
2012
1-7月
2013
1-7月
前年
同月比
Porsche 80,511 96,576 76,375 97,017 126,099 146,144 15.9% 81.5% 91,060 83,925 (7.8%)
Volkswagen 2,913,044 2,948,633 2,623,627 3,106,846 3,499,919 3,273,217 (6.5%) 12.4% 2,016,677 1,964,827 (2.6%)
Daimler 1,201,543 1,199,946 944,840 1,293,249 1,289,275 1,259,962 (2.3%) 4.9% 747,053 751,230 0.6%
BMW 1,331,417 1,215,040 1,086,605 1,201,720 1,382,963 1,364,882 (1.3%) 2.5% 805,327 671,132 (16.7%)
Renault-Nissan 1,835,555 1,521,640 1,296,032 1,504,055 1,581,250 1,473,720 (6.8%) (19.7%) 885,897 824,250 (7.0%)
PSA 2,361,420 2,075,137 1,719,250 2,109,510 2,002,184 1,705,150 (14.8%) (27.8%) 1,082,042 879,990 (18.7%)
Honda 237,772 230,423 75,583 139,278 109,700 165,630 51.0% (30.3%) 98,824 85,396 (13.6%)
Toyota 544,603 451,331 336,589 295,566 277,129 314,202 13.4% (42.3%) 179,027 198,927 11.1%
GM (Opel) 1,567,367 1,295,427 993,410 975,543 990,009 811,446 (18.0%) (48.2%) 524,923 480,703 (8.4%)
Fiat-Chrysler 1,216,195 911,473 765,069 673,707 624,372 529,580 (15.2%) (56.5%) 338,999 300,341 (11.4%)
Ford Europe 2,313,727 1,842,666 1,487,024 1,536,617 1,186,234 946,247 (20.2%) (59.1%) 620,025 513,695 (17.1%)
Mitsubishi 66,653 62,053 48,718 50,533 46,195 24,571 (46.8%) (63.1%) 18,020 0 (100.0%)
Other Groups 44,676 27,244 13,759 53,275 29,916 7,282 (75.7%) (83.7%) 2,083 2,747 31.9%
Isuzu 1,674 1,284 192 0 0 0 0.0% (100.0%) 0 0 0.0%
Mazda 14,235 0 0 0 0 0 0.0% (100.0%) 0 0 0.0%
Proton 2,630 2,106 1,618 2,613 0 0 0.0% (100.0%) 0 0 0.0%
Suzuki 6,692 3,163 549 0 0 0 0.0% (100.0%) 0 0 0.0%
Volvo Trucks 4,439 5,271 3,405 0 0 0 0.0% (100.0%) 0 0 0.0%
Geely (Volvo) 0 0 0 0 418,616 423,700 1.2% 237,959 195,792 (17.7%)
Tata (Jaguar, Land Rover) 0 261,243 158,446 241,452 288,412 361,383 25.3% 215,967 248,102 14.9%
Total 15,744,153 14,150,656 11,631,091 13,280,981 13,852,273 12,807,116 (7.5%) (18.7%) 7,863,883 7,201,057 (8.4%)

資料:MarkLines, 各種資料
(注) 「( )」内の数値はマイナス値を表す。

 

 



新モデル投入により高級車ブランドへの需要を喚起

 高級車メーカーは、世界的なプレゼンスを確立し、米国や中国等の高級車市場への輸出が堅調なことから、景気後退の影響をあまり受けていない。このため、これらのメーカーは、市場低迷時にも新モデルの開発に投資する余裕があった。

欧州の主な高級車ブランドの世界販売台数

自動車メーカー/
ブランド
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
Mercedes 1,087,636 1,097,067 1,158,459 1,262,638 1,181,297 1,023,809 1,163,248 1,279,643 1,341,532
BMW 931,251 1,028,037 1,078,190 1,184,236 1,101,944 950,722 1,069,153 1,231,176 1,332,543
Audi 710,681 761,250 823,471 920,200 932,560 925,476 1,044,478 1,209,036 1,351,509
Volvo 407,448 390,859 375,124 434,740 350,617 314,592 345,255 403,279 374,135
Land Rover 136,077 155,519 156,019 190,709 146,757 112,497 139,155 171,478 222,135
Alfa Romeo 153,845 128,032 142,061 151,835 106,230 114,309 113,359 134,979 97,801
Porsche 75,672 82,169 85,221 92,594 72,893 61,734 76,333 91,325 104,563
Jaguar 111,764 82,521 68,547 56,998 60,334 47,036 46,724 42,194 43,139

資料:MarkLines, 各種資料。データは、ほぼすべての主要市場の乗用車およびライトトラックの販売台数を含む。出典の違いにより、本表のデータが本レポートの別の個所の数値と異なる場合がございます。


 特にドイツの高級車ブランドは好調で、Mercedes, BMW, Audi, Porscheの販売台数は、いずれも2009年に減少して以降、増え続けている。Tata傘下の高級車ブランドは明暗を分け、Land Roverは2009年から販売台数をほぼ倍増させたが、Jaguarの販売は伸び悩んでいる。Volvoは2012年に販売が若干減少したが、Geelyの子会社として回復傾向にある。欧州の主要高級車ブランドの中で、Alfa Romeoは2011-2012年に販売を大幅に減らしたが、4C等の新モデル投入により、2016年までに世界販売を3倍増させるとする積極的な計画を打ち出している。


 また、高級車メーカーの中には、ラインアップを拡大し、新セグメントに参入しようとする動きも見られる。このようなメーカーの多くが、クロスオーバー車やSUVの投入を計画しており、高い走行性能と高級感、実用性を併せ持つ新モデルにより、量産車ブランドから顧客を奪おうとしている。新たに投入されるモデルは、価格設定も様々で、サイズも多様である。

 

投入予定のSUV/クロスオーバーとその他のモデル

Audiは既存のクロスオーバー車の改良を進めており、まず2014年に大型モデルQ7の新型車を投入。2016年にはQ5、2018年には全面改良したQ3を投入する。また、Q7のスポーツ・バージョンであるQ8を2015年に、Q6を2016-2017年に投入する計画。AudiはこのほかにもSUVモデルの追加を計画しているが、詳細はまだ発表していない。
Mercedes-Benzは、数種のクロスオーバー車を含む13の新モデルを2020年までに投入するという目標を表明している。注目すべきモデルはGLAで、来春、欧州で発売され、その後、北米と中国でも販売される。さらに2015年にはMLC、2016年にはGLCという2つのSUVを投入する。
BMWもクロスオーバー車のラインアップ拡大を計画している。上海で発表されたX4コンセプトは、2014年に発売される予定。2016年には2ドアの小型クロスオーバー車 X2、2018-2019年には4ドア車のX7を投入する。その他の投入予定モデルには、2013年11月に発売される電気自動車のi3や、新型4 Seriesのク―ぺ/コンバーチブルがある。また、BMWは、X7の姉妹車としてRolls-Royceのクロスオーバー車を投入する可能性もある。
Porscheは、フランクフルトモーターショーに出展したハイブリッド・スーパーカー、918 Spyder (845,000ドル)を投入してラインアップを拡大する。2014年初頭には小型SUVのMacanも発売する計画。さらに、Panameraの小型バージョンと価格25万ドルのスポーツカーの追加を検討している。Porscheは2015年か2016年に販売台数を20万台以上とすることを目指している。
Fiatは、2016年までにイタリアでAlfa Romeoの新型車を8車種、Maseratiの新型車を6車種生産する計画。2013年にはMaserati GhibliとAlfa Romeoのスポーツカー 4C を発売する。MaseratiのSUV Levanteは、2015年に同ブランドの販売台数を8倍増の5万台にする原動力として、重要なモデルである。
Renaultは先頃開催されたフランクフルトモーターショーで、 Initiale Parisシリーズを発表した。これは、Renaultの戦略の一環で、大型モデルを上級化してプレミアム・セグメントに移すが、ドイツの高級車ブランドよりは手頃な価格を維持するというもの。
Jaguar は、2013年にJaguar F-Typeを含む新型車または一部改良車を8車種投入し、Land Roverのラインアップに世界初の9速トランスミッションを搭載する計画。また、C-X17コンセプトをベースとする高級クロスオーバーSUVの追加を検討している。
Lexusは、2014年末か2015年に同ブランド初の小型クロスオーバー車 LF-NXの生産を開始する計画。
Infiniti のQ30クロスオーバー・コンセプトは (Mercedes GLAと部品を共用)、早ければ2015年に英国・Sunderlandの日産工場で生産が開始する。このモデルは、2020年までにInfinitiブランドに追加される世界市場向けの5車種の最初のモデルである。

 

Mercedes GLA
Mercedes GLA
Jaguar C-X17 Concept
Jaguar C-X17 Concept
Lexis LF-NX Concept
Lexus LF-NX Concept
BMW i3
BMW i3

 

量産車メーカーも今後数年間に多数の新型車の投入を計画

 量産車メーカーの中にも、西欧の長期的な成長性を予期しているところもある。この成長に対応するため、多くのメーカーは、今後数年間に多数の新モデルや全面改良車を準備している。

VWは、電気自動車やハイブリッド車を最大40車種投入して、電動車両を強力に後押しする計画。まず、2014年末までに14の電動車両を生産すると表明している。これには電気自動車のe-Up!とe-Golfが含まれる。VWのGolf Sportsvanコンセプトは、2014年半ばに小型ミニバン Golf Plus の後継車として投入される予定。
VWはSEATブランドのステーションワゴンも投入する。モデル名はLeon ST (Sport Tourer)で、2013年11月に発売する計画。Skodaブランドでは、2013年10月にハッチバックのRapid Spacebackを投入する。
Fiatは2013年フランクフルトモーターショーで、500Lの新バージョンで7人乗りの 500L LivingとクロスオーバーSUVタイプの500L Trekkingを発表した。
Renaultは、ミニバンのEspaceと小型車のTwingoの最新のコンセプトカーを発表した。これらの新型車は2014年に発売される予定。Espaceは、今後、Renaultの上級モデルにつける予定のシリーズ名Initiale Parisを、初めて名乗るモデルとなる。
Citroenは、フランクフルトモーターショーに出展されたC4 Cactusコンセプトカーの量産モデルを2014年半ばに投入する計画。このモデルはChevrolet車やSkoda車に対抗する。
Peugeotの新型308は、EMP2プラットフォームを採用し、旧モデルより軽量で、CO2排出量も少ない。
GMは4月10日、主に同社の欧州部門Opelを支えるため、2016年末までに欧州に40億Euroを投資すると発表した。GMの支援を受けて、Opelは2016年末までに23の新型車と13の新型パワートレインを投入する計画。中でも重要なモデルは、2015年後半に発売予定の新型Astraと、2016年に投入されるSUVの新型Antaraである。
Fordは先頃、今後5年間に25車種以上の新型車を欧州に投入すると発表した。これは、2012年10月にFordが発表した数より10車種多い。Fordの成功に重要な役割を果たすのは、2014年に発売される予定のS-Maxである。
トヨタは、欧州で人気のあるボディ・スタイルを採用したステーションワゴン、Auris Touring Sportsを投入した。
ホンダは、欧州で設計・開発されたステーションワゴン、Civic Tourerを投入する。2014年初めに発売する予定。同モデルはリア・サスペンションに、スポーティな走行を可能にするアダプティブ・ダンパー・システムを採用。
スズキのiV-4は、SX4 S-Crossの下位に位置する新型サブコンパクトSUVのコンセプトカー。2015年春に発売予定。
現代自動車は、2017年までに欧州で22車種の新型車および改良車の投入を計画している。その多くは、小型車i10の次期モデルなど、既存モデルの改良車である。2016年には新モデルのサブコンパクトSUVも投入する予定。

 

Ford S-Max Concept
Ford S-Max Concept
Citroen c4 Cactus Concept
Citroen c4 Cactus Concept
Honda Civic Tourer Wagon
Honda Civic Tourer Wagon
Volkswagen e-Golf
Volkswagen e-Golf

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>