GKN Automotive Limited 2018年12月期の動向

業績

(単位:百万ポンド)

2018年12月期 2017年12月期 増減率
(%)
要因
部門別売上高
自動車部門売上高 4,949 3,638 36.0 -
自動車部門営業利益 361 - N/A -
粉末冶金部門売上高 1,212 1,174 3.2 -
粉末冶金部門営業利益 143 - N/A -

Dana/Melrose IndustriesによるGKN買収交渉の経緯

-2018年3月29日、英投資会社Melrose Industriesによる買収提案について、議決権ベースで52.43%のGKNの株主がMelroseの提案を支持したと発表した。これを受け、GKNの取締役会は、同社の成功を確かなものにするため、Melroseと協力する意向を示した。一方、GKNドライブトレイン事業部との合併話を進めていたDanaは、GKNの過半数の株主による決定を受け入れると表明。合併話が撤回される見通しとなったことについて、DanaCEO(最高経営責任者)のJames Kamsickas氏は、「落胆している」とコメント。Danaは「GKNドライブライン事業部の最良のオーナー、経営者になれると今でも信じている」と語った。 (2018329日付プレスリリースより)

-Danaは、GKNドライブライン事業部との合併に関する投資家の関心の高さを受けて、合併条件を見直し、GKNに支払う現金を140百万ドル増やし、自社株買いの上限を2倍の200百万ドルに引き上げると発表した。これにより、GKNに支払われる現金は総額約177,000万ドルとなる。(2018326日付プレスリリースより)

-Danaは、GKNドライブライン事業部と合併して設立する新会社について、米ニューヨーク証券取引所への上場に加え、英ロンドン証券取引所への上場も目指すと発表した。また、Danaは、GKNの株主に現在の四半期の配当0.1ドルの支払いを継続する意向も確認した。ドライブシステムと電気駆動システムのグローバルリーダーを目指して設立される新会社は、グローバルな顧客の長期的な需要にも対応可能で、そのシナジー効果は235百万ドルとなる見込み。(2018319日付プレスリリースより)

-同社は、英投資会社Melrose Industriesが示した最終的な買収案を拒否すると発表した。Melroseは、GKN1株当たり81ペンスの現金とMelroseの新株1.69株に買収額を引き上げたが、GKNは過小評価と主張。世界トップクラスの航空宇宙事業や、ドライブトレイン事業部のDanaへの売却などが正しく反映されてないと批判した。(2018312日付プレスリリースより)

-Danaは、GKNのドライブライン事業部と合併し、新会社Danaを設立することでGKNと最終合意に達したと発表した。新会社は、ドライブラインシステムでグローバルリーダーを目指す。取引額は、GKNへのキャッシュでの支払い16億ドル、年金負債の引き継ぎが約10億ドル、GKNの株主に発行される新会社の株式133百万株(約35億ドルに相当)の計61億ドル。英国を拠点とする新会社の持ち株比率は、Dana52.75%、GKN47.25%。3年以内に年間235百万ドルのコストシナジーを生み出す見通しだという。 (201839日付プレスリリースより)

-同社は、GKN Drivelineの分割を巡り、Danaと協議中であると発表した。対等合併を中心に協議しているという。GKNは、2018112日に航空宇宙事業と自動車事業の分割を表明し、同227日に2019年半ばまでに分割を完了したい考えを示していた。一方、Danaも声明を発表し、GKNと協議中であることを認めた。交渉が決裂する可能性もあるとした上で、正式な合意に至るなど、事態がはっきりするまでコメントは差し控えるとした。 (201831日付プレスリリースより)

 

事業再編

-全事業のパフォーマンス向上を目的とする事業戦略を発表した。自動車と航空機産業におけるグローバルな知識を活用し、それぞれの市場でリーダーを目指す。主要製品に関する戦略は、「改善(等速ジョイントなど)・成長(航空機エンジンなど)・発展(eドライブや付加製造など)」の3本柱。事業改革に関する2カ年計画「Project Boost」に基づいて、全事業に達成目標を設定するほか、事業体制を見直して収益改善を図るとしている。 (2018112日付プレスリリースより)

事業提携

-グループ傘下のGKN Powder Metallurgyは、HPと戦略提携を締結してMetal Jet技術を展開し、VWなどの自動車メーカーやその他産業向けに金属部品を供給すると発表した。HP Metal Jetは既存の3Dプリント技術と比較して、約半分のコストで生産性を50倍に向上させるという。GKN Powder Metallurgy2020年に一般利用が可能になるまで自動車産業市場でHP Metal Jetを使用する唯一のパートナーとなる。同社は1日当たり1,300万枚の金属部品を焼結する基盤を製造し、インダストリー4.0促進を目指す。(2018910日付プレスリリースより)

最近の動向

-2017年末までのeDriveシステム受注額が20億ポンドを記録したと発表した。世界の主要自動車メーカーからの受注が牽引した。2022年には、eDrive製品の年間売上高が500百万ポンドに達する見込み。同社が受注した20億ポンドには、中国OEMメーカーが2018年に発売する複数のモデル向けマルチモードeトランスミッションシステムや、欧州の大手自動車メーカーが2019年以降に投入する新型車向けセミインテグレーテッド電動ドライブラインユニット、欧州のOEMメーカーが2019年から中国市場に投入する予定のグローバルモデル向け一体型電動ドライブラインシステムなどが含まれるという。(2018122日付プレスリリースより)

受注

-ドライブシャフトおよびCVJ技術がパリ・モーターショーに出展された新車の過半数に採用されたと発表した。同社の軽量サイドシャフトシステムは、スポーツカー、高級サルーンカー3モデル、SUV5モデルに搭載。また、前後のサイドシャフトは高性能ハッチバック車と新型高級グランドツアラーに採用されている。さらに新型電気自動車 (EV)には前後のサイドシャフトシステムが装備されているという。(2018102日付プレスリリースより)

-一体型同軸eAxleが英ロンドンEVカンパニー(LEVC)のTXモデルに採用されたと発表した。GKNの一体型同軸eAxleは、Volvoの「T8 Twin Engine」プラグインハイブリッドに初搭載され、2016年には「Automotive News PACE Innovation Award」を受賞している。新型タクシーは、英Coventry近くの工場で既に生産中で、201811日に施行されたロンドン交通局のより厳しい排出ガス規制にも適合しているという。(201825日付プレスリリースより)

研究開発施設

-自動車部門は米国、ドイツ、英国、中国、日本に5カ所のグローバル技術センターを保有。粉末冶金部門は米国、ドイツ、イタリアの3カ所にグローバル技術センターを保有している。

-2018年に粉末冶金部門は米国ミシガン州に先進エンジニアリングラボを開設した。

-中国合弁会社のShanghai GKN HUAYU Driveline Systems (SDS) が、等速ジョイント (CVJ) や4輪駆動 (AWD)、eドライブシステムに特化した新たなテクニカルセンターを中国の康橋鎮郊外に開設したと発表した。GKNは、中国に合弁会社を設立した初のTier-1サプライヤー。新センターは、SDSを設立してから30周年となる節目に開設されたという。300人以上を新規に雇用し、当初は中国の顧客向けに既存のeDriveやAWD、CVJ技術の現地化を進める。センター初の開発品は、中国の自動車メーカー向けにマルチモードeトランスミッションとなる見通し。また、顧客の需要増に対応するため、SDSは、中国浙江省平湖市に新たなeDrive工場を数カ月以内に開設する予定。(2018年10月23日付 プレスリリースより)

研究開発組織

-自動車部門は、2,200名の従業員が研究開発に従事している。SDSとの合弁会社ではさらに379名が研究開発に携わっている。

研究開発活動

-自動車部門は、2018年にグローバル自動車メーカーとの電動駆動システム受注獲得のため、パワートレインの研究開発に50百万ポンドの追加投資を行った。

-GKN Sinter Metalsは、5つの企業と2つの研究機関で構成される、自動車生産における技術プログラムへの参加を発表した。DaimlerBMBFの資金調達イニシアチブ「Photonic Process Chains」の枠組みの中で、プロジェクトパートナーは自動車生産における3D印刷プロセスの統合について調査を行った。ドイツAachenのフラウンホーファー研究所で開発された3D印刷技術のLaser Powder Bed FusionLPBF)に焦点を当て、LPBFプロセスチェーンを自動車の大量生産環境に統合してハイブリッドプロセスチェーンを作り、それによって単価を削減することに注力した。また、プロジェクトチームは自動化可能な後処理技術を開発し、GKN Powder Metallurgyが開発した新型のスケーラブル素材の分析も行った。(20181120日付プレスリリースより)

製品開発

共同開発のレーザーメタル3D印刷プロセス
-粉末冶金部門は、独自の添加剤製造用鋼粉末を使用したレーザーメタル3D印刷プロセスの開発支援のため、他社と提携契約を結んだ。

eTwinsterX同軸電動アクスルシステム
-新型の同軸電動アクスル「eTwinsterX」をデモカーに搭載し、GKN Drivelineの「Wintertest」で試験すると発表した。「eTwinsterX」は、2017年のIAAフランクフルト・モーターショーで初公開され、現在試作段階にある。電動モーターと高効率の2eトランスミッション、GKNの「Twinster」クラッチパック技術を使用したトルクベクタリングが特徴。(201831日付プレスリリースより)

技術開発用PHVデモカー
-技術開発用のプラグインハイブリッドSUVデモカー「GKN Technology Demonstrator 2018 (GTD18)」の試験を開始したと発表した。Mercedesの「AMG GLA 45」をベースとした新デモカーは、電動トルクベクタリングやプラグインハイブリッド、再設計された制御システムが特徴。フロントアクスルに電動トルクベクタリングAWD「Twinster」を、リアアクスルに「eTwinsterX」を搭載するなど、新デモカーには電動ドライブトレインやAWD、システムインテグレーション分野をリードする同社の最新技術が結集されているという。(2018年2月28日付プレスリリースより)

特許

-2018年12月末現在、1,305件の特許を取得、567件が申請中。

設備投資

-2018年12月期、自動車部門の設備投資は198百万ポンド、粉末冶金部門の設備投資は53百万ポンドだった。

海外投資

<イタリア>
-2018年、MelroseはイタリアBruneckの製造施設の生産能力拡大のため、自動車部門への追加投資を承認した。

<メキシコ>
-粉末冶金部門は、2019年にメキシコの新工場で操業開始予定。

<日本>

-GKNドライブラインジャパン (栃木県栃木市) は17日、愛知県常滑市に新工場を開設した。2019年度中に、名古屋事業所 (名古屋市港区) を新工場に移転。20年ごろには、電動駆動システムなどユニット製品を約30万台、歯車製品を約50万セット生産する。新たに開設した「名古屋事業所 常滑工場」は、日本・アジア向けの電動パワートレーン生産拠点。駆動システム「マルチモードeトランスミッション」やハイポイドギアといった駆動関連の部品を造り、三菱自動車、トヨタ自動車などに供給する。2階建てで敷地面積は4万6千平方メートル。名古屋事業所の移転が完了すれば従業員数は300人となる。(2018年10月18日付日刊自動車新聞より)