ダイハツ:開発をスピードアップし、市場の変化に素早く対応

軽自動車で培った低燃費・低コスト技術を海外のコンパクトカーに展開

2013/07/30

要 約

2012年12月発売のダイハツ・ムーヴ
2012年12月発売のダイハツ・ムーヴ
(その時点でハイトワゴントップの燃費29.0km/Lを達成)

 ダイハツの2012年度決算は、軽自動車販売が過去最高の65.3万台となり、2期連続の増収(売上高1兆7,649億円)、4期連続の営業増益(営業利益1,330億円)、3期連続の純損益増で、売上高、各段階の利益とも過去最高となった。

 2013年度は、売上高、各段階の利益全て拡大し、過去最高業績を更新する見込みだが、軽自動車市場の競合の激化から、売上高(1兆8,000億円)、営業利益(1,350億円)とも微増にとどまるとしている。

 ダイハツは、軽自動車市場で2006年度からシェアトップを維持している。しかし、ホンダのN BOXの投入、日産・三菱共同開発車の発売等で軽市場では競争の激しさが増している。

 なかでも燃費の競争が激化しており、ダイハツは福岡県にエンジンの開発拠点を設置し、エンジンの生産と開発を一体化してエンジン開発期間を短縮、さらには車両の開発をスピードアップする構想。

 また、国内の軽自動車で培った低燃費・低コスト生産の技術を、国内の各車種やインドネシア、マレーシアでのコンパクトカー開発・生産に横展開するとしている。

 インドネシアでは、インドネシア政府のLCGC(Low cost green car)政策に関する大統領令等行政手続きが進行中で、8月下旬から9月初旬にダイハツ・アイラ(AYLA)を発売する予定としている(姉妹車トヨタ・アギア(AGYA)もダイハツが生産する)。

 マレーシアでは、マレーシアのTPP参加をにらみ、新完成車工場とAT工場を建設して、現地子会社プロドゥア社の競争力を高めるとしている。

ダイハツの経営戦略:改革路線を発展・進化

技術開発  ミライース・ムーヴで培った技術を、インドネシアで生産するアイラ(AYLA)や国内各車種に展開する。
・低燃費・低価格をさらに発展、進化させる。 
・新たな商品魅力を創造⇒新規需要の創造(燃費、利便性、楽しさ等多様な商品を投入。
左項を
スピード
アップする
生産  ダイハツ九州の低コスト生産ノウハウを、インドネシアADM社(Astra Daihatsu Motor)・マレーシアのプロドゥア社に展開する。
・低コスト・高効率・高品質を実現し、かつ「現地化の最も進んだ工場」を立ち上げる。

資料:ダイハツ2012年度決算説明プレゼンテーション資料



関連レポート2012年の軽自動車市場は200万台水準、乗用車でのシェアは34%(2012年11月掲載)



ダイハツ:2013年度軽市場は、年度後半に上振れし、200~210万台規模を予測

 2012年度の軽自動車市場は、前半期のエコカー補助金効果および各社の新型車投入などで、2006年度に次ぐ過去2番目の実績(197.2万台)となり、日本の自動車市場に占める割合は37.9%に達した。2013年4~6月期には40.9%に上昇している。

 ダイハツは2006年度に軽自動車市場シェアトップとなり、7年間トップの座を維持している。

 2011年にトヨタが、ダイハツからOEM供給を受け市場に参入したことで、自動車メーカー全8社が軽自動車市場に参入した。

 また2011年12月にホンダがNシリーズの第一弾となるN BOXを発売し、2012年度の販売を前年度比2.2倍増した。2013年6月には、日産と三菱自が共同開発した第一号モデルであるDAYZとeKワゴンを発売するなど、軽自動車の競争が激化している。

 ダイハツは、2013年4月時点では、2013年度軽自動車市場は、2012年8月に終了したエコカー補助金の需要押し上げ効果の反動で180~190万台に縮小すると予測し、ダイハツ車販売計画を63万台と発表した。しかし7月時点では、ホンダ、日産/三菱自の新型車が全需を押し上げ、年度後半には、2014年4月に実施が予定される消費増税前の駆け込み需要を見込み、2013年度軽全需見込みを200~210万台規模に上方修正した。ダイハツ車販売は、63万台の計画を変更していないが、63万台を上回りたいとしている。

日本の自動車市場:登録車と軽自動車の販売台数と構成比率

2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2012年
4~6月
2013年
4~6月
前年
同期比
登録車 台数 3,182,073 2,972,348 3,064,336 3,237,690 762,495 699,177 91.7%
軽自動車 台数 1,698,101 1,628,711 1,688,896 1,972,542 497,406 484,459 97.4%
比率 34.8% 35.4% 35.5% 37.9% 39.5% 40.9%
合計 合計 4,880,174 4,601,059 4,753,232 5,210,232 1,259,901 1,183,636 93.9%

資料:日本自動車販売協会連合会

 

軽自動車市場:ダイハツ/スズキ/ホンダの新車販売台数とシェア

新車販売台数 販売シェア
市場全体 ダイハツ スズキ ホンダ その他 ダイハツ スズキ ホンダ
2006年度 2,030,616 616,228 605,506 283,313 525,569 30.3% 29.8% 14.0%
2007年度 1,893,043 612,754 587,330 223,773 469,186 32.4% 31.0% 11.8%
2008年度 1,808,877 619,357 579,383 189,101 421,036 34.2% 32.0% 10.5%
2009年度 1,698,191 596,166 554,488 158,432 389,105 35.1% 32.7% 9.3%
2010年度 1,628,787 568,432 520,731 154,190 385,434 34.9% 32.0% 9.5%
2011年度 1,688,937 602,735 515,759 165,658 404,785 35.7% 30.5% 9.8%
2012年度 1,972,600 652,569 586,462 362,329 371,240 33.1% 29.7% 18.4%
2012年4~6月 497,423 175,063 147,700 81,135 93,525 35.2% 29.7% 16.3%
2013年4~6月 484,460 157,597 148,014 90,669 88,180 32.5% 30.6% 18.7%
2013年度
期初の見通し
180~190万台 63万台
同上7月時点の見通し 200~210万台 63万台超

資料:全国軽自動車協会連合会
(注)ダイハツは2013年度、(1)複数の主力モデル強化(低燃費追求や新たな商品魅力の創造)、(2)スマートアシスト搭載拡充、(3)現在670店舗の直営店を都市部中心に最大80店舗増やす、などの対策により、競争が激化する軽自動車市場で勝ち抜くとしている。

 

 



激しい燃費競争:2013年8月に、燃費33.4km/Lのミライースを発売

 ダイハツは、2011年9月にJC08モード燃費30km/Lを達成したミライースを発売。スズキは同年11月に燃費30.2km/Lのアルトエコを発売した。その後スズキとの間で、激しい燃費競争を繰り広げている。

 スズキは、エネルギー回生にリチウムイオン電池を使用する「エネチャージ」を2012年9月発売のワゴンRに初採用し、その後採用車種を拡大している。

 ダイハツは、ミライース以来コンベンショナルな技術を徹底して安いコストでの低燃費を目指し、エネルギー回生も鉛電池を活用して取り組んできた。2012年12月に発売したムーヴでは、CVTサーモコントローラーを採用し、その時点でハイトワゴン燃費トップの29.0km/Lを達成した。また2013年8月にマイナーチェンジするミライースで「e:Sテクノロジー(Energy Saving Technology)」をさらに進化させ、ガソリン車トップの33.4km/Lを達成すると発表した。

 ダイハツは、燃費35.0km/Lまでは上記の方向性を追求し、その次のステップとしてエネルギー回生のためにキャパシターなどの採用も研究中としている。

 また、軽自動車で培った低燃費技術を、海外でのコンパクトカーの展開に活用していく計画。

軽自動車市場での燃費競争(2011~2013年)

5ドアH/B ハイトワゴン スーパーハイトワゴン
ダイハツ スズキ JC08
燃費
ダイハツ スズキ、
日産/
三菱
JC08
燃費
ダイハツ スズキ JC08
燃費
2011年9月 ミライース 30.0km/L
2011年12月 アルトエコ 30.2km/L
2012年9月 ワゴンR 28.8km/L
2012年12月 ムーヴ 29.0km/L
2013年3月 アルトエコ 33.0km/L
2013年3月 スペーシア 29.0km/L
2013年6月 日産DAYZ・
三菱eKワゴン
29.2km/L
2013年7月 ワゴンR 30.0km/L
2013年7月 MRワゴン 30.0km/L
2013年8月 ミライース 33.4km/L
2013年秋 タント 未発表

(注)上表では、軽乗用車を、5ドアハッチバック、ハイトワゴン(ダイハツ・ムーヴ、スズキ・ワゴンRなど)、スーパーハイトワゴン(ダイハツ・タント、スズキ・スペーシア、ホンダ・N BOXなど)の3つのタイプに分類した。

<ダイハツ車が採用した主要な燃費技術>
ミライース
(2011年発売)
 2011年9月に発売したミライースは、エンジンの燃焼効率とメカニカルロス低減を徹底、CVTの動力伝達効率をさらに向上、約60kgの車両軽量化、時速7kmでエンジンを停止するアイドリングストップの採用、減速エネルギー回生の効率向上などで低燃費化を実現した。ベース車価格は795,000円。
ムーヴ
(2012年発売)
 エンジンとCVTの温度を相互に最適化する「CVTサーモコントローラー」や時速が9km以下になるとエンジンを停止する新「エコアイドル」などを採用。
ミライース
(2013年発売)
 2013年8月に発売するミーライースのマイナーチェンジ車では、「e:Sテクノロジー」の3大要素である(1)パワートレインの進化、(2)車両の進化、(3)エネルギーマネジメントについてそれぞれ改良を行った。またベース車価格を、現行の税込み795,000円からさらに値下げする見込み。
(1)パワートレインの進化では、i-EGRをさらに進化させた「クールドi-EGR」により燃焼効率を向上、低フリクション・タイミングチェーンなどの採用によりフリクションロスを低減。
(2)フロアアンダーカバーの採用で、フロア下の空気の乱れを整流化し走行抵抗を低減、ローダウンサスペンションの採用により車高を10mm下げ、フロア下に入り込む風を低減など。
(3)エネルギーマネジメントの進化では、「エコアイドル」を進化させ、停車前時速11kmからアイドリングストップを可能にし、また発電効率の高い高性能オルタネーターの採用で減速時の発電量を向上させた。

 

衝突回避アシスト(スマートアシスト)を軽自動車で初採用

 ダイハツは、2012年12月発売のムーヴに、軽自動車初の衝突回避支援システム「スマートアシスト」を設定した。ダイハツは、ダウンサイズするユーザーや男性ユーザーを獲得するためにも、安全装備を充実させていく方針。他の車種にも、改良車発売に合わせて搭載する計画。

 スズキも、2013年7月発売のワゴンRに、ほぼ同様のシステム「レーダーブレーキサポート」を設定した。価格は、軽ユーザーに合わせて機能を絞り込むなど低コスト化を図り、ダイハは5万円、スズキは4.2万円の設定で、ダイハツ・ムーヴでは約6割のユーザーが選択している。

ダイハツとスズキの衝突回避支援システム

ダイハツの「スマートアシスト」 スズキのレーダーブレーキサポート
「衝突被害軽減ブレーキ」
搭載モデル 2012年12月発売のムーヴ 2013年7月発売のワゴンR
低速域
衝突回避
 約4~30km/hで走行中、レーザーレーダーが前方車両を認識。衝突の危険性が高い場合に、ドライバーに警告。その後も回避操作がなく衝突の危険性が高まると緊急ブレーキが作動。相対速度が約20km/h以下の場合は衝突を回避、約20~30km/hの場合は被害軽減を支援する。  約5~30km/hの低速走行中に、レーザーレーダーにより前方の車両を検知。衝突を回避できないと判断した場合に、自動ブレーキが作動して、衝突回避または衝突時の被害の軽減を図る。衝突回避は、相対速度が15km/hまで(ダイハツの20km/hとの違いは安全思想の違いと説明している)。
その他の機能  誤発進抑制制御機能、先行車発進お知らせ機能を持つ。  誤発進抑制制御機能、エマージェンシーストップシグナル機能を持つ。
ESC 本システム搭載車は、セットでESCも設定する。
価格  50,000円高(税込み)  42,000円高(税込み)
(注) 1. ダイハツ車のレーザーレーダーはデンソーが供給、スズキにはContinentalが供給。
2. ダイハツ・ムーヴのOEM供給車であるスバル・ステラも、2013年1月発売の新型車からスマートアシストを採用した。

 

 



九州にエンジンの開発・生産一体体制を構築、開発をスピードアップ

 ダイハツは、福岡県にエンジンの研究開発拠点を建設する。久留米市のエンジン工場隣接地に建設し、エンジン生産と開発が一体となった新たな開発体制を構築する。

 軽自動車の燃費を中心とした開発競争が激しくなっており、スズキが相次いで新製品を投入、ホンダ、日産/三菱連合も新型車を発売している。ダイハツは、エンジン開発期間、さらには新型車開発期間を短縮し、新技術搭載車のスピーディーな投入を目指している。

九州地区のエンジン開発・生産体制を強化

久留米工場の
エンジン生産
能力を増強
 ダイハツは2013年5月、エンジン工場である久留米工場に約70億円を投資し、1ラインから2ラインに増強して、年産能力を(2直定時)約21.6万基から32.4万基に増強した。
 新ライン稼動前は、大分(中津)工場の車両生産拡大に伴いエンジン生産能力が不足し、供給不足分はダイハツ滋賀工場から供給を受けていた。
エンジン工場
隣接地に技術
開発拠点を建設
 ダイハツは久留米工場の隣接地に軽自動車のエンジンを主体とする開発拠点として「久留米開発センター」を建設すると発表した(2012年12月発表)。総投資額は140億円。2014年3月に稼動開始する計画。
 2014年3月にエンジン、トランスミッションなどの実験棟を開設し、2014年12月に、車両搭載時の性能評価を行う実験棟やテストコースなどを開設する。ダイハツは、生産と開発が一体となった新たな開発体制を構築する。また現在関西地区に集中しているエンジン開発機能を、段階を追って九州地区に移転させる計画とされる。

(注)今後中国、タイなど海外からの部品調達を増やす方針で、久留米開発センターでは、海外部品の評価も行う計画。

エンジン開発、新車開発の期間を短縮
エンジン開発期間
短縮を目指す
 ダイハツは、エンジンの開発期間を6カ月に短縮する目標を設定したと報道されている。開発期間を短縮し、最新の技術を取り入れた新型エンジンを適時投入する体制を目指す。具体的には、CAEシステムの活用を拡大し、また設計段階から開発と生産技術の両部門が連携し、業務を同時進行させるコンカレントエンジニアリングを徹底する。
新型車開発を
スピードアップ
 ダイハツは、少数精鋭のチームをつくり新車開発スピードを高める方針。縦割り組織を改め、開発各工程の連携を強めるなどで、ニーズの変化に迅速に対応する体制を構築する。既に久留米開発センターの開発チームは、新しい組織体制で活動している。
 これまでは研究開発費や設備投資を抑制してきたが、今後は数年先の商品計画を見据えた投資を増やして「技術の棚」をつくり、市場動向に合わせて投入していく体制を構築する。

(注)ダイハツが現在軽自動車に搭載しているKFエンジンは、5年間かけて開発し、2005年に量産を開始した。2011年に一部改良した「第2世代KFエンジン」を、ミライースやムーヴなどに搭載している。

 

 



インドネシア:2013年8月下旬~9月初旬にダイハツ・アイラ(AYLA)を発売

 ダイハツのインドネシアでの生産・販売は、ここ数年順調に拡大している。2013年度のインドネシア市場は、2012年度の113万台から125万台に拡大すると見込んでいる。

 ダイハツの子会社ADM社(Astra Daihatsu Motor)のスンター工場は年産能力33万台で、トヨタAvanza/Rushも生産し、ダイハツはインドネシア最大の生産台数を誇っている。

 2012年10月に、2番目の完成車工場として、年産12万台のカラワン工場が完成した。インドネシア政府のLCGC(Low cost green car)政策に適合するコンパクトカー ダイハツ・アイラ(AYLA)とトヨタ・アギア(AGYA)を生産する予定であった。インドネシア政府からLCGC政策の正式発表がなく、LCGCエコカーの本格生産に入れないため、カラワン工場は販売好調なトヨタAvanza/ダイハツXeniaを主に生産している。

 しかしインドネシア政府内でLCGCの内容が固まり、2013年7月下旬時点で大統領令等行政手続きが進行中で、8月下旬から9月初旬にダイハツAYLAを発売する見込みが立ったとしている。

ダイハツ:インドネシアでの販売台数

2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
予想
ダイハツ車 55,176 78,469 83,560 123,418 144,071 165,000 210,000
ダイハツ:インドネシアでの生産台数
2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度
ダイハツ車 55,495 84,239 88,582 136,719 157,919 176,000
トヨタ車 106,569 136,238 149,790 184,168 229,641 281,000
合計 162,064 220,477 238,372 320,887 387,560 457,000

資料:ダイハツの2012年度決算発表資料とDATA BOOK 2012

 

ミライースの技術をベースに、ダイハツ・アイラ(AYLA)/トヨタ・アギア(AGYA)を開発

 ダイハツとトヨタは、2012年9月、インドネシア政府のLCGC(Low cost green car)政策に適合する小型乗用車、ダイハツ・アイラとトヨタ・アギアを開発したと発表した。Astra Daihatsu Motor(ADM)の新工場(カラワン工場、2直定時で年産12万台)で生産する。
 AYLA/AGYAは、ダイハツ・ミライースで培った低燃費・低価格なコンパクトカーづくりのノウハウをベースに、ADMも参画して開発した。1000ccエンジンを搭載するエントリーユーザー向けファミリーカー。
 LCGC政策では、エンジン排気量はガソリン車で980~1200cc、ディーゼル車で1500cc以下、燃費は20km/L以上、税抜き価格の上限は9,500万ルピア(約94万円)、AT車はプラス10%、安全装備装着車はプラス15%の上乗せが可能とされる。
トヨタ:2013年3月に、エティオス・ファルコの生産・販売を開始
 トヨタは2013年3月、新設したカラワン第2工場で、エティオス・ファルコ(Etios Valco)の生産・販売を開始した。1200ccガソリンエンジンを搭載し、価格は1億3,550万ルピーから。アギアよりワンランク上の中間層を狙う。なお、エティオスは2010年末にインドで、2012年9月にブラジルで生産・販売を開始した、トヨタの新興国向け戦略車。

 

 



マレーシア:新完成車工場、新AT工場を建設、競争力を強化

 ダイハツは、2013年のマレーシアの市場規模は、前年の62.7万台から微増の63万台を予測。2013年にGDP成長率5.3%(4月9日付アジア開発銀行の予測)を見込み、経済の安定から堅調な自動車市場を見込む。ダイハツの現地子会社であるプロドゥア社の販売は、前年度の18.9万台から19.7万台へ4%の拡大を見込む。プロドゥアは、2011年30.0%、2012年30.2%とマレーシア市場のトップシェアを維持している。

 マレーシアはTPP交渉に参加しており、ダイハツは今後の競争激化に備えて完成車工場とAT工場を建設し、コスト競争力の強化およびさらなる品質改善を図り収益向上を目指している。

ダイハツ:マレーシアでの販売台数

2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年
(1~12月)
2013年
(暦年)予想
ダイハツ車 172,905 170,668 180,118 189,161 181,226 189,000 197,000

 

マレーシア:新完成車工場、AT工場を建設

新完成車工場
を建設
 ダイハツは、マレーシアに新たな車両工場を建設すると発表した(2012年12月発表)。プロドゥアグループの持株会社であるプロドゥア・オート・コーポレーション(ダイハツは41%出資)が中心で新たな運営会社を設立し、プロドゥアの既存工場(年産能力23万台)とは独立して運営する。ボディー・塗装・組立工程を持つ予定。新会社の資本金は200万リンギッド(当時の為替レートで約50億円)、総投資額は200億円。
 2014年央に、当初年産能力10万台で生産を開始する。既存工場とは経営を分け、大分工場で培った最新鋭の小さく無駄のない工場設計の手法を導入しコスト削減に努め、低燃費・低コストのスモールカーを生産する。
ATを現地生産  ダイハツは、マレーシアにおいて、子会社の明石機械工業(株)と合弁でAT生産工場「AKASHI KIKAI INDUSTRY (M) SND. BHD.」を2012年2月に設立した。明石機械工業が51%、ダイハツが39%、プロドゥアが10%を出資。2013年11月から、高品質と低コストを両立させたATを生産する。
 マレーシアでのAT現地生産は、他の自動車メーカーも含め初。ダイハツは、マレーシアにおける国際競争の激化をにらんで現地調達比率を高め、コスト競争力をさらに強化するとしている。

 

 



連結決算:2013年度は、売上高、利益とも微増の計画

 ダイハツの2012年度決算は、国内の軽自動車販売の好調を受けて、売上高が8.2%増の1兆7,649億円、営業利益が15.2%増の1,330億円で、2期連続の増収、4期連続の営業増益で、売上高、各段階の利益とも過去最高となった。

 2013年度は、国内では各社が軽自動車市場に新型車を投入することで競争激化を予想し、売上高は8,000億円へ7.3%減少するが、海外売上高がインドネシアでの拡大など4,200億円に16.9%増加を見込む。連結売上高は微増の1兆8,000億円、営業利益はやはり微増の1,350億円を見込んでいる。

 2013年度の設備投資1,150億円は過去最高で、福岡県久留米市でのエンジン開発拠点の設置、マレーシアでの新完成車工場建設などに充当する。研究開発費も、ここ2~3年間の水準から2割程度増額する。

 

ダイハツの連結業績概要

(100万円)
2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2012年
4~6月期
2013年
4~6月期
2013年度
予想
ダイハツ車売上高
国内売上高
海外売上高
1,085,200
788,500
296,700
1,113,700
786,600
327,000
1,137,800
814,200
323,500
1,222,000
862,600
359,400
326,100
232,000
94,000
303,100
208,500
94,500
1,220,000
800,000
420,000
受託・OEM 489,400 445,700 493,400 542,900 122,500 148,600 580,000
売上高合計 1,574,727 1,559,412 1,631,320 1,764,976 448,650 451,788 1,800,000
営業利益
経常利益
当期純利益
40,747
43,842
21,162
103,443
112,215
52,555
115,462
128,223
65,138
133,040
148,173
81,406
37,837
40,556
20,555
43,250
48,053
23,277
135,000
150,000
82,000
研究開発費
設備投資
減価償却費
43,734
36,745
72,900
38,227
40,614
63,700
33,830
69,336
61,000
35,700
73,100
56,200
7,700
15,800
13,700
10,200
18,300
13,700
42,000
115,000
62,000

資料:ダイハツの2012年度決算発表

 

ダイハツのグローバル売上台数

(1,000台)
2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2012年
4~6月期
2013年
4~6月期
2013年度
予想
軽自動車 596 568 603 653 175 158 630
小型車 7 5 3 3 1 1 4
国内販売台数 603 573 606 655 176 158 634
海外販売台数 325 367 368 387 96 98 433
ダイハツ車合計 928 940 973 1,042 272 257 1,067
OEM・受託車生産台数
国内 240 176 222 219 60 57 218
海外 161 192 236 581 71 78 356
400 368 458 500 131 135 574
OEM・受託車生産車種
国内生産 トヨタ向け  Probox/Succeed van(47,109台), Passo(56,190台), Sienta(33,196台), Rush、bB、
軽自動車各車種(ピクシスシリーズ)
富士重工向け  スバルブランド軽自動車各車種(合計33,071台)
海外生産
(インドネシア)
トヨタ向け  Avanza(186,406台), Rush(31,092台), TOWN ACE/LITE ACE(日本への輸出向けに供給)

資料:ダイハツの2012年度決算発表
(注)台数は、2011年度の生産台数(3万台以上の車種について記入した)。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>