TRW Automotive 2008年12月期の動向
ハイライト
業績 | (単位:百万ドル) |
2008年 12月期 |
2007年 12月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
総売上高 | 14,995 | 14,702 | 2.0 | -売上増は、為替差益や予想以上に薄利のモジュール製品の販売が伸びたことによる。 -この売上増は、主に北米と欧州での顧客の車両生産台数減少と値引きによって大きく相殺された。 |
総純利益 | (779) | 90 | - | -主に営業利益が前年度比1,092百万ドル減になったことによる。 |
セグメント別売上高 | ||||
シャシー システム |
8,736 | 7,997 | 9.2 | -売上高は増加。主に為替差益443百万ドル並びに販売増(価格転嫁含む)296百万ドルが寄与。 -売上増の主な要因は、北米およびアジアでのモジュール製品の販売伸長による。 |
乗員安全 システム |
4,422 | 4,714 | (6.2) | -売上は減少。主に売上数減少と値引き分494百万ドルの影響。 -この売上減は、為替差益の恩恵分202百万ドルにより一部相殺。 -販売減の主な要因は、小型車の生産台数減により北米および欧州で販売数が減少したことによる。 |
自動車部品 | 1,837 | 1,991 | (7.7) | -売上は減少。主に売上数の減少と値引き分238百万ドルの影響による。 -この売上減は、為替差益の恩恵分84百万ドルにより一部相殺。 -販売減の主な要因は、小型車の乗用車の生産台数減により北米および欧州で中核製品の販売数が減少したことによる。 |
2008年度の同社アニュアルレポートにて、監査法人は同社の継続企業としての存続能力に重要な疑義を抱かせる状況が存在すると述べた。
買収
-2008年1月、同社は子会社のTRW Integrated Chassis Systems LLCを通じ、製造用棚卸資産を含む、Delphiの北米ブレーキ部品加工・モジュール組立工場(Saginaw工場 ミシガン州)を約4,000万ドルで部分買収したと発表。工場買収にともない、同工場からGMに納入されているブレーキモジュールの供給をDelphiから引き継ぐことになる。(2008年1月2日付プレスリリースより)
-2008年6月、子会社TRW Airbag Systems GmbHがフランスのDavey Bickford SNCとの間で、Davey Bickfordのエアバッグ用イグナイターの加工設備および知的財産の買収について合意したと発表。同社は垂直統合体制を目指しており、中核をなすインフレーター事業でもその方針に沿いこの度の買収を実施。Davey Bickfordは、同社にインフレーターを供給してきた実績がある。(2008年6月11日付プレスリリースより)
受注
-2008年6月、Lanciaの新型「Delta」向けにインテリジェントセーフティシステムを供給すると発表。供給するのは、ESC(横滑り防止装置)、ビデオカメラベースの車線逸脱警報システム(Lane Departure Warning)、トルク制御機能を付加した電動パワーステアリング(EPS)など。このシステムを搭載するのは、Deltaが初。(2008年6月5日付プレスリリースより)
-2008年8月、中国・上海汽車(SAIC)の新型ミッドサイズセダン「Roewe 550」に一連の乗員安全部品を供給すると発表。今回「Roewe 550」に供給するのは、運転席・助手席・後部座席シートベルト/運転席・助手席エアバッグ/カーテンサイドエアバッグ/エアバッグ用電子制御ユニット/側面衝突センサー/ロールオーバーセンサーなど乗員安全システム(OSS)一式。また、第二世代ラック&ピ二オン シートベルトリトラクター「RP2」も供給。新型「Roewe 550」に採用されたシートベルトシステムは衝突時に乗員にかかる衝撃を緩和するロードリミッター付。(8月7日付プレスリリースより)
生産動向
2008年度生産立上げ - モデル別
Dodge Journey:
フロントブレーキキャリパー、サイドエアバッグ、シートベルトリトラクター、シャシーモジュール (リアブレーキキャリパーおよびステアリングギア)、ステアリングコラムコントロールモジュールおよび角度センサー、HVACコントローラーおよびアクチェーター
Volkswagen Jetta(中国):
ドライバーエアバッグおよびインフレーター、ブレーキローター、リアブレーキキャリパー、ステアリングホイール、シャシーモジュール
Citroen Berlingo、BerlingoVan、Peugeot Partner、Partner Van:
サイド/ドライバー/パッセンジャー/カーテンエアバッグ、ステアリングホイール、リアブレーキキャリパー、電動油圧パワーステアリングパワーパック、アクチュエーション
Renault Megane:
リアブレーキキャリパー、電動パーキングブレーキ、電動パーキングブレーキスイッチ、電動パワーステアリングメカニカルギア、ロウアーボールジョイント、アクチュエーション
Opel Insignia:
フロント/リアブレーキキャリパー、ESC、インナーボールジョイント、アウタータイロッド、アッパーボールジョイント、メインライトスイッチ、インパネスイッチ、電動サンルーフスイッチ、多機能コントローラー、ウィンドウリフター機能、ミラーアジャスター
Ford Ka:
ドライバー/カーテン/サイドエアバッグ、ステアリングホイール、アクチュエーション、EPSメカニカルギア
Volvo XC60 (欧州):
ドライバーエアバッグモジュール、ステアリングホイール、電動油圧パワーステアリングパワーパック、電動パーキングブレーキ、リアシートベルト
Audi A4 (アジア太平洋):
ドライバーエアバッグモジュールおよびステアリングホイール、アクチュエーション、フロントブレーキキャリパー、電動パーキングブレーキ、ロウアーボールジョイント、フロントアッパーコントロールアーム
Ford Fusion (北米):
ベルト駆動EPS、ニーエアバッグモジュール (ハイブリッドのみ)
リストラクチュアリング
工場閉鎖
-2008年度、4工場を統合もしくは閉鎖した。
-2009年第一四半期に、ジョージア州Warrentonの鋳造工場、アクチュエーションエンジニアリングセンター(スペイン)の閉鎖を計画。
人員削減
-2008年度、約10,000名の従業員を削減した。
展望
2009年度の業績見通しは以下のとおり。
-売上高: 109億~113億ドル
-リストラ費用: 約50百万ドル
-設備投資: 約350百万ドル
開発動向
研究開発費 | (単位:百万ドル) |
2008年12月期 | 2007年12月期 | 2006年12月期 | |
金額 | N.A | 893 | 825 |
-2008年度の研究開発費は、対売上比6.0%を占める。
製品開発
次世代統合型電子制御パネル(IECP)
-IECPは、車内装備にかかわる主要な制御機能を組み合わせたもので、先進的な車載ネットワークアーキテクチャーとテレマティクス機能を単一ユニットに統合した。同社は、2つの欧州仕様車用プラットフォーム向けにこの次世代IECPを供給する。(2008年6月4日付プレスリリースより)
自動緊急ブレーキ(AEB)システム
-自動緊急ブレーキ(AEB)システムは、事故の重大度を軽減しうるもので、ドライバー・乗員の危険軽減のための安全技術。環境センシングシステムとブレーキを組み合わせたもので、衝突が不可避の場合には、車を減速させて衝撃の影響度を軽減することができる。(2008年6月5日付プレスリリースより)
ニーエアバッグモジュール
-従来より軽量かつ小型のニーエアバッグモジュールを開発。前方から乗員を保護するエアバッグシステムに膝保護技術を採り入れたもので、衝突の際に、運転時インパネ下部に収められている下股部の保護が目的。ニーエアバッグは大腿骨・骨盤周辺を固定し、膝や下肢を保護する。フロントエアバッグとニーエアバッグが同時に作動することから、乗員のポジションをより適正に保つことにも役立つ。また、これにより、シートベルトのもつ衝撃軽減効果が最大限に発揮される。(2008年6月12日付プレスリリースより)
コンバーチブルカー向け頭部保護システム
-ドアトリムではなく、シートマウントにエアバッグを組み込むことで、コンバーチブルカーの特徴により適した頭部保護システムを実現。2008年前半から欧州主要自動車メーカーが採用予定。(2008年6月17日付プレスリリースより)
モジュール式マルチピストンポンプ使用のブレーキ制御装置(ESC)
-同社子会社Kelsey-Hayesは、このほど、モジュール式マルチピストンポンプ使用のエレクトロニックスタビリティコントロール(ESC)を開発。エンジンからのバキュームブーストとは独立してブレーキ圧を迅速に高める。(2008年6月24日付プレスリリースより)
アクティブ・バックル・リフタ (ABL)
-このABLは、特に高齢者や身体的な障害を持った乗員に配慮した機構で、カーブ走行や制動時など高負荷状態になる運転では、シートベルトのたるみを減少させ、乗員拘束性能を高める。ドアを開けるとABLが作動、開いたドア側のバックルが約100ミリ上昇し、乗員がバックルをつかみ易くなる。一方、高負荷となる運転状況では、バックルが最大60ミリ下がる。(2008年9月4日付プレスリリースより)
第2世代スリップコントロールブースト2(SCB 2)
-2008年10月、同社子会社Kelsey-Hayesは第2世代スリップコントロールブースト2(SCB 2)の開発に取り組んでいると発表。SCB 2は、ハイブリッドエンジンや直噴エンジンを搭載した車両向けのブレーキ技術で、従来のブースター、マスターシリンダー、バキュームポンプに代わる電子油圧制御ユニット(EHCU)を採用、25%の小型化・軽量化を実現。第1世代SCBは、2段階式回生システムのGMの「Chevrolet Tahoe」や「GMC Yukon」のハイブリッドモデルに採用されている。(2008年10月16日付プレスリリースより)
ラック駆動式電動パワーステアリング(EPS)システム
-このシステムは、フォードの2010年式「Fusion」および「Mercury Milan」に搭載されることが決定している。このラック駆動式EPSシステムシステムは、同社の従来型コラム駆動式EPSと比べ、より高いラック推力を必要とする車両に対しても、た燃費向上・CO2削減効果を持つ。(2008年11月19日付プレスリリースより)
設備投資
設備投資額 | (単位:百万ドル) |
2008年12月期 | 2007年12月期 | 2006年12月期 | |
シャシーシステム (Chassis Systems) |
239 | 279 | 273 |
乗員安全システム (Occupant Safety Systems) |
174 | 170 | 167 |
自動車部品 (Automotive Components) |
54 | 51 | 76 |
Corporate | 15 | 13 | 13 |
合計 | 482 | 513 | 529 |
-2009年度の設備投資は約350百万ドルもしくは売上の約3%を見込む。