タイの日系部品メーカー (1):生産拠点、開発拠点の新設

アドヴィックス、市光、澤藤電機、ジヤトコ、新神戸電機、トープラ等が新生産拠点を構築

2012/06/28

要 約

 以下は、タイにおける日系自動車部品メーカーの新生産拠点構築、開発拠点新設等の動きである (収録対象は、2012年 6月中旬までの約 1年間)。

Thailand Map タイの自動車生産は 2011年秋の大規模洪水で一時低下したが、洪水から復旧後は急回復しており、2012年 1-5月は前年同期比 28.5% 増の 84.4万台となった。タイ国工業連盟 (FTI) は 2012年通年予想を前年比 51% 増の 220万台とし、過去最高だった 2010年の 165万台を大幅に上回る見込みとしている (2012年 5月発表)。また、2014年には 243万台に達し、世界の自動車生産国10位以内に入ることを目標としている。

 完成車メーカーの最近動向では、スズキと三菱自動車が新工場を建設し、2012年春からタイ政府が推進する Eco-Car 事業の認定車を生産。洪水被害を受けたホンダは、3月末に生産を再開した。トヨタは Gateway 工場に第 2工場を建設し、2013年央に稼動する計画。マツダと Ford は合弁工場の生産能力を増強。Ford は独自に乗用車工場を新設し、2012年 6月に生産を開始した。

 完成車メーカーの生産拡大に加え、周辺国への部品輸出拠点としても重要なタイでは、洪水発生後も日系部品メーカーの動きが活発である。2011年秋の洪水で浸水したのは、バンコク北方にある Ayutthaya 県を中心とした 7工業団地だが、新たにタイに進出するメーカーの大半は、洪水リスクの低いバンコク東方の Chonburi 県や Rayong 県に拠点を構築している。

 なお、既存生産拠点の生産能力増強や生産品目拡大の動きについては、近く掲載する "タイの日系部品メーカー(2)" に収録する。

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新たな生産拠点構築の動き

(配列は企業名 50音順)

アドヴィックス:2013年7月から新工場でブレーキ部品を生産
 アドヴィックスは、Chonburi県 Pinthong工業団地に ADVICS Manufacturing (Thailand) を設立し(タイの地域統括会社が全額出資)、タイで初の生産工場を建設する。2013年 7月からディスクブレーキキャリパーを生産し、トヨタ等タイ国内の OEM に供給するほか、インドネシアやマレーシア等にも供給する。月産 15,000個規模で立ち上げ、順次生産量を拡大。2016年度の売上高約 90億円、従業員約 360名を計画。投資額は約 35億円。現在、ASEAN 向け製品は、アイシン精機のタイ子会社に生産委託している。
市光工業:初の自社工場を建設し、2013年3月からランプ・ミラーを生産
 市光工業は、生産子会社の Ichikoh Industries (Thailand) で開発拠点を併設した工場を新設する。これまでタイでは、同社の筆頭株主である Valeo のタイ工場の敷地内に生産ラインを持っていたが、手狭になったため、Rayong県 Amata City工業団地内に初の自社工場を建設し、生産を移管する。2013年 3月からヘッドランプ、リアコンビネーションランプ、ミラーを生産し、国内外の OEM に供給する計画。開発拠点では、日本が担当していた設計機能の一部を移管する。2015年の売上高目標は 50億円。
共和鋳造所:ダイカスト部品の生産拠点を新設
 共和鋳造所は、大紀アルミニウム工業所との合弁生産会社Kyowa Casting (Thailand) を設立し(共和70%、大紀30%)、Rayong県 Eastern Seaboard 工業団地に初の海外生産拠点を建設する。金型工場も併設し,一貫生産体制を整備する。投資額は約10億円。2012年8月からクラッチ関連やシリンダーヘッド、トランスミッションケース等のダイカスト部品を生産し、タイの日系メーカーのほか、マレーシアやインドネシアにも供給する計画。月産能力は600トンで、約60人を雇用する。稼働初年度の売上高目標は3億円、2015年度は20億円。
クラリオン:カーオーディオ/ナビゲーションを年200万台生産
 クラリオンは、Clarion (Malaysia) の子会社 SIAM CM Electronics の新株を引き受け、2011年 4月に連結子会社 (80%出資) とした。新社名は Clarion Asia (Thailand)。増資資金で Rayong県に新工場を建設し、2012年 4月からカーオーディオ、カーナビゲーション等の生産を開始。タイを含むASEAN諸国やインドで販売し、日産、いすゞ、GM等に供給する。生産拡大計画を1年早め、2015年度から年200万台を生産する方針。
群馬精工:2012年12月からサスペンション部品など金属加工品の生産を開始
 冷間鍛造を手掛ける群馬精工は、Chonburi県にGunma Seiko Thailand を設立し、新工場を建設して2012年12月からサスペンション部品などを生産する計画 (金型は全て日本で設計・製造する)。工場の敷地面積は約14,000平方メートル、床面積は2,100平方メートル。当初約15人で始め、3年後には40人程度にまで増やし、日系メーカーに供給する。投資額は2.5億円。2013年度の売上高目標は1.3億円、2015年度は5億円程度。
澤藤電機:日野自動車向け商用車用電装品の合弁生産を開始
 澤藤電機は2012年1月、タイ現地企業のThai Electric Industries (TEI) と合弁で、Nonthaburi県にSawafuji Electric (Thailand) を設立した。資本金は約3億7,200万円で、澤藤電機が74%、TEIが26%出資。澤藤電機にとっては初のアジアでの生産拠点。数年後に、主に日野自動車向け商用車用電装品 (スタータやオルタネータ等)や、ホンダ向けエンジン発電機用発電体の製造・販売を開始する計画。
三遠機材:自社工場でCVT用オイルポンプ関連の鍛造部品の生産開始
 三遠機材は、全額出資で設立した(資本金3,500万バーツ) San-En (Thailand) を通して、新工場をChonburi県 Amata Nakorn工業団地に建設し、2012年1月に稼働。CVT用オイルポンプ関連の鍛造部品を、当初は月間 1万-2万個、2015年には同 7万-10万個生産する計画。タイ国内および ASEAN地域の日系企業に供給する。日本では自社工場を持たず、すべて協力会社に生産委託しているため、タイ工場が同社初の自社工場となる。
ジヤトコ:タイで初のCVT生産を開始
 ジヤトコは 2011年 12月に、全額出資の生産子会社 (資本金約 127億円) の JATCO (Thailand) (Chonburi県 Amata Nakorn工業団地) で定礎式を実施した。約 200億円を投じて工場を建設し、2013年度半ばから軽・小型 FF車用副変速機付 CVT を生産する。立ち上げ当初の年産能力は 50万基、従業員数は 500人。2014年度中に約 1300人にまで増員する計画。タイで生産する日産March向けのほか、タイおよびASEAN市場で生産する完成車メーカーに供給する。タイでCVTを生産するのはジヤトコが初めて。
新神戸電機:2012年5月に鉛蓄電池の出荷を開始
 新神戸電機は、2010年 8月に全額出資で設立した Hitachi Storage Battery (Thailand) (Chachoengsao県 Gateway City工業団地) で鉛蓄電池の生産工場を建設し、2012年 4月から補修用バッテリーの出荷を開始した。投資額は 6.9億バーツ。従業員数は 65人の計画。先行して汎用品を量産し、その後、アイドリングストップ機構やブレーキ回生システム搭載車向けの高付加価値バッテリーを生産する計画。タイのほか、ASEAN各国、インドで生産する日系完成車メーカーに供給する。
杉本金属工業:タイの家電メーカーとプレス部品の合弁生産を開始
 杉本金属工業は2011年10月に、タイの家電メーカー SNC Former と、Rayong県に合弁生産会社 SSM Automation を設立 (SNCが 49%、杉本金属が 46%出資)。SNCグループが保有する敷地内に工場を建設し、加圧能力 300-800トンのプレス装置を約 10台設置して、2012年 3月からプレス部品の生産を開始した。従業員は40人。まず、エアコンのコンプレッサー関連部品など家電向けを生産し、その後日系メーカー向けの自動車部品の生産を開始する計画。投資額は約 2億円。初年度売上高目標は 6億円。
多田プレス工業:プレス工業向けに足回り関連部品の生産開始
 多田プレス工業は、2011年 7月に現地法人 T.P.T.を設立。4億円を投じて Rayong県 Amata City工業団地に工場を建設し、プレス機械 9台、溶接ロボット 5台、スポット溶接機 3台を導入して、2012年 7月から足回り関連部品を生産する計画。当面は、主要納入先であるプレス工業のタイ工場に供給する。2016年度 2月期には売上高 12億円、単年度黒字化を目指し、現在ほぼゼロの海外売上高比率を4割に引き上げる方針。
トープラ:生産拠点を建設し、2012年10月から締結部品を生産開始
 トープラは2011年 5月、Rayong県 Hemaraj Eastern Seaboard工業団地に子会社 Topura (Thailand) (資本金 8億円) を設立。工場を建設し、2012年10月から締結部品および金属部品を生産する計画。日産自動車をはじめ、アジアで生産を拡大する日系自動車メーカーに供給する。2013年の売上高目標は 18億円。
平岡工業:ゴム金型の生産拠点を新設
 平岡工業は全額出資で生産子会社 Hiraoka Thailand を設立し、タイ東北部の Nakhon Ratchasima 県 Suranaree工業団地に2012年4月から工場を建設。10月に完成し、年内の稼働を計画している。同社にとっては初の海外拠点。従業員は10人から始め、30人まで拡大する。生産するのは、ドアウェザーストリップ等のゴム金型。完成車の設計変更に伴う金型の改造・メンテナンスからスタートし、2015年の黒字化を目指す。
ビヨンズ:2012年から変速機部品、2014年からサスペンション部品を生産
 ビヨンズは2012年 1月に、全額出資で Rayong県に生産子会社 Thai Beyonz (資本金 10億円) を設立した。Eastern Seaboard 工業団地内の既設工場を取得し、10月から変速機部品を月 5万個生産する。ASEAN・北米の日系完成車メーカーに供給する計画。
 その後、Amata City 工業団地内に新工場を建設し、2014年 5月から変速機部品とサスペンション部品の生産を開始する計画。新工場稼働後、Eastern Seaboard工場は売却する。2014年 5月時点での月産能力は、変速機部品が 9万個、サスペンション部品が 40万個。総投資額は 23億円。2014年12月期のタイでの売上高目標は20億-30億円。
ホンダエレシス:2013年からタイでECUを生産
 ホンダエレシスは、Chonburi県 Amata Nakorn工業団地に工場を建設し、2013年10月から電子制御ユニット(ECU)の生産を開始する計画。まず、二輪車用ブレーキ向けECUを生産し、2014年以降に四輪車用ブレーキ向けECUや電動パワーステアリング向けECUを生産する。当初は年産数十万台で、順次増強して2016年度までに同数百万台とする。2011-13年度の 3年間の初期投資額は約 13億円。
 ホンダエレシスは、タイ新工場と既存の中国工場をグローバル生産拠点と位置付け、両工場の生産能力拡充により、世界的なECUの需要増に対応する。全社では、2011年度に587万台となったECUの販売台数を、2012年度には850万台、2016年度までに1150万台に引き上げる計画。
松本興産:CVT/エンジン向け部品の生産拠点を新設
 松本興産は、Chonburi県に Matsumoto Kosan (Thailand) (資本金5,400万円) を設立し、3億円を投じて新工場を建設する。同社にとって初の海外拠点。切削機 20台、研磨機、測定器を備え、24時間稼働とする。2012年12月から、日系部品メーカー向けに CVT・エンジン・エアコン向け部品等を生産する計画。年産1200万個を見込み、2015年度のタイでの売上高目標は 6億円。当初の従業員は約 40-50人だが、2015年には約 80人にまで引き上げる予定。
ユニバンス:2012年 9月から Ford向けにトランスファーの生産開始
 ユニバンスは2011年 2月、Chonburi県に Univance (Thailand) (資本金約 4億円) を設立し、2012年 9月から稼働する計画。まず、Ford のタイ工場向けにトランスファーの生産を開始し、日系メーカーや部品メーカー向けにも展開する。従業員数は約 100名。タイ工場は北米、インドネシアに次ぐ海外 3拠点目。2015年度の海外売上高比率の目標は 25% (2011年度は 5%)。
湯原製作所:2013年5月からエンジン向けパイプなどを生産
 湯原製作所は、2012年 5月にPrachinburi県 304工業団地に全額出資で Yuhara Mfg. を設立し、2013年 5月に稼働する予定。同社にとって、米国に次ぐ海外 2拠点目。総投資額は約 4億円。当初は、GM/Ford/Chrysler向けにエンジン周りのパイプ加工品等を米国に輸出する。将来は、タイで生産する日系メーカーにも取引を拡大する。従業員数は約20名。2020年の売上高目標は10億円。

 

 



開発拠点新設、生産委託等の動き

(配列は企業名 50音順)

アイシン精機:タイの設計開発担当者を増員
 アイシン精機は、タイにある豪亜地域統括会社 AISIN Asia Pacific の設計開発担当者を、現状の数人から約10人に増員し、設計の現地化を推進する。2013年にも、統括地域の事業戦略を立案する権限を持たせる。主要顧客のトヨタのほか、現地資本や欧米OEMとの取引を拡大する計画。
小糸製作所:東南アジア初の開発拠点をタイに設置
 小糸製作所は、Samut Prakarn県の生産拠点 Thai Koito の隣接地に、設計・開発を行う技術センターを建設し、2012年4月に稼働を開始した。タイを含む東南アジアをカバーする。投資額は5億円。敷地面積・建屋面積ともに約5000平方メートル。従業員は約30人。小糸製作所にとって、開発拠点は日本、米国、中国、ベルギーに次ぐ5カ所目。トヨタなど日系OEMの生産拡大のほか、新興国向け戦略車の開発現地化に対応する。
シロキ工業:アジア地域の営業・調達・技術支援の新会社を設立
 シロキ工業は、アジア地域の営業・調達・技術機能の強化を支援する新会社 Shiroki Asia を、2012年7月にもBangkok市に設立する。納入先のニーズにタイムリーに応えて販売を拡大すると同時に、各拠点の運営効率化を高めるため。資本金は約 2500万円(全額出資)。2015年度の従業員数は約 15名、売上高目標は約 2億円。
東プレ:骨格部品を現地の協力会社に生産委託
 東プレは、プレス部品・金型の販売子会社 Topre (Thailand) を通じて、現地の協力会社に車体骨格部品の生産を委託する。2012年6月からセンターピラー、フロントピラーなどプレス部品の委託生産を開始し、日産の中型セダン向けに供給する。2012年度の売上高目標は3億円、2013年度は7億円。東プレは東南アジアに生産拠点を持っていない。

(参考資料:各社広報資料, 各紙報道)

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>