曙ブレーキ工業 2006年度の動向

ハイライト

研究開発費 (単位:百万円)
- 2007年3月期 2006年3月期 増減率 要因
売上高 173,159 142,260 21.7% 下記1)参照
経常利益 12,157 11,025 10.3% 下記2)参照
当期純利益 6,631 5,857 13.2%  

要因
1) 売上高は、特に国内で一部完成車メーカーの販売不振などのマイナス影響を受けるも、海外事業の好調に加え、北米:アムブレーキコーポレーションの買収(2005年8月)及びインドネシア:ピーティートゥリダールマヴィセサへの追加出資(2006年3月)による連結子会社の増加影響もあり、1,732億円となり、対前期比309億円(+21.7%)の増収。

2) 経常利益は、原油価格及び原材料価格の高騰と高止まりや国内売上高の減少などのマイナス要因はあるものの、合理化努力及び連結子会社の増加影響などにより、122億円と対前期比11億円(+10.3%)の増益となる。当期純利益は66億円と対前期比8億円(+13.2%)の増益となり、前期に引き続き、増収増益なる。

国内事業
2006年12月、同社はディスクブレーキ材料の内製化を目的に、群馬県館林市内に鋳物工場を新設すると発表。操業開始は08年4月の予定で、09年までに月産2200トンの体制を整える。07年から09年度までの3年間で総額約50億円を投資する。ディスクブレーキ部品の主要材料となる鋳物のコストダウンと安定調達などにつなげる。(2006年12月6日付日刊自動車新聞より)

海外展開
- 2006年9月、同社は、タイに全額出資の生産・販売会社を設立した。同社がタイに工場を設けるのは初めて。当面は現地の日系自動車メーカーにディスクブレーキを供給する。新会社は「アケボノブレーキ・タイランド」で、チョンブリ県アマタナコン工業団地に8月11日に設立。(2006年9月29日付日刊自動車新聞より)

- 2007年12月同社は、米・欧・アジアに地域統括会社を設置すると発表。実質的に統括機能を有していた米国事業も07年1月1日付で組織再編を行うとともに、欧州・アジアにも早ければ07年度中に統括会社を新設する。デルファイとの合弁を解消し総括的な事業展開が可能となった北米、インドネシア・中国・タイに連結子会社4社を整備したアジアなど、グローバル基盤の確立が背景にある。日本を含む世界四極体制を軌道に乗せ、09年3月期までの中期経営計画の必達につなげる。(2006年12月28日付日刊自動車新聞より)


業務提携

伊藤忠グループとの提携


- 2006年12月、同社は国内外で伊藤忠商事との資本・業務提携を強化すると発表。今月中にも伊藤忠商事が市場取引きで曙ブレーキ株を買い増し、出資比率を現在の0・8%から9・5%に引き上げるほか、近く同社全額出資の米統括会社アケボノ・コーポレーション(ケンタッキー州エリザベスタウン)にも資本参加する。同社は今回の提携強化により、産業機械や鉄道車両向けブレーキ事業を国内外で強化するとともに、中期的には北米での補修品事業で合弁会社の設立も検討。(2006年12月20日付日刊自動車新聞より)
- 2007年3月、同社は欧米事業を強化すると発表。伊藤忠グループが40%を保有する米ブレーキメーカー、エーマック・ブレーキ社の持ち分を同社が買い取る。同時に、同社の北米統括会社に20%を出資、2006年12月に両社が結んだ業務提携の効果を北米で発揮させる体制を整える。また、同社は4月1日付で欧州事業統括会社をベルギーに設立、営業および市場調査機能を強化する。欧州統括会社は、日系自動車メーカー、サプライヤーの欧州本社が集うベルギー・ブリュッセルに置くことで、これらとの連携の緊密化を図る。同時に、アケボノ・ヨーロッパを存続会社としてアケボノ・アラスを合併し、欧州オペレーションを効率化する。(2007年3月14日付日刊自動車新聞より)


リストラクチュアリング
- 2006年12月、同社は米国のブレーキ製造販売子会社、エーアールシーブレーキLLC(ケンタッキー州)を今年7月に清算したと発表した。米国事業再編の一環。エーアールシーブレーキの規模は、05年12月期の売上高が75億1300万円、経常利益が2億6千万円、従業員数は31人。(2006年12月25日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発費 (単位:百万円)
- 2007年3月期 2006年3月期 2005年3月期
R&D 1,271 484 422


研究開発体制
日米欧に中国を加えた開発拠点において、それぞれの特長を活かし連携しながらグローバル・レベルでの競争力を高め次期商品開発を推進。

アジアで現地生産するブレーキ関連製品の評価・実験業務を日本に集約する。タイ、中国、インドネシアともにアプリケーションエンジニアのみを現地に置く体制に変更、設備機器などへの新規・更新投資が絡む評価・実験は原則として日本で行い投資効率を改善する。同社は09年3月期までに売上高営業利益率を現在の8・2%から10%に引き上げる計画で、能力増強以外の投資効率を改善する。アジア全体の評価・実験を移管するのは、本社のある羽生地区(埼玉県羽生市)。(2007年1月19日付日刊自動車新聞より)

各拠点の動向

<日本>
(摩擦材) ・乗用車用高性能パッドと中・大型用ライニングが中心。高性能・長寿命で音・振動特性に優れ、より安全な摩擦材原材料組成の使用などを重点として製品を開発。
・更に摩擦特性の高性能化を推進するだけではなく、コスト削減、環境に優しい材質を開発。
・環境に配慮した摩擦材製品を開発するために、新規に採用する原材料については、サンプル入手段階から材料メーカーのMSDS(化学物質安全性データーシート)による環境安全性や法規制の対応内容について評価している。さらに、自社による原材料分析等を並行して行う体制を設け、この評価をパスしないと開発に着手できない仕組みをとっている。
(ブレーキ) ・ディスク・ブレーキ、ドラム・ブレーキの開発においては、最適構造設計とアルミ合金等の新材料技術による軽量化製品開発を推進。
・生産効率とコスト競争力のため、ブレーキの標準化と部品の共通化を促進。
・環境に配慮した製品の設計も推進し、同社にとってEU廃車指令の当該物質である鉛については電着塗料の無鉛化への切替を完了、6価クロムについては3価クロムへの全面切替を実行。

<北米>
(摩擦材) ・乗用車からピックアップトラック用まで幅広く高性能で音振特性に優れた材質開発を環境面対応(グリーン材)を加味しながら推進。
(ブレーキ) ・主に乗用車、SUV、ピックアップトラック用ディスクブレーキを開発。特に軽量化を目的にアルミ複合材用の新キャリパ-の開発を完成させ量産化。
・従来製品に代わる新機構を採用した次世代リヤパーキング付ディスク・ブレーキやフルサイズSUV・ピックアップトラック用新型ディスク・ブレーキも開発し、現在車種展開を行う。
日本と連携をとり安価な新構造ブレーキの考案や熱容量性向上キャリパーの考案など次期商品開発を推進。

<欧州>
    ・摩擦材開発に特化しており、要求性能が特有である欧州市場に適合する摩擦材から日米市場向け
輸出欧州車に適合する摩擦材まで幅広く開発。
・静粛性を重視した日米市場向けと高性能を重視した欧州市場向け材質の両方の性質を取入れた「ハイブリッド材」をキーに新たな顧客開拓を推進。
・開発拠点のあるフランス以外では、ドイツに開発の出先機関(現地法人)を置き、より顧客に密着した開発を展開。現地調達原材料による材料の共通化及び欧州製法の導入等により、コスト競争力も増す。

設備投資

設備投資費 (単位:百万円)
- 2007年3月期 2006年3月期 2005年3月期
設備投資 8,900 8,200 3,233

設備投資地域別内訳
・日本: 50億円
・北米: 20億円
・欧州: 2億円
・アジア: 17億円

設備の新設

地域 金額 (百万円) 設備等の主な目的・内容
日本 12,900 試験・研究開発、新規受注対応、既存設備更新、合理化、環境保全
ディスクブレーキ・ドラムブレーキ・ディスクブレーキパッド・ドラムブレーキライニング製造設備、鋳物工場設立、センサー工場拡張、高性能ブレーキ開発、新事務所建設、IT関連等
北米 3,600 試験・研究開発、新規受注対応、既存設備更新、合理化、環境保全、補修品事業強化
ディスクブレーキ・ディスクブレーキパッド製造設備、新事務所建設等
欧州 1,300 試験・研究開発、新規受注対応、既存設備更新、合理化、環境保全
ディスクブレーキパッド製造設備、高性能ブレーキ開発等
アジア 2,200 新規受注対応、合理化、環境保全
ディスクブレーキ・ドラムブレーキ・ディスクブレーキパッド製造設備、二輪車用ブレーキ製造設備、タイ工場建設等
合計 20,000