i3 (BMW)

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2024年01月31日(水)

※英GlobalData社 (旧LMC)のアナリストによるショートレポート (1月24日付) をマークラインズが翻訳したものです。

・中国NEV (新エネルギー車)市場の初期段階には、大半の自動車メーカーが電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHV)の開発に際し、内燃エンジン車(ICE)の既存プラットフォームをベースにNEVを開発した。

 ・しかし、このICEプラットフォームベースの開発は研究開発段階で多くの問題を生じたほか、性能や航続距離の点で最適でないことが示された。技術が進歩するにつれ、この移行期のコンセプトは次第にEV専用プラットフォームに取って代わられた。VWでいえば、同社はICEモデルをベースに、EVバージョンのコンパクトセダン「ラヴィダ (Lavida、朗逸)」、コンパクトセダン「ボーラ(Bora、宝来)」、コンパクトカー「ゴルフ(Golf、高爾夫)」を開発したあと、EV専用プラットフォームを導入すると共に、これらをラインアップから廃止した。今では、大部分でEV専用プラットフォームへの切替えが完了しているか、その過程にある。

・一方で、BMWはといえば、ICE車にも対応できるフレキシブルEVプラットフォームをベースとしたEVを導入し続けるという独自のポジションをとっている。さらに驚きなのは、同社の販売業績が非常に好調なことである。BMWは、どのようにこのような戦略を実現しているのだろうか?

・第一に、BMWは「究極のドライビング・エクスペリエンス(Ultimate Driving Experience)」とハイエンド・ブランドを売りにしている。BMWの最大の強みはいわゆる「駆けぬける歓び (Pure Driving Pleasure)」を提供するというブランドイメージにある。こうした長年のブランドの遺伝子が、NEV時代の到来とともに存分に発揮されるようになった。このようなスローガンに惹かれて、BMWを所有することは中国の多くの男性の夢となっている。

・次に賢い価格戦略が挙げられる。NEVが市場に投入される場合、大抵は同じクラスのICE車よりも価格が高く設定される。メルセデス・ベンツはその好例といえる。同社の電気SUV「EQC」は「GLC」のEVバージョンと見ることができるが、「EQC」の初期の小売価格は50万元(約1,040万円)近くで値引きもなかった。「GLC」も元々50万元と高額であるが、「EQC」より多くの機能が標準装備されており、値引きもあったことから、「EQC」との価格差は明らかだった。このような状況は「EQC」に限られないものの、最も顕著に出ている。対照的に、BMWのEVは同じクラスのICE車よりもはるかに安く、(中国のEVと同様に)購入税の免税措置の恩恵を受けているため、多くの消費者を惹きつけている。同時に、BMWのEVは「究極のドライビング・エクスペリエンス」の性能も維持している。

・BMWは、NEVの性能と耐久性に不可欠な電気モーターとバッテリーを中心に、NEVのコア部品開発を垂直統合してきた実績がある。Dセグメント電気セダン「i3」とPHV「i8」の開発での豊富な経験を経て、第5世代のeDriveシステムでバッテリー、電気モーター、電子制御システムを総合的に進化させた。出力密度、航続距離、軽量化、小型化、モジュール化などの多方面で技術革新を実現している。電気モーターでは永久磁石モーターをベースにしているが、永久磁石を励起モーターに置き換えており、電流と力率をより効率的に調整している。このモーターは他のメーカーのモーター2基分にも値するといわれており、コスト削減とパワーの最適化を同時に行うことを可能にしている。

・これと同時に、BMWはコストをコントロールすべく、中国を同社製品の輸出ハブとして位置付け、中国からの世界各国への出荷を行なっている。こうしたグローバルな販売チャネルを活用することで、BMWはNEV時代における新たなブランド・イメージを確立した。こうした賢い戦略により、GlobalDataとしてはBMWが中国でのeモビリティ目標を外資ブランドの中で最初に達成することができるとみている。

原文はこちら

2023年11月24日(金)

・BMWは11月17日、複数の新型車を広州モーターショーに出展した。うち、ラージサイズ高級セダンの新世代BMW 5シリーズのロングホイールベースバージョンは世界初公開となった。同モデルの電気自動車(EV)である「i5」および上級バージョン「i5 M60」も披露された。

・新世代BMW 5シリーズは中国市場専用のクーペ風のスタイリングを採用する。内装は統合型タッチ式ディスプレイとインタラクティブアンビエントライトを採用する。第8.5世代となるBMWオペレーティングシステムを搭載し、大型タッチスクリーンを配し、「IMAX」クラスの視聴が可能になっている。

・最長航続距離(CLTC)は700km超で、レベル2の運転支援システムを標準装備し、視線誘導による自動車線変更機能を世界初搭載する。

・このほか、クーペタイプCセグメントSUVの新型「X2」を中国で初公開し、先行販売を開始した。価格は32万元‐42万元。純粋なSAC (スポーツ・アクティビティ・クーペ)設計を採用し、統合型タッチ式カーブディスプレイと第9世代BMWオペレーティングシステムを採用。2.0Lターボエンジンを搭載する。

BMWとBMW中国のWeChat公式アカウント1/2公式サイトリリースに基づく

2023年10月12日(木)

中国乗用車市場信息聯席会(China Passenger Cars Association: CPCA)は9月の狭義の乗用車(セダン、SUV、MPVを含み、微型バンを含まない)生産・小売台数を発表した。

2023年9月の中国乗用車生産・小売台数

小売:2023年9月の乗用車小売台数は前年同月比5%増の201.8万台となった。1-9月の累計は前年同期比2.4%増の1,523.3万台となった。

9月の高級車小売は前年同月比7%減の27万台。

9月のローカルブランド小売は前年同月比20%増の107万台。中国国内小売市場でのシェアは前年同月から6.4ポイント上昇し53.4%となった。中国国内卸売市場でのシェアは56.6%で、前年同月から6.3ポイント上昇した。

9月の大手合弁ブランドの小売は前年同月比12%減の67万台となった。独系ブランドのシェアは前年同月に対し0.9ポイント低下し20.2%となった。日系ブランドのシェアは1.1ポイント低下し16.6%となった。米国系ブランドのシェアは3.3ポイント低下し7.3%となった。

卸売:9月の卸売は前年同月比6.6%増の244.9万台となった。うち、ローカルブランドの卸売は前年同月比21%増の138万台。大手合弁ブランドは8%減の75.8万台。高級ブランドは6%減の30.8万台。

生産:9月の乗用車生産は前年同月比2.8%増の243.1万台となった。そのうち、高級ブランドは17%減、合弁ブランドは10%減、ローカルブランドは17%増となった。

新エネルギー車(NEV):9月のNEV乗用車卸売は82.9万台、前年同月比23%増となった。そのうち、電気自動車(EV)は11.2%増の56.3万台。プラグインハイブリッド車(PHV)は58.7%増の26.6万台。ハイブリッド車(HV)は12%増の9万1,481台となった。

9月のEV卸売は、A00セグメント(微型、ホイールベース2.0-2.2m)が前年同月比23%減の9.4万台で、EVにおけるシェアは前年同月から7ポイント低下し17%となった。A0セグメント(小型、ホイールベース2.2-2.3m)は17.2万台で、EVにおけるシェアは前年同月から10ポイント上昇し31%となった。Aセグメント(コンパクト型、ホイールベース2.30-2.45m)は11.4万台でEVの20%を占めた。Bセグメント(中型、ホイールベース2.45-2.6m)は前年同月比17%増の16.6万台で、EVの29%を占めた。

9月の卸売販売が1万台を超えたメーカーは前年同月から2社増え、17社となり、NEV乗用車の88.4%を占めた。BYDが28万6,903台、テスラ中国が7万4,073台、吉利汽車が5万3,692台、広汽埃安(AION)が5万1,596台、長安汽車が4万2,812台、理想汽車(Li Auto)が3万6,060台、上汽GM五菱が2万9,129台、上汽乗用車が2万7,057台、長城汽車が2万1,868台、小鵬汽車(XPeng)が1万6,076台、零跑汽車(Leapmotor)が1万5,800台、蔚来汽車(NIO)が1万5,641台、上汽VWが1万5,014台、奇瑞汽車(Chery)が1万3,385台、哪吒汽車(Neta)が1万3,211台、華晨BMWが1万38台、上汽GMが1万5台。

9月のNEV小売台数は前年同月比22.1%増の74.6万台となった。

9月のNEV乗用車輸出は前年同月比107%増の9.1万台。EVは94.7%を占めた。A0+A00セグメントEVはNEVの48%を占めた。メーカー別の輸出台数は次の通り:テスラ中国3万566台、BYD 2万8,039台、上汽乗用車1万2,678台、吉利汽車5,026台、東風乗用車4,028台、智馬達汽車(smart)2,146台、哪吒汽車1,473台、創維汽車(Skyworth)1,420台、長城汽車791台、小鵬汽車766台、上汽GM五菱597台、広汽伝祺536台、広汽埃安527台。うち、A0セグメントEVは60%を占め輸出の絶対的主力となっている。

新興メーカーの9月の小売シェアは1.3ポイント下がり14%となった。理想、零跑などの売上が好調だった。

大手合弁ブランドではVWブランドのNEV卸売が2万4,189台で、大手合弁ブランドのEV販売の51%強を占めた。

9月の分析と10月の展望

9月の自動車小売の前月比でみたトレンドでは安定し、同月で過去最高となった2017年9月の219万台を約9%下回る水準となった。9月は第3四半期の最終月であり目標達成に向け販促が強化されたことで、需要が喚起され、ガソリン車とNEVの販売はともに前月比で大きく伸長した。商務省による省エネ車・NEVの消費促進施策の効果が表れ、各地でモーターショーが開催されたことや、地方政府による自動車商品券の配布などが、消費意欲の増加に効果をもたらした。

10月の稼働日は19日となる。2022年の10月よりも1日多く、自動車の生産販売増に有利である。10月中旬からは年末に向け需要が高まる期間に入るため、10月市場の環境は良好である。各地で打ち出された消費促進政策が継続され、モーターショーなど各種イベントも盛んであり、引き続き消費喚起に効果がある。冬季には帰郷する農民工(出稼ぎ農民)が多いことから、農村地区での自動車購入が増える時期にもなるため、NEVや低価格のガソリン車の市場も拡大が見込まれる。

以下はCPCAの見解である。

  • 国内販売の伸びが顕著になってきている。
  • MPV市場は良好な発展傾向にある。
  • EUによる中国製EVに対する補助金調査については、中国のNEV輸出に対するEUの評価に断固として反対する。

なお、9月の乗用車小売販売上位10社は下表のとおり:

中国メーカー乗用車小売販売台数Top10

- メーカー 2023年9月
(万台)
前年同月比
1 BYD 25.8 34.8%
2 一汽VW 17.0 3.2%
3 吉利汽車 14.3 31.0%
4 長安汽車 12.5 17.7%
5 上汽VW 11.5 -6.1%
6 奇瑞汽車 8.5 17.9%
7 広汽トヨタ 8.3 -1.3%
8 上汽GM 8.1 -19.4%
9 一汽トヨタ 7.8 8.6%
10 長城汽車 7.8 24.1%

注:表データは広義の乗用車(セダン、SUV、MPV、マイクロバスを含む)
中国乗用車市場信息聯席会のリリースに基づく