古河電気工業 (株) 2012年3月期の動向

ハイライト

業績 - 古河電気工業(株)

(単位:百万円)
  2012年
3月期
2011年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 918,808 925,754 (0.8) -
営業利益 15,947 35,144 (54.6) 1)
経常利益 12,872 31,422 (59.0) -
当期純利益 (11,123) 12,213 - 2)
電装・エレクトロニクス部門
売上高 204,461 202,507 1.0 3)
営業利益 5,106 7,801 (34.5) 4)

要因
1) 全社 営業利益
-コストダウンに努めたが、国内需要の低迷と売値の低下の影響が大きく、減益となった。

2) 全社 当期純利益
-2011年9月29日(米国時間)、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネスおよび同関連製品に係る競合他社とのカルテルに関して、今後の刑事裁判手続きにおいて同社が米国司法省による起訴事実を認め罰金200百万米ドルを支払うこと等を内容とする、司法取引の合意に致した。古河電工グループは、米国司法省が実施してきた同社グループを含む自動車用ワイヤーハーネスおよび同関連製品メーカーに対する調査に、全面的に協力してきた。この度、適用法令、事実関係等を総合的に勘案した結果、米国司法省との間で司法取引契約を締結することとした。なお、本件に伴い、2012年3月期第2四半期決算において、15,296百万円を特別損失として計上する。(2011年9月30日付プレスリリースより)

3) 電装・エレクトロニクス部門 売上高
-巻線などのエレクトロニクス関連需要の落ち込みが継続したことや、タイの大洪水による顧客の生産停止などの影響があったが、東日本大震災の影響により一時大きく落ち込んだワイヤーハーネスなどの自動車部品が下期にかけて売上を伸ばしたことなどから、前年比1.0%の増収。

4) 電装・エレクトロニクス部門 営業利益
-自動車部門が堅調に推移した一方、エレクトロニクス部門における製品価格の下落や売上の減少が影響し、減益。

事業方針

-2012年初めに、アルミニウム合金製電線を使用したワイヤーハーネス(WH)の量産を開始する。日本の自動車メーカーからの受注が内定しており、海外拠点で素材の生産とハーネスへの加工・組み立てを行って日本に輸入する。WH用電線を従来の銅からアルミに切り替えることでWHの大幅な軽量化が可能になることから、自動車メーカーの車体軽量化ニーズに対応していく。(2011年6月24日付日刊自動車新聞より)

海外事業

<中国>
-完全子会社の古河マグネットワイヤ(FMGW)が、栄星電線工業股份有限公司の株式の一部を取得すると発表。栄星電線は、台湾を本拠とするエナメル線の開発・製造・販売会社。これにより、両社は中国市場での細物エナメル線の協業を開始する。FMGWは、東京特殊電線株式会社が保有する栄星電線の約31百万株(20%強)を取得する予定。同社は今後、中国向け細物エナメル線の製造を栄星電線の中国拠点(江蘇省蘇州、広東省東莞)に委託する。2011年9月からサンプル出荷を開始する予定で、当面の生産は自己融着線(SVL・LOCK)とポリウレタン極細線(UEW)の2種類で対応する計画。数年後に月産500トンを目指す。(2011年7月20日付プレスリリースより)

新会社

-同社の完全子会社の古河ASは26日、フィリピンにワイヤーハーネスの製造販売拠点「フルカワ オートモーティブ システムズ リマ フィリピン (FALP)」を設立すると発表した。FALPは、古河ASが全額出資し、バタンガス州リパ市に設立する。敷地面積は約5万平方メートル、建物面積は約2万1000平方メートルで2013年3月の操業開始予定。フィリピン国内では初のワイヤーハーネス製造拠点で、主に日本向けの輸出拠点となる。(2012年1月27日付日刊自動車新聞より)

-中国上海(Shanghai)市に統括会社「古河電工企業管理(上海)有限公司 [Furukawa Management Shanghai, Ltd.]」を設立し、2011年11月1日に業務を開始した。資本金は2百万米ドル。中国グループ会社に対する資金運営および財務経理、生産技術、研究開発等に関する業務支援・統括等を行う。なお、同社グループは中国国内に40社以上の企業を設立し、事業展開をしている。(2011年11月1日付プレスリリースより)

企業買収

-三菱電線工業の車載用コネクター事業を2012年2月29日付で買収すると発表した。車載用コネクターの開発を強化し、グローバルな成長が見込める自動車用ワイヤーハーネス事業を拡大する。車載用コネクターの品揃えを充実するとともに、ワイヤーハーネスのアルミ化、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)の高電圧ケーブルなどに使われる新たなコネクター技術の開発を強化する。大幅なコスト削減を実現するコネクターの開発にも力を入れる。(2011年12月13日付日刊自動車新聞より)

事業再編

-新昌電機は、STF Co., Ltd.への出資比率を40.0%から100.0%に引き上げると発表した。STFは忠清南道の天安(Cheonan)市に本拠を置き、自動車用電子部品の製造・販売を行っている。同社は2002年、日本の東海理化および古河電気工業との合弁会社として設立された。株式取得手続きは2012年4月中に完了する予定。(2012年3月2日付プレスリリースより)

-同社の持分法適用会社である東京特殊電線株式会社の第三者割当増資を引き受け、子会社化すると発表した。これにより、同社の所有割合は33.11%から56.50%となる見込み。東京特殊電線は、情報通信・エレクトロニクス・自動車市場向けに、光・電線・デバイス製品や情報機器の製造・販売を行っている。(2012年2月7日付プレスリリースより)

-同社と古河ASは15日、米国の自動車部品事業の完全子会社2社を合併すると発表した。合併するのは、自動車用電装部品の製造・販売を手がけるアメリカン・フルカワ(AFI)と、自動車用ワイヤーハーネスの製造・販売を手がけるフルカワ・ワイヤリングシステム・アメリカ(FWSA)の2社。今月30日付で、AFIを存続会社としFWSAを吸収合併する。資本比率は古河電工が70%、古河ASが30%。(2011年9月16日付日刊自動車新聞より)

-中国での自動車部品生産体制を再編すると発表した。同社グループと現地資本との折半出資としていた重慶市にあるワイヤーハーネス(WH)工場の株式の一部を買い取り、経営権を取得する。中国国内での物流や商流も見直し、品質やコスト、納期などの面で事業の質的な向上につなげる。株式の一部を買い取るのは「重慶長華汽車線束有限公司」。(2011年6月21日付日刊自動車新聞より)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

開発動向

研究開発費 - 古河電気工業(株) 

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 18,949 18,296 17,270
電装・エレクトロニクス 4,306 3,807 3,659

-2013年3月期の研究開発費(全社)は、206億円を予定。

研究開発拠点

拠点名 所在地
自動車電装技術研究所 神奈川県
平塚市
横浜研究所 神奈川県
横浜市
メタル総合研究所 栃木県
日光市
FETI (Furukawa Electric Institute of Technology Ltd.) ハンガリー

研究開発活動

電装・エレクトロニクス部門
-アルミ電線を使用したワイヤーハーネスの車載技術の開発を完了し、量産車両への搭載を開始。アルミ電線を採用したバックドアハーネスで約15%の軽量化を実現。
-自動車用バッテリセンサーに関して、2012年に車両メーカー向けの量産を開始する。バッテリー電力を管理することにより、自動車のエネルギー利用効率化への貢献が期待されている。
-超広域帯(UWB)技術を応用したレーダーの開発を継続して実施。自動車の安全機能の向上に有用な車両周辺監視センサーとして期待され、システムメーカーおよび車両メーカーと技術協議を行っている。
-ハイブリッド車(HV)の駆動モーター向けに、相間絶縁紙不要となることによるモーターの小型化、かつ従来に無い高出力化が実現できる巻線を開発し、製造・販売を開始。また、更なるモーターの小型化、高効率化に貢献可能な巻線の絶縁被膜の研究開発を加速させている。
-Gn(窒化ガリウム)に関して、富士電機グループと共同で設立した次世代パワーデバイス技術研究組合において、トランジスタとダイオードの開発を継続して実施。
-NEDOの委託を受け、「カーボンナノチューブを用いた革新的超軽量電線の開発」を継続して実施。

軽金属部門
-リチウムイオン電池に関して、電池の正極集電体やラミネート型外装材用のアルミ箔、角型外装材用のアルミ板の開発、製造を行っており、国内外に供給している。
-電気自動車などの次世代自動車向けに、従来よりも大幅に冷却性能を向上させたアルミ製新型空冷冷却器「VLフィン」を開発したが、更に性能を向上させるべく研究開発を実施。
-自動車熱交換機器用材料につき、薄肉・高機能化材料の開発を実施。

新事業分野に関するもの (サービス等部門)
-NEDOの委託プロジェクト「次世代自動車高性能蓄電システム技術開発」に参画し、リチウムイオン電池用負極材料開発の当初目標を達成し、プロジェクトを完了。引き続き、高出力・高寿命特性の負極材料の実用化を目指し開発を推進している。

特許

-2012年2月28日、保有する「リチウムイオン二次電池用電解銅箔の基本特許」に対する無効審判で特許庁から特許が維持される審決が下されたと発表した。同社はリチウムイオン二次電池の負極材向けに電池性能を向上させることができる電解銅箔を開発し、2005年に特許を取得した。この特許技術を使ったリチウムイオン電池用電解銅箔「NC-WS」は、この分野で世界トップのシェア約40%を占めている。このリチウムイオン電池用電解銅箔の特許について、2010年に特許庁に無効審判が請求され、権利の有効性が争われてきたが、特許庁は2月17日付でこの特許が維持される審決(有効審決)を下した。(2012年2月29日付日刊自動車新聞より)

製品開発

アルミリッツ線
-同社グループの協和電線は23日、電気自動車(EV)の二次コイル向けなどに軽量ではんだ付け作業が大幅に軽減できるアルミリッツ線「カンザック・アルク・ファイン・リッツ77」を開発したと発表した。アルミ素材でリッツ線を開発したのは業界で初めて。2月からサンプル出荷を開始、2012年度下期から量産する予定で、13年度には売り上げ1億円、EV向けの本格化を見込む14年以降は数億円の売り上げを目指す。同社では、軽量化が求められるEVの非接触充電方式での自動車に搭載する受電側のコイルや高周波機器、モーター、発電機など向けに納入を目指す。(2012年1月24日付日刊自動車新聞より)

超小型コネクター用高強度銅合金条
-バッテリーなどの大電流が負荷される電源系コネクターにも適している高強度ながら、良好な曲げ加工性を持つ超小型コネクター用高強度銅合金条「エフキューブ-ST」を開発したと発表した。チタン銅やベリリウム銅の代替として提案していく。既に、大手コネクターメーカーへサンプル出荷を開始しており、2013年度には既に量産中の「エフキューブ-820」なども含めたコルソン合金全体で月産300トン生産する。今回開発したSTは、高濃度のコルソン合金をベースにして高強度化するとともに、高強度コルソン合金条の課題であった曲げ加工性を独自の組織制御技術を応用し大幅に高めた。結晶の向きを特性有利な方向に揃えることにより、高強度でありながら良好な曲げ加工性を持つ。(2011年12月24日付日刊自動車新聞より)

埋設型高周波電流供給ケーブル
-同社グループの協和電線株式会社は、EV向け非接触充電システム用の埋設型高周波電流供給ケーブル「KANZACC EMIC-One」を開発したと発表。このケーブルは、非接触充電システムの電源盤から地表側の一次コイルに高周波大電流を供給するケーブルで、効率的な供給のために導体に多芯絶縁線を使用。表皮効果による交流抵抗の増加を抑制している。2011年11月からサンプル出荷を始め、2013年度に1億円の売り上げを目指す計画。(2011年11月11日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額 - 古河電気工業(株)

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 33,582 27,947 25,433

電装・エレクトロニクス部門
-自動車用電装部品の量産化および増産、電子機能材の量産化および増産等を目的とした設備投資を主に実施。

金属部門
-自動車市場、IT・エレクトロニクス市場に向けた銅箔の増産、銅および銅合金条の製造設備の維持更新等に主に投資。

軽金属部門
-自動車ターボチャージャー用精密鋳物品の生産設備の増設、製板の熱延能力向上を目的とした設備投資等を主に実施。

設備の新設

-2013年3月期の設備投資計画は48,000万円。その内、電装・エレクトロニクス部門では、自動車用電装部品等の増産および合理化、電子機能材の量産化および増産に10,000百万円投資される予定。