日立化成 (株) 2012年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2012年
3月期
2011年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 473,069 497,452 (4.9) -
営業利益 24,495 43,471 (43.7) -
経常利益 27,799  45,042 (38.3) -
当期純利益 16,427 18,943 (13.3) -
機能材料
売上高 240,411 251,984 (4.6) 1)
セグメント利益 20,004  31,075 (35.6) -
先端部品・システム
売上高 232,658 245,468 (5.2) 2)
セグメント利益 4,511  12,387 (63.6) -


要因
1)
電子材料
- 半導体用エポキシ封止材は、パソコンの需要減等により、前年度実績を下回った。
- 半導体用ダイボンディング材料は、半導体メモリー市場の低迷の影響等により、前年度実績を下回った。
- 半導体回路平坦化用研磨材料は、半導体のデザインルールの微細化に対応した製品の売上が増加し、前年度実績を上回った。
- 電気絶縁用ワニスは、自動車向けの需要が減少したため、前年度実績を下回った。

無機材料
- リチウムイオン電池用カーボン負極材は、スマートフォンやタブレットPC向けの需要増に加え、環境対応自動車向けの売上が増加したため、前年度実績を上回った。
- カーボン製品は、福島第一原子力発電所の事故による警戒区域内拠点の操業停止に対応するため、新拠点での生産を開始したものの、事故の影響を払拭するに至らず、前年度実績を大幅に下回った。
- セラミックスは、半導体製造装置向けの需要増により、前年度実績を上回った。

樹脂材料
- 塗料用樹脂は、自動車向けの需要が減少したため、前年度実績を下回った。
- 粘着フィルムは、液晶ディスプレイの光学シート表面保護用の需要減により、前年度実績を下回った。
- ディスプレイ用回路接続フィルムは、液晶テレビやパソコンの需要減により、前年度実績を下回った。
- 非接触式ICカード・タグは、アミューズメント分野の需要が増加したため、前年度実績を上回った。

配線板材料
- 銅張積層板は、パソコン向けの需要減により、前年度実績を下回った。
- 感光性フィルムは、スマートフォンやタブレットPC向けの需要が増加したことにより、前年度実績を上回った。
- この結果、当セグメントの売上高は2,404億円(前連結会計年度比4.6%減)、営業利益は200億円(同35.6%減)となった。

2)
自動車部品
- 内・外装成形品および粉末冶金製品は、震災およびタイの洪水による自動車メーカーの稼働率低下の影響を受け、前年度実績を下回った。
- 摩擦材は、福島第一原子力発電所の事故による警戒区域内拠点の操業停止に対応するため、新拠点での生産を順次開始しているが、操業停止期間中の生産減に加え、タイの洪水による現地拠点の生産停止により、前年度実績を大幅に下回った。

電子部品
- 配線板は、携帯電話向けの売上が減少したほか、自動車向けの需要減により、前年度実績を下回った。

その他
- 電池は、アイドリングストップ車等の環境対応自動車向けに新車用の売上が増加したことに加え、補修用の採用が拡大し、前年度実績を上回った。
- コンデンサは、欧州での太陽光発電設備への補助金引下げの影響等により、前年度実績を下回った。
- 診断薬・装置は、アレルギー診断薬が堅調に推移したものの、医療機器部品の製造・販売を行う連結子会社の全株式を売却し、事業を譲渡したことにより、前年度実績を下回った。

企業買収

-2011年12月1日から2012年1月19日まで実施していた新神戸電機の株式に対する公開買付けを終了したと発表。買付け後の日立化成の出資比率は97.78%となる。(2012年1月20日付プレスリリースより)

-連結子会社の新神戸電機の全株式を公開買付け(TOB)により取得し、完全子会社化すると発表。同社は現在、新神戸電機の株式58.26%を保有している。TOB実施期間は、2011年12月1日から2012年1月19日まで。買付費用は約360億円の見込み。これに伴い、新神戸電機は上場廃止となる予定。なお、両社はこれまで、電池・電気機器、コンデンサ、合成樹脂製品の材料や樹脂の研究開発において連携を図るなど、主に研究開発面において関係を強化してきた。今回の完全子会社化により、自動車事業のグローバル展開の加速、大規模産業用リチウムイオン電池などの産業用蓄電池事業の強化、合成樹脂製品の生産能力向上、新製品の共同開発の加速などを目指す。(2011年11月25日付プレスリリースより)

事業提携

-台湾の高級特殊鋼専業メーカーである榮剛材料科技股份有限公司(Gloria Material Technology Corporation)との間で、業務・資本提携に向けて協議を開始したと発表。生産・販売・技術・投資の相互協力および、榮剛が発行する株式の取得を目的としたもの。2012年度第1四半期を目処に最終決定を行う見込み。(2011年12月20日付プレスリリースより)

新会社設立

-同社と日本ブレーキ工業は、インド合弁会社のAllied Nippon Limited(ANL)との間で、二輪車および四輪車用摩擦材料の製造子会社として、Allied JB Friction Pvt. Ltd (AJF)を設立した。出資比率は日立化成グループ(日立化成および日本ブレーキ)51%、ANL49%。新会社では、OEM市場に特化した非アスベスト系摩擦材料を製造する。AJFは15億円を投じて工場を建設し、2012年12月に本格稼動を開始する予定。2015年度に売上高40億円を計画している。(2011年5月10日付プレスリリースより)

-中国に自動車樹脂成形部品製造の100%子会社を設立すると発表した。日系自動車メーカー向けに、バックドアモジュールを製造する。バックドアモジュールはこれまで国内2拠点で生産していたが、海外への生産進出は初めて。総投資額は約19億円。2014年1月に稼働する。新会社の名称は日立化成工業(鄭州)汽車配件。河南省鄭州市経済技術開発区に設立する。従業員は稼働開始時に約220人となる予定だ。(2011年5月2日付日刊自動車新聞より)

-2011年5月、中国の河南省鄭州(Zhengzhou)市に完全子会社を設立する。新会社の名称は「日立化成工業(鄭州)汽車配件有限公司」(Hitachi Chemical Automotive Products (Zhengzhou) Co., Ltd.)。内・外装樹脂成形品の製造・販売を行う。従業員220名を雇用し、2014年1月に生産を開始する予定。なお、投資額は約19億円の見込み。(2011年4月26日付プレスリリースより)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全社 25,700 26,400 25,400
先端部品・システム 6,800 18,400 -
機能性材料関連製品事業 18,900 8,000 -

研究開発体制

筑波総合研究所 茨城県つくば市
筑波総合研究所(山崎) 茨城県日立市
筑波総合研究所(下館) 茨城県筑西市
Hitachi Chemical Research Center, Inc. 米国カリフォルニア州
Hitachi Chemical - SJTU Research & Development Center 中国上海

研究開発活動

<機能材料>
-主要製品である電子材料、無機材料、樹脂材料、配線板材料に関する研究開発を進めている。パッケージ基板用銅張積層板、スマートフォン等のパネル部材向け透明粘着剤などを開発している。

-高熱伝導金属基板材料「ハイセット HT-5100M」を開発したと発表。現在、サンプル出荷中で、2011年度後半には量産を開始する計画。特殊なエポキシ樹脂を用いることで、5W/m・ Kの高熱伝導性を実現。一般的な金属基板を用いた場合と比較して、基板上に搭載したLEDパッケージの発熱温度を大幅に下げることが可能になる。自動車用 ヘッドライトなど、LEDパッケージが採用される分野に適している。(2011年9月27日付プレスリリースより)

<先端部品・システム>
-同セグメントの主要製品である自動車部品、電子部品等に関する研究開発を進めている。スマートフォン用モジュール基板、アイドリングストップ車用鉛蓄電池などを開発している。

技術供与契約

(2012年3月31日現在)
契約会社名 相手方の名称 契約内容 契約期間
同社および
日本ブレーキ工業
Federal Mogul Corp.
(米国)
ディスクパッドに関する特許実施権および技術情報の供与 2007年3月31日 -
契約製品を使用する対象車種の生産終了時
同社 Brembo S.p.A.
(イタリア)
ディスクブレーキパッドに関する特許実施権および技術情報の供与 2009年8月31日 -
2014年8月31日
(その後は5年ごとの自動更新)

技術導入契約

(2012年3月31日現在)
契約会社名 相手方の名称 契約内容 契約期間
同社 日立製作所 ミューチップタグに関する特許権および
技術ノウハウの実施権の取得
2007年04月20日-
2017年04月19日
新神戸電機 Panasonic Storage Battery Co., Ltd.(日本) 鉛蓄電池に関する特許権および
技術ノウハウの実施権の取得
2004年07月01日-
2014年06月30日

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2012年3月期 2011年3月期 2010年3月期
全体 37,300 30,400 21,000
先端部品・システム 19,600 16,300 -
機能材料 17,700  14,100 -

国内投資

-ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)の市場拡大に伴うリチウムイオン電池用カーボン負極材(車載用負極材)の需要増に対応するため、山崎事業所(勝田:茨城県ひたちなか市)において第三、第四ラインを増設すると発表。投資額は約35億円。2012年9月の稼動開始を目指す。同社はEVおよびPHEV向けに、航続距離を重視し、高容量密度かつ充放電効率に優れる黒鉛系負極材を開発。また、HEV向けに入力特性に優れる非晶質炭素負極材の開発を行った。なお、同社の車載用負極材は、2010年12月に発売された日産のEV「Leaf」に搭載のリチウムイオン電池に採用されている。(2011年7月26日付プレスリリースより)
 

海外投資

<タイ>
-震災などによる部品の供給がストップするリスクを低減するため、タイの子会社で自動車向け粉末冶金製品を製造するヒタチ・パウダード・メタルズ(タイランド)内に、自動車用カーボンブラシを生産する拠点を新設し、4月下旬から順次生産を開始すると発表した。生産拠点の分散化と、自動車需要が拡大しているアジアで現地生産することで、部品の供給体制を強化する。(2012年3月19日付日刊自動車新聞より)


-タイに粉末冶金製品の第2工場を新設すると発表した。タイの自動車需要拡大に伴う需要増に対応するため、生産能力を倍増させる。新工場は2013年7月から稼働する予定。同社のタイ子会社のヒタチ・パウダード・メタルズ・タイランド(HPMT)がゲートウェイ工業団地内に第2工場を新設する。タイは自動車需要の拡大に伴って粉末冶金製品の需要も増加しており、HPMTはフル生産が続いている。現在の生産拠点は拡張の余地がないことから、工場を新設して生産能力を増強する。新工場では、複雑形状部品や耐熱・耐摩耗材部品などの粉末冶金製品を生産する予定。(2012年3月12日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-粉末冶金製品を製造する米国子会社シンターリング・テクノロジーズ(STI)が可変バルブタイミング機構用部品の生産能力を従来の1.5倍に増強したと発表した。北米の自動車需要が順調に拡大しており、今後、同部品の需要の伸びが見込まれるため、生産能力を増強して事業の拡大を図る。STIは4月1日付で同社の社名を「ヒタチ・パウダード・メタルズ(USA)」に変更する。社名変更により日立化成のグループ企業として市場への浸透を図る。(2012年2月29日付日刊自動車新聞より)

<インド>
-インドに粉末冶金製品を製造する工場を新設すると発表した。自動車や二輪車のインドでの生産台数が拡大しており、粉末冶金製品の需要も拡大しているため、現地生産にシフトし、安定供給する。インドのニューデリー近郊ニムラナ工業団地に100%出資子会社を設立する。会社名は「ヒタチ・ケミカル・インディア・プライベート・リミテッド」で資本金が18億4200万円。約19億円を投じて工場を新設、2013年4月から本格稼働させる予定。本格稼働時の従業員数は約90人を予定している。(2011年8月29日付日刊自動車新聞より)

<メキシコ>
-メキシコで自動車用摩擦材料(DP、ディスクブレーキパッド)の生産量を倍増すると発表した。生産子会社のヒタチ・ケミカル・メキシコ(ヌエボレオン州)の能力を増やす。2012年8月までに、生産能力を現状の年間500万個から倍増の1千万個にする。約20億円を投じ4月に着工した。今後も複数の能増を実施する計画で、15年には年産1500万個に引き上げる。(2011年5月14日付日刊自動車新聞より)

設備の新設

(2012年3月31日現在)
会社名/
事業所名
所在地 設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着工 完成
予定
日立化成工業(南通)化工有限公司
[Hitachi Chemical (Nantong)Co., Ltd.]
中国 樹脂材料製造設備 5,100 2011年
10月
2013年
4月
浪江日本ブレーキ 茨城県筑西市 摩擦材料製造設備 3,500 2011年
5月
2012年
10月
Hitachi Chemical India Private Limited インド 粉末冶金製品製造設備 1,900 2012年
1月
2013年
4月