GKN Plc 2016年12月期の動向

業績

(単位:百万ポンド)

2016年12月期 2015年12月期 増減率
(%)
要因
全社
売上高 8,822 7,231 22.0 1)
営業利益 335 323 3.7 2)
部門別売上高
-ドライブライン部門 4,216 3,548 18.8 3)
-粉末冶金部門 1,032 906 13.9 4)

要因
1) 全社売上高
-2016年12月期の売上は前年比22.0%増の8,822百万ポンド。売上増の主な要因として企業買収効果と為替の好影響が挙げられる。それらの影響を除いても、ドライブライン部門と航空宇宙部門の好調な業績により前年比2%伸張した。

2)営業利益
-2016年12月期として営業利益は335百万ポンドで前年比3.7%増であった。1回限りのリストラ費用が利益を圧迫したが、為替の影響と企業買収によって一部相殺された。

3) ドライブライン部門
-2016年12月期のドライブライン部門の売上は前年比18.8%増の4,216百万ポンドで為替の好影響と本業の売上増により前年比で18.8%増加。欧州市場ではおける市場シェア拡大やFCA、Volvo、Daimlerへの好調な販売が売上増に寄与。北米においてもAWDが成長。一方で、中国地場メーカー向けの低調と小型車の流行が起因して中国での売上が減少した。
・製品別の売上比率は CVJシステム 61%、AWD システム 32%、トランスアクスル製品 6%、eDriveシステム 1%
・地域別売上比率は 欧州 37%、北米 33%、中国 12%、日本 7%、南米 3%、インド 2%
・納入先別売上比率は FCA 13%、VW Group 12%、Ford 11%、GM Group 10%、Renault Nissan 9%、Toyota Group 7%、Tata Group 5%、BMW Group 4%、Geely Group 4%、その他 25%

4) 粉末冶金部門
-2016年12月期の粉末冶金部門の売上は前年比13.9%増の1,032百万ポンド。本業での売上は横ばいであったが、中国での粉末冶金メーカーの過半数株式取得と為替が売上増に寄与。中国、欧州、ブラジルの事業は好調であった一方、北米では同社の大口顧客からの引き合いが弱く、売上高は減少。
・納入先別売上比率は Ford 9%、GM Group 8%、Shaeffler 5%、FCA 4%、Hilite 4%、ZF Group 4%、Linamar 3%、BorgWarner 3%、Bosch 2%、その他 58%

受注

-ドライブライン部門では2016年にサイドシャフトとAWD製品の新規及び継続案件で10億ポンドを受注。

以下は主な受注
-中国市場向けBMW X1のプラグインハイブリッド(PHV)車用のeアクスル技術供給を発表。アプリケーション開発は上海で行うが、システムはイタリアのBruneck工場から供給される。
(2016年11月28日付けプレスリリースより)

-電動アクスル「eAxle」の累計生産数が300,000ユニットに達したと発表。eAWDシステムを搭載したハイブリッド車の好調な世界販売により、同アクスルへの需要も増加している。eAxleの生産は、GKNのイタリアおよび日本の工場で行われている。主な搭載モデルは、Volvo 「XC90」および「S90」、三菱 「Outlander」、BMW 「2 Series Active Tourer」、BMW 「i8」、Porsche 「918 Spyder」。(2016年6月27日付プレスリリースより)

-CセグメントカーをプラグインハイブリッドAWDにできる新型電動アクスルドライブ「eAxle」を発表。すでにイタリアのBruneck工場で生産を行っており、BMW 「2 Series Active Tourer PHEV」に採用される予定。この「eAxle」はコンパクトカー向けに開発されたもの。変速比は12.5:1で、モーター速度を2段階で減速する。最大でトルク2,000 Nm、出力70 kWを追加することができるという。ユニット全体の重量は20.2kg。サイズは長さ457mm、幅229mm、高さ259mmとなっている。(2016年5月24日付プレスリリースより)

-後輪駆動車のプラットフォームを4kg以上軽量化できる新型の軽量等速ジョイントシステム「VL3」が、BMWの新型「7 Series」に採用されたと発表。この「VL3」は、パッケージサイズを変えずに、トルク容量を最大27%アップさせている。サイズは4種類。トルク容量は従来のままで、パッケージサイズを約10%減らすこともできるという。(2016年1月27日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万ポンド)

2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
全体 186 157 161



研究開発施設

-ドライブライン部門は4つのグローバル技術センターと10の中核研究拠点を保有。

-2016年に上海に最先端の研究開発施設を完成させた。

-粉末冶金部門はドイツRadevormwaldに中央研究開発センター、米国ミシガン州Auburn Hillsとニュージャージー州Cinnaminsonに地域開発拠点を保有。

研究開発組織

-2020年までに、電気駆動システム(eドライブ)の技術者を現状の5割増となる100人規模に増員すると発表。このうち3割程度を日本に常駐させ、日本を電動技術開発の主力拠点の一つと位置づける。プラグインハイブリッド車(PHV)など電動車の普及が見込まれることから、世界的に駆動システムの電動化に対するニーズが高まっている。駆動系システムの受注は、主力の等速ジョイント(CVJ)の拡販にもつながるため、需要拡大が見込めるeドライブの開発に注力していく。同社では、買収した旧栃木富士産業が世界で初めて電動式の四輪駆動システム「e-4WD」を開発。日産やマツダに供給した。eトランスミッションも日本で開発するなど、eドライブの開発では日本が重要な役割を担っている。(2016年3月22日付日刊自動車新聞より)

製品開発

スマート電磁気AWDカップリング (Intelligent electromagnetic AWD coupling)
-同社は、SUVやクロスオーバー車向けに電磁式四輪駆動 (AWD) カップリングを開発している。低温でグリップ力が小さい路上でも反応速度や制御性を向上させることができる。この第4世代の電子制御式コントロールデバイス (EMCD) は、すべりの1分間の回転数が3回に達すると、100ミリ秒未満で目標トルクの90%を出力できるという。この製品は2018年に生産開始となる予定。(2016年10月25日付プレスリリースより)

Cセグメント車用eAxle (eAxle for C-segmen vehicles)
-Porsche 「918 Spyder」やBMW 「i8」などのスポーツカー向けに開発したハイブリッド技術をコンパクトカーにも適用する。Cセグメントカー向けの「eAxle」モジュールにより、性能向上と50%超のCO2低減を実現するプラグインハイブリッドシステムを提供することができるという。新型の「eAxle」は、「918 Spyder」向けに開発されたシステムをベースとしている。標準的なCセグメントのプラグインハイブリッドカーのエンジン出力は約100kW。「eAxle」によりさらに65kWが加わる。また、0-100km/h加速を数秒間短縮できるほか、実用的な航続距離を提供し、CO2の排出を1kmあたり50g未満にすることが可能になる。(2016年3月14日付プレスリリースより)

新開発トルクベクタリング電動システム
-新たに開発したトルクベクタリング電動システムに関して、現在複数の自動車メーカーがテストを行っていると発表し、新型ハイブリッドシステムのラインナップを構成するこの「eTwinster」をスウェーデン北部のArjeplogにある冬季試験場で公開した。「eTwinster」は、プラグインハイブリッドモジュールで、電動四輪駆動やトルクベクタリング機能を備える車両プラットフォームをよりシンプルにすることができるという。(2016年2月18日付プレスリリースより) 

設備投資額

(単位:百万ポンド)

2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
合計 494 411 403



英国以外の投資

<米国>
-ノースカロライナ州Alamance、Catawba、Lee、Personにある生産拠点を拡張するため、今後5年間で179百万ドルを投資すると発表。この拡張により、302人を増員する予定。北米OEM向けのAWDおよびeDriveビジネスの成長に対応するもの。北米におけるAWDシステムの年間売上を2015年の約240万ユニットから2020年には300万ユニット以上に増加させること目指す。(2016年12月20日付プレスリリースより)

-シンターメタル部門は、米国インディアナ州のSalem工場を拡張すると発表。投資額は6.9百万ドル超。既存の220,000平方フィートの工場で、設備のアップグレードと改修を行う。新たな設備により、自動車用8速および10速トランスミッションの生産能力を拡大する計画。第1フェーズとして2016年中に新設備を導入し、2017年に第2フェーズを開始する。同工場では、エンジンおよびトランスミッション部品を生産し、Ford、GM、FCA、Allison Transmissions、トヨタ、ホンダ、マツダに納入している。(2016年8月17日付Indiana Economic Developmentの発表より)

<中国>
-中国合弁会社のShanghai GKN HUAYU Driveline Systems (SDS) が上海の2拠点において四輪駆動 (AWD) システムの生産ラインを5本増設したと発表。新ラインは、パワートランスファーユニット (PTU) およびリアドライブモジュール (RDM) の製造に特化し、これにより同社の中国におけるAWDシステムの生産能力は倍増するとみられる。GKNは2015年、Jaguar Land Rover 「Range Rover Evoque」や「Land Rover Discovery Sport」などのモデル向けに、PTUやRDMの現地生産を立ち上げた。さらに、今後2年間でさまざまなメーカー向けに多数の現地生産プロジェクトを開始する予定。(2016年7月27日付プレスリリースより)

-粉末冶金部門傘下のHoeganaesは、中国でアジア市場向けに自動車用途の高品質金属粉末の生産を開始すると発表。中国の提携先であるBazhou Hongsheng Industrialとの間で、河北省覇州 (Bazhou) にある生産工場の過半数株式をGKN Powder Metallurgyが取得することで合意している。2009年に稼働を開始した24,600平方メートルの同工場では、今後生産ラインを増やしてアジアの顧客向けにGKN Hoeganaesの自動車・産業機器用粉末を生産する。(2016年4月25日付プレスリリースより)

<ポーランド>
-ポーランドのOlesnicaに建設した新工場が生産を開始したと発表。新工場の面積は14,280平方メートルで、Olesnicaにおける16.5百万ユーロの投資プロジェクトの第1段階にあたる。これにより、ポーランドにおけるGKNの拠点の面積が2倍になるという。新工場は、同地域でのサイドシャフトやプロペラシャフトの需要拡大に対応し、Mercedes-Benz、Volkswagen Group、FCA、GM、Volvoなどのプラットフォーム向けに納入する。フル稼働時の年産能力は、サイドシャフト1,000万ユニット超、プロペラシャフト100万ユニット超となる見込み。新工場は、等速ジョイントを生産する既存工場に近接しており、新たなエンジニアリング施設では、約50名のエンジニアが試験・応用エンジニアリングを通じて顧客プログラムをサポートする。GKNは現在、ポーランドで従業員約1,000名を雇用している。新工場の完成により、この3~4年の間に1,400名まで増員される見込み。また、同拠点における今後の計画には、鍛造工場の建設も含まれている。(2016年7月4日付プレスリリースより)

<メキシコ>
-メキシコのグアナフアト州Villagranに開設した新工場が生産を開始したと発表。投資額は17.5百万ドル。メキシコの自動車市場のほか、国内外でグローバルに需要が拡大する四輪駆動車向けに供給する。新工場の面積は12,000平方メートルで、GKN DrivelineにとってはVillagranで2番目の工場となる。新型の高性能プロペラシャフト「GKN VLi」を生産し、Audi、BMW、FCA、Ford、ホンダ、マツダ、日産、Volkswagenなどに納入する。フル稼働時には、年間100万ユニット超のプロペラシャフトを生産し、従業員380名を雇用する計画。なお、同工場は等速ジョイントの加工設備やプロペラシャフト用塗装ラインも備える。(2016年5月10日付プレスリリースより)