日立オートモティブシステムズ (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上収益 1,001,192 936,934 6.9 -北米や中国等の海外の自動車需要が堅調に推移したこと等により、増収。
調整後営業利益 61,921 47,496 30.4 -
調整後営業利益率 (%) 6.2 5.1 - -

-IFRS基準

-2016年3月期、前回見通し (売上収益10,000億円、調整後営業利益率6.8%) に対し、売上収益は達成されたが、調整後営業利益率は6.2%であり0.6ポイントマイナス。中国の市場の減速を受け、高収益製品の販売が減少した。

2018年度事業計画

(単位:億円)
見直し事業計画
(2016年6月策定)
当初事業計画
(2015年6月策定)
増減率
(%)
全社
売上収益 11,000 12,000 (8.33)
調整後営業利益 770 880 (12.50)
調整後営業利益率 (%) 7.0 7.3 -

-IFRS基準

2018年度事業計画の見直し
-2018年度 (2019年3月期) の見直し事業計画では、売上収益を2015年度実績比9.9%増となる1兆1千億円に修正。調整後営業利益は同24.4%増の770億円に修正した。顧客拠点向け海外売上比率は同60%だったところ、2018年度は63%に目標を設定した。

製品別戦略

  • 市場成長率の高い電子・電動化製品事業を拡大しシステム化を推進:
    内燃機関高効率化・電動化・安全性能高度化

    現状把握と将来目標
    2020年度に、電子・電動化製品 (*1) の売上高比率を60%に。 (2014年度: 47%)

    *1: 電子制御ユニット、ハイブリッドシステムなど


    2015年度/2018年度売上収益の伸び予測:
    モーター (+190%)、インバーター (+170%)、電動パワーステアリング (+120%)、電制ブレーキ (+100%) 、電動VTC (+70%)、電動ブレーキ (+40%)、リチウムイオン電池・コントローラー (+40%)、ステレオカメラ (+20%)、電制サスペンション (+20%)

  • 自動運転の早期実現化に向けシステム開発を加速
    ~2020年情報安全市場3兆円超に対しシェア10%を目指す~

  • 日立グループ連携ソリューションによる成長:
    自動走行においてワンストップで高品位なソリューションを提供

  • 量産プロトタイプによる公道実証試験

顧客戦略

  • 顧客ダイバーシティ戦略の実行:
    売上1,000億円超のアカウントの拡充

  • クロスセルセールスによるFord社向け売上収益の増加
    2008年度/2018年度:約3倍、1,000億円超

地域戦略:2大市場に対する取り組み

  • 米州:2010年度/2018年度:売上収益2.2倍 (USDベース)
    *現地テクニカルセンター強化による、米州顧客への対応充実
    *メキシコ現地法人統合による域内統括、ガバナンスの強化
     -日立オートモティブシステムズメヒコ (2015年10月メキシコ現地法人2社統合)

  • 中国:2010年度/2018年度:売上収益2.3倍 (RMBベース)
    *2018年に向け市場を上回る伸長
    *内陸地域へ拠点を拡大している自動車メーカーに対応するため、中国における15番目の製造拠点を設立 (2016年4月)
     -日立汽車系統 (重慶) 有限公司 (2018年量産開始予定)

組織新設

-2016年3月、自動運転関連の事業強化を目的に、「情報安全システム事業部」を4月1日付で新設すると発表。自動車メーカーに対して、最新の製品や日立グループの技術を積極的に提案・販売し、事業の拡大を図る。新たな事業部は、事業戦略の策定を担う「グローバル事業企画部」のほか、「設計開発本部」「システム品質保証部」などで構成する。約200人の人員体制でスタートし、適宜拡充する。日立AMSの統合制御技術に加え、日立製作所やクラリオンなど、グループが持つ情報・通信システムを組み合わせ、提案力を高める。(2016年3月11日付日刊自動車新聞より)

吸収合併

-2015年12月、ステアリング事業とプロペラシャフト事業を手がけるグループ会社2社を吸収合併すると発表。2016年4月1日付で実施する。成長を見込む2事業の製品開発などを一体運営とすることで、グローバル展開を加速させていく。今回吸収合併するのは、ステアリング製品を製造する日立オートモティブシステムズステアリング (埼玉県滑川町) と、プロペラシャフトやピストンを製造する日立オートモティブシステムズ九州 (福岡県上毛町) の2社で、ともに日立AMSの100%子会社。(2015年12月3日付日刊自動車新聞より)

自動運転実証試験

<日本>
-2016年2月22日から茨城県ひたちなか市の有料道路で自動走行システムの実証試験を開始する。自動運転の公道試験は今回が初めて。全方位検知システムと高精度地図データを組み合わせて車線変更や追い越しなどを行う、高速道路での自動運転「レベル2」を想定する。19日には同市の佐和事業所で報道陣に試験車両を公開した。試験車両には富士重工業の「インプレッサ」を使用する。ステレオカメラとミリ波レーダー、クラリオンの周辺監視システム「サラウンドアイ」を搭載し、センサーからの情報を自動運転ECUで統合してステアリングやブレーキを制御する。セントラルゲートウェイやMPU (高精度地図) などのユニットを含め、検知から情報処理、制御までを、すべて日立グループの技術で対応した。パソコンを使用せずに組み込み機器で構成するなど、より量産に近い技術で自動運転車を実現した。(2016年2月22日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-2015年9月、米ミシガン州で市街地走行を想定した自動運転の走行試験を開始したと発表。自動運転に特化した専用施設で行うもので、先進運転支援システム (ADAS) や、コネクテッドカーの試験などを実施していく。今回の走行試験は、ミシガン州やミシガン大学などで組織する産学官連携の自動運転やコネクテッドカーの走行実験プロジェクト「Mcity (エムシティ)」の一環として実施する。エムシティでは約13万平方メートルの敷地を用意。様々な天候での市街地走行を想定した試験環境を再現した。(2015年9月29日付日刊自動車新聞より)

受注

ステレオカメラ
-2015年12月、スズキの 「Hustler」 および 「Hustler X」、特別仕様車 「Hustler J STYLE II」 に、両レンズ幅を同社従来比で1/2に縮小したステレオカメラが採用されたと発表。今回納入するステレオカメラでは、画像認識処理技術を応用し、歩行者/車両衝突による被害の軽減や、LDW (車線検知)、ふらつき警報、先行車発進お知らせ、誤発進抑制などの安全運転支援機能を、カメラのみのシステムで実現させることが可能になるという。なお、このステレオカメラは、スズキの軽乗用車 「Spacia」 および 「Spacia Custom」、小型乗用車 「Solio」 および 「Solio Bandit」 にも採用されている。(2015年12月21日付プレスリリースより)

リチウムイオン電池
-日産自動車が中国で発売した新型ハイブリッド車 (HV)「Murano Hybrid」にリチウムイオン電池パックが採用された。グループ会社の日立ビークルエナジー (茨城県ひたちなか市) が製造する円筒形電池セルと、電池制御システムなどを組み合わせて電池パックとして供給する。(2015年10月14日付日刊自動車新聞より)

-日産自動車が発売したハイブリッド車 (HV)「X-Trail Hybrid」にリチウムイオン電池パックが採用された。円筒形電池セルは、直径40ミリメートル、長さ92ミリメートルのサイズで、3千ワット/キログラムの出力密度がある。電池セルをグループ会社の日立ビークルエナジーが東海工場 (茨城県ひたちなか市) で製造し、日立AMSのケンタッキー工場で電池パックに組み立てて納入する。(2015年6月2日付日刊自動車新聞より)

-GMが2016年に販売するハイブリッド車 (HV)「Chevrolet Malibu Hybrid」に5千ワット/キログラムの高出力密度の角型リチウムイオン電池セルを納入する。電池の正極と負極の間のイオン伝導性を確保する耐熱セパレーターを採用。高出力密度と安全性の両立を実現した。氷点下30度でも高い出力密度を保つ性能なども評価され、採用につながった。(2015年5月20日付日刊自動車新聞より)

受賞

-2015年5月、Ford社により事業連携が評価され、「World Excellence Award」を受賞した。

2016年3月期の見通し

(単位:億円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上収益 10,000 10,011 (0.1)
調整後営業利益 600 619 (3.1)

-IFRS基準

研究開発費

(単位:億円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 699 610 597


-2017年3月期には760億円を、2019年3月期には2016年3月期比6割アップの1,100億円を見込んでいる。ADASや自動運転などの重点分野を中心に技術開発を強化する。

研究開発体制

<米国>
-2016年4月、シリコンバレー事務所設立。自動運転およびコネクテッドカー領域における新製品開発を強化。

ソフトウェア開発強化
-日立グループのR&D力を活用。
-日立グループソフト会社で自動車部門を設置
-中国でソフトウェア開発人員約200人を配置 (クラリオンのIVI (In-Vehicle Infortainment)、カメラ開発など)

<中国>
-2016年度までに中国のエンジニア数を現状の2.5倍となる500人体制へ拡大する。中国での自動車生産が拡大する中、同社では18年度に中国の売上高を14年度比2倍以上へ高めるなど、中国ビジネスの強化を打ち出している。エンジニアの大幅増員によりコスト競争力の高い製品などの現地開発を加速させることで、日系自動車メーカーに加えて、中国で高いシェアを持つ欧米や現地メーカーからの受注を増やす。(2015年9月28日付日刊自動車新聞より)

産官学連携強化

主要連携先 連携内容
スタンフォード大学 自動運転
ミシガン大学 自動運転、車車間の無線通信に用いる通信ミドルウェア基盤 「C2X」
アーヘン工科大学 ADAS
慶応義塾大学 ADシステムアーキテクチャー
茨城大学 周辺認識技術

研究開発活動

-2019年3月期までに、現状に比べてエネルギー密度を2倍に高めたリチウムイオン電池を開発する。ハイブリッド車 (HV) やプラグインハイブリッド車 (PHV) への搭載を視野に入れる。HV向けの需要増に加えて、欧州では二酸化炭素 (CO2) 規制の強化によりPHVの投入が相次いでいる。HV及びPHVの性能向上に直結する電池の小型・大容量化を実現することで、日系をはじめ欧米メーカーの幅広い車種での採用に結びつける。(2015年9月15日付日刊自動車新聞より)

製品開発

スマートキー対応のポータブル呼気アルコール検知器の試作
-人間の呼気特有の飽和水蒸気を高感度で検知でき、かつ、小型化・省電力化を実現するセンサー技術を開発。ドアの解錠やエンジン始動が可能なスマートキーに対応させるとともに、検出した結果を車内ディスプレイに表示するシステムも構築した。

ホーン型アンテナ使用、前方検知用ミリ波レーダー
-ホーン型アンテナを用いた77GHz帯前方検知用ミリ波レーダーを開発した。ホーン型アンテナによりアンテナ基板を3~4割小型化しながら200メートル以上の検知性能を確保。ホーン型アンテナのミリ波レーダーは現在実用化されていない。自動運転用のシステムとして同社が強みとするステレオカメラと組み合わせ、巡航速度が高く検知距離が求められる欧州市場向けに提案していく。(2015年12月9日付日刊自動車新聞より)

情報認識と車両制御が同時処理できる電子制御ユニット
-情報認識と車両制御が同時処理できる自動運転向け電子制御ユニットを開発した。こうしたECUの開発は世界初で、量産レベルまでの作業が完了した。地図やセンサーなどの情報入力からシステム作動までの制御速度を高めることで、自動運転の早期実用化につなげる。(2015年11月12日付日刊自動車新聞より)

安全かつ実用的な速度で衝突を防止する基本技術
-2015年10月、同社と日立製作所、クラリオンの3社は、歩行者などの行動変化を予測し、リアルタイムで最適な速度パターンを高速演算することで、安全かつ実用的な速度で衝突を防止する基本技術を開発し、その有効性を実験車にて確認したと発表した。今後、検証を重ねることで技術開発を加速し、自動運転の実用化に貢献していく。(2015年10月14日付プレスリリースより)

電動車両向けインバーター
-2015年9月、同社と日立製作所は電力損失を従来比6割削減して電力容量を約2倍に拡大した電動車両向けインバーターを開発したと発表した。炭化ケイ素 (SiC) パワー半導体を複数並列で実装して高速スイッチングを可能としたもので、ハイブリッド車など電動車両の効率化につながる技術として提案していく。同技術は、日立製作所の半導体技術と、同社のインバーター技術を組み合わせて実現した。(2015年9月29日付日刊自動車新聞より)

セミアクティブサスペンションの電子制御技術
-セミアクティブサスペンションの新たな電子制御技術を開発したと発表した。車両の振動と傾きを高精度に解析するアルゴリズムを開発し、走行時の車両振動と、カーブを曲がる際などの車両の姿勢変化をそれぞれ10%抑制した。両立が難しかった乗り心地と走行安定性の双方の向上を実現する。(2015年4月24日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:億円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 725 774 751


-2016年3月期の設備投資額は、主に自動車機器の生産増強に投下された。
-2017年3月期の設備投資額は、主に自動車機器の生産増強に800億円を予定。

-当初事業計画 (2015年6月策定) では、2015年3月期から2017年3月期の累計で2,800億円の設備投資を計画していたが、2016年6月の見直し計画において2,400億円に縮小。

海外投資

<メキシコ>
-2015年9月、メキシコ現地法人2社を10月1日付で統合すると発表した。ケレタロ州とメキシコ州の製造会社2社を統合し新会社「Hitachi Automotive Systems Mexico S.A. de C.V.」を、10月1日付でケレタロ州に設立する。99%以上を出資する日立AMSと、米国のグループ会社が株主となる。日立AMSでは、ケレタロ州でサスペンションやブレーキなどを生産し、メキシコ州ではポンプ、バランサー、点火コイル、ピストン、アルミダイキャストなどを製造している。新会社は、統合前の日立オートモティブシステムズケレタロを存続会社としつつ、商号は日立オートモティブシステムズメヒコを商号に用いる。(2015年9月15日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-2015年6月、中国・重慶市にシャシーやエンジンマネジメント関連部品の製造子会社を設立すると発表した。2016年に設立し、18年の量産開始を目指す。中国での自動車関連の生産拠点は13カ所目で、重慶市では初めて。新工場の設立を通じて自動車需要が拡大する中国でのビジネスの拡大につなげる。新会社の資本金は3億元(約59億4千万円)で、日立AMSの中国統括会社である日立汽車系統(中国)が9割、日立(中国)が1割出資する。まずは18年にステアリング関連やプロペラシャフトなどの生産を開始する。その後、エンジン関連部品の生産も計画している。(2015年6月20日付日刊自動車新聞より)

<インド>
-2015年4月、インドで自動車用エンジン関連部品の新工場を建設し、竣工式を開催したと発表した。インド南部のチェンナイに開設した同工場は、インドで2拠点目となる生産工場。31億3千万ルピー (約50億円) 投資して建設した。グローバル標準生産ラインを導入し、まずは10月からバルブタイミングコントロールと点火コイルの生産を開始する。(2015年4月17日付日刊自動車新聞より)