トヨタ紡織 (株) 2018年3月期の動向

2018年3月期の業績

(単位:百万円)
2018年
3月期
2017年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 1,399,530 1,357,913 3.1 欧州・アフリカ地域などの増産
営業利益 71,198 71,936 (1.0) -
経常利益 72,879 77,224 (5.6) -
親会社株主に帰属する当期純利益 42,762 45,359 (5.7) -

受注

-トヨタ自動車の新型車レクサス「LC」にシートとドアトリムが採用。シートは、本体に、Yの字型に肩のほうへ回り込むシートバックを重ねたレイヤー構造を採用。6つの電動機能を備えながら単体で20キログラム以下に重量を抑えた。ドアトリムは、世界初のドレープ(ヒダ)をアルカンターラ表皮で実現した。猿投工場(愛知県豊田市)で手作業を含む専用ラインで製造する。レクサスLC開発者のイメージに合わせるため、これまでにない構造を採り入れたという。(2017年3月22日付日刊自動車新聞より)

事業提携

-スイスのオートニウム、日本特殊塗料と3社で、自動車のNV(騒音・振動)を評価・解析する合弁会社の設立で合意したと発表した。2017年度中に、トヨタ紡織の大口工場(愛知県大口町)内に設立し、トヨタ自動車を始めとする自動車メーカー向けに内外装システムのNV評価・解析、先行開発を行う。3社の技術的な強みを持ち寄り、次世代車向け開発力を高める。合弁会社は「ATNオートアコースティクス」で3社の頭文字をとった。資本金1億円のうち、トヨタ紡織が49%、日本特殊塗料が26%、オートニウムが25%をそれぞれ出資し、役員構成はトヨタ紡織が2人、日本特殊塗料とオートニウムが各1人を予定する。約10人体制でスタートし、業務の規模に応じて増やしていく。(2017年10月6日付日刊自動車新聞より)

-タチエスの発行済み株式の4.17%に当たる152万1千株を約30億円で取得したと発表した。株式取得の理由についてトヨタ紡織は「両社の関係をより強固にして、業務提携の効果の最大化を図るため」と説明している。両社は3月に、自動車用シート事業のグローバル競争力強化を目的に業務提携した。ノウハウや経営資源を相互活用し、シートフレームやシート機構部品などの開発段階の協業を検討することにしている。 (2017年7月4日付日刊自動車新聞より)

新会社

-連結孫会社の川島織物(上海)が中国・江蘇省塩城市に輸送機器用内装材の製造販売する完全子会社を設立すると発表した。新会社で原糸からファブリック、シートカバー縫製までの一貫生産体制を整え、業容拡大に対応できる工程を整備する。2018年4月に設立し、資本金は50百万元。(2018年3月29日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 47,393 37,884 38,450

研究開発拠点

地域 所在地
日本 -猿投開発センター (愛知県豊田市)
-大口開発センター (愛知県丹羽郡)
-刈谷開発センター (愛知県刈谷市)
-多治見技術センター (岐阜県多治見市)
北中南米 米国ミシガン州 (テクニカルセンター)
米国カリフォルニア州 (シリコンバレーオフィス)
中国 上海 (R&Dセンター)
アジア・オセアニア タイ バンコク (R&Dセンター)
欧州・アフリカ イタリア ミラノ (デザインスタジオ)

研究開発活動

-2030年を見据えた次世代生産システムの構築に着手し、18年度にもVR(仮想現実)など、IT(情報技術)を活用したモデルラインをテスト稼働する。将来的に自動運転車が本格的に普及した場合、シートに対するニーズも多様化すると予想、「超多品種少量に対応する」(石井克政社長)ため、ものづくりの革新を図る。モデルラインはシート生産拠点の猿投工場(愛知県豊田市)に導入する方針。11日に開催した中期経営実行計画の進捗状況についての記者会見で明らかにした。グローバルで自動運転の開発が加速しており、これが普及すると車の価値が変化する中で、同社では「内装部品で将来どんな価値や技術が求められるか」(石井社長)を軸に新製品・新技術の開発を進めている。(2017年7月12日付日刊自動車新聞より)

-次世代車の快適性について研究開発するため、金沢大学と包括提携を結んだと発表した。これまで、2010年から8年間自動車エンジン用エアフィルター分野で共同開発してきたが、近未来の車を見据えて共同研究する領域を広げる。内装空間を中心に三つのテーマを設けて、今後3年間、共同研究を進める。共同研究のテーマは、「空気室」「快適の数値化」「座り心地」の三つ。空気室は、香りやPM2.5(微小粒子状物質)を除去するフィルターなど、空気マネージメントが中心となる。人材育成に向けて、インターンシップとして、学生を同社に受け入れたり、同社から金沢大学へ派遣することも検討する。(2018年3月3日付日刊自動車新聞より)

製品開発

-コンパクトカー向けの「普及型パワーシート」など、乗員の快適性を高める4種の新開発シートを2018~19年に製品化する。新たに開発する「普及型パワーシート」は、現在上級車に設定が限られているパワーシート(電動シート)を低コストで実現し、コンパクトカーなどにも普及を目指す製品。「多機能アジャストシート」は、さまざまな体格の乗員をサポートし、コーナリングなどの際の姿勢を保持する。「乗降サポートシート」は、シートの前後位置を簡易にスライドさせる仕組み。「新シートアレンジシステム」は、ミニバンなどを想定して開発する。リモコン操作ひとつで、さまざまなシートアレンジをこなすシステムとなる。20年以降、これら要素技術を組み合わせたシステムを自動車メーカーに提案する。同社は自動運転の実用化を見据えて「快適」を内装の主戦場に位置づけている。(2017年5月26日付日刊自動車新聞より)

特許

-同社と三井化学は、トヨタ紡織が保有する高耐衝撃プラスチック特許を三井化学が使用して事業化する特許実施許諾契約を締結したと発表した。プラスチックの高性能化につながる改質材の領域に関して、三井化学の高い専門性や設備を生かして、2018年以降、自動車用シートやドアトリムなどで実用化する。両社は16年11月から高耐衝撃性プラスチックの事業化に向けて業務提携を検討してきた。契約締結により、三井化学の製造技術や設備、販路を活用し、三井化学製の改質材の一つとして高耐衝撃性プラスチックの自動車市場での実用化を目指す。(2017年4月12日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 52,095 35,500 36,898


-新製品対応、生産設備の合理化・更新などの投資を重点に実施。

  • 日本: 28,947百万円
  • 北中南米: 10,286百万円
  • 欧州・アフリカ: 9,613百万円
  • アジア・オセアニア: 3,247百万円

設備の新設

(2018年3月31日現在)
会社名/事業所名 所在地 設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了予定
猿投工場 愛知県
豊田市
シート、ドアトリムの新製品対応、設備の維持更新 14,327 2018年
4月
2019年
3月
刈谷工場 愛知県
刈谷市
エアフィルター等の新製品対応、設備の維持更新 7,009 2018年
4月
2019年
3月
大口工場 愛知県
丹羽郡
成形天井等の新製品対応、設備の維持更新 1,065 2018年
4月
2019年
3月
高岡工場 愛知県
豊田市
シート、ドアトリムの新製品対応、設備の維持更新 1,131 2018年
4月
2019年
3月
トヨタ紡織テネシー 米国
テネシー州
シート、ドアトリムの新製品対応 3,600 2018年
4月
2019年
3月

設備の新設計画

-31百万ドルを投じて米国テネシー州Jacksonの拠点を拡張すると発表した。143,000平方フィートを拡張する一方、溶接事業を統合して新設備を導入する。拡張に伴い、従業員数を242名から381名に増強する。同社の米州地域統括会社のToyota Boshoku Americaとその子会社は従業員数11,000名超、米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンの18拠点で事業を展開している。(2017年12月4日付 Tennessee Department of Economic Developmentプレスリリースより)

2019年3月期の見通し

(単位:百万円)
2019年3月期
(見通し)
2018年3月期
(実績)
増減率 (%) 要因
全社
売上高 1,360,000 1,399,530 (2.8) 1)
営業利益 62,000 71,198 (12.9)
経常利益 62,000 72,879 (14.9) 2)
親会社株主に帰属する当期純利益 38,000 42,762 (11.1)


-2019年3月期は、為替影響等により減収減益の見通し(米ドル105円想定)。

要因
1) 売上高
-日本:減産影響により減収
-北中南米:為替影響やSUV系車種の減産影響により減収
-欧州・アフリカ:一部車種の減産影響により減収

2) 経常利益
-日本:先行費用の増加により減益
-北中南米・欧州・アフリカ:新製品の準備費用増加などにより減益

>>>次年度業績予想(売上、営業利益等)