トヨタ:開発、調達、生産について、多面的な収益構造改善策を計画

2012年度連結営業利益1兆円を目指す、単独営業赤字も700億円に縮小の見込み

2012/05/30

要 約

 本レポートは、トヨタが進めている、トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)の導入による開発の効率化と部品共用化の拡大、設備投資を節減する、シンプルで汎用性の高い生産設備の導入など、収益構造改善計画について報告する。トヨタは、こうした改善を積み重ね、収益性を回復するとともに、国内300万台生産体制を維持し国内主導で生産技術の革新を続けるとしている。

 またトヨタは、いいクルマを連続して投入するサイクルがまわりだしたとし、2012年は、「商品」が大きく変わる年になると宣言した。

 トヨタの2011年度連結決算は、売上高が2.2%減の18兆5,837億円、営業利益が24.1%減の3,556億円となった。トヨタは、収益性改善計画は予定通り進んでいるが、2011年度決算は、二つの自然災害と想定を超える円高の影響が改善効果を上回った結果だとしている。2012年度決算では、為替レートの想定は2011年度とほぼ同様だが(為替の利益への影響は±0)、販売増と原価低減努力により連結営業利益1兆円を達成する見通し。

 また、輸出の採算性で円高の影響を直接受けるトヨタ単独決算では、2010年度・2011年度続けて4,000億円を超える営業赤字であったが、2012年度は赤字幅が700億円に縮小する見込み。トヨタは、できるだけ早期に単独営業損益を±0にまで戻したいとしている。

 なお海外事業については、トヨタは北米・アジアを中心に、完成車、パワートレイン生産の大幅現地化を進めている(下記の関連レポートをご参照ください)。またトヨタは、2012年5月25日、インドに投入した「エティオス」をベースとする新興国向け小型車8車種を世界100カ国以上に投入し、2015年までに年間100万台以上を販売すると発表した。

関連レポート:トヨタの海外事業 (2012年5月14日掲載)



トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)を導入

 トヨタは2011年4月、「もっといいクルマづくり」に向けた新たな取り組みとして、大幅な商品力向上と原価低減を達成するクルマづくりの方針「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を導入すると発表した。

 従来は、開発部門が車種や地域ごとに分かれ、「適地適車」の方針でそれぞれに最適なクルマづくりを進めてきたが、その結果、開発コストが増大し部品点数も増え続けている。

 FF車についてセグメント別に3つのプラットフォームを開発し、このプラットフォームを採用する車種の合計台数は、トヨタの総生産台数の約5割をカバーする計画。また複数の同一プラットフォーム車を一括開発して部品共用化を進め、一方生み出した余力を商品力強化に注入する。共用化と差別化を同時に進めるとしている。

トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)を導入

項目 概要
目的  開発人員や所要時間など開発効率を、2009年比で3割高める。同時に、TNGA導入で生み出した開発余力を、商品力強化に充てる構想。
3つのプラット
フォームを開発
 まず、FF車用の「ヴィッツ」クラス、「プリウス」クラス、「カムリ」クラスの3種類のプラットフォームを開発する。この3種類のプラットフォームをベースに、トヨタ車の約半数を生産する。
 それぞれ、「走る」、「曲がる」、「止まる」といった運動性能はもちろんのこと、ドライビングポジションなどの人間工学やデザインの自由度を追及したプラットフォームを開発し、世界各地域で共用することで、高い基本性能を備えたクルマを効率よく開発する。
グルーピング開発
(一括企画)
 従来は、開発をリードするチーフエンジニア(CE)が車種ごとに責任を持ち、一つの車種の開発が終了すればその任務が終了する体制であったが、今後はCEが一つのプラットフォームをベースとする車種群の開発を持続的・継続的に担当する。
 同じプラットフォームを使用する車種間で、基本部品やユニット(複数の部品を組み合わせて、固有の機能を持たせた"部品")を共用化する。一方、内外装は世界各地の嗜好に合わせてつくり分け差別化を図る。
地域ニーズの
集約と反映
 製品企画本部内に、(1)北米・中国、(2)日本・欧州、(3)新興国の3地域の地域統括部長を配置。各地域の営業部門やR&D拠点と連携し、地域ニーズに合ったクルマづくりを追求する(車両開発の責任者はCE、各地域の要望のとりまとめは地域統括部長、と役割分担する)。 レクサス車は、世界共通のブランド思想に基づいた開発を推進する。
新車発売  新しい手法を用いて開発した新型車は、2014~2015年頃に発売する。

資料:トヨタ広報資料 2012.4.9、日本経済新聞 2012.4.10
(注)トヨタは、2012年5月25日に発表した「エティオスをベースとする新興国向け小型車」は、TNGAの構想に沿ったもので、同じプラットフォームで100万台生産という他社も実現していない困難な課題に挑戦するとしている。同時に、内装やデザインでは、国ごとのテイストを織り込んでいく考え。

 

部品共用化で、部品コストを30~40%削減

 トヨタは、直接部品サプライヤーに発注する4,000~5,000点の部品のうち、半分程度を共用化する方針。そのために、部品の設計と調達を一体として改革を進める。部品生産のための設備投資を4年内に半減させ、部品製造コストを30~40%低減する計画。

 一例として、デンソーは、世界各地で生産が可能なGlobal Standard Radiator (GSR)を開発したと発表。トヨタは世界で使用するラジエーターの種類を、従来の100から21に低減するめどがついたとしている。

部品共用化で、加工設備の投資を半減

項目 概要
部品の共用化  TNGA方式では、部品を、それらを共通に使う複数の車種を予め決めてから開発する。トヨタが直接サプライヤーに発注する部品点数は約4,000~5,000で、そのうち半分程度で共用化を進める。まず同じプラットフォームをベースとする車種間での共用化を進め、その先の課題として異なるプラットフォーム間での共用化も進める。
 共用化は、デザイン、意匠に影響が少ない部品を主なターゲットに進める。
発注数量  共用化により、同一部品の発注量を増やし、部品サプライヤーのコスト低減を後押しすることにより、部品調達コストを30%~40%低減する。
 共用化を実現した部品は、車種、地域、立上げ時期をまたいで一括発注する。従来は、一つの部品の発注規模は多くて年間数十万台分であったが、今後は年間100万台分を越える大規模発注もありうる。可能な限り量をまとめて発注し、VWや現代自動車に負けないコスト競争力を目指す。
加工設備の
投資半減
 トヨタは部品の共用化を進めることにより、従来車種ごとに用意する必要があった加工設備の種類を減らし、製造の固定費を抑える。部品生産のための設備投資を、4年以内に半減する。
資料:デンソー広報資料 2012.1.26、日本経済新聞 2011.11.24/2012.3.2
(注) 1. デンソーは2012年1月、従来の製品幅27mmを16mmとし、40%小型・軽量化した新型ラジエーター、"Global Standard Radiator (GSR)"を開発し、トヨタの新型レクサスGSに搭載されたと発表した(トヨタ86も採用)。 ラジエーターの性能は、フィンとチューブにより決定されるが、フィンの放熱効率を10%向上させ、小型化を実現した。世界各地での調達性も考慮し、素材を選定した。
2. 今後、今回の製品に加え、従来製品の36mmを27mmに、16mmを11.5mmにそれぞれ小型化したGSRも順次製品化し、幅広い車種へ対応する計画。
3. 製品幅の種類は3種類で、従来と変わらない。製品の種類の100から21への低減は、搭載する車種の設計との調整により行う。製品幅を圧縮しスペースに余裕を持たせることで、各車種との調整を容易にしたとのこと。

 



2012年7月にトヨタ自動車東日本(株)が発足、小型車を集中生産

 2012年7月に、セントラル自動車、関東自動車工業、トヨタ自動車東北の3社が合併し、「トヨタ自動車東日本(株)」が発足する。(完成車工場は、セントラル宮城工場、関東自工の岩手工場、東富士工場の3工場となる)

 2011年秋に、関東自動車岩手工場でBプラットフォームをベースに開発した「アクア」の生産を開始。2012年5月にセントラル自動車宮城工場で、同じBプラットフォームを使用して前モデルより小型化した、国内専用新型カローラのラインオフ式を行った。共用部品の拡大などによるコストメリットを生かして、コンパクト車専門に生産するトヨタ第3の国内拠点として育成する。

 2012年度に、東北で約50万台(岩手工場約37万台、宮城工場約13万台)を生産する計画。2012年1月に、新会社発足に先駆け、「東北現調化センター」を設けセントラル自動車内に置いた。東北地方での現地調達率を、現状の4割から中部地域並みの8割に高め、コスト競争力を強化する方針。

 2011年末、宮城県で新エンジン工場の建設を開始した。当面年間10万基程度生産する。将来は、エンジンの基幹部品も東北地方で調達する方針。

 



新生産技術導入で、設備投資額の4割減を目指す

 トヨタは、2002年から数年間の、生産量を急激に拡大した大型投資が固定費負担となり、2008年秋の金融危機による急激な需要減に対応できなかったことへの反省から、工場内をシンプルで汎用性の高い生産設備に変えていく方針。リーマンショック以前に比べ、2008年比4割減の投資額で従来と同じ成果が出る設備を目指している。

 完成車工場とエンジン工場について、これらの設備をまず日本の工場に導入した後に、海外の工場への導入を開始している。新技術を順次海外に移転するが、その間に日本で新しい生産技術を開発し、常にものづくりの先端を維持する方針。

 大量に安くつくるのは当然だが、少量でも安くつくる技術に強みを持ちたいとしている。

セントラル自動車宮城工場に導入した最新鋭設備

(1)塗装ラインでは、工法と材料を見直し、2回あった塗装乾燥工程を1回にして長さを25%短縮、
(2)エンジンと足回り部品の組み付け工程では、車体を台車に乗せ横向きに置くラインを導入し、作業効率を高め、その部分のラインの長さを35%短縮、
(3)最終組立ラインでは、従来の車両を運搬する装置を天井からつり下げる方式を廃止して、車体を台車に乗せて運ぶ方式を採用。生産台数に応じて、車台の数と生産ラインの長さを自由に変えることができる、
(4)これらの新工法採用の効果で、初期投資を従来比4割低減した。

(注)新宮城工場は2011年1月に生産を開始した。効率化した生産ラインは、2010年秋に生産を開始したインド第2工場、米国Mississippi工場(2011年秋)、中国長春新工場(2012年5月)に導入。2012年後半に稼働するブラジル工場にも導入する。

 

多品種少量生産が可能なエンジン生産ラインを、国内外のエンジン工場に導入

 トヨタは、下山工場(愛知県)に新しいエンジン生産ラインを導入し、2010年末に稼働させた。年産能力を、これまでの基準であった20万基から10万基に半減し、投資を縮小して従来の半分の規模で利益が出る体制を構築した。また、治工具の工夫などで、生産機種を変更する段取り替えの時間を大幅短縮し、需要変動に柔軟に対応する。さらに規模を5万台に半減した生産ラインも開発中。
資料:トヨタ広報資料 2011.11.9
(注)投資効率を高めた新エンジン生産ラインは、国内外の新エンジン工場に展開する。
  -1. 宮城県に建設中の新エンジン工場は、当初約20億円を投資して年産10万基の生産能力を構築し、関東自工岩手工場、セントラル宮城工場で生産するコンパクトカーに供給する。
  -2. 中国で、2011年10月にARエンジン(4気筒2.5L、2.7L、2.5Lハイブリッド用)の生産を開始した広汽トヨタエンジン工場に導入した。

 



2012年は、「商品」が大きく変わる年と宣言、HVモデルを拡大

 トヨタは2011年度決算発表において、「いいクルマが台数・収益に結びつき、さらなるいいクルマへの投資につながるというサイクルが回りだした」としている。また2012年は、(豊田社長就任後)3年間の仕込みを終え「商品が大きく変わる年になる」と宣言した。有力な新型車を相次いで発売している。

 小型ハイブリッド車「アクア」は、2011年12月末に発売後1カ月で12万台を受注した。「次の10年を見据えた未来のスタンダードになる小型車」としている。海外ではアクアをプリウスCとして販売し、またアクアのHVシステムを欧州で販売するヤリス(日本名ヴィッツ)に搭載し、2012年半ばに発売する。トヨタは将来的に、欧州で販売する全てのモデルにフルハイブリッドシステムを設定するとしている。

 また、欧州に限らず、売れ筋の車全てにハイブリッド車を設定するとの方針は変えていないとしている。2011年度に、国内でHVを456,810台(前年度比33.0%増)、国内登録車販売に占めるHV比率は33.2%(因みにホンダは40.9%)、日本を含む世界で797,720台(19.8%増)販売した。

 

国内で安定的に(単独)150万台販売体制を目指す

 ここ2~3年の推移として、トヨタ(単独)の国内販売は130万台、輸出が170万台だが、円高の影響を軽減するため、国内150万台、輸出150万台程度にすることを検討中としている。2012年度国内販売は、補助金の復活もあり163万台の目標を掲げたが、2013年以降も安定して150万台販売を目指す。

 超円高を乗り切るには、国内で作って国内で売るしかないとしている。トヨタは、国内販売店に対して、「日本にモノづくりを残すために、内需を拡大することが重要」として、販売拡大を要請している。

 トヨタは、国内シェア(軽自動車を除く)を、2011年度45.5%から2012年度48%程度に引き上げる計画。

2011~2012年に発売する主な新型車

プリウスα 2011年5月
(日本)
 プリウスのワゴンタイプ車。5人乗り2列シート車と、7人乗り3列シート車を設定。3列シート車には、トヨタ初のリチウムイオン電池を採用。燃費(両タイプとも10・15モード燃費31.0km/L)と車室の広さを両立させた。
新型カムリ 2011年8月
(米国)
 2.5L直列4気筒エンジン車、3.5L V型6気筒エンジン車、2.5Lハイブリッド車を、世界に先駆け米国で発売した。全車で燃費を改善し、特にハイブリッド車の燃費(city)は43 mpgと従来型車比30%以上向上した。2012 MYの米国販売目標は36万台。
2011年9月
(日本)
 日本では、ハイブリッド車(2.5Lエンジンを搭載)のみ発売。高級感あるHV市場を開拓する。コンパクトカー並みのJC08モード23.4km/L、10・15モード26.5km/Lの燃費を達成するとともに、3Lクラスガソリン車に匹敵する動力性能を実現した。
アクア 2011年12月
(日本)
 プリウスより小型のHV。1.5Lハイブリッドシステムを搭載。JC08モード走行燃費35.4km/L、10・15モード走行燃費40.0km/Lを達成。エントリー車価格は169万円。国内での月販目標は、12,000台。関東自動車工業岩手工場で生産する。約1カ月後の2012年1月31日までに約12万台を受注した。
プリウス
PHV
2012年1月
(日本)
 1月末に一般顧客への市販を開始。EV走行距離は26.4km。国内で年間35,000~40,000台を、日本を含め世界で60,000台販売を計画。堤工場で生産する。
 2009年12月に、法人顧客にリース販売を開始したプリウスPHVは、容量5.2kWhのリチウムイオン電池を搭載し、約500万円でリース販売したが、市販車は電池容量を4.4kWhに減らすなどコストを削減し、320万円からの価格を実現した。
新型
レクサスGS
2012年1月
(日本)
 GS350(1月)、GS450h(3月)をフルモデルチェンジするとともに、2500ccエンジンを搭載するGS250を設定。ハイブリッド車は、3.5L V6エンジンとHVシステムを搭載し、V8エンジンに匹敵する加速性能と、JC08モード18.2km/Lの低燃費を実現。田原工場で生産し、国内の月間販売目標は600台。
小型FR
スポーツ86
2012年4月
(日本)
 コンセプトは、 ドライバーの感覚ひとつで、いかようにも取り回せる"手の内感"や、操る楽しさを体感できる「直感ハンドリングFR」。世界初の「水平対向・D-4S(筒内直接 + ポート噴射)」パワーユニットを搭載。月販目標1,000台。
新型
レクサスES
2012年4月
(米国)
 2012年4月、ニューヨークモーターショーに新型(6代目)レクサスES350、および新たに設定したハイブリッド車ES300h(2.5Lエンジンを搭載し、EPA総合燃費は40 mpg)を出展・発売。ESは、米国でのレクサスブランド乗用車で最量販モデル。
新型カローラ
国内専用車
2012年5月
(日本)
 11代目カローラ国内専用車は、Bプラットフォームを使用し、カローラの歴史上初めて小型化(全長を、セダンタイプのアクシオは50mm、ワゴンタイプのフィールダーは60mm短くした)しながら、後部座席の膝前スペースを40mm拡大。アクシオが1.5L/1.3Lエンジン(1.8Lを廃止し1.3Lを追加)、フィールダーが1.8L/1.5Lエンジンを搭載。月間販売目標は、アクシオが3,000台、フィールダーが4,000台。
ヤリスHV 2012年半ば
(欧州)
 アクアのHVシステムを、欧州で販売するヤリスに搭載する。2012年4月、フランス工場でヤリス・ハイブリッドの生産を開始した。欧州で初のBセグメント・フルハイブリッド車。ニーズを確認しながら、欧州以外の地域にも拡大する。
小型車 2012年7月
(日本)
 ポルテとラウムの後継車となる小型車を発売する。
iQベースEV 2012年後半  2012年8月に、高岡工場で生産を開始し、2012年末に日米欧で600台限定でリース販売する。電池搭載量を抑え航続距離は100km程度とし、低価格実現を目指す。
新型アバロン 2012年秋
(米国)
 米国の開発部門が主導し開発する第一弾モデルとなる。2012年4月の、ニューヨークモーターショーに出展した。

資料:トヨタ広報資料 2011.9.5/2011.12.26/2012.1.26/2012.2.2./2012.3.6/2012.5.11
(注)上記の他に、2012年内に、オーリス、RAV4を更新する見込み。

 

新興国向け100万円前後の小型車を投入、2015年までに100カ国で100万台販売

 トヨタは、2012年5月25日、2010年12月にインドで発売した「エティオス」をベースとする新興国向け小型車8車種を開発し、100万円前後の価格で世界100カ国に投入、2015年までに世界で年間100万台販売すると発表。インド、タイ、インドネシア、ブラジル、中国などで生産し投入する。特にASEAN地域での現地調達率を、100%に高めるとしている。

 



連結販売台数:2012年1~3月期販売台数は236万台と過去最高

 トヨタの2011年度連結販売台数は735万台。第1四半期(4~6月期)は震災の影響で122万台(前年度同期比4割減)であったが、期を追うごとに回復し、第4四半期(2012年1~3月期)は236万台で、四半期別販売台数として過去最高を記録した。

 2012年度予想は前年度比135万台増の870万台で、ピークであった2007年度の891万台との差が21万台まで迫るとしている。内訳は、国内で13万台増の220万台、海外で122万台増の650万台、特に北米で48万台増、アジア(中国は除く)で45万台増加し過去最高の178万台を見込む。

トヨタの地域別連結販売台数

(1,000台)
2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度
予想台数 増加分
日本
トヨタシェア(除軽)
2,188
45.6%
1,945
46.0%
2,163
48.2%
1,913
47.3%
2,071
45.5%
2,200
48%程度
129
2.5%程度
北米
欧州
アジア
その他
2,958
1,284
956
1,527
2,212
1,062
905
1,443
2,098
858
979
1,139
2,031
796
1,255
1,313
1,872
798
1,327
1,284
2,350
860
1,780
1,510
478
62
453
226
海外小計 6,725 5,622 5,074 5,395 5,281 6,500 1,219
世界販売 8,913 7,567 7,237 7,308 7,352 8,700 1,348
資料:トヨタの決算短信 (2012年 5月 9日発表)
(注) 1. 連結販売台数はダイハツ、日野を含み、中国の合弁会社生産車の販売を含まない。
2. トヨタのシェアは、軽自動車を除き、またダイハツ、日野を含まない。
2011年度四半期別連結販売台数と営業利益
第1四半期 第2四半期 第3四半期 第4四半期 年度合計
連結販売台数(1,000台) 1,221 1,805 1,969 2,357 7,352
連結営業利益(億円) (1,080) 754 1,496 2,385 3,556

 



2012年度、連結営業利益1兆円を目指す

 トヨタの2011年度連結決算は、売上高は2.2%減の18兆5,837億円、営業利益は為替変動による損失2,500億円が響き24.1%減少し3,556億円。

 トヨタは、2011年3月にトヨタグローバルビジョンで発表した「1ドル85円、販売台数750万台で連結営業利益5%(1兆円程度)」を実現する構造に向けて、収益構造改善が順調に進捗しているとしている。2011年度決算は、東日本大震災とタイ洪水という2つの大きな自然災害と80円を切る超円高の中で、以前の体質のままであれば赤字になる可能性が大であった。絶対額は大きくないが3,556億円の営業利益を確保できたことは、体質改善が進み強い収益基盤の確立が進んできた証しであるとしている。

 2012年度売上高予想は18.4%増の22兆円。営業利益は「営業面の努力」5,500億円と「原価改善の努力」2,400億円の合計7,900億円が諸経費増1,456億円を吸収して(為替影響は±0)、1兆円を見込んでいる。

トヨタの連結決算

(100万円)
2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度
予想
売上高
営業利益
税引前利益
当期純利益
23,948,091
2,238,683
2,382,516
1,644,032
26,289,240
2,270,375
2,437,222
1,717,879
20,529,570
(461,011)
(560,381)
(436,937)
18,950,973
147,516
291,468
209,456
18,993,688
468,279
563,290
408,183
18,583,653
355,627
432,873
283,559
22,000,000
1,000,000
1,160,000
760,000
研究開発費
減価償却費
設備投資
890,700
947,000
1,482,600
958,800
1,042,400
1,480,200
904,000
1,072,100
1,302,500
725,300
1,032,000
579,000
730,300
812,300
642,300
779,800
732,900
706,700
810,000
730,000
820,000
為替レート ドル 117円 114円 101円 93円 86円 79円 80円前後
ユーロ 150円 162円 144円 131円 113円 109円 105円前後
資料:トヨタの決算短信 (2012年 5月 9日発表)
(注) 1. 2011年度の営業利益(3,556億円)は、前年度(4,682億円)比1,126億円の減。営業面の努力で1,500億円、原価改善の努力で1,500億円、合計3,000億円のプラスだが、為替変動の影響で2,500億円、諸経費増など1,626億円がマイナス要因となった。
2. 対ドル1円の円高による利益押し下げ額は、2011年度は320億円、2012年度は輸出台数が増えるため350億円程度とされる。
2012年度営業増益要因
(億円)
2012年度営業利益
増益要因(予想)
2011年度
実績
増益要因 減益要因 為替影響 営業利益
増額合計
2012年度
見通し
販売増等 原価改善 諸経費増
3,556 5,500 2,400 (1,456) ±0 6,444 10,000

 



単独決算:2012年度の営業赤字が700億円に縮小する見込み、さらに±0を目指す

 トヨタが連結で2兆円超の営業利益を計上した2006~2007年度には、トヨタ単独で1兆円超の営業利益を計上していた。しかし2008年度は販売の大幅減と為替影響のため営業赤字となり、2010~2011年度は円高の影響が大きく4,000億円を超える営業赤字となった。

 2012年度見通しでは、為替レート予想は2011年度と大差なく、また200万台を輸出する計画で輸出比率は前年度の53.5%から58.8%に上昇する見込みだが、販売台数増と収益構造の改善により、営業赤字は2011年度の4,400億円から700億円に縮小する見込み。トヨタは、2011年3月に発表した「グローバルビジョン」のなかで、単独営業利益の早期黒字化を目標のひとつに掲げている。

トヨタの単独決算

(100万円)
2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度
予想
売上高 11,571,834 12,079,264 9,278,483 8,597,872 8,242,830 8,241,176 9,500,000
(内)国内 3,582,400 3,549,800 3,059,800 3,523,100 3,059,200 3,245,800  
(内)輸出 7,989,300 8,529,400 6,218,500 5,074,600 5,183,500 4,995,300  
営業利益 1,150,921 1,108,600 (187,918) (328,061) (480,938) (439,805) (70,000)
経常利益 1,555,193 1,580,626 182,594 (77,120) (47,012) 23,098 440,000
当期純利益 1,060,109 1,138,144 56,649 26,188 52,764 35,844 360,000
国内生産と輸出台数
(1,000台)
国内生産台数 4,185 4,264 3,393 3,206 3,004 3,119 3,400
輸出台数 2,597 2,708 2,139 1,644 1,698 1,670 2,000
輸出比率 62.1% 63.5% 63.0% 51.3% 56.5% 53.5% 58.8%

資料:トヨタの決算短信 (2012年 5月 9日発表)

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>