GKN Plc 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万ポンド)
2015年12月期 2014年12月期 増減率
(%)
要因
全社
売上高 7,231 6,982 3.6 1)
営業利益 323 289 11.8 -
部門別売上高
-ドライブライン部門 3,548 3,444 3.0 2)
-粉末冶金部門 906 916 (1.1) 3)


要因
1) 全社売上高
-2015年12月期の本業の売上は前年比3.6%増の7,231百万ポンド。ドライブライン部門と航空宇宙部門の買収と成長が売上増につながった。一方、為替変動とGKNランドシステムの売上減がマイナス要因となった。

2) ドライブライン部門
-2015年12月期のドライブライン部門の売上は前年比3.0%増の3,548百万ポンド。欧州と北米市場が好調だったが、為替換算による売上減で相殺された。

3) 粉末冶金部門
-2015年12月期の粉末冶金部門の売上は前年比1.1%減の906百万ポンド。北米、中国、欧州は好調だったが、ブラジル市場の低調と為替の影響で売上減となった。

合弁事業

-2015年7月、GKN粉末冶金事業部が中国河北省覇州市 (Bazhou, Hebei) の覇州市宏昇実業有限公司 [Hongsheng Industrial Co., Ltd.] と鉄粉を生産する合弁会社を設立することで合意したと発表した。新会社は世界規模の金属粉末メーカーとなる。(2015年7月23日付けプレスリリースよ り)

-2015年4月、同社と華域汽車系統の中国合弁会社Shanghai GKN HUAYU Driveline Systems (SDS) は、今後5年間で850百万ドルを投資すると発表した。ドライブラインシステム、四輪駆動システム、ハイブリッドシステムなどの需要増加に対応する。同合弁会社の新たなテクニカルセンターは上海に建設中で、2015年12月に完成予定。面積は22,000平方メートル。同センターは、車両への統合、ソフトウェア開発、車両試験などを含むドライブラインシステム一式の研究・開発を行う。なお、GKNは中国において、上海、重慶、武漢、長春、儀徴にある工場の生産能力を大幅に引き上げるほか、成都に新たに組立工場を建設する計画。さらに、GKN Powder Metallurgy (粉末冶金部門) も年内に丹陽に新工場を開設し、生産能力を拡大するとしている。(2015年4月19日付プレスリリースより)

再編

<米国>
-2015年6月、米国ミシガン州のAuburn Hillsにおいて、新たに建設した米州地域本社の開所式を開催したと発表した。GKN DrivelineおよびGKN Sinter Metalsの地域本社となるほか、GKN Land SystemsやNorth American Servicesの従業員も勤務する。従業員数は350名。11.2エーカーの敷地に建設された新本社の面積は16.8万平方フィートとなる。最新の試 験・評価設備を備えるほか、ドライブライン製品や焼結金属製品のエンジニアリング設計のためのエリアを追加しており、エンジニアリング・試験用のスペース を20%拡大した。(2015年6月25日付プレスリリースより)

事業動向

-GKNドライブラインジャパン (栃木市) は、2017年にリアのデフロックの生産台数を2014年比9割増の110万台へ拡大する。第5世代製品をトヨタ自動車から初受注し、今年から新興国向け戦略車 「IMV」 シリーズへ供給を開始。小型軽量化と信頼性の両立が新規受注につながった。さらに日産自動車のピックアップトラック 「ナバラ」 でも新規受注した。現在供給するフォードモーターなどに加えて、新たにIMVシリーズなどを追加することで、デフロック市場でのシェア拡大を加速する。(2015年11月10日付日刊自動車新聞より)

受注

-トヨタ自動車 「IMV」 シリーズ、日産 「ナバラ」、フォードモーター向けにリアデフロックの供給を開始した。(2015年11月10日付日刊自動車新聞より)

-同社はFord 「Focus RS」 向けに新型の 「Twinster」 トルクベクタリング四輪駆動 (AWD) システムを開発したと発表した。「Focus RS」 は、パワートランスファーユニット (PTU) を搭載したAWDシステムと、「Twinster」 ツインクラッチシステムを採用したリアドライブモジュール (RDM) を搭載している。GKNの 「Twinster」 システムは、片方または両方のホイールにトルクを個別に配分でき、車両の速度範囲全体にわたってトルクベク タリング機能を提供することができる。(2015年9月15日付プレスリリースより)

-グローバルプラットフォームを採用したプラグインハイブリッド (PHV) 車の組立をより簡素化する新型 「eAxle」 システムを開発した。このシステムは、Volvoの新型プラグインハイブリッドSUV 「XC90 T8 Twin Engine」 に搭載される予定。GKNはまた、「XC90」 向けの前輪駆動および前輪駆動ドライブラインの開発に関してVolvo Carsと提携した。(2015年9月14日付プレスリリースより)

-2015年6月、同社はVolvo Carsと提携し、Volvoの新型 「XC90 」向けの前輪駆動および四輪駆動 (AWD) ドライブラインを開発したと発表した。新開発のAWDドライブラインには、軽量化および設置スペースの削減を実現した新型のリアサイドシャフト用ボールプ ランジングジョイント 「VLX」 が採用された。また、「XC90」 にはGKNの新しい固定ジョイント 「Countertrack SX8」 とプロペラシャフト 「VL」 も搭載されている。さらに、GKNはパワートランスファーユニット (PTU) およびリアドライブラインモジュールも納入しており、あわせて使用すると前輪駆動のベース車両を四輪駆動へ切り替えられるという。(2015年6月11日付プレスリリースより)

-2015年4月、ティア1サプライヤーとして初めて中国で四輪駆動 (AWD) システム一式の設計・開発・生産を行ったと発表した。上海汽車 (SAIC) のコンパクトSUV 「MG GS」 向けにAWDシステム一式と前輪駆動システムを納入する。オンデマンド式AWDシステムは、GKNと華域汽車系統の合弁会社である上海納鉄福伝動系統 (SDS) が開発し、「MG GS」 に統合。同モデルのプラットフォームは、トランスミッションからホイールまでGKNのドライブライン一式を採用している。フロントおよびリアサイドシャフト、プロペラシャフト、パワートランスファーユニット、リアドライブモジュールは現地生産で対応。電磁制御装置やハイポイドギアは日本から調達している。上海において、「MG」 向けにシステム完成品をジャストインタイム方式で組み立て、供給している。(2015年4月23日付プレスリリースより)

-2015年4月、自動車メーカー向けに四輪駆動 (AWD) システム一式を納入した初のティア1サプライヤーとなったと発表した。FCA USが発表した新型AWDグローバルプラットフォーム向けに、インテリジェントAWDシステムの設計・開発を行い、生産を開始した。このプラットフォームはFiat 「500X」 およびJeep 「Renegade」 に採用されている。FCAのプラットフォームは、トランスミッションからホイールまで、AWD、分離型AWDシステム 「AWD Disconnect」、前輪駆動システムなどさまざまなバージョンのドライブライン一式をGKNから調達している。プロペラシャフトやリアディファレンシャルモジュール、サイドシャフトなどこれらのシステムの部品はすべてGKNが設計し、グローバルの拠点で生産を行っているという。(2015年4月14日付プレスリリースより)

-同社は、Porscheのプラグインハイブリッド・スーパーカー 「918 Spyder」 向けアクスル 「eAxle」 を開発する技術パートナーに認定されたと発表した。このモジュールは、最大出力が95kW、固定ギア比による前輪への最大トルクは1500Nmとなる。特別に設計された小型デフが常時最適なトルク配分を実現し、引きずり損失を最小限にするとともに最大の効率性を提供する。時速265kmを超えるとクラッチが電気モーターを切り離し、電気モーターのオーバースピンを防ぐという。(2015年2月11日付プレスリリースより)

受賞

-GKN Driveline Brazilは、トヨタより南米における品質賞 「South America Supplier Quality Excellence Award」 を2年連続で受賞したと発表した。GKN Driveline Brazilは、2000年より南米でトヨタへの納入を行っている。現在、ブラジルでは 「Etios」、アルゼンチンでは 「Hilux」 向けにサイドシャフトを納入している。(2015年5月20日付プレスリリースより)

-同社ドライブライン部門が、EV用2速ギアボックスで2015年 「Automotive News PACE Award」 を受賞。(2015年4月20日付各種リリースより)

研究開発費

-2015年12月期の研究開発費は157百万ポンド。中でも航空宇宙部門への投資が目立った。

研究開発施設

-2015年4月、英国のWarwickshireに位置するMIRA Technology Parkに新たにエンジニアリングセンターを開設したと発表した。この 「GKN Driveline Vehicle Engineering Centre」 では、ドライブラインシステムの試験および開発を行う。試作品の取り付けや計装、試験車両の公道・軌道での評価などが行える総合施設となる。面積は2,000平方フィートで、顧客のモデル開発をサポートするほか、GKN独自のドライブラインおよびトルクシステムの開発も行う。(2015年4月28日付プレスリリースより)

-ドライブライン部門の研究開発施設には以下が含まれる。

  • 完成車試験場 (栃木)
  • テスト施設 (ドイツLohmar、栃木、イタリアBruneck、米国ミシガン州Auburn Hills)

-粉末冶金部門はドイツRadevormwaldに中央研究開発センターを有する。同センターは米国ミシガン州Auburn Hillsとニュージャージー州Cinnaminsonの2つの施設のサポートを受けている。

研究開発活動

-同社ドライブライン部門は、「Concept_e」 プロジェクトの一環として、新たな電気駆動システムを開発したと発表した。このプロジェクトには英政府が16百万ポンドを援助しており、新型のハイブリッドパワートレインおよび電動パワートレインシステムの開発を目指していた。2年間におよぶ共同研究・開発 プロジェクトでは、マイルド・ハイブリッド式電気自動車 (MHEV)、プラグイン・ハイブリッド電気自動車 (PHEV)、フルバッテリー式電気自動車 (BEV) 向けに3種類の試作品の設計および開発が行われた。これらのシステムは、低炭素車の展示会 「LCV2015」 において、Jaguar Land Roverとプロジェクトパートナーにより公開されている。GKNは、1速と2速の2種類の 「eAxle」 を設計・開発し、BEV用パワートレインに統合した。2つの 「eAxle」 は、主要なハイブリッド車向けに量産されているGKNのeDriveシステムをベースとしている。(2015年9月9日付プレ スリリースより)

-同社ドライブライン部門は、スウェーデンArjeplogにある同社の冬季試験場において、新型のHV用四輪駆動 (AWD) システム、分離型AWDシステム 「AWD Disconnect」、トルクベクタリングなどの性能試験を行ったと発表した。GKNのeAxleを搭載したプラグインハイブリッド車は、パフォーマンスを高めながら30~50%の燃費向上を実現するという。同社はすでに、三菱 「Outlander」、Porsche 「918 Spyder」、BMW 「i8」 などのモデル向けにeAWDを受注している。(2015年3月10日付プレスリリースより)

製品開発

等速ジョイント
-同社ドライブライン部門は、後輪駆動車のプラットフォームを4kg以上軽量化できる軽量等速ジョイント (CVJ) システムの新製品 「VL3」 を開発した。この 「VL3」 は、パッケージサイズを変えずにトルク容量を最大27%増やしている。サイズは4種類。従来製品のトルク容量は2,600Nmだったが、「VL3-33ISM」 では3,300Nmまで増加した。また、パッケージサイズを約7%縮小しても性能を維持することができる。サイドシャフトシステムは、車1台あたり最大4.2kgの軽量化を実現するという。「VL3」 はすでに量産が開始されており、2016年に発売される車両に搭載される予定。(2015年11月9日付プレスリリースより)

設備投資額

(単位:百万ポンド)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
合計 411 403 349



海外投資

<米国>
-同社ドライブライン部門は、米国ノースカロライナ州Catawba郡にあるNewton工場において、大規模な拡張工事が完了したと発表した。このGKN Driveline Newtonへの投資額は100百万ドル。生産スペースを約25%拡張し、今後のドライブラインシステムの生産能力拡大に対応する。GKN Driveline Newtonは主に、ファイナルドライブユニット、パワートランスファーユニット、クラッチなどの四輪駆動 (AWD) ドライブラインシステムを生産している。なお、GKNのAWDシステムは、Chrysler 「Jeep Renegade」、Land Rover 「Range Rover Evoque」、Volvoの新型「XC90」などに搭載されている。(2015年8月28日付プレスリリースより)

<ポーランド>
-同社ドライブライン部門は、ポーランド拠点の大規模拡張計画の一環で、新工場を建設すると発表した。第1フェーズでの投資額は16.5百万ユーロ。今後4年間で新たに従業員400名を雇用する計画。工場面積は14,280平方メートルで、2016年4月までに完成する予定。Volkswagen、Porsche、Audi、 Volvo、Jaguar Land Rover、Mercedes-Benz、FCAなど大手自動車メーカーに納入する。第1フェーズでのフル稼働時の年産能力はプロペラシャフト100万ユニットを超える見込み。新工場は、ポーランド南西のOlesnicaにある既存のCVJ (等速ジョイント) 工場に隣接して建設される予定。新工場の建設により、同拠点の面積が1.5倍超になるほか、ポーランドにおけるCVJの生産能力も年間1,000万ユニット以上に引き上げられる見込み。(2015年7月29日付プレスリリースより)

<タイ>
-同社ドライブライン部門は、タイに四輪駆動 (AWD) システム工場を開設したと発表した。Rayongに開設した新工場では、フロントおよびリア用のファイナルドライブユニット (FDU) やトランスアクスル向けの電子ディファレンシャルロック (EDL) など主要なAWDドライブラインシステムを生産する。トヨタ、日産、三菱など多数の大手自動車メーカーに納入する予定。Hemaraj Eastern Seaboard工業団地内に建設された新工場の面積は4,800平方メートルで、ドライブシャフトや等速ジョイント (CVJ) を生産するGKN Drivelineの既存工場のほど近くに位置している。(2015年7月16日付プレスリリースより)

<トルコ>
-同社ドライブライン部門は、トルコのEskisehir工場の生産能力を拡張したと発表した。同国に拠点を持つ自動車メーカーからの需要増加に対応する。新たな生産施設により、工場面積はこれまでの2倍超の6,300平方メートル、ドライブシャフトの年産能力は180万ユニットとなった。今回の4.5百万ユーロの投資計画の一環として、GKN Drivelineは敷地面積9.5エーカーの同拠点に組立ライン1本を追加したほか、倉庫設備の拡張を行っている。現在130名の従業員を雇用しており、今後5年間で70名を増員する計画。現在、Ford、Renault、ホンダ、Fiat、トヨタなど、さまざまなグローバル自動車メーカー向けに製品を納入している。(2015年5月29日付プレスリリースより)

<中国>
-同社は自動車メーカーなど顧客基盤の拡大に向けて、中国の重慶工場の生産能力を約3倍に引き上げたと発表した。上海納鉄福伝動系統 (SDS) と長安汽車グループの合弁会社である納鉄福伝動軸 (重慶) 有限公司 (GDC) が48百万ドル (300百万元) の投資計画の一環として、工場を129,000平方フィート拡張した。これにより工場面積は258,000平方フィートとなり、サイドシャフトの生産能力は年間150万ユニット増え、年間210万ユニットとなる。GDCの従業員数は310名、2017年までに400名超まで増員する計画。この拡張により、GKNは重慶に拠点を持つ多数の自動車メーカー向けに等速ジョイント (CVJ) の現地生産も進めており、このプロジェクトの完了後、SDSは長安Ford向けのCVJの生産を上海から重慶へ移転する。(2015年3月23日付プレスリリースより)