Johnson Controls Inc. 2015年9月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
2015年
9月期
2014年
9月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 37,179 38,749 (4.1) 1)
セグメント利益 3,258 2,721 19.7 -
オートモーティブシステムズ部門
売上高 20,079 22,032 (8.9) 2)
セグメント利益 1,182 852 38.7 -
パワーソリューションズ部門
売上高 6,590 6,632 (0.6) 3)
セグメント利益 1,153 1,052 9.6 -


要因
1) 全社売上高
-2015年9月期の売上高は、前年比4.1%の減少。ビルディングシステムズ事業、為替差損、オートモーティブシステムズ部門の売上減少が全社売上高を押し下げた。

2) オートモーティブシステムズ部門
-2015年9月期の同部門の売上高は、前年比8.9%の減少。シート事業および内装部品事業ともに売上高が減少した:

  • シート事業:販売増、買収効果、製品価格の上昇が見られたが、為替差損が大きく影響し減収。
  • 内装事業:販売増、製品価格の上昇、買収効果による売上増があったものの、内装部品事業の持分の大部分を連結から外したこと、2014年9月期の一部事業売却に係る販売減、為替差損および製品ミックスの悪化が影響し減収となった。

3) パワーソリューションズ部門
-2015年9月期の同部門の売上高は、前年比0.6%の減少。販売増、製品価格の上昇および製品ミックスが良好であったが、為替差損が影響し減収。

事業再編

オートモーティブシステムズ部門 (Automotive Experience) のスピンオフ
-2015年7月、自動車部門 (Automotive Experience) に関して、非課税のスピンオフ手続きを進めると発表。
-内装部品事業は競合他社が多く、利益率が低い。そのため今後のコア事業となるパワーソリューション部門およびビルディングシステム部門に注力する考え。
-シート事業は確固たるポジションを保有しているが、さらなる成長には多額の投資が必要となるため、スピンオフで財源を確保する。
-新会社名は2016年10月1日付で「Adient」となり、独立した公開会社としてニューヨーク証券取引所に上場する予定。

内装事業を中国企業との合弁会社に移管
-2015年7月、華域汽車系統股份 (HUAYU) の完全子会社である延鋒汽車飾件系統 [Yanfeng Automotive Trim Systems] との合弁会社「延鋒汽車内飾系統有限公司 [Yanfeng Automotive Interiors Co., Ltd.]」が営業を開始したと発表。新たに設立された延鋒汽車内飾系統は、上海を本拠とする自動車内装部品サプライヤーで、同社の内装事業は新会社に移管される。Johnson Controlsは同社の株式30%を保有する。新会社の売上高は85億ドル、受注残高は100億ドルとなる見込み。世界の90カ所に生産、開発、エンジニアリング、カスタマーサービスの拠点を持つ。インストパネル、コックピットシステム、ドアパネル、フロアコンソール、オーバーヘッドコンソールなどを生産する。

グローバルで人員削減
-2015年9月、グローバルで3,000名あまりの従業員を削減すると発表。昨今の事業ポートフォリオの変化を受け、事業の効率化を図る。これは全従業員数の2.5%にあたり、これにより同社は年間最大250百万ドルのコスト削減を図る。この削減計画は、今後2年間にわたって行われる予定。(2015年9月18日付プレスリリースより)

中国事業

中国で自動車用バッテリーの生産・販売を行う合弁会社設立
-2015年9月、北京汽車工業 (BAIC) 傘下の自動車部品サプライヤーである北京海納川汽車部件 (BHAP) と、中国で自動車用バッテリーの生産・販売を行う合弁会社設立に関する了解覚書 (MOU) を締結したと発表。これにより両社は、BAICグループの自動車メーカーおよびサービスネットワーク向けのバッテリー供給において協力する。従来の車両向けバッテリーのほか、アイドリングストップシステム向けのAGM (吸収ガラスマット) バッテリーやEFB (エンハンスドフラッド型) バッテリーなど、さまざまなバッテリーを提供する予定。(2015年9月14日付プレスリリースより)

浙江省でアイドリングストップシステム搭載車向け鉛酸バッテリーの生産開始
-2015年4月、中国でアイドリングストップシステム搭載車向け鉛酸バッテリーの生産を開始し、同国での事業を拡大している。中国・浙江省の長興 (Changxing) において、エンハンスドフラッド型のEFBバッテリーの生産を開始。また、アイドリングストップシステムの需要拡大に対応するため、AGMバッテリーの現地生産も行う予定。さらに、第16回上海モーターショーでは、先進アイドリングストップシステム搭載車用の12Vリチウムイオンバッテリーも初公開した。このバッテリーは燃費を最大8%向上させることができるという。(2015年4月20日付プレスリリースより)

受注

-2015年2月、上海延鋒江森座椅有限公司長沙分公司 [Shanghai Yanfeng Johnson Controls Seating Co., Ltd. Changsha Branch] は、同社のシートを搭載した上汽VW 「朗逸 (Lavida)」のPVS (Production Trial Run 本工程) 試作車がラインオフしたと発表。PVSは量産前段階に、量産で用いる設備、金型を使用して試生産を行うこと。(2015年2月2日付け各種リリースより)

-Ford 「F-150」の2015年モデル向けにAGM (吸収ガラスマット) バッテリーを納入している。このモデルは、Fordのトラックで初めてアイドリングストップシステムを搭載した。同社はFord 「F-150」向けにシートや内装ハードトリムも納入している。(2015年1月12日付プレスリリースより)

-2014年12月、Land Rover 「Range Rover Hybrid」向けにリチウムイオン電池を納入していると発表。セルおよび電池システム一式の生産は、米国ミシガン州のHolland拠点で行っている。(2014年12月18日付プレスリリースより)

受賞

-FCA USより「Diversity Supplier Development Supplier of the Year」と「Technical Cost Reduction (TCR) Supplier of the Year」の2部門で「Qualitas Award」を受賞。品質やダイバーシティ、コスト削減への取り組みが評価されたもの。(2015年5月28日付プレスリリースより)

-GMより2014年「General Motors Supplier of the Year Award」および「Overdrive Award」を受賞。同社がGMより表彰されるのは、今回で5度目となる。(2015年3月11日付プレスリリースより)

-トヨタが推進する自動車開発における構造改革「Toyota New Global Architecture (TNGA)」に向けた取り組みが評価され、「TNGA推進優秀賞」を受賞。同社は、トヨタの高い安全要件を満たしながら、軽量化、部品の複雑化の軽減、コスト削減などを実現した次世代のフロントシートストラクチャーを開発した。北米で初めて導入する予定で、近い将来に生産を開始する計画。(2015年3月4日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2015年9月期 2014年9月期 2013年9月期
合計 733 792 791

研究開発拠点

オートモーティブシステムズ部門 開発センター
-米国 ミシガン州 Plymouth
-ドイツ Burscheid
-ドイツ Kaiserslautern
-ドイツ Remscheid
-ドイツ Solingen
-スロバキア Trencin
-中国 上海
-中国 長春市
-中国 重慶市
-日本 神奈川県 横浜市
-韓国 安山市
-インド Pune

パワーソリューションズ部門 バッテリー技術センター
-米国 ミシガン州 Plymouth
-米国 ウィスコンシン州 Milwaukee
-ドイツ Hannover
-メキシコ Monterrey
-ブラジル Sorocaba
-中国 上海

技術提携

先進バッテリーシステム
-米国のローレンス工科大学と車両向け先進バッテリーシステムの試験・開発に関して提携を行っている。これにより自動車メーカーの燃費向上・排出ガス基準達成に貢献するとしている。両者は、動力計を設置した研究所「Johnson Controls Vehicle Engineering Systems Lab」を設立した。(2015年5月7日付プレスリリースより)

製品開発

シートプラットフォーム
-2015年9月、同社傘下のRecaro Automotive Seatingが新型シートプラットフォーム「Recaro Sport Seat Platform (RSSP)」を開発し、量産準備を整えたと発表。「RSSP」には、「Sport Extreme」と「Comfort」の2種類があり、カーボンバックレストにより従来のバックレストに比べて最大40%の軽量化を実現した。さらに、そのモジュール性でも大きな利点を持ち、全タイプが同じ軽量構造をベースとしながら、外側のデザインは顧客の仕様に応じて変更が可能になるという。(2015年9月30日付プレスリリースより)

シートコンセプト 「SD15」
-2015年、第66回フランクフルトモーターショーにおいて、シートコンセプト「SD15」を展示する。製品の特徴は以下の通り:

  • 1列目シートは、傾斜したシートトラックにパワーシートが取り付けられている。通常、シートの間に固定されるコンソールがシートに直接取り付けられており、乗員と一緒に動く。このコンソールでは、モバイル機器のワイヤレス充電が可能。
  • 助手席シートには、インストパネルの下または後方に寄せられる「Gemini」のロングトラックを使用しており、荷室容量を最大限にできる。
  • 2列目にも「Gemini」トラックシステムが採用され、1回の動作で4人乗りから5人乗りに変えることができる。
  • フロントシート、リアシートともに新しいインクジェットプリント技術を用いたファブリックを使用。
  • 運転席シートの下に48Vバッテリーを収納することができる。   (2015年8月6日付プレスリリースより)

リチウムチタン酸塩電池
-自動車用バッテリーとして新たにリチウムチタン酸塩電池を開発。東芝と共同で開発したこの最新の12Vバッテリーは、新型アイドリングストップシステム搭載車向け。このアイドリングストップシステムは、12Vの吸着ガラスマット (AGM) 方式のバッテリーとエンハンスドフラッド型のEFBバッテリーの2種類のバッテリーを使用して、エンジンを始動させたり、ライトやナビゲーションシステム、ラジオなどのアクセサリーに電気を供給している。新たに開発した12Vリチウムチタン酸塩電池は、車が減速する間に回生ブレーキのエネルギーを受け入れて貯蔵することで、より大きな電力と負荷調整機能を提供する。2018年に生産を開始する予定。(2015年1月8日付プレスリリースより)

マルチマテリアル化により金属の使用を減らした自動車シート
-研究プロジェクト「CAMISMA:carbon-amide-metal-based interior structure using a multi-material system approach (複合材料を使用した炭素繊維/アミド/金属ベースの内装部品)」において、マルチマテリアル化により金属の使用を減らした自動車シートを開発。従来のシート構造に比べて40%以上の軽量化を実現。このプロジェクトでは、炭素繊維をベースとした材料システムの利用に向けて、コスト効率に優れた持続可能な方法の開発を目指した。これは、生産ライン1本あたり約20万ユニットの量産が可能な革新的な製造プロセスにより実現され、全ての安全要件を満たした高密度炭素繊維の利用に初めて成功している。このシートは、2019年に発売される車両に採用される見込み。(2014年12月1日付プレスリリースより)

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2015年9月期 2014年9月期 2013年9月期
-オートモーティブシステムズ部門 558 632 754
 ・シート事業 437 420 467
 ・内装部品事業 121 181 235
 ・エレクトロニクス事業 (2014年に売却) - 31 52
-パワーソリューションズ部門 309 328 425

グローバル投資

-AGM (吸収ガラスマット) バッテリーの生産能力を拡大している。2011年から2020年の間に555百万ドルを投じて、ドイツ、米国、中国におけるAGMバッテリーの生産能力を拡大する計画:

  • 欧州では、ドイツのHannover工場に112百万ドル超を投じて、AGMバッテリーの生産能力を2011年の水準から65%引き上げる。2013年にはZwickau工場にも112百万ドル超を投じた。
  • 2015年8月には、米国オハイオ州のToledo工場の拡張を発表。2012年にAGMバッテリーの生産を開始して以降、同工場への投資総額は130百万ドルとなる。拡張は2016年に完了予定。
  • 中国の遼寧省瀋陽 (Shenyang) にも自動車用バッテリー工場を建設する計画。投資額は200百万ドルで、バッテリーの生産能力は年間600万ユニットとなる予定。 (2015年9月16日付プレスリリースより)

中国投資

-2015年8月、中国の遼寧省瀋陽 (Shenyang) で新たに自動車用バッテリー工場を建設すると発表した。投資額は200百万ドル。新工場のバッテリーの生産能力は年間600万ユニットを見込んでいる。2016年はじめに着工し、2018年より生産を開始する予定。(2015年8月13日付プレスリリースより)

-2015年2月、上海延鋒江森座椅有限公司 [Shanghai Yanfeng Johnson Controls Seating Co., Ltd] は、 上海康橋工業園 (Shanghai Kangqiao Industrial Park) 内に新たに建設した生産拠点の運用を開始。新生産拠点の敷地面積は97,400平方メートル。自動車シート構造部品の設計、研究開発、エンジニアリング、サンプル測定試験、製造などを行う。2015年の販売数はシートレール4.5百万セット、リクライニングアジャスター7百万セットを見込む。(2015年2月16日付け各種リリースより)

-2015年1月、上海虹橋臨空経済区 (Shanghai Hongqiao Linkong Economic Zone) に第2のグローバル本部を開設すると発表。2016年末から2017年に完成する予定。敷地面積は35,000平方メートル。1,200名の人員を雇用する計画。(2015年1月23日付け各種リリースより)

-2014年、中国の合弁会社で自動車用シートを生産するChongqing Yanfeng Johnson Controls (CQYFJC) は、中国・重慶 (Chongqing) の黄茅坪工業園区 (Huangmaoping Industrial Park) に新本社を開設。敷地面積は66,600平方メートルで、本館の面積は53,000平方メートル。管理センター、技術センター、フォーム、トリム、シート一式などの生産施設を備える。新工場の稼働により、CQYFJC全体の生産能力は年間100万台分に達する見込み。新本社の完成により、CQYFJCは設計・評価・製品開発・エンジニアリング・試験から、製造やジャストインタイム (JIT) デリバリーまで、包括的なサービス・技術能力を保有することになる。(2014年11月10日付プレスリリースより)