(株) デンソー 2019年3月期の動向

業績

(IFRS基準、単位:百万円)
2019年
3月期
2018年
3月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 5,362,772 5,108,291 5.0 -全地域での車両生産の増加や拡販、および2017年11月に子会社化したデンソーテンの影響等。
営業利益 316,196 412,676 (23.4) -将来の成長領域への投資の加速や、前年度に発生した一過性の収益がなくなったことによる影響、当第4四半期連結会計期間での品質費用の引当等。
税引前利益 356,031 449,903 (20.9) -
親会社の所有者に帰属する当期利益 254,524 320,561 (20.6) -

 

事業提携

Airbiquity (米国)
-自動車のソフトウェアを遠隔地から無線で更新するOTA(Over the Air)システムの開発を加速させるため、トヨタ自動車、豊田通商と共同で米国Airbiquityに出資を行ったと発表した。デンソーの出資額は500万ドル。Airbiquity1997年設立、米国ワシントン州Seattleに本拠を置き、車載マルチメディアなどのソフトウェアやOTAシステムを開発する企業。デンソーはAirbiquityの持つ技術力や開発リソースを活用し、トヨタ、豊田通商と共同で、安全かつ信頼性の高いOTAシステムの開発を目指す。(2019312日付プレスリリースより)

quadric.io (米国)
-半導体IPの設計、開発を行うグループ会社のエヌエスアイテクス(東京都港区)が米スタートアップ企業のクアドリック社に出資したと発表。より広い範囲を認識して瞬時の状況に応じた判断が求められる高度な自動運転技術につながる高性能半導体「エッジプロセッシングユニット(EPU)」の開発に取り組む。エヌエスアイテクスは、従来型プロセッサーのCPUやGPUと特性が異なる新領域プロセッサー「データフロープロセッサー(DFP)」の開発と2020年代前半での実用化を目指している。エヌエスアイテクスは同社に出資することでDFPと今回開発する車載仕様のEPUを組み合わせ、より広い範囲を認識して状況に応じた判断が瞬時にできる自動運転向け高性能半導体の開発を加速する。(2019年2月8日付日刊自動車新聞より)

TomTom (オランダ)
-
自動運転車用ソフトウェアプラットフォーム開発でデンソーと提携すると発表した。TomTomの高精度地図データ(HD Map)と、カメラやレーダーなどデンソーの車載センサーを連携し、自動運転車用の位置確認、感知、経路計画機能を強化する。今回の提携により、デンソーはTomTomと共同開発したマッピングシステムを活用して、高速道路や主要都市道路で自動運転レベル2をターゲットとするシステムを提供する予定。(201914日付プレスリリースより)

Canatu (フィンランド)
-デンソーとライセンス契約を締結したと発表した。Canatuは3D形状に賦形や延伸可能なタッチ・センサー用フィルムやヒーターの開発・製造を行う企業。今回のライセンス契約により、Canatuは自動運転車向けのヒーター用などにCNBフィルムを製造する。自動車業界が自動運転に向かって進化し続けている中で、センサー用ヒーターの意義は増してきており、運転を制御するためのセンサーはどんな天候においても高い信頼性が要求されるとしている。(20181213日付プレスリリースより)

イーソル (日本)
-組み込みソフトウエア開発のイーソル(東京都中野区)に1億7千万円を出資したと発表した。出資比率は約2%。車載用電子プラットフォーム開発の重要なパートナーと位置づけ、技術顧問契約の締結や人材相互交流などで連携を強化する。イーソルは自動車分野では車載用ソフトウエアの標準規格化を進めるコンソーシアム「AUTOSAR」のプレミアムパートナーとして仕様策定に関わる。デンソーは、イーソルなどと2016年に合弁会社オーバス(東京都港区)を設立し、車載用基本ソフトウエアの開発を行ってきた。(2018年10月15日付日刊自動車新聞より)

Infineon Technologies (ドイツ)
-
デンソーは、自動運転など次世代の車両システムの実現に向けた技術開発で、ドイツの半導体企業Infineon Technologiesへの出資を発表した。今回、デンソーは数千万ユーロ規模のInfineonの株式を取得。自動運転や電動化、コネクティッドなど、次世代の車両に求められるシステムはこれまで以上に高度化、複雑化、大規模化することを踏まえ、デンソーは車載向け半導体を次世代の車両システムを実現するキーデバイスとして位置づけ、豊富な経験や知見を持つ半導体メーカーとの協業関係を深め、開発を強化するという。(20181126日付プレスリリースより)

ThinCI (米国)
-半導体開発の完全子会社が、米国のスタートアップ企業ThinCI (シンクアイ、カリフォルニア州) に出資したと発表した。2016年にデンソーアメリカから出資しており、追加出資となる。反射的なデータ処理を行う「データフロープロセッサー (DFP) 」の共同開発で連携を深め、自動運転車や先進運転支援システム車向けに20年代前半の実用化を目指す。17年9月にデンソーが設立した半導体IP (集積回路資産) の開発・設計会社エヌエスアイテクス (東京都港区) が、シンクアイに出資した。出資額はデンソーアメリカからの分を含め非公表。(2018年9月7日付日刊自動車新聞より)

JOLED (日本)
-有機ELディスプレーを開発するJOLEDに300億円を出資したと発表した。出資比率は19.7%。有機ELディスプレーは、現在のカーナビゲーションシステムなどに使われるものと比べて高画質で薄型といった特徴がある。HMI (ヒューマン・マシン・インターフェース) 製品に使うことで視認性や意匠性を高めることができ、車の安全性や利便性向上につながる。デンソーは車載用の開発を加速し、2021年ごろの製品化を目指す。(2018年8月24日付日刊自動車新聞より)



受注

-大型車向け新電動式冷凍システムを開発し、2019年夏に日野自動車が発売する予定の「プロフィアクールハイブリッド」向けに販売すると発表した。車のハイブリッドシステムの性能向上に合わせて冷凍機も改善した。プラグインハイブリッド車(PHV)で用いたコンプレッサーを冷凍機に応用し、効率的な冷凍サイクルを助ける。消費エネルギー効率は、従来より約20%改善(夏場・超低温条件)して冷凍能力を向上させた。車両のハイブリッド用バッテリー容量の増加により、エンジン停止時でも冷凍機の駆動が可能になる。ハイブリッドシステムのモーター出力向上と新電動式冷凍システムの効率が高まったことで、予冷時間を大型冷凍車で従来に対して約65%に短縮した。(2018年9月27日付日刊自動車新聞より)

 

買収

-パイオニアの連結子会社である東北パイオニアEG(山形県天童市)の全株式をデンソーが取得することで合意した。取得額は109億円で、2018年121日付。東北パイオニアEGは、ファクトリーオートメーション(FA)の各種設備を取りまとめる「システムインテグレーター」として幅広い産業向けに実績を持つ。FAを今後の成長分野に据えるデンソーは、そのノウハウを活用し、FAのシステム売りを目指す。東北パイオニアEGは、パイオニア完全子会社である東北パイオニアの完全子会社(2018911日付日刊自動車新聞より)

-米国子会社ASMO North Carolinaの事業統合が完了したと発表した。201941日でASMO North CarolinaDenso Manufacturing North Carolina (DMNC) と名称を変更し、デンソーの北米モーター事業グループ傘下となる。DMNCは従業員数約1,500名、ノースカロライナ州StatesvilleおよびGreenville、ミシガン州Battle Creek、テキサス州Ennisに拠点を有し、ブロワーモーター、パワーシートモーター、ワイパーシステム、パワーウィンドウモーター、電動パワーステアリングモーター、ピンチセンサーASSYを製造している。(201941日付プレスリリースより)

 

合弁事業

<中国>
-中国で次世代デジタルメーターの開発強化を目的に、ソフトウエア開発の武漢光庭信息技術(光庭、湖北省武漢市)と合弁会社を2018年12月に設立。自動車デジタルメーター用ソフトウエアの設計・開発を行い、将来的には中国でのデジタルメーター製造も検討する。中国ではメーターはアナログよりもデジタルが好まれる傾向があるという。合弁会社「電装光庭汽車電子」は、資本金1億元(約16億5千万円)の51%をデンソーが、49%を光庭が出資。(2018年9月29日付日刊自動車新聞より)

<国内>
-デンソーとNRIセキュアテクノロジーズ(東京都千代田区)は、車載電子製品のサイバーセキュリティ事業を行う合弁会社「NDIAS(エヌディアス)」を2018年12月に設立。出資比率は対等。自動運転車やコネクテッドカーを外部のハッキングから守る「セキュリティ診断」を事業の柱とする。NDIASは東京都内に資本金1億円で設立する。従業員はホワイトハッカー(ハッキングから防御する技術の専門家)を中心に10人でスタートし、売り上げが立ったあとに20人への増員を予定している。(2018年9月29日付日刊自動車新聞より)

 

新会社

-子会社のデンソーセールス、デンソーテンの子会社デンソーテン販売およびデンソーテンサービスの3社が、201941日に統合(合併)すると発表した。統合会社の新社名は株式会社デンソーソリューション。統合会社はデンソー、デンソーテンとの連携強化を図り、今後、市場の成長が期待される安心安全・コネクティッド関連等の新たな製品・サービスの提供と、顧客対応力のより一層の強化により、事業の拡大を目指すという。(201917日付プレスリリースより)

 

<韓国>
-韓国で自動車部品の生産や開発、販売を行うグループ会社3社を2018年7月2日付で経営統合すると発表した。統合後は「デンソーコリア」として、開発から製造、販売までを一貫して行い、経営スピードを向上させる。今回経営統合するのは、メーターやエンジン関係製品などを造る「デンソーコリアエレクトロニクス」「デンソーコリアオートモーティブ」、販売・開発機能を持つ「デンソーインターナショナルコリア」の3社。デンソーコリアエレクトロニクスを母体に吸収合併する。それぞれが持つ工場は残す。新会社は、昌原 (チャンウォン) 市に置く。資本金は約9億円で、従業員数は2198人。(2018年6月29日付日刊自動車新聞より)

 

2020年3月期の見通し

(IFRS基準、単位:百万円)
2020年3月期
(予測)
2019年3月期
(実績)
増減 (%)
売上収益 5,500,000 5,362,772 2.6
営業利益 380,000 316,196 20.2
税引前利益 429,000 356,031 20.5
親会社の所有者に帰属する当期利益 305,000 254,524 19.8

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

 

研究開発費

(単位:百万円)
2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
日本 438,879 395,053 344,459
北米 31,185 26,838 31,124
欧州 12,536 12,271 13,739
アジア 13,760 12,108 18,702
その他 1,057 1,108 1,199
合計 497,417 447,378 409,223

-2019年3月期の研究開発費において、日本セグメントが占める比率は約88%で研究開発活動の中心を担っている。

 

国内研究開発拠点

名称 所在地 主な事業内容
日本
先端技術研究所 愛知県日進市 次世代半導体、先端機能材料、ヒューマンマシンインターフェース、バイオ等の研究
Global R&D Tokyo 東京都港区 高度運転支援および自動運転、コネクテッド分野の研究開発
額田テストセンター 愛知県岡崎市 実車走行試験
岩手事業所 岩手県胆沢郡 半導体製品の研究・開発
東京事業所 東京都港区 車載半導体回路の開発・設計

-自動運転技術の試作開発、実証を行う新たな拠点を20206月に羽田空港跡地に開設すると発表した。開設時の従業員数は約200人となる見込み。デンソーは、20184月に東京都港区(品川駅近辺)に自動運転領域の研究開発オフィス「Global R&D Tokyo」を開設。羽田の新施設は、試作や車両整備を行う開発棟と実証用のテスト路を持ち、品川で企画・研究開発する自動運転技術を、羽田で試作開発・実証を行う、東京エリアで完結できる体制を構築する。(20181031日付 プレスリリースより)

  

製品開発

デジタルアウターミラー (電子ドアミラー) 用ECU
-ドライバーの視認性を向上させ、車両の安全性を高めるデジタルアウターミラー (電子ドアミラー) 用のECU (電子制御ユニット) を開発したと発表した。電子ドアミラーは、従来の光学ミラーに比べ、視界の拡大や悪天候時の視認性向上など、車両の安全性を向上させる。同社は従来から、カメラやレーダーなどによる車両周辺の環境認識技術の開発に注力してきた。これで培った画像処理技術を生かし、今回初めて電子ドアミラー用ECUを開発した。(2018年10月27日付日刊自動車新聞より) 

設備投資額

(単位:百万円)
2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
日本 258,192 217,682 215,740
北米 60,270 43,778 51,825
欧州 25,506 30,772 23,588
アジア 69,456 52,749 44,045
その他 3,379 2,187 2,158
合計 416,803 347,168 337,356

-2019年3月期は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替および新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進。

設備投資額 2020年3月期の見通し

(単位:百万円)
2020年3月期
(予測)
2019年3月期
(実績)
増減 (%)
日本 261,500 258,192 1.3
北米 60,000 60,270 (0.4)
欧州 25,000 25,506 (2.0)
アジア 100,000 69,456 44.0
その他 3,500 3,379 3.6
合計 450,000 416,803 8.0

-2020年3月期、生産拡大、次期型化および新製品切替対応への設備投資予定

 

国内投資

-グループ会社デンソー山形(山形県飯豊町)は、建設中の新工場を当初予定の2倍に拡張し、新たに車載用ECU(電子制御ユニット)の生産も始めると発表した。2020年までの投資額は、従来計画の5倍となる約49億円を予定する。従業員も、21年度に現在の2倍に近い410人に増やす。同社は、従来生産するブザー、方向指示器に加え、電動車の車両接近通報装置を製造する新工場を19年3月完成予定で建設すると発表。併せてマルコンデンソーからデンソー山形へ社名を変更している。今回はさらに、車載用ECUを生産品目に追加し、2期工事で別棟を建設すると発表した。延べ床面積は現在が5300平方メートル、1期工事完了で1万900平方メートル、2期工事完了で2万1300平方メートルとなる。(2018年11月9日付日刊自動車新聞より)

 

海外投資

<タイ>
-タイ現地法人Siam DENSO Manufacturingは、ASEAN市場向けの燃料噴射システム生産能力を増強するため、12.1億バーツを投じてChonburiAmata工場を拡張すると発表した。同工場は20194月に拡張を開始し、20202月に完了する見込みで、20209月から段階的に生産を開始する計画。拡張により、延床面積は62,000平方メートルから85,900平方メートルに増加する。(20181127日付プレスリリースより)

<米国>
-デンソーエアシステムズの米子会社Denso Air Systems Michiganは、3.5百万ドルを投資し、ケンタッキー州Hopkinsvilleにある工場を拡張すると発表した。工場建屋を48,000平方フィート増築して倍に拡大する。新たな生産設備を導入してカーエアコン用のアルミ配管、チューブ、ホースAssyの生産能力を増強し需要増に対応する。Hopkinsville工場は2011年に設立された。Denso Air Systemsは現在、MichiganKentuckyの両州に工場があり、308人を雇用している。(2018628日付 Kentucky Cabinet for Economic Development ニュースリリースより)