Tenneco Inc. 2011年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2011年12月期 2010年12月期 増減率 (%) 要因
全社
売上高 7,205 5,937 21.4 1)
EBIT 379 281 34.9 -
北米
売上高 3,426 2,832 21.0 2)
欧州、南米、インド
売上高 3,169 2,594 22.2 3)
アジア太平洋
売上高 804 698 15.2 4)

要因
1) 全社
-2011年12月期の売上高は、前年比21.4%の増加。為替効果と触媒担体の売上を除いた場合の売上高は、前年比15%の増加。OE事業の生産量増加、全地域におけるアフターマーケット事業の販売量増加、小型車および商用車の排気ガスコントロール製品の新規受注が主な売上増加要因。

2) 北米
-2011年12月期の売上高は、OE事業およびアフターマーケット事業ともに堅調であったため、前年比21.0%の増加。北米のOE事業の売上高増加の主要因は、同社が製品を供給しているFord 「Super-Duty」、「F-150」、「Focus」、Chevrolet 「Malibu」、「Equinox」、Volkswagen 「Jetta」、GMのクロスオーバー車、Toyota 「Tundra」の生産量が増加していることによるもの。売上のうち、503百万ドルを占める。また、商用車向けOE事業の売上高が前年比63%増加したこと、為替差益(4百万ドル)も売上増加に寄与。

3) 欧州、南米、インド
-2011年12月期の売上高は、欧州のOE事業および、欧州、南米、インドのアフターマーケット事業のライドコントロール製品が堅調であり、前年比22.2%の増加。欧州のOE事業の売上高増加の主要因は、同社が製品を供給しているVolkswagen 「Golf」、「Polo」、Mercedes 「E-class」、「CLS」、Daimler 「Sprinter」、Ford 「Focus」、BMW 「1 Series」、「3 Series」、Audi 「A1、」「A4」、「A6」、Renault/Dacia 「Logan」、Opel 「Astra」、「Zafira」の生産量が増加していることによるもの。売上のうち、315百万ドルを占める。また、原材料コストの復調による価格設定、為替差益など(127百万ドル)も売上高増加に寄与。

4) アジア太平洋地域
-2011年12月期の売上高は、前年比プラス成長で、特に中国の売上増加が売上高を押し上げた。特に中国市場で同社はGM、Ford、Audi、Volkswagen、第一汽車 (FAW)、日産に供給しており、これらの売上高が77百万ドルと好調だったことによるもの。また、29百万ドルの為替差益も売上高増加に寄与した。一方で、20百万ドルの為替差益を除いた場合、オーストラリアのOE事業の生産量の減少が10百万ドル利益を押し下げた。

海外事業

<日本>
-日本市場向けの製品供給体制を強化する。日本向け製品の生産拠点を従来の米国、オーストラリアから中国や東南アジアの工場に移管することを検討する。これにあわせて生産能力の拡充も行う。年内にも着手したい意向だ。同社は日本の自動車メーカーの新車装着用に加えて補修用部品市場でのシェアアップを狙っていく方針。こうした中で、より日本に近い拠点で生産を行い、タイムリーに製品を提供できるようにすることで販売量の拡大につなげる。(2011年3月4日付日刊自動車新聞より)

<新興国市場>
-新興国向けのビジネスを強化する。昨年、日産自動車の「Micra (日本名March)」向けに足回りと排気系の部品の受注を獲得したのに続き、トヨタ自動車から新興国市場向け小型車「Etios」用ショックアブソーバーの受注を獲得した。トヨタから受注したショックアブソーバーはインドとブラジルで年間20万台分生産する計画。インドではここ3年間で2千万ドル(約16億円)の投資を行っている。今後10年の新興国向け市場の需要として同社は、半数が小型車でこのうち2割を日本メーカーが占めると見ており、日系メーカーに対する提案活動を強化しBRICs諸国とタイをターゲットに設備と研究開発投資を強化していく方針だ。(2011年1月28日付日刊自動車新聞より)

受注

-セミアクティブサスペンションシステム「Kinetic H2/CES」およびフルアクティブサスペンションシステム「ACOCAR」を開発した。「Kinetic H2」システムと電子制御サスペンション(CES)システムを組み合わせた「Kinetic H2/CES」は、英国製スーパーカー向けに量産が開始されている。同社は2003年に第一世代CESシステムを生産開始し、Volvo 「R-line」では標準搭載として、Volvo 「S80」、「V70」、「S60」ではオプションとして採用された。同社が現在CESショックアブソーバーを納入しているモデルは、Audi 「Q3」、Ford 「S-Max」、「Galaxy」、「Mondeo」、Mercedes-Benz 「C-Class」、「E-Class」、「AMG E-Class」、「SLK」、「CLS」、BMW 「X3」、Volkswagen 「Golf」、「Golf GTI」、「Scirocco」、「Passat」、「Passat CC」、「Eos」、「Tiguan」、「Touran」、「Sharan」、Volvo 「V70」、「S80」、「XC70」、「XC60」、「S60」、「V60」。また、「ACOCAR」はショックアブソーバーに油圧ポンプを装備し、サスペンションに動力を伝える。2015年に量産を開始する予定。同社の主な電子制御式ダンパーのエンジニアリング拠点は、ベルギー Sint TruidenのMonroeエンジニアリング・技術センターと、スペイン ErmuaのAutomotive Intelligence Centre(AIC)内に位置するTenneco Innovacion。なお、生産もSint TruidenおよびErmuaの工場で行われている。(2011年6月21日付プレスリリースより)

-インドで発売されたトヨタの新型グローバルスモールカー「Etios」向けに、サスペンション部品を納入開始したと発表。フロントストラット、リアショックアブソーバーを供給している。インドHosurに位置する同社のライドコントロール工場で生産し、Toyota Kirloskar MotorsのBangalore工場に納入する。また同社は、ブラジルで発売予定のトヨタの新型コンパクトカーにも部品を納入する計画。(2011年1月26日付プレスリリースより)

見通し

OE事業 予想売上高 (百万ドル) OE事業売上高に占める担体売上高 (%)
2012 6,600 29
2013 7,800 30
~2016 10,000-11,500 32

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2011年12月期 2010年12月期 2009年12月期
合計 133 117 97

研究開発拠点

排気ガスコントロールシステムズ
-エンジニアリング、テクニカルセンターを5拠点保有。その内、2拠点はライドコントロールシステムズと共有。

ライドコントロールシステムズ
-エンジニアリング、テクニカルセンターを7拠点保有。その内、2拠点は排気ガスコントロールシステムズと共有。

研究開発体制

-中国のエンジニアリングセンターは、上海汽車集団(SAIC)の子会社である上海実業交通電器有限公司(STEC)との合弁事業で、中国をはじめとするアジア太平洋地域において伸張しているOE、およびアフターマーケットの顧客向けに排気ガスコントロール部品の設計・開発を実施。

製品開発

SCR(選択還元触媒)システム
-SCR(選択還元触媒)システム「XNOx」を開発した。同社の窒素酸化物(NOx)インジェクターなどの部品を尿素噴射装置と組み合わせることで、NOxの変換効率95%超を実現。エンジン排気の有毒なNOxを、無害な窒素と水に変換する化学反応が利用されている。(2011年8月24日付プレスリリースより)

排ガス用熱再生ユニット
-排ガス用熱再生ユニット「T.R.U.E.-Clean」を開発した。このユニットは、燃料ペナルティを削減しつつ、いかなる場合でもディーゼル微粒子除去フィルターの再生が可能。また、ディーゼル微粒子除去フィルターの温度や煤煙レベルを常時監視する。フィルター清掃が必要だと感知すると、自動で再生行程を開始し、完了まで適切な温度・制御を維持する。(2011年8月24日付プレスリリースより)

電動バルブ
-電動バルブを新開発した。この完全可変式背圧コントロールバルブは、低圧排ガス再循環(EGR)システムを用いて、窒素酸化物(NOx)排出を最小限にすることが可能。ディーゼル用酸化触媒(DOC)、ディーゼル微粒子除去フィルター(DPF)の下流に位置するエキゾーストシステムに組み込まれ、必要な圧力を常に調整。排出ガスをエンジンのインテーク側に再循環させる。自動車メーカーの低圧EGRシステムと組み合わせると、電動バルブはNOx排出を50%削減することに貢献する。(2011年8月24日付プレスリリースより)

ディーゼル燃料気化器
-ディーゼル燃料気化器を新たに開発した。ディーゼル微粒子除去フィルター(DPF)の再生を効率的に行う外部噴射システム。電熱式グロープラグを用いて、ディーゼル燃料を加熱・蒸発させ、ディーゼル用酸化触媒(DOC)の手前で排気流に合流させる。このディーゼル燃料噴射器を搭載しない車両に比べて、燃費向上・CO2排出削減に貢献する。(2011年8月24日付プレスリリースより)

断熱マニホールド
-同社の組立式マニホールドシステムの製品群には、シェル型・チューブ型・2層エアギャップ構造の断熱マニホールドが含まれる。鋳造マニホールドに比べて、これらの製品は大幅なコスト削減、小型軽量化、耐久性向上を実現した。(2011年8月24日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2011年12月期 2010年12月期 2009年12月期
北米 88 59 45
欧州、南米、およびインド 95 66 58
アジア太平洋 35 29 15
合計 218 154 118

海外投資

<アジア>
-排気ガスコントロールシステムズおよびライドコントロールシステムズの生産拠点に投資を行っていると発表。同社は最近、Ford、トヨタ、日産の新グローバルプラットフォーム向けビジネスを開始した。このプラットフォームは中国、インド、タイを含む主要市場を対象とする。中国では、昨年1年間で5工場の新設・拡張を実施。2011年末までに、さらに2工場の移転・拡張を予定している。またインドでは、同社にとって7番目となる工場をChennaiに開設。さらに、タイのBangkokではライドコントロールシステム工場を開設した。日産の小型車プラットフォーム向けに納入する。(2011年9月14日付プレスリリースより)