Schaeffler AG 2016年12月期の動向
業績 |
(単位:百万ユーロ) |
2016年 12月期 |
2015年 12月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 13,338 | 13,179 | 1.2 | 1) |
EBIT | 1,556 | 1,402 | 11.0 | 2) |
自動車部門 | ||||
売上高 | 10,333 | 9,977 | 3.6 | 3) |
EBIT | 1,383 | 1,135 | 21.9 | 4) |
自動車部門4事業の売上高 | ||||
エンジンシステム | 2,643 | 2,596 | 1.8 | 5) |
トランスミッションシステム | 4,349 | 4,211 | 3.3 | 6) |
シャシーシステム | 1,531 | 1,465 | 4.5 | 7) |
アフターマーケット | 1,810 | 1,705 | 6.2 | 8) |
要因
1) 全社売上高
-2016年12月期、全社売上高は前年比1.2%増の13,338百万ユーロ。為替の影響を除くと前年比3.4%増。産業機械部門は減収となったが、自動車部門の増収幅がそれを上回り、全体で前年比プラスとなった。
2) 全社EBIT
-2016年12月期、全社EBITは前年比11.0%増の1,556百万ユーロ。増益の主な要因は、EU反トラスト手続きに関する法的リスク対応費用が144百万ユーロに減少したこと (2015年は238百万ユーロ)、および自動車部門の売上総利益率の拡大。これらによる増益幅は、産業機械部門の減益と研究開発費の増加による影響で押し下げられた。
3) 自動車部門売上高
-2016年12月期の同部門の売上高は前年比3.6%増の10,333百万ユーロ。為替の影響を除くと、売上高は前年比6.0%増。世界の乗用車および小型商用車向け製品の増産、および自動車1台あたりに採用される同社製品の平均価格が上昇したことが主な増収要因。中華圏での大幅な売上増 (前年比で2桁の成長率) も貢献した。
4) 自動車部門EBIT
-2016年12月期の同部門のEBITは前年比21.9%増の1,383百万ユーロ。増益の主な要因は特定製品に関連した対応費用の減少、販売量の拡大、売上ミックスの向上が挙げられる。増益分の一部は為替の影響や研究開発費の増加により相殺された。
5) エンジンシステム事業
-2016年12月期の同事業の売上高は、前年比1.8%増の2,643百万ユーロ。電動カムシャフトフェーシングシステムの量産開始、アクセサリードライブ製品やサーマルマネジメントモジュールの売上増が寄与した。一方、可変バルブトトレインシステムの販売は低迷した。
6) トランスミッションシステム事業
-2016年12月期の同事業の売上高は、前年比3.3%増の4,349百万ユーロ。主な増収要因は、デュアルマスフライホイール、自動トランスミッション部品、マニュアルトランスミッション向けクラッチとギア部品の売上伸長。
7) シャシーシステム事業
-2016年12月期の同事業の売上高は、前年比4.5%増の1,531百万ユーロ。ホイールベアリングの販売増加、および電動アクティブロールコントロールシステムの量産開始が増収に寄与した。
8) アフターマーケット事業
-2016年12月期の同事業の売上高は、前年比6.2%増の1,810百万ユーロ。米州および欧州地域で販売が増加した。
買収
-2016年12月、Semikron Internationalより高性能電動モーターサプライヤーのCompact Dynamicsの株式51%を取得すると発表した。両社はまた、電動システムの開発や、代替駆動コンセプト向けに電子部品の統合を共同で行うことについても合意した。今回の買収により、Schaefflerは電動モーターおよびパワーエレクトロニクス部門の開発・生産強化を図る。Compact DynamicsはドイツのStarnbergに拠点を置き、高性能電動ドライブ製品に特化したサプライヤー。SchaefflerとCompact Dynamicsは長年にわたって協業しており、電気自動車のレースFIA Formula Eに出場したAudi ABT Schaefflerチームの電動ドライブも開発している。2018年中頃までに大半の株式を取得することで、Schaefflerグループ独自での電動モーターの開発および生産を可能にする。株式51%を取得する今回の取引は2017年第1四半期に完了する見込み。(2016年12月20日付プレスリリースより)
再編
-2016年12月、Magdeburgに拠点を置く子会社のSchaeffler MotorenelementeをWeber Groupに売却すると発表した。2016年12月21日に売却契約を締結。Schaeffler MotorenelementeはSchaefflerが間接的に100%保有する子会社で、シリンダーヘッドおよびその他ハウジング関連部品の加工を専門としている。2015年度の売上高は約42百万ユーロ。現在の従業員185名はすべて新会社へ移籍する。Weber Groupは乗用車、商用車およびレクリエーション車両のドライブコンポーネントを製造するサプライヤー。2017年第1四半期に取引が完了する見込み。(2016年12月22日付プレスリリースより)
事業動向
-2016年12月、ロシアのモスクワに新オフィスを開設したと発表した。鉄道業界および自動車業界へのビジネス強化を図る。Schaefflerは2014年にUlyanovskにロシア初の工場を開設した。(2016年12月7日付プレスリリースより)
受賞
-2016年に自動車業界を含む製造業の顧客から43件の品質賞を受賞したと発表した。北米では、日産からエンジンシステム部門最高品質賞を受賞、Schaefflerの米国Cheraw工場から日産向けに24百万個の部品を1つの欠陥品もなく供給してきた。 (2016年12月14日付プレスリリースより)
-2016年、電動アクティブロールコントロールシステムで独Innovation Awardを受賞。
2017年12月期の見通し
-2017年12月期の売上高は前年比4%~5%増になると予測 (為替の影響を除く)。2017年の世界自動車生産台数が前年比1.5%増となり、産業機械製品の世界生産も拡大するという見通しに基づくもの。
研究開発費 |
(単位:百万ユーロ) |
2016年12月期 | 2015年12月期 | 2014年12月期 | |
全社 | 751 | 720 | 622 |
売上に占める割合 (%) | 5.6 | 5.4 | 5.1 |
研究開発体制
-2016年12月期、研究開発要員の平均従業員数は7,121名。
研究開発拠点
-研究開発センターの拠点数:
- 欧州 (9)
- 米州 (5)
- 中華圏 (1)
- アジア太平洋 (2)
-2016年5月16日、中国の南西交通大学 (SWJTU) と共同研究機関の設立に向けて協力する契約に調印した。この共同研究機関は、トラクションドライブの国立研究所の中に設立され、 鉄道車両用アクスルベアリングの研究開発を行う。(2016年5月23日付プレスリリースより)
技術提携
-同社はデジタル化推進のための戦略的パートナーとしてIBMを選出した。膨大なデータ量を処理するためのデジタルプラットフォームを構築する目的。この提携により、2016年10月から最初のユーザー事例およびアプリケーションに向けた 「Schaeffler Cloud」 が利用可能となる。このパートナーシップの第1フェーズでは、風力エネルギー部門におけるメンテナンスの最適化、列車監視のデジタル化および最適化、コネクテッドカー、工作機械向けのIndustry 4.0、コネクテッド機器オペレーションセンターなどの分野に注力する。自動車分野では、部品の情報を検出・収集するためのセンサーやコントロールユニットを統合したベアリングやクラッチレリーズシステムが生産可能となる。IBMから関連技術、コンサルタントなどのサポートを受ける。(2016年10月4日付プレスリリースより)
-同社は日産自動車と共同でガソリンエンジン向けの電動可変バルブタイミングコントロール (ECP) 機構を開発したと発表した。電動制御による可変バルブタイミングコントロール機構を同社が手がけるのは初めて。従来の油圧制御では、エンジン回転数が低く潤滑油が低温状態の場合、作動することができなかった。新開発のECPは電動化することで、エンジン始動後も温度や油圧の状態に関わらず、バルブ開閉タイミングを可変できる。特にアイドリングストップシステム (ISS) を搭載した車両では、バルブタイミングをエンジン再始動前に最適制御できる。(2016年6月6日付日刊自動車新聞より)
研究開発活動
-同社とFriedrich-Alexander University of Erlangen-Nuremberg (FAU) は、共同研究プロジェクトの一環として、転がり軸受用の新しい回転試験設備を開発した。軸受に3000倍の重力加速度をかけることができ、高負荷条件下での試験が可能になるという。22平方メートルの試験場に設置された16トンの試験設備は、設計に3年を要した。この研究プロジェクトの結果は、自動車や機械の燃料・エネルギー消費量削減に向けて、既存の転がり軸受技術の向上に用いられる。また、同社はFAUの協力を得てシミュレーションに必要なソフトウェアも改良した。これにより、最適なコンピューターモデルが作成でき、試作品の製作前に転がり軸受の挙動をシミュレーションすることができるという。現在、最終試験および調整を行っており、第1回の測定は10月を予定している。(2016年3月10日付プレスリリースより)
-同社は2018年までに研究開発費全体に占める電動化技術関連の割合を現状の10%から25%以上へ拡大する。これは売上高の5%に相当する。同社は軸受やエンジン周辺部品、駆動系システムなど、機械系システムの効率改善に強みを持っている。一方で、さらなる燃費性能の向上を目的に世界的に電動化技術に対するニーズが高まっている。電動駆動システムやメカトロニクス技術の開発を加速し、機械系部品のノウハウと組み合わせることでビジネス拡大につなげる。(2016年2月10日付日刊自動車新聞より)
-2016年2月、ドイツ連邦教育・研究省から助成金を受ける 「OmniSteer」 プロジェクトへの参加を発表した。プロジェクト期間は3年間で、予算は3.4百万ユーロ。車輪をそれぞれ独立して操作可能な新しいタイプの電気駆動車は操縦性を向上させ、特に都市部での効率性を高めることができる。OmniSteerプロジェクトでは、2018年までに適切なコンセプトとプロトタイプの研究を行うことを目指している。前後のアクスルでさまざまなステアリング運動が可能なホイールサスペンションのほか、最適な車間距離・車線誘導システム (高度に統合された側方・横断誘導システム) も開発しており、これにより操作性を大幅に高めることが可能になる。状況に応じて、ステアリング方式を前輪、後輪、全輪の間でシームレスに切り替えることができるという。(2016年2月5日付プレスリリースより)
製品開発
CES 2017展示ハイライト
-CES 2017において次世代ネットワークモビリティソリューションを展示。Bio-Hybridは電動アシスト自転車と小型電気自動車の中間サイズの車両で、雨よけルーフ付き。4輪による高い走行安定性を備える。幅は0.85メートルで多くの国の自転車専用道路で使用することが可能。電動アシスト自転車と同様に推進力は電気モーターから得られ、ブレーキ時の回生エネルギーをバッテリーとして蓄える。また、未来のネットワーク化された自動車向けセンサー技術として、インテリジェントロールベアリングを展示。センサー機能を備えた軸受で、各車両の搭載部品に関する測定データ (トルク、回転数、力、温度など) を提供する機能を持つ。(2016年12月13日付プレスリリースより)
iTCトルクコンバーター
-同社はより小型で精巧な、制振性能のより向上した新世代トルクコンバーターiTCを開発した。トルコンのタービンとロックアップクラッチを一体化することで、必要な部品数を減らし、システム全体の軽量化を実現し、効率のより良い制振ダンパーを装着できるスペースを確保した。(2016年9月12日付け各種リリースより)
マイルドハイブリッドシステム 「Schaeffler System 48V」
-2016年、同社の48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した 「Schaeffler System 48V」 コンセプトカー (Audi TTベース) を紹介した。このマイルドハイブリッドシステムはコストパフォーマンスに優れ、高効率。リアアクスルに48Vモーターを搭載した電動駆動システムが使用されている。この電動アクスルはリチウムイオンバッテリーで作動。変圧器を通じ12V車載システムと接続されており、前輪駆動力を補完するしくみ。トルクコントロール機能を備え、回生ブレーキシステムによりエネルギー消費を削減する。また、モーターと電子部品を一体化したユニットにより省スペース、軽量化を実現した。
電動ホイールハブモーター 「E-Wheel」
Schaefflerは、電動ホイールハブモーター 「E-Wheel」 の新製品を開発した。駆動・減速・安全走行に必要な全ての部品がホイールリム内に組み込まれたもので、省スペースを実現。操作性能、走行性能、アクティブセーフティ技術の向上に貢献するという。
Gasoline Technology Car II の共同開発
-ContinentalおよびFordと 「Gasoline Technology Car II」 コンセプトカーの開発で協力した。同社が内燃エンジン駆動システムで蓄積したノウハウを生かしたもので、CO2排出量を最大で25%削減できるという。電子制御機構付き自動クラッチも搭載されている。
特許
-2016年、ドイツ特許商標庁での特許登録件数は2,334件。登録件数は2年連続で国内2位となった。
設備投資額 |
(単位:百万ユーロ) |
2016年12月期 | 2015年12月期 | 2014年12月期 | |
全社 | 1,146 | 1,025 | 857 |
海外投資
<タイ>
-2016年10月、タイのチョンブリ県において同社初となる生産工場を稼働させた。東南アジアおよびオセアニア地域の顧客向けに生産する。新工場への投資額は20百万ユーロ (778百万バーツ) で、工業団地 「Hemaraj Chonburi Industrial Estate II」 内に建設された。工場面積は55,000平方メートル。2月にパイロット生産を開始した。クラッチリリースシステム、クラッチプレッシャープレートおよびディスク、機械式・油圧式ベルトテンショナー、シンクロナイザーリングの4種類の自動車部品を生産する。各製品につき年間50~100万ユニットを生産する。現在の稼働率は60%で、需要に応じてさらなる拡張を見込んでいる。(2016年10月15日付Bankok Postより)
<中国>
-中国子会社Schaeffler (Nanjing) は、南京に建設した新工場「Hall 3」の開所式を行った。床面積は約30,000平方メートルで、従業員約1,000名が勤務可能。カムシャフトフェージングユニット、油圧タペット、チェーン、テンショナー、その他自動車エンジン用部品および自動車部品を生産する。生産された部品は中国自動車メーカーをはじめグローバル自動車メーカーに納入される予定。(2016年10月14日付プレスリリースより)
-2016年8月、中国の湖南省湘潭 (Xiangtan) 市に新たに生産拠点を設立すると発表した。中華圏における生産能力を拡大し、中国国内およびグローバル市場向けに供給する。第1フェーズでは、約20ヘクタールの敷地に第1工場を建設する。2018年末までに稼働を開始し、自動車部品や精密軸受を生産する予定。プロジェクトの第2フェーズでは、第2工場、物流センター、訓練施設を建設する。(2016年8月18日付プレスリリースより)
<米国>
-2016年5月、米国のオハイオ州Woosterとサウスカロライナ州Fort Millの2拠点を拡張すると発表した。両拠点に新たに生産・管理施設を建設する。投資総額は83.6百万ユーロ。Wooster拠点には総額60百万ドル (約52百万ユーロ) を投じて、約8,500平方メートルを拡張する。生産エリア、出荷棟、オフィスが増設され、従業員250名を増員する計画。同拠点の工場では、トルクコンバーターやトルクコンバーターロックアップクラッチなど、自動車用AT部品の設計・生産を行っている。2016年6月に拡張工事を開始し、完成は2017年の予定。一方のFort Mill拠点では36.5百万ドル (約31.6百万ユーロ) を投じて、工場の拡張とオフィスビルの建設を行う。短期的に従業員100名を増員する計画。同拠点では、転がり軸受や軸受部品、カムシャフトフェージングユニットを生産しているほか、地域本社としての役割も持つ。2017年秋に完成し、生産を開始する予定。(2016年5月13日付プレスリリースより)
<ハンガリー>
-2016年4月、ハンガリーDebrecenにある工場 「FAG Magyarorszag Ipari」 を拡張すると発表した。欧州における転がり軸受の需要拡大に対応する。拡張により、同工場の生産量を約50%引き上げ、従業員数も今後数年間で約500名増員する計画。投資額は約80百万ユーロ。2016年の夏後半に定礎式を行い、2017年下期に新たな生産施設が完成する予定。Debrecen工場は、Schaefflerがハンガリーに保有する2カ所の拠点のうちの1つで従業員約1,400名が勤務する。主に自動車用転がり軸受の生産を行っており、直径120mmまでのベアリングを欧州に供給している。(2016年4月18日付プレスリリースより)