人とくるまのテクノロジー展2013:自動車メーカーの出展

トヨタ/日産/ホンダ/富士重が新型ハイブリッドを、安全装備も多様な出展

2013/06/14

要 約

 2013年5月22日~24日にパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2013」における、自動車メーカーの出展をまとめた。今年の出展社数は、自動車メーカー、部品サプライヤーなどを含めて過去最高の475社(前年比39社増)、来場者数も過去最高の約7.8万人(同0.6万人増)となり(主催者発表)、盛況であった。

 自動車メーカーの展示ではハイブリッド、EVなど電動化技術の展示が引き続き多く、この夏発売予定の富士重のXV HYBRIDのプロトタイプ、ホンダの2モーター式のハイブリッドシステム、トヨタ クラウンHVのカットモデル、日産のEVリーフの新しいパワートレインが展示されていた。また、特別企画として、日産やホンダなどの超小型EVの展示もあった。

 今年の傾向としては、金属を用いた軽量化技術、安全技術に関する出展が目立った。

 軽量化では、日産は1.2GPa級超ハイテン材を利用したInfiniti Q50のホワイトボディを披露。ホンダは鉄とアルミを摩擦撹拌接合させたフロントサブフレームを展示した。

 安全技術関連では、トヨタの新型クラウンに搭載したポップアップフード、ダイハツの軽自動車で初めての衝突回避支援システム スマートアシスト、新型アテンザで6割強の装備率のマツダのi-ACTIVSENSEなどが展示された。
 富士重工はEyeSightのクルーズコントロール機能をHVシステムと協調させ燃費を向上させる。

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EV/HVとアイドリングストップ関連技術の出展 (2013年6月掲載)
軽量化など内燃エンジン車の燃費改善、安全支援、スマホ連携ナビなどの出展(2013年6月掲載)


ハイブリッド技術:ホンダの2モーターハイブリッドシステム、富士重初のHV車 XV HYBRID

 

プラグインハイブリッドのエンジンルーム
ホンダの「スポーツハイブリッドi-MMD」を搭載した、
プラグインハイブリッド(実証実験車)のエンジンルーム
「スポーツハイブリッドi-MMD」の電動CVT
「スポーツハイブリッドi-MMD」の電気(式)CVT:
写真左側がエンジン。一番右端にあるのが発電用モーターで、その左側に駆動用モーターがある。左端にあるギアはエンジンと発電用モーターをつなぐ。その右側にあるのがエンジンと駆動輪をつなぐクラッチで、その上にある小さなギアは駆動用モーターの出力軸とつながっている。

 

ホンダ 2モーターの
HVシステム
「スポーツハイ
ブリッドi-MMD」
 2013年6月に日本で発売される、アコードハイブリッドに搭載されるハイブリッドシステム。同車の燃費性能は30.0km/L(JC08モード)と発表されている。同年1月に米国で発売されているPHV アコードプラグインにも同じシステムが搭載されている。この2つのシステムの違いはリチウムイオン電池の容量(HVは1.3kWh、PHVは6.7kWh)と充電口の有無。
 2.0Lアトキンソンサイクルエンジン、走行用モーターと発電用モーターを備えた電気(式)CVTからなる。システム最高出力は146 kW、走行モーターの最高出力は124 kW。基本的にはシリーズ式ハイブリッドとして機能するが、中高速のクルーズ走行時にエンジンをクラッチで駆動輪につないでエンジン走行を行う。
富士重 XV HYBRID
(プロトタイプ)
 2013年初夏に日本で、秋に北米で発売予定の富士重初めてのHVモデル。ベース車である小型SUV XVには当初からHVを搭載することを想定して開発していた。燃費性能は20.0km/Lとベース車に比べて約30%向上(重量は120kg増)。パナソニック製のバッテリー(容量0.6kWh)は後部のサブトランク部分に収納。
 エンジンは2.0L のFB20エンジンをハイブリッド向けに改良し、圧縮比を高め、クールドEGRを採用した。モーター(最高出力10kW) はCVTに内蔵されおり、エンジンとクラッチを介してつながるプーリーへ直結しエンジン駆動をサポートする。また、モーター走行による四輪駆動を可能にした。
 通常のスターターに加えてISG (Integrated Starter Generator)も持ち、ISGは走行時のエンジン再始動用で専用の鉛電池も持つ。電装部品用の鉛電池も別に持ち、こちらはCVT内蔵のモーターから充電を行う。「ISG+2個の鉛電池」のシステムは日産のS-HYBRIDと同じ仕組み。
トヨタ 新型クラウンHV
カットモデル
 新型クラウン ハイブリッド(2012年12月発売)のカットモデルを展示。FRセダン用の直列4気筒2.5Lエンジンとハイブリッド・トランスミッションを組み合わせたシステムを搭載。この新開発されたエンジンは新しいD-4Sシステム(直噴/ポート噴射併用システム)、吸排気VVT、アトキンソンサイクルを採用して、熱効率38.5%を達成。燃費性能は23.2km/L(JC08モード)。同じハイブリッドシステムはLEXUSブランドのIS300h、GS300hにも搭載されている。
日産 FF車向け
HVシステム
 2013年夏に北米で発売するパスファインダーに搭載される、中型以上のFF車向けの1モーター2クラッチ式のハイブリッドシステム。 エンジン、クラッチ、モーター、CVT(クラッチ付)の順に並んでいる。エンジンは排気量2.5Lのスーパーチャージャー付。より小さいクラス向けのハイブリッドシステムは、簡易型HVシステム「S-HYBRID」を進化させて展開していく予定。

 

XV ハイブリッドのエンジンルーム
XV ハイブリッドのエンジンルームには、
左右2つの鉛電池がある。
トヨタ クラウン ハイブリッドのカットモデル
トヨタ クラウン ハイブリッドのカットモデル
(写真はエンジンルーム部分)
日産のFF車向けHVシステム
日産のFF車向けHVシステム:2.5Lスーパーチャージャー付
エンジンとジヤトコ製CVT8 Hybridを搭載

 


 



EV:日産 リーフの新パワートレイン、日野の小型EVバス、SIM-Driveの先行開発車

 

新しいEパワートレイン
マイナーチェンジしたリーフに搭載されている、新しい
Eパワートレイン:モーターとインバーターを合わせた
重量を11.7kg減の69.4kg、容量を5.1L減の29.3Lとした。

 

日産 E-パワートレイン  発売後2年たった、2012年11月にマイナーチェンジ(MC)したEVリーフの、新しいパワートレインを展示。最大トルクは254Nm(MC前280Nm) 、最高出力80kW(変化なし)、最終減速比8.194(同7.938)。
 モーター、減速機、インバーター、PDM(Power Delivery Module)を一体化し、従来と比べて重量で10%、容積で30%減少。MC前は後部座席の背後にあった充電器をDC-DCコンバーターと一体化しPDMと呼称している。EVは新しい車種のため技術の変化も早く、フルモデルチェンジに向けて更なる改良を進めているとのこと。
日野 ポンチョ EV  小型バス ポンチョをEVに改造し限定販売。充電器込みで価格は約8,000万円(ベース車は1,650万円)。自治体から引き合いは多く、今後は前向きな推進を検討しているとのこと。
 駆動用バッテリーはIHI製リチウムイオン電池(セルはA123 Systems製)で容量は30kWh。駆動用モーターは米国UQM Technologies製の永久磁石同期モーター(最高出力200kW、最大トルク900Nm)。
SIM-Drive SIM-CEL  同社が2013年3月に発表し、先行開発車第3号「SIM-CEL」を展示。従来と同じく4輪にインホイールモーターを搭載し、モーター一つあたりの最大トルクを700Nmから850Nmへ引き上げ、0→100km/h加速4.2秒を実現。航続距離(JC08モード)は324km。停止時にインバーターからの出力を停止する、アイドリングストップに相当する機能を付け、航続距離を20km伸ばした。

 

日野のPon'cho EV
日野のポンチョ EV
SIM-CEL
SIM-Driveの先行開発車第3号 SIM-CEL


 

トヨタと三菱の外部給電システム

トヨタ PHV 外部給電
システム
 プリウスPHVの外部給電システム(オプション価格94,500円(消費税込み))は、充電口に給電用のコネクターを差し込んで用いる。出力1.5kWまでの家電製品の利用が可能。ガソリン満タンで一般家庭の平均的な電力使用(約10kWh)を4日分を供給できる。
三菱 MiEV power box  三菱のEV i-MiEV/MINICAB-MiEVから給電する装置。最高出力は1500W。メーカー希望小売価格は、消費税込み149,800円。

 

トヨタの給電用のコネクター
トヨタの給電用のコネクター。充電口に差し込んで用いる。
三菱のMiEV power box
三菱のMiEV power box

 


 



軽量化技術: 日産の成形性の高い1.2GPa級ハイテン材の利用とホンダの鉄アルミ摩擦撹拌接合技術

 

Infiniti Q50のホワイトボディ Infiniti Q50のホワイトボディ
超ハイテン材を使ったInfiniti Q50のホワイトボディ:赤色が1.2GPa級超ハイテン材、
橙色が780~980MPa級超ハイテン材、青色が440~590MPa級ハイテン材、灰色は軟鋼

 

日産 成形性の高い
超ハイテン材の
利用
 日産は、複雑な形状にも適用可能な成形性の高い超ハイテン材(1.2GPa級)を利用した、Infiniti Q50のホワイトボディを展示。新日鉄住金、神戸製鋼所と共同開発した、1.2GPa級のハイテン材はAピラー、Bピラー上半分、サイドシルなどに用いられている。この新しい超ハイテン材は、通常のプレス機で成形できるように、材料・成形技術を工夫したことが最大の特徴とのこと(Q50のフロアには1.5GPa級のホットプレス材も一部使われている)。
 同社は、超ハイテン材(780MPa以上)の利用率(質量比)を、2013年の9%から2017年以降に25%まで高める方針を2013年3月に発表していた。
ホンダ 鉄アルミ
摩擦撹拌接合技術
 鉄とアルミを接合させたフロントサブフレームを北米仕様のアコードに利用。従来は鉄とアルミをボルトで結合していたが、摩擦攪拌接合(FSW)を用いて連続的に接合。これにより25%(6kg)の軽量化と、20%の剛性向上、製造にかかるエネルギーを50%削減した。PHVアコードプラグインには、軽量化のため全てアルミを利用したサブフレームを利用している。

 

フロントサブフレーム
鉄とアルミをFSWで接合させたフロントサブフレーム。上部の
アルミ材の赤い矢印が示す部分が接合部分(部分拡大写真)
鉄アルミのFSWによる接合断面
鉄アルミのFSWによる接合断面。
1ミクロンの接合膜ができるとのこと。

 


 



安全技術: トヨタのポップアップフード、軽初の衝突回避支援システム、HV専用EyeSightなど

 

ポップアップフードが持ち上がった様子
トヨタ 新型クラウンに装備されているポップアップフードが持ち
上がった様子。フロントフェンダーをカットした部分にアクチュエーターが見える。
圧力チャンバーと圧力センサー
クラウンのフロントバンパーに設置されている
ポップアップフードの圧力チャンバーと圧力センサー

 

トヨタ ポップアップ
フード
 歩行者と衝突した際にフード後方部をアクチュエーターによって持ち上げて、フード下の空間を大きく取ることで歩行者の頭部への衝撃を緩和する。衝突は圧力チャンバーとセンサーによって検知(デンソー製)。圧力チャンバーはフロントバンパー全域に配置されて、衝突位置に影響を受けない検知が可能。
ダイハツ スマートアシスト  2012年12月にマイナーチェンジしたムーヴに軽自動車として初めて設定した衝突回避支援システム。1: 低速域(20km/h以下)衝突回避支援ブレーキ、2:誤発進抑制制御機能、3:先行車発進お知らせ機能、4:横滑り防止装置&トラクションコントロールの、4つの機能からなる。レーザーレーダーの照射範囲は20m。
富士重工 ハイブリッド専用
EyeSight
 複眼カメラを利用した安全運転支援システムEyeSightに燃費向上支援システムを追加。クルーズコントロール作動時にEV走行と回生ブレーキをできるだけ用いるように制御し、高速走行時の実用燃費を高める。ECOクルーズコントロールと呼称。
マツダ i-ACTIVSENSE
安全システム
 クルーズコントロールなど衝突回避支援/被害軽減/認知支援技術を持つ安全装備。アテンザでの装備率は6割強とのこと。日本の他、米/欧/豪で展開していく。ミリ波レーダーはデンソー、赤外線レーダー/カメラはコンチネンタル、準ミリ波はHellaより供給を受ける。
UDトラックス 安全技術
ロードマップ
 欧州では、2013年11月より大型トラック(新型車)にAdvanced Emergency Brake System(AEBS)の搭載が義務づけられ、日本でも2014年11月からの義務化が決まっている。Volvoグループ傘下のUDトラックスではAEBSを自社で開発していく方針。欧州と日本では使用環境が異なるため、Volvo開発のものは日本では使い勝手が悪いことと、費用の観点から。AEBSの後は、車線維持装置を開発していく。

 


 



スズキ/ダイハツの軽自動車、新型アテンザ、日産のダウンサイジング過給エンジン

 

スペーシア
2013年3月に発売された、スズキの軽ハイトワゴン スペーシア。
先代パレットより約90kg軽量化。
「エネチャージ」の発電機
スズキの減速エネルギー回生システム「エネチャージ」の
発電機。写真手前部分にアイドリングストップ用鉛電池、
助手席下にリチウムイオン電池が設置されている。

 

スズキ スペーシア  スズキが2013年3月に発売した軽ハイトワゴン。パレットから車名を変えてフルモデルチェンジした。子育て世帯をターゲットとして開発し、広い車室空間を実現。減速エネルギーを使って発電するエネチャージ、時速13km以下でエンジンが停止するアイドリングシステム、エンジン停止時にも冷風を供給するエコクールなどの技術を用いて、燃費性能は29.0km/L(JC08モード、2WD車)に高めた。
 また、先代に比べて約90kg軽量化し、車体重量を840kg(2WD車)とした。高張力鋼板(最高で1180MPa級を利用)をボディーの42%に用いて約22kg軽量化。シートも高張力鋼板の使用、部品の一体化/小型化/薄肉化で13kg軽量化し、サスペンションも同様に18kg軽量化した。
ダイハツ ムーヴ  2012年12月にマイナーチェンジ。最大の特徴はレーザーレーダーを用いた衝突回避支援システムを軽自動車として初めて設定したこと。燃費性能(自然吸気モデル2WD)も、パワートレインの温度制御技術を高めることなどで、27.0km/Lから29.0km/Lへ引き上げた。
マツダ アテンザ  2012年11月に発売したマツダのフラグシップセダン。エンジン、ボディーなどすべてのSKYACTIV技術群を採用。ディーゼルエンジン/6速MT搭載車の燃費性能は22.4km/L。キャパシターと可変電圧発電機を用いた減速エネルギー回生システムi-ELOOPを標準装備。安全装備i-ACTIVSENSEも採用。

 

衝突回避システムを搭載したムーヴ
ダイハツの軽自動車として初めて
衝突回避支援システムを搭載したムーヴ
マツダのアテンザ
エネルギー回生システムi-ELOOPと安全装備
i-ACTIVSENSEを搭載したマツダのアテンザ

 

日産のダウンサイジング過給エンジンと三菱のディーゼルエンジン

日産 スーパー
チャージャー付
1.2Lエンジン
 2012年9月に日本で発売されたノートに搭載されたダウンサイジング過給エンジン。このHR12DDRエンジンは圧縮比12の排気量1.2リットルの直噴ミラーサイクルエンジンとスーパーチャージャーを組み合わせ、JC08モードで25.2km/Lの燃費性能を実現。応答性に優れたスーパーチャージャーを採用し、また電動クラッチを備えて過給の必要がない時はエンジンと切り離し駆動損失を避ける。日本に先駆け、2011年に欧州市場向けMicra(マーチ)に搭載。
三菱 ディーゼル
エンジン 4N14
 2.2LのEuro5/ポスト新長期規制適応のクリーンディーゼルエンジン。欧州向けOutlanderに搭載しているものを、2013年1月にD:5に搭載して発売(13.6km/L(JC08モード))。D:5へ新たにディーゼルエンジンを搭載するには、エンジンルームが狭く静粛性などに大きな課題があったため、遮音材を多用するなどして対応。

 

日産のスーパーチャージャー付1.2Lエンジン
日産のスーパーチャージャー付1.2Lエンジン
三菱D:5搭載の2.2Lディーゼルエンジン 4N14
三菱D:5搭載の2.2Lディーゼルエンジン 4N14

 


 



特別企画展示1:日産、ホンダなどの超小型EV

 

日産 New Mobility Concept ホンダ MICOR COMMUTER PROTOTYPE
前後2人乗りの小型EV
前後2人乗りの小型EV。欧州で発売されているルノーTwizyの
外装を変更したモデル。展示会場では試乗も行われていた。
小型EV の実験車両
大人1人、子供2人乗りの小型EV の実験車両。ホンダは改良したPROTOTYPE βを用いて2013年秋より日本で実証実験を行う予定。
トヨタ車体 COMS 日本エレクトライク eTrike
1人乗りの小型EV
1人乗りの小型EV。個人向け/商用向け(写真)がある。
販売価格は79.8万円(個人向け)。
インドBAJAJA製のオート3輪を改造した1人乗りEV
インドBAJAJ製のオート3輪を改造した1人乗りEV。後輪の
2輪を個別に制御することで横転を防ぐ。価格は200万円。
群馬大学μ-TT2
群馬大学の次世代EV研究会が開発した1人乗り小型EV
群馬大学の次世代EV研究会が開発した1人乗り小型EV。
将来的には2人乗りにできるように設計。

 


 



特別企画展示2:日産GT-R、LEXUS LFE、スバルBRX/トヨタ86のシャシーモデル

 

日産GT-R LEXUS LFA
プレミアム・ミッドシップパッケージ
日産のスポーツカーGT-Rのトランスミッションを後輪部に
置いた「プレミアム・ミッドシップパッケージ」。
LEXUS LEF ベア シャシー
LEXUS LFA ベア シャシー。
軽量化のため炭素繊維強化樹脂を多用している。
スバルBRZ/トヨタ86
スバルBRZ/トヨタ86の超低重心パッケージ
スバルBRZ/トヨタ86の超低重心パッケージ(重心高460mm)。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>