日本電産 (株) 2018年3月期の動向

業績

(米国会計基準、単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,488,090 1,199,311 24.1 ー過去最高を更新、為替の影響により390億円の増収
営業利益 167,637 139,366 20.3 ー事業ポートフォリオ転換に伴う国内外での部品生産拠点の統廃合のための構造改革費用、将来の成長のための開発人材の増強、M&A費用の一時増加などがあったものの過去最高益を更新。為替の影響により41億円の増益。
税引前当期純利益 164,460 141,313 16.4 ー過去最高を更新
親会社株主に帰属する当期純利益 131,434 111,007 18.4
日本電産
売上高 222,689 218,648 1.8 -HDD用モーターの需要減少があったものの、対米ドル・対ユーロでの円安によるプラスの影響
営業利益 25,381 16,556 53.3
日本電産サンキョー
売上高 150,282 136,161 10.4 -その他小型モーターおよび液晶ガラス基板配送用ロボットの需要増加
営業利益 21,661 19,408 11.6
日本電産モータ
売上高 435,586 249,419 74.6 -買収が完了した新規連結会社によるもの
営業利益 31,129 20,251 53.7
日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ
売上高 302,824 266,091 13.8 -電動パワーステアリング用等の車載用モーターや日本電産トーソクのコントロールバルブ製品の需要増加及び対ユーロにおける円安によるプラスの影響
営業利益 34,932 29,572 18.1

事業取得

ー同社は1日、車載用電子制御ユニット (ECU) を設計・開発するドイツ企業を買収したと発表した。日本電産グループの高性能モーターを制御する高い技術を確立し、次世代製品の提供を目指す。買収したのは独テューリンゲン州イルメナウに本社を置くドライブエクスパート。同社は2010年の設立で、資本金は2万5千ユーロ。従業員数は23人で、16年12月期の売上高は120万ユーロだった。日本電産はドイツの子会社を通じてドライブエクスパートの全株式を取得した。買収額は非公表。 (2017年12月2日付日刊自動車新聞より)

ー同社は、子会社の日本電産サンキョー(長野県下諏訪町)が新設した子会社を通じて電気接点材料などを手がける東京丸善工業(千葉県佐倉市)の全事業を承継したと発表した。事業を移管する子会社の社名も「東京丸善工業」とする。電気接点は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に搭載するリレーやスイッチなどに使われる。日本電産サンキョーと東京丸善工業は、それぞれが持つ技術開発力を強化し、高品質な電気接点商品を車載市場に提供することを目指す。(2017年10月21日付日刊自動車新聞より)

契約

-同社は、子会社の日本電産ルロア・ソマーホールディングとGroupe PSAが自動車向けトラクションモーターに関する合弁会社設立に向けた契約を締結したと発表した。新会社は20183月から4月に設立予定で、フランスCarrieres sous Poissyに本拠を置く。両社50%ずつの出資で、資本金は15百万ユーロ。自動車用トラクションモーターの開発、生産、販売を行う。日本電産ルロア・ソマーは、20172 月に買収したフランスのモータ-メーカーで、産業用モーターをはじめ幅広い分野でのモーター事業を展開している。新会社は、PSA が蓄積している自動車に関するノウハウと日本電産ルロア・ソマーが保有するモーター技術および電装技術を組み合わせることで、主にPSA 向けに低コスト高効率なトラクションモーターを開発、生産、販売するとともに、順次他の自動車メーカーへの販売にも取り組む。(2017124日付プレスリリースより)

2020年度 新中期戦略目標

-「利益ある高成長の飽くなき追求」

  • 連結売上目標 2兆円 (新規M&A 約5,000億円を含む)
  • 内、車載売上高目標 7,000億円~1兆円
  • 連結営業利益率目標 15%以上
  • ROE (株主資本利益率) 18%以上 (株主資本比率60%を前提目標)
  • グローバル5極経営管理体制の確立 (日本、中国、アジア、米州、EMEA (欧州、中東およびアフリカ))

-電動化部品の2020年度市場規模予想と世界シェア目標:

  • 電動パワステ用モーター: 市場規模 70百万台、シェア目標 50%
  • 電動デュアルクラッチ用モーター: 市場規模 10百万台、シェア目標 70%
  • 電動オイルポンプ: 市場規模 11百万台、シェア目標 30%
  • 電動ウォーターポンプ: 市場規模 34百万台、シェア目標 20%

-モジュール化:

  • 電動パワステ用パワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製ECU)
  • 電動オイルポンプパワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製インバーター、日本電産トーソク/Nidec GPM製ポンプおよびケース)

-パワートレイン系への展開:

  • 油圧から電動への変革期が到来。パワトレ市場への本格参入を狙う。
  • 製品例として、SiCインバーター内蔵SRモーター:モーターの小型・軽量化・低消費電力化に成功。

-中国の低速電気自動車 (LSEV) 用駆動システムの主要コンポーネントを受注。

  • モーター、ギアボックス、コントローラー、バッテリーチャージャー
  • 中国の4輪車両とインド・東南アジアの3輪車両に注力。

-部品内製化: プレス部品、樹脂成形、ダイキャスト、シャフト加工、ハウジング加工などを内製化。

-LiDAR (Laser Imaging Detection & Ranging) の適用用途拡大 (自動運転等)

2019年3月期の見通し

(米国会計基準、単位:百万円)
2019年3月期
(予想)
2018年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 1,575,000 1,488,090 5.8
営業利益 190,000 167,637 13.3
税引前当期純利益 185,000 164,460 12.5
親会社株主に帰属する当期純利益 145,000 131,434 10.3

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 55,438 52,807 51,978
-日本電産 20,829 21,459 22,523
-日本電産サンキョー 5,509 5,137 4,689
-日本電産モータ 5,722 5,945 6,020
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 7,959 7,311 7,336

-2019年3月期の研究開発費は全社で63,000百万円と予想。

研究開発体制

-中央モーター基礎技術研究所、シンガポールモーター基礎技術研究所、台湾モーター基礎技術研究所:全社的なモーター全般の要素技術研究を行い、グローバル技術開発戦略の中核となる要素技術研究の一層の高度化を推進している。

<日本電産>
-滋賀技術開発センター: HDD用を除く精密小型DCモーターおよびファンモーター、並びに自動車のパワーステアリング用をはじめとする各種車載用モーター等に関する新製品および新機種量産化、製品の品質向上を目的とした研究開発を行っている。

研究開発活動

<日本電産>
-車載用モーターでは、先進国市場のほか、中国、インド、ブラジルといった新興国市場向け新製品の開発を強化。
-開発案件は以下の通り:

  • 小型・高性能次世代パワーステアリングモーター
  • シート・ブレーキ・サンルーフ等用のモーターおよび付帯する電子制御ユニット(ECU)
  • デュアルクラッチトランスミッション
  • 油圧・電動システム向けブラシレスモーター
  • 電気自動車(EV)向け駆動用モーターや車載用モーターをセンサー・制御装置と組み合わせたパッケージ開発


<日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ>
-車載用モーター: ドイツ、スペイン、日本を中心に車載用モーターの高寿命化、小型化および軽量化に向けた研究開発を行っている。

  • シート調整、ステアリングコラム調整、ステアリング向けレアアース不要の小型ブラシ付きモーターの開発・研究
  • エンジン冷却用小型、軽量ブラシ付きモーター・ブラシレスモーター・ファンモーター

-シャシー制御領域 (ブレーキ、ステアリング):

  • ブレーキ: 回生協調ブレーキシステム用ECUの商品化 (量産) 開発、横滑り防止装置用ECUの商品化 (量産) 開発
  • 電動パワーステアリング: ブラシ付きモーター用とブラシレスモーター用ECUの開発が完了、機能安全対応を盛り込んだブラシレスモーター用ECUの先行開発を行っている。

ー先進安全領域(カメラ、ミリ波レーダー)

  • 先行開発及び商品化(量産)開発

-その他の研究開発領域:

  • 自動変速機 (A/T)、無段変速機 (CVT) 用のコントロールバルブASSYの高機能化と高性能化
  • 電動オイルポンプ:グループ会社の技術力を最適に組み合わせて実施
  • トランスミッション用電動油圧アクチュエーター
  • トラクションモーター、トラクションモーターシステム:E-Axleの開発


<日本電産サンキョー>
-ステッピングモーター: 車載への用途展開において、小型化、高性能化、コストパフォーマンスの改善に向けて開発を進めている。

<日本電産モータ>
-車両駆動用モーター: レアアースを使わないSRモーター技術をベースにエンコーダーとのモジュール化を行い、建機・農機など大型車両のハイブリッド化・電気化に向けた開発を行っている。

<日本電産コパル>
-東京技術開発センターにおいて、車載用レンズ、車載用モーター等のシステム機器関連の要素技術、製品開発を行っている。

  • 光学製品: デジカメ用からポートフォリオの転換として、車載用レンズやモバイル製品の開発に力を入れている。
  • モーター: デジカメ用からモバイル、車載、医療への移行を進めている。

主な設備投資額

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 90,841 68,718 81,918
-日本電産 75 427 735
-日本電産サンキョー 9,303 5,386 7,949
-日本電産モータ 18,222 12,328 9,321
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 22,515 15,505 17,637

-2019年3月期の設備投資額は全社で150,000百万円と予想。

ー同社は、ポーランド、メキシコに電動車両向け駆動用モーターの量産工場を立ち上げる方針を示した。自動車メーカーからの受注を確保してから具体的な計画を詰める。永守重信会長兼社長が都内で開いた決算説明会で明らかにした。同社は駆動用モーターを19年5月から中国で量産する計画で、グローバルで生産体制を整える。2020年度までの3年間、車載領域に総額2千億円の設備投資を実施する方針で、このうち駆動用モーターに1千億円規模の投資を充てる。永守会長は「 (電気自動車シフトで) コモディティー化が進み、自動車メーカーはハードウエアの内製化にはこだわらなくなる」と予想、車載領域での新規受注を獲得し事業拡大を図る。(2018年4月26日付日刊自動車新聞より)

ー同社は、京都府相楽郡に建設していた「生産技術研究所」一期新棟が完成し、220日から業務を開始すると発表した。新棟は、建物面積6,715平方メートル、延床面積23,642平方メートルの地上6階建て。二期も含めた総投資額は約300億円。従業員350名体制でスタートし、最終的に1,000人規模まで拡大する計画。(201821日付プレスリリースより)

ー同社は、電気自動車(EV)関連事業をはじめ、ロボットや家電事業などを強化するため、2018年度に1500億円超を設備投資に充当すると発表した。過去最高の投資額となる。同社では、長野県上田市やベトナムのハノイなど、国内外に工場の建設を進めているほか、今後は人員体制も増強、既存の工場設備も段階的に最新のものに入れ替え、生産の効率化を図る。(2018年1月11日付日刊自動車新聞より)

ー同社は車載用モーター事業を拡大する。電気自動車(EV)の駆動部用モーターであるトラクション用や次世代ブレーキシステム用などの新領域で事業化する。主力の電動パワーステアリング(EPS)用でも受注の上積みを図り、2020年度の車載用モーターの出荷台数を16年度比で倍増以上となる1億台超えを目指す。技術者の採用を増やすほか、生産能力も増強する。車載分野でのM&A(企業の合併・買収)戦略も引き続き積極的に展開する。同社の16年度の車載用モーターの出荷台数は、15年度比微増の4500万台規模となった。中期経営計画「ビジョン2020」の最終年度となる20年度に、1億台超に倍増する計画。このけん引役となるのは主力のEPS用モーターで、16年度出荷実績1500万台強から20年度には3千万台弱に増やす。(2017年427日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画

(2018年03月31日現在)
事業所名 所在地 設備内容 投資予定総額
(百万円)
着手および完了年月
着手 完了
日本電産東測(淅江)有限公司 中国淅江省
平湖市
車載製品用製造工場 1,663 2018年2月 2018年
12月
日本電産サンキョー(株)伊那事務所 長野県
伊那市
第五工場工場建設及びそれに伴う第一工場改修 1,448 2018年1月 2018年8月
日本電産精密馬達科技(東莞)有限公司 中国広東省
東莞市
精密小型モーター製品用製造工場 1,597 2017年9月

2019年5月

ベトナム日本電産サンキョー会社 ベトナム
ホーチミン市
家電製品用製造工場 998 2016年12月

2018年6月

タイ日本電産(株) タイ
パントニ県
精密小型モーター製品背造設備 13,550 2018年4月

2019年3月