NCAP(新車アセスメントプログラム)の概要と動向

衝突安全評価テストのグローバル比較

2017/12/11

要約

 自動車の安全法規は米国で最初に1968MY (Model Year)から適用された。当時は「安全は売れない(Safety doesn’t sell)」として、安全装備の採用を渋る自動車メーカーに対する最低限の要求(minimum requirement)であった。

 NCAP (New Car Assessment Programme 新車アセスメントプログラム)は、NHTSA (National Highway Traffic Safety Administration 米国運輸省道路交通安全局)が1979MYに初めて導入。消費者情報として、より厳しい条件での衝突性能を公表する事で、法規以上の安全性能をメーカー同士で競わせることを目的としていた。法規でさえ未だ提案段階であった衝突テストを、その提案衝突速度より5マイル速い35マイルで行い、成績の悪かったテスト後の車をNHTSAの中庭に並べて行った記者会見は世界の自動車メーカーに衝撃を与えた。

 NCAPは1992年にオーストラリア(ANCAP)、1995年に日本(JNCAP)、1997年に欧州(Euro NCAP)で導入された。NCAPが世界に広がり始め、自動車メーカーがNCAPで安全性能を競う様になるまで15年以上を要したが、現在ではNCAPで好成績を取ることが必須であるとして自動車メーカーが力を入れるようになっている。また、新興国でのモータリゼーションの発展に伴い、2011年にはNCAPをさらに世界的に広げる目的でGlobal NCAPが創設された。

 現在では主要8カ国・地域でNCAPが実施され、自動車の衝突時の乗員保護性能の評価と、近年追加された緊急自動ブレーキのような予防安全性能の評価が行われている。本レポートは樋口和雄氏の協力を得て、主に衝突安全性能の評価について、導入の経緯、各国の評価法の違い等を報告する。

 

衝突安全評価テストの実施状況・衝突速度


国・地域
プログラム 前面衝突 側面衝突 後部衝突
フルラップ衝突 オフセット衝突 MDB衝突** ポール衝突
米国 US NCAP 56km/h - 62km/h 32km/h -
IIHS* - 64km/h 50km/h - -
欧州 Euro NCAP 50km/h 64km/h 50km/h 32km/h 24.5km/h
日本 JNCAP 55km/h 64km/h 55km/h - 20km/h
オーストラリア ANCAP - 64km/h 50km/h 29km/h -
韓国 KNCAP 56km/h 64km/h 55km/h 32km/h 16km/h
中国 CNCAP 50km/h 64km/h 50km/h - -
南米 Latin NCAP - 64km/h - - -
アセアン ASEAN NCAP - 64km/h - - -

* 米国ではUS NCAPのほか、IIHS (Insurance Institute for Highway Safety 米国道路安全保険協会)の安全評価がある。IIHSはオーバーラップ量 40%と25%の2種類のオフセット衝突を実施している。
** MDB (Moving Deformable Barrier) 衝突
出所:各NCAP、IIHSの評価基準より作成

 

関連レポート:

Mercedes-Benz、BMW、AudiのADAS・自動運転装備 (2017年8月)
日本市場の新型車装備(上):トヨタ、レクサス、日産編 (2017年3月)
日本市場の新型車装備(中):ホンダ、マツダ、富士重工、スズキ、ダイハツ編 (2017年3月)
日本市場の新型車装備(下)軽乗用車編: 自動ブレーキの作動速度域・歩行者対応が拡大 (2017年3月)
分析レポート エアバッグ (欧米市場編)
分析レポート エアバッグ (日本市場編)

 

このレポートは有料会員限定です。 残り 4 章
無料会員登録により、期間限定で続きをお読みいただけます。