Johnson Controls Inc. 2010年9月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2010年
9月期
2009年
9月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 34,305 28,497 20.4 -
セグメント利益 1,933 262 637.8 -
自動車内装部門
売上高 16,610 12,016 38.2 1)
セグメント利益 591 (541) - -
バッテリー部門
売上高 4,893 3,988 22.7 2)
セグメント利益 669 406 64.8 -

要因
1)
自動車内装部門

<北米>
-北米における増収は、主要OEM顧客の生産量増加(2,100百万ドル)と買収した事業(58百万ドル)が要因。一部、増収分は決済条件の変更や価格修正などのマイナス要因(36百万ドル)により相殺。

<欧州>
-欧州での増収は、主として顧客の生産量増加と新規受注によるもの(1,800百万ドル)。一部の増収分は決済条件の変更や価格修正などのマイナス要因(32百万ドル)および為替差損(20百万ドル)により相殺。

<アジア>
-アジアでの増収は、主として顧客の生産量増加と新規受注によるもの(603百万ドル)と為替差益(125百万ドル)が要因。

2)
バッテリー部門
-売上高の増加は、販売数量の増加(454百万ドル)、鉛のコストの販売価格への転嫁(316百万ドル)、為替差益(69百万ドル)が要因。さらには、事業買収による増収(43百万ドル)および価格・製品ミックスの好転(23百万ドル)も売上高の増加につながった。

受注

-Johnson Controls-Saft (JCS)は、リチウムイオン電池をFordの電気自動車「Transit Connect Battery Electric Vehicle (BEV)」に供給する。この商用バンは2010年の後半から生産開始の予定。この車両に駆動システム「Force Drive (TM)」を納入するAzure Dynamicsに、JCSのバッテリーが採用されたもの。Azureは米国に本拠を置く、商用車向け電動パワートレインメーカー。なお、JCSは米国ミ シガン州のHolland工場でバッテリーの組立を行う計画。この他にも同社は、現在欧州と米国で販売中の「Mercedes S-Class hybrid」向けに電池を生産している。また、2010年発売のBMW「7-Series ActiveHybrid」や、2012年に発売となるFord初のプラグインハイブリッド車にもリチウムイオン電池を供給する予定。(2009年12月 1日付プレスリリースより)

事業提携

-中国の吉利控股集団(Geely Holding Group)とグローバル戦略提携に関する契約を締結した。両社は今後、自動車部品およびクリーンエネルギー分野で協力する。(2009年12月17日付プレスリリースより)

-タチエスと包括提携を結ぶと発表した。日系完成車メーカー向けシートの受注、開発、製造に関する戦略的パート ナーシップを形成する。また、同社がタチエスの発行済み株式の5%を約17億円で取得する。これにより、タチエスの筆頭株主となる。 また、タチエスは同社への株式売却による資金を使い、新技術センターを立ち上げる。同社とタチエスは、1980 年代から北米、日本、中国において協力関係を構築している。 同社は、日系の完成車メーカーに対して、さらなるビジネスチャンスの拡大と、需要にあった製品の提案を、一方、タチエスはグローバル 競争力を一段と強化することをそれぞれ狙っていた。今回両社の思惑が一致して包括提携に踏み切ることにした。 (2010年4月26日付日刊自動車新聞より)

合弁事業

-同社は約90百万米ドルを投資し、合弁会社Delkor Corporationに対する持分を90%に引き上げる。Delkorは韓国のソウル市に本社を置く自動車用バッテリーメーカー。残る株式10%は Delkorの現地経営陣が取得する。この手続は2010年8月15日までに完了する予定。また、同社は40百万米ドルを投資し、Delkorの生産能力を増強する。これによりDelkorの年産能力は、現在より2.7百万個増加の約10 百万個に拡大する見込み。なお、同社は2005年、Delphiのグローバル自動車バッテリー事業部門を買収。Delkor Corporationはその一部に含まれていた。(2010年7月23日付プレスリリースより)

企業買収

-Benecke-Kaliko AGは、Benoac Fertigteile GmbH(ドイツ)の同社持分84.4%を同社に売却すると発表。これにより、同社のBenoacへの出資比率は89.6%に引き上げられる。この株式売却は2010年半ばまでに完了する見通し。残る10.4%は引続き 日本のイノアックコーポレーションが保有する。Benoacはインストルメントパネル表皮材(スラッシュスキン)メーカー。主な納入先はAudi、 Ford、Volkswagen、Johnson Controls、Faurecia、Magna、Visteonなど。(2010年3月19日付プレスリリースより)

受賞

-同社はGMの2009年度「Supplier of the Year Award」を受賞した。パワーソリューションズ部門(Power Solutions)が供給するバッテリーが評価されたもの。同社にとって今回が4度目の受賞となった。(2010年3月25日付プレスリリースより)

-同社のパワーソリューションズ部門(Power Solutions)は、Honda de Mexicoから2009年度「Excellence Award」を受賞した。メキシコTorreon工場が対象。同工場は国内向け「CR-V」にバッテリーを供給している。なお、同部門の 「Excellence Award」受賞は2年連続。(2010年4月29日付プレスリリースより)

2011年9月期の見通し

自動車内装部門
-北米における自動車の生産は前年に比べ緩やかに増加すると予想。欧州は2010年比で横ばい。中国での生産増は増加が見込まれるが2010年9月期の期間ほどのペースは見込めない。

-自動車内装部門の2011年9月期の売上高は、2010年9月期と比べ5%程度の増加と予想。要因としては、シートおよびインテリアプログラムにおいて新製品を立ち上げることと、生産量の微増を見込む。

バッテリー部門
-バッテリー部門の2011年9月期の売上高は、前期比10~15%の増加と予想。市場シェアの拡大や自動車生産量が高いレベルで推移すること、さらには 新興国における生産量の増加を予測、全ての地域での生産量増加を見込んでいる。2011年9月期のセグメント利益率は、製造効率やコスト改善策、垂直統合型 の鉛リサイクルインフラ、中国の生産能力の増加により、13.4%~13.6%の増加と予想。

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2010年9月期 2009年9月期 2008年9月期
総額 723 767 829
顧客負担分 315 431 405

研究開発拠点

自動車内装部門技術センター
-米国 ミシガン州 Plymouth
-米国 ミシガン州 Holland
-ドイツBurscheid
-ドイツKarlsruhe
-フランスCergy
-ブルガリアSofia
-スロバキアTrencin
-日本綾瀬市

バッテリー部門 バッテリー技術センター
-米国 ミシガン州 Plymouth
-米国 ウィスコンシン州 Milwaukee
-ドイツ Hannover
-メキシコ Monterrey
-ブラジル Sorocaba


研究開発活動

"ie:3" - 2011 北米国際オートショー出展のニューコンセプトカー
-Johnson Controls-Saftによる次世代小型Li-ionバッテリーパックを搭載。独自の自立型システムにより、自動車床下の小さなスペースに搭載できる。新型の角柱形フォーマットセルにより高効率なパッケージングが可能になり、バッテリースペースの省スペース化が実現する。

-「スタジアム・シート」を前列シートに設置すると、スーツケースの積載等に十分なスペースが得られる。リアシートは簡単に畳むことができ、さらに大容量の積載スペースが現れる。センターコンソールにも大きな鞄が置ける広いスペースが確保されている。

-ie:3に搭載された各種機能は、全世界の市場に適応でき、2015年以降に販売される自動車に搭載できる。

ie:3に搭載された新機能:
バッテリー技術
-新型のLi-ion角型セルは、床下の狭いスペースに完全なシステムとして収納され、1回の充電で目標とする100マイルの航続距離を達成することが可能。
シート
-改良された広いスペースと平坦に折りたためる便宜性、さらに「スタジアム・シート」と様々な特徴を備えている。
-シートパッドはリサイクルが容易な天然繊維でつくられている。
インテリア
-新開発の軽量サウンドシステムを搭載。天井に内臓されているため、ドア内部スペースをオーディオによって犠牲にすることなく収容スペースの拡大に利用することが可能。
-独自のLED照明により室内全体の雰囲気が向上。
エレクトロニクス
-統合型ドライバーインフォメーションシステムは半透過型6.5型ディスプレイを採用。太陽光の反射などからも影響を受けず高い視認性を確保し、さらに透過させることによりヘッドアップディスプレイとしての機能を統合した。

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2010年9月期 2009年9月期 2008年9月期
全体 777 647 807
自動車内装部門 386 369 462
-北米 123 104 143
-欧州 225 235 292
-アジア 38 30 27
バッテリー部門 272 146 152

国内投資

-Johnson Controls-Saftは、同社にとって米国初となるハイブリッド車用のリチウムイオン電池工場を建設すると発表。約220百万ドルを投じて同社のミシガン州Holland工場を改修し、電池工場として使用する計画。稼動当初の生産能力は、年間15百万セルとなる見込み。なお、Johnson Controls-Saftは、同社とフランスSaftの合弁会社。(2009年4月14日付プレスリリースより)

海外投資

-同社は118百万米ドルを投資し、中国の重慶に自動車用バッテリー工場を建設する。同社にとって、中国では上海と浙江省長興 (Changxing)に続く3つ目のバッテリー工場となる。生産能力は年間600万個の見込み。2011年1月に建設着工し、2012年1月より生産開 始の予定。なお、長興(Changxing)工場は2011年初頭から生産開始し、年産能力は800万個を見込む。これらの3工場を合わせると、生産能力 は年間1,800万個となる。更に4拠点目として、中国北部に生産能力600万個規模のバッテリー工場を建設する計画も推進中。同社は2015年までに、 中国でのバッテリー年産能力3,000万個を備える計画を掲げている。(2010年10月6日付プレスリリースより)