ELIV 2025 - 自動車エレクトロニクスの国際会議
オープンソース、AI、半導体 - SDVを支える技術潮流
要約
VDI Wissensforum GmbHが主催する国際VDI会議「ELIV」は、自動車エレクトロニクス、ソフトウェア、およびアプリケーションに関する世界最大の会議である。
ELIV 2025は、「Accelerate Innovation(イノベーションを加速せよ)」をテーマに掲げ、10月15日と16日、ボン(ドイツ)のワールドカンファレスセンターで開催され、世界中のカーエレクトロニクスコミュニティが一堂に会した。
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| ボンのワールドカンファレスセンターで開催されたELIV 2025(ELIV 2025、VDI Wissensforum GmbH主催/画像:Copyright © MarkLines Co., Ltd. All rights reserved) |
今年のイベントでは、自動車開発におけるオープンソースの変革的役割に焦点が当てられるとともに、チップレット、人工知能、自動運転、エレクトロモビリティといった最先端のテーマも取り上げられた。ELIV 2025は、OEM、サプライヤー、テックイノベーター、研究者らが連携するための主要なプラットフォームとして、欧州が自動車産業における競争力を維持するために「いかにして持続可能な形でイノベーションを加速できるか」という核心課題に取り組んだ。
4つの並行トラック(テーマ別セッション枠)では、66件の技術講演が実施され、国際的な自動車業界から集まった約850名の専門家に対し、新興技術から既存のエレクトロニクス領域に至る、幅広く深い洞察が提供された。
同時開催された「Electronics in Commercial Vehicles」会議では、商用車分野からの視点も提示され、参加者がセクター横断的なシナジーを探る機会が与えられた。
また、会場では国内外の68社による展示ブースも設置され、参加者は直接訪問して最新の技術情報に触れることができた。
展示エリアでは、最近発表されたBMWの新型「BMW iX3 50 xDrive」や、Mercedes-Benz「Mercedes-Benz CLA 250+ with EQ technology」などのモデルが展示されていた。
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| 展示されたデモ車両の様子(ELIV 2025、VDI Wissensforum GmbH主催/画像:Copyright © MarkLines Co., Ltd. All rights reserved) | ||
MIA My Transformations Hubは、都市のモビリティと物流に革命を起こすことを目指した先進的なコンセプトとして、革新的なモジュール式自動輸送システム(Modular Automated Transport System: MATS)を展示した。この電動車両は、マニュアルモードでは最高速度50km/h、自律走行モードでは同25km/hに到達できる性能を備えている。来場者は、VRゴーグルを用いてインテリアコンセプトを体験することができた。
Aumovioは、Tesla「Model 3」を用いて、Dolby Atmos®によって強化された「Ac2ated Sound」技術をデモンストレーションした。この革新的なシステムは、小型アクチュエーターを用いて、インテリア表面(ダッシュボード、Aピラー、ルーフパネルなど)を音源として変換し、従来のスピーカーを置き換えるものである。その結果、スピーカーを用いない没入型のオーディオ体験を実現し、重量および設置スペースを大幅に削減している。
参加者はVolkswagen「ID.4」で、AIを基盤とする先進システム「Perciv AI」が、自動運転システムにおける知覚と検証をどのように強化できるかを体験できた。「Perciv AI」は、マルチセンサーフュージョン(カメラ、レーダー、LiDAR)とAIベースの検証アルゴリズムを用いて、複雑な走行環境を解釈し、エッジケースをリアルタイムで検出する。
RWTHアーヘン大学は、大型電動車両による道路輸送向けの架線技術の開発と評価に取り組む研究プロジェクト「BEE – BEV Goes eHighway」を紹介した。
会議の開会挨拶を行ったのは、プログラム委員会の議長を務めるRolf Zöller博士である(DigiTrans ConsultingのCEO兼創設者で、それ以前はPorsche AGおよびPorsche Digitalに所属)。
彼は、会議で扱われる自動車トレンドの各セッションについて、簡単に概要を紹介した。
オープンソース:オープンソースソフトウェアは、特にADASや自動運転技術において、開発期間を大幅に短縮できる可能性がある。注目すべき事例として、オープンソースコンポーネントを活用したソフトウェア開発の加速を目指す業界主導の取り組みが議論された。
チップレットと半導体:チップレットは柔軟性を高め、性能を向上させ、コスト削減にも寄与する。
SDV向けソフトウェア:ソフトウェアはSDV変革の中心に位置しており、戦略、セキュリティ、クラウド統合、仮想化を推進し、スケーラブルで柔軟な車両プラットフォームを実現するとともに、OEM全体のイノベーションを加速させている。この技術は勢いを増しているものの、まだ導入の初期段階にあり、現時点で完全に実現されたSDVは、世界の車両全体のわずか5%程度にとどまっている。
自動車分野におけるAI:自動車業界では、AIによる開発支援の潮流が拡大している。中でも、エッジAIおよびエージェントAIは、センサーデータの処理からシステム検証に至るまでのプロセス変革において、重要な役割を担っている。
革新的手法とツール:仮想化および高度なシミュレーション手法が、イノベーションの主要な推進力として台頭している。プロセス、手法、ツールは世界的に標準化が進みつつあり、製品開発におけるAI支援アプローチは、約15%の効率向上をもたらしている。
アーキテクチャと通信:SDVアーキテクチャの開発には、依然として大きな進展が求められている。明確なアーキテクチャ仕様の策定は成功の鍵であり、ゾーン設計の台頭とともに、ハイパーバイザーや堅牢なミドルウェア層を備えた高性能コンピューティングプラットフォームへと焦点が移りつつある。
自動運転:自動運転レベル2+からレベル3への移行は、すでに射程圏内にある。認識およびセンサーフュージョン、コンピューティングプラットフォームの性能、堅牢なソフトウェアアーキテクチャ、安全対策、そして規制当局の承認など、複数の領域で着実に進展が見られる。
コックピットとカスタマーエクスペリエンス:車内でのデジタルユーザーエクスペリエンスの重要性はますます高まっている。市場特性に適合した使いやすいHMI、高性能なナビゲーションとビジュアライゼーション、アシスタンスシステムとのシームレスな統合、そして車内デジタルアシスタントの存在感の拡大が、今後のコックピットおよびカスタマーエクスペリエンスの方向性を形作っている。
組織の変革:自動車産業においては、文化面および戦略面での転換が不可欠である。現在、SDVアーキテクチャ、ツールチェーン、およびAI手法の専門性を培っている若手人材は、将来的に12〜20%規模まで拡大すると予測される急成長市場に直面することになる。協調型エコシステムにおいては、ティア1サプライヤーがエンジニアリングパッケージを管理し、専門企業がソフトウェア製品を開発してOEMにライセンス供与する構図となっている。
モビリティのためのエレクトロニクス技術:自動車およびハードウェア関連の幅広い技術群は、今後のモビリティシステムにおける基盤として存続し、全体システム統合に向けた不可欠な技術的土台を形成していくことになる。
会議のトピックを紹介した後、Zöller博士は「イノベーションを加速せよ」と題したパネルディスカッションのモデレーターを務めた。
本稿では、このパネルディスカッションの内容に加えて、AudiおよびBMWによる基調講演、さらにBoschおよびMicrochipの技術講演を要約する。
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