日本電産 (株) 2015年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,028,385 875,109 17.5 -売上高、営業利益、税引前利益、当期純利益の全項目において、過去最高を更新。
-売上高は初の1兆円台、営業利益は初の1千億円台を達成。
-ビジネスポートフォリオ転換の推進役である 「車載および家電・商業・産業用事業」 の売上高が 「精密小型モーター」 の売上高を初めて上回った。
営業利益 111,218 84,864 31.1
税引前当期純利益 107,371 84,460 27.1
同社株主に帰属する当期純利益 76,216 56,272 35.4
日本電産
売上高 28,954 27,599 4.9 -対ドル・タイバーツ・ユーロでの円安によるプラスの影響
-HDD用モーター、DCモーター、ファンモーターおよび電動パワーステアリング用モーターの需要増加
営業利益 14,083 13,184 6.8
日本電産サンキョー
売上高 122,711 98,564 24.5 -新規連結子会社の日本電産サンキョーシーエムアイグループの影響
-DCモーターおよびカードリーダーの増収
-対ドルでの円安によるプラスの影響
営業利益 12,686 10,392 22.1
日本電産モータ
売上高 200,040 171,879 16.4 -新規受注増加
-対ドルでの円安によるプラスの影響
営業利益 11,690 8,880 31.6
日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ
売上高 172,699 105,249 64.1 -新規連結子会社の日本電産エレシスグループの影響
-新機種の量産開始
営業利益 18,614 8,954 107.9

-2015年3月期よりセグメント区分を変更。日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズには、日本電産トーソクおよび日本電産エレシスが含まれる。

ドイツの車載ポンプメーカーを買収

-2014年12月11日付でドイツ・テューリンゲン州を本拠とするGeraete- und Pumpenbau GmbH Dr. Eugen Schmidt (GPM) の株式100%をGPMの創業家から取得する持分譲渡契約書を締結。同契約に基づき、2015年2月2日に子会社のNidec Motors & Actuators (Germany) GmbHを通じてGPMの持分取得を完了した。名称を 「Nidec GPM GmbH」 に変更し、非常勤の取締役に日本電産から呉文精副社長と早舩一弥専務が就く。

-GPMは欧州市場でトップクラスのシェアを有する車載用ポンプメーカーで、乗用車および商用車向けにウォーターポンプやオイルポンプ、モジュールポンプの開発・製造・販売を行っている。ドイツ・テューリンゲン州のMerbelsrod、ブラジル・サンパウロ州のIndaiatuba、中国・江蘇省の蘇州 (Suzhou) に主要拠点を保有しており、従業員数は約1,000名。2013年12月期の売上高は265.9百万ユーロ。

-同社グループが有する車載関連製品との組み合わせによる事業拡大が目的。アイドリングストップ車やハイブリッド車、電気自動車の普及により、モーター駆動の電動オイルポンプや電動ウオーターポンプの需要拡大を見込む。

メキシコにCVT用コントロールバルブ工場を新設

-2014年8月、日本電産トーソクはメキシコ・サンルイスポトシ州に自動変速機用コントロールバルブを生産する子会社を設立したと発表した。資本金16億円の全額を出資して新会社 「Nidec Tosok de Mexico S.A. de C.V.」 を設立。投資額は45億円、従業員数は800人を予定。2015年5月より稼働開始。投資、人員ともに段階的に拡大し、第3期の段階で総投資額150億円、3,000人体制での生産を計画する。

-メキシコでは取引先のジヤトコがCVTの生産を拡大しているほか、「フィット」 向けで初受注したホンダも2015年後半からCVTを生産する。コントロールバルブの需要拡大を見込み現地での供給体制を整える。同社はベトナムでコントロールバルブを生産し、ジヤトコやホンダのCVT生産拠点に納入している。これまではメキシコ向けも取引先の拠点を経由してベトナムから供給していた。メキシコに生産拠点を構えることで現地調達ニーズに対応するとともに新規取引の拡大を目指す。(2014年4月24日付日刊自動車新聞より)

2020年度 新中期戦略目標

-「利益ある高成長の飽くなき追求」

  • 連結売上目標 2兆円 (新規M&A 約5,000億円を含む)
  • 内、車載売上高目標 7,000億円~1兆円
  • 連結営業利益率目標 15%以上
  • ROE (株主資本利益率) 18%以上 (株主資本比率60%を前提目標)
  • グローバル5極経営管理体制の確立 (日本、中国、アジア、米州、EMEA (欧州、中東およびアフリカ))

車載事業の新中期戦略目標
-Tier1メーカーのグローバル化、電動化、「地産地消」 体制に対応。自社製品の電動化、モジュール化、部品内製化を提案し、受注の大型化を目指す。
 中核のモーター技術を軸としたモジュール化戦略を加速し、車載部品の世界市場シェアを拡大する。電動パワーステアリング (EPS) 用モーターでは電子制御装置 (ECU) とモーターを組み付けた超小型のパワーパックを投入し、2020年度に世界シェアを50%に引き上げる。電動オイルポンプ・ウオーターポンプも20年度に それぞれ30%、20%を目指す。同社の車載部品は車の電動化や部品共通化を背景に受注が拡大している。事業規模の拡大に伴い、部品の内製化率を高めるた めの投資を積極化し、収益率の向上も同時に進める。(2015年5月1日付日刊自動車新聞より)

-電動化部品の2020年度市場規模予想と世界シェア目標:

  • 電動パワステ用モーター: 市場規模 70百万台、シェア目標 50%
  • 電動デュアルクラッチ用モーター: 市場規模 10百万台、シェア目標 70%
  • 電動オイルポンプ: 市場規模 11百万台、シェア目標 30%
  • 電動ウォーターポンプ: 市場規模 34百万台、シェア目標 20%

-モジュール化:

  • 電動パワステ用パワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製ECU)
  • 電動オイルポンプパワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製インバーター、日本電産トーソク/Nidec GPM製ポンプおよびケース)

-部品内製化: プレス部品、樹脂成形、ダイキャスト、シャフト加工、ハウジング加工などを内製化。

-ADAS市場は2020年に20百万台規模に拡大すると予想。
 自動ブレーキなど先進運転支援システム (ADAS) 向けにミリ波レーダーと一体化した前方監視用の単眼カメラを2017年から量産する。同社は3月に旧ホンダエレシス (現:日本電産エレシス) を買収、ADAS向けセンサーの競争力を強化する方針を打ち出している。日系自動車メーカー4社の他、欧州や中韓の自動車メーカーからの受注にめどをつけ、市場シェア拡大につなげる。同社はADAS向けのセンサーで20年に世界市場シェア20%を目指してい る。(2014年11月21日付日刊自動車新聞より)

-グローバル化: 自動車メーカーおよびTier1サプライヤーの「地産地消」、メガプラットフォームによる大型受注に対応

  • 日本電産: インド生産拠点は2015年7月稼働開始
  • 日本電産トーソク: メキシコ生産拠点は2015年5月稼働開始
  • Nidec GPM (2015年2月に買収): ドイツ、ブラジル、中国・蘇州に生産拠点を保有

2016年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2016年3月期
(予想)
2015年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 1,150,000 1,028,385 11.8
営業利益 130,000 111,218 16.9
税引前当期純利益 126,000 107,371 17.4
同社株主に帰属する当期純利益 90,000 76,216 18.1


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
全社 45,179 37,808 34,278
-日本電産 17,982 19,896 18,340
-日本電産サンキョー 5,384 3,919 4,297
-日本電産トーソク* - 831 1,065
-日本電産モータ 5,411 4,689 3,324
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 5,201 1,491 1,118

* 2015年3月期より、日本電産トーソクは日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズに含まれている。

-2016年3月期の研究開発費は全社で52,000百万円と予想。

研究開発体制

-中央モーター基礎技術研究所、シンガポールモーター基礎技術研究所、台湾モーター基礎技術研究所: 全社的なモータ全般の要素技術研究を行い、グローバル技術開発戦略の中核となる要素技術研究の一層の高度化を推進している。

-2014年7月、基礎研究拠点 「中央モーター基礎技術研究所」 の新建屋を川崎市幸区に200億円を投じて建設し、取引先や報道関係者に公開した。研究設備を増強するとともに研究者の採用を拡大し、「ビジネスに直結する基礎研究」 (永守重信社長) を加速する。小型軽量化など、グループ各社に共通した課題をいち早く解決して競争力を向上する。基礎研究で技術基盤を強化し、自動車向けなど重点事業の拡大につなげる。(2014年7月12日付日刊自動車新聞より)

<日本電産>
-滋賀技術開発センター: HDD用を除く精密小型DCモーターおよびファンモーター、並びに自動車のパワーステアリング用をはじめとする各種車載用モーター等に関する新製品および新機種量産化、製品の品質向上を目的とした研究開発を行っている。

-大連技術開発センター: ブラシ付き・ブラシレスモーターの中国系OEMとTier1に対応する現地体制を整えた。部門内に実験グループがあり、車載用モーター開発における信頼性評価や検証試験の迅速な対応が可能となっている。

研究開発活動

<日本電産>
-車載用モーターでは、先進国市場のほか、中国、インド、ブラジルといった新興国市場向け新製品の開発を強化。
-開発案件は以下の通り:

  • 小型・高性能次世代のパワーステアリング用モーター
  • パワーステアリング以外のアプリケーション (シート、ブレーキ、サンルーフ等) 用のモーターおよび付帯するECU (電子制御ユニット)
  • 油圧・電動システムに使用されるブラシレスモーター等
  • モーターをセンサー、制御装置と組み合わせたパッケージ

<日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ>
-車載用モーター: ドイツ、スペイン、日本を中心に車載用モーターの高寿命化、小型化および軽量化に向けた研究開発を行っている。

  • シート、サンルーフ用モーター: レアアース不要な小型ブラシ付きモーターの商品化
  • エンジン冷却用モーター: 小型で軽量なブラシ付ファンモーターの開発

-シャシー制御領域 (ブレーキ、ステアリング):

  • ブレーキ: 回生協調ブレーキシステム用ECUの商品化 (量産) 開発、横滑り防止装置用ECUの商品化 (量産) 開発
  • 電動パワーステアリング: ブラシ付きモーター用とブラシレスモーター用ECUの開発が完了、機能安全対応を盛り込んだブラシレスモーター用ECUの先行開発を行っている。

-先進安全領域 (カメラ、ミリ波レーダー):

  • カメラ: 単眼カメラECUの開発を行った。

-その他の研究開発領域:

  • 自動変速機 (A/T)、無段変速機 (CVT) 用のコントロールバルブASSYの高機能化と高性能化
  • 電動オイルポンプ
  • トランスミッション用電動油圧アクチュエーター

<日本電産サンキョー>
-ステッピングモーター: 車載への用途展開において、小型化、高性能化、コストパフォーマンスの改善に向けて開発を進めている。

<日本電産モーター>
-車両駆動用モーター: レアアースを使わないSRモーター技術をベースにエンコーダーとのモジュール化を行い、建機・農機など大型車両のハイブリッド化・電気化に向けた開発を行っている。

-2014年11月、炭化ケイ素 (SiC) のパワー半導体を搭載したインバーターで、磁石不使用のスイッチトリラクタンス (SR) モーターを制御する駆動システムを開発したと発表した。従来に比べて3割の小型化、7割の軽量化を実現するとともに、インバーターの電力損失も低減する。 2015年までにインバーターを一体化したモーターの開発を完了し、20年には電気自動車などの駆動用モーターとして展開する。(2014年11月18日 付日刊自動車新聞より)

<日本電産コパル>
-東京技術開発センターにおいて、車載用レンズ、車載用モーター等のシステム機器関連の要素技術、製品開発を行っている。

  • 光学製品: デジカメ用からポートフォリオの転換として、車載用レンズやモバイル製品の開発に力を入れている。
  • モーター: デジカメ用からモバイル、車載、二輪への移行を進めている。

主な設備投資額

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期
全社 58,042 40,297
-日本電産 140 232
-日本電産サンキョー 5,790 3,712
-日本電産モータ 4,475 3,817
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 13,797 12,769


-2016年3月期の設備投資額は全社で72,000百万円と予想。

設備の新設計画

(2015年03月31日現在)
事業所名 所在地 設備内容 投資予定総額
(百万円)
着手および完了年月
着手 完了
Nidec Tosok de Mexico S.A. de C.V. メキシコ
サンルイスポトシ州
車載製品製造施設等 4,500 2014年7月 2015年5月