DuPont (E. I. du Pont de Nemours and Company) 2010年12月期までの動向

ハイライト

近年の動向

受注

<2010年>
-2010年4月、熱可塑性ポリイミド樹脂「ベスペルTPシリーズ」を用いた射出成形の低摩擦摩耗ブッシュが、エンジン補器部品を手がける独グスタフ ヴァーラーのEGR(排ガス再循環装置)に採用されたと発表した。同樹脂が持つ高温環境下でも膨張しにくい特性や、高い耐摩耗性が、EGRバルブの高速かつ緻密な制御を可能にした。4気筒や6気筒のガソリンエンジンのプレ触媒コンバーターの後方に搭載される。(2010年4月16日付日刊自動車新聞より)

-2010年、カーエアコンの次世代冷媒として、Honeywellと共同開発した「HFO-1234yf」が自動車メーカー各社に採用される見通しになった。欧州が2011年から世界に先駆け開始する地球温暖効果の低い冷媒の使用義務化に合わせて開発されたフッ素系のガス。代替冷媒では二酸化炭素(CO2)も有力候補の一つだった。しかし、車両の燃費、コストなどを勘案すると、1234yfに総合的なメリットがみられることから、冷媒の新しいグローバルスタンダードの座を手中にした。両社は2011年から新冷媒の生産を共同で立ち上げ、2015年をめどにグローバル供給体制を整える計画。(2010年6月28日付日刊自動車新聞より)

<2009年>
-2009年12月、「ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維」がトヨタ自動車の「SAI」の内装品の表皮に採用されたと発表。量産車の内装部品に植物由来のポリマーが採用されたのは世界で初めて。SAIの天井、サンバイザー、ピラーガーニッシュの表皮と純正用品のオプションフロアマットに採用された。今回採用されたPTT繊維は同社の「ソロナポリマー」を原料に作られた。(2009年12月19日付日刊自動車新聞より)

-2009年9月、バイオベース素材がトヨタ自動車の新型「プリウス」のフロアマット(純正オプション、ラグジュアリータイプ)に採用されたと発表。植物の糖を発酵させて作るポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂「ソロナ(商標)」を繊維にしたもの。従来のフロアマットに使用されている石油由来の ナイロン樹脂に比べ、製造までの二酸化炭素排出量を50%以上削減できる。環境性能に加え、素材の持つ風合いの良さなどの機能が高く評価されたとする。ソロナポリマーの日本での製糸・販売ライセンスを持つユニプラス(大阪市西区)が製糸し、フロアマットメーカーが製造する。(2009年9月3日付日刊自動車新聞より)

<2008年>
-2008年11月、MartinreaはFordにキャップレス式の燃料タンクを供給している。対象モデルは、2008年式「Ford Flex」「Escape」「F150」「Expedition」および「Lincoln MKS」。この燃料タンクは、誤給油防止装置(MFI)の機能を備え、バイオディーゼルやエタノールといった新タイプ燃料にも対応。また、同製品の素材としてDuPontの高融点ナイロン樹脂Zytel HTN PPAが使用されている。(11月13日付プレスリリースより)

-2008年10月、ナイロン樹脂Zytelが初めて量産車のオイルパンモジュールに採用された。Daimlerは、Brussおよび同社と協力し、新型ディーゼルエンジン「OM651」用オイルパンモジュールを開発。新開発のこのオイルパンは、アルミダイカスト製のアッパー部とZytel 70G35 HSLR製のローアー部で構成される。この新型オイルパンは、先ず、Mercedes-Benzの「Cクラス」に搭載される予定。(2008年10月14日付プレスリリースより)

-2008年5月、Daimler Trucks North America(DTNA)は、ボディ用・パーツ用の認定プライマーとして、同社のエポキシ系電着プライマー「CorMax」ならびに「ElectroShield 21」を採用。今回の認定は、Daimler傘下の大型トラックメーカーFreightlinerのパーツ用。(2008年5月12日付プレスリリースより)

-2008年2月、Volkswagenが排気系システムに従来のスチール製品に代わり同社特許技術であるZytel高融点ナイロン樹脂(強化グレード)製品を採用したと発表。これまで金属・ゴム複合素材を使用し、複数の組立工程を要した触媒コンバーター・ブラケットを樹脂製に切り替えたもので、「Golf」の現行プラットフォーム採用全モデルが対象となる。(2008年2月26日付プレスリリースより)

企業買収

-2005年7月1日付けで、DuPont-Dow Elastomers(DDE)がDuPont Performance Elastomersとなり、DuPontの完全子会社となった。加えて、DDEの"Engage"ポリオレフィン・エラストマー、"Nordel"炭化水素ゴム、"Tyrin"の製品が、Dowに移管されDowの特殊樹脂およびエラストマー事業の一部となった。(2005年7月付プレスリリースより)

合弁事業

-2010年、Honeywellとカーエアコン用の新冷媒を生産する合弁事業を立ち上げることで合意した。この新冷媒は、現行の冷媒に比べて GWP(地球温暖化係数)が99.7%低くなっている。両社は今回の合意に基づき、新冷媒「HFO-1234yf」の製造工場を建設する計画。「HFO-1234yf」は、2011年から施行される欧州連合(EU)の規制に対応。2011年第4四半期から「HFO-1234yf」の供給を開始する予定と なっている。(2010年5月20日付プレスリリースより)

-2006年1月、ロシアと東欧の旧ソ連諸国の乗用車および商用車メーカー向けに自動車用コーティングを供給するため、Russkie Kraski Corp.と新たに合弁会社を設立したと発表。新会社の名称はDuPont Russian Coatings LLCで、両社からライセンスを受けた技術を活用する。Russkie Kraskiは、ロシア最大の自動車用コーティングおよび樹脂メーカー。(2006年1月付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
2011年12月期 2010年12月期 2009年12月期
合計 1,956 1,651 1,378
売上に占める割合 5% 5% 5%

研究開発拠点

<中国>
-2010年12月、中国における研究開発拠点を拡大すると発表。太陽光発電、バイオ材料、自動車製品向け次世代素材の開発に注力する。2005年に開設 した中国研究開発センターは、上海市浦東(Pudong)新区の張江ハイテクパークに位置。現在30以上の研究室と約200名の研究者・技術者を抱える。同センターは、2年以内に面積を2倍に拡大し、研究者・技術者を200名増員する予定。(2010年12月21日付プレスリリースより)

<韓国>
-2006年6月、急速に成長するアジアにおける電子、自動車、建設等の主要産業の研究開発ニーズに答えるため、韓国DuPontテクノロジー・センター(DuPont Korea Technology Center)を開設したと発表。同センターはソウルのKorean Institute of Science & Technology (KIST)のキャンパス内にある。当初は、既に進行中であるフラット・パネル・ディスプレイ用材料科学の基礎研究とアプリケーションの開発に集中する。(2006年6月付プレスリリースより)

技術提携

-2008年5月、同社とDanisco A/Sの一事業部門であるGenencorは、折半出資により、合弁会社DuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLCを設立。750億ドル規模の巨大市場ともいわれる次世代エタノール需要に対応するため、セルロース系エタノール製造での新技術を共同開発し、低コス トなセルロース系エタノールの実用化を目指すもの。(2008年5月15日付プレスリリースより)

-2007年10月、DuPont Engineering PolymersはMorph Technologies Inc.(カナダ)、Integran Technologies Inc.(カナダ)およびPowerMetal Technologies(米国)と共同開発契約を締結し、ナノメタル/ポリマーハイブリッド技術を開発および商品化すると発表。この技術を使用して、金属の持つ高い強度と剛性、並びに高性能熱可塑性プラスチックの持つ設計における柔軟性と軽量化のメリットを合わせた超軽量コンポーネントを生産する。 (2007年10月付プレスリリースより)

-2007年4月、地球温暖化係数(GWP)の低いカーエアコン用次世代冷媒の共同開発についてHoneywellと基本合意したと発表。(2007年4月付日刊自動車新聞より)

-2006年6月、同社と英BPは、次世代バイオ燃料の開発、生産について提携を結んだと発表。その第一弾として2007年にガソリンのバイオ成分として「バイオブタノール」を英国に投入する計画。(2006年6月付日刊自動車新聞より)

-2005年4月、Pune(インド)にある国立化学研究所(NCL)と研究協定を締結。この協定に基づき、同社は新技術開発に向けて同研究所の人材や機能を活用できるようになる。(2005年4月付けプレスリリースより)

製品開発

次世代車向けの環境対応素材
-2010年、ハイブリッド車(HV)をはじめとした次世代車向けの環境対応素材の供給を活発化する。2005年末に名古屋市に開設した自動車専門の研究開発拠点「デュポン・オートモーティブセンター(DAC)」で開発した技術の実用化が今年から本格化する見通しになった。電子部品関連や内装材、吸気系、燃料系部品などの樹脂などで、二酸化炭素(CO2)排出削減をはじめ生産段階および走行中の環境負荷を低減する効果が認められ受注を広げた。(2010年1月28日付日刊自動車新聞より)

モーター用巻線
-2010年、ハイブリッド車(HV)および電気自動車(EV)の駆動モーターの小型・高出力化につながるモーター用巻線の受注開拓を本格化する。平角状の銅線に薄いテフロン製の絶縁フィルムをコーティングしたタイプで、ガラスの糸束などで絶縁している従来の巻線と比べて銅線を巻きつける密度を高められるほか、曲げ特性に優れることが特徴。さらに摂氏240度以上の高い耐熱性を確保、高回転化による出力向上に対応しやすいスペックとした。すでに新幹線用モーターに採用されており、こうした実績を生かして自動車分野の開拓に結びつける。(2010年2月10日付日刊自動車新聞より)

ナイロン製品
-2010年、パフォーマンスポリマー事業部は新ナイロン製品「デュポン・ザイテルPLUS(プラス)」を発表した。従来のナイロン製品同様の設計・加工の容易さを維持しながら、耐久性、高温化での化学特性を高めたもので、燃費向上のため軽量化が求められる自動車部品に金属代替の提案を進める。マフラー、 エアダクト、シリンダーヘッドカバーなど多様な部位への採用を想定しており、重量・コストなどに応じて4グレードを設定、本年中に市場投入を始める。(2010年3月3日付日刊自動車新聞より)

-2010年10月、自動車用途向けに高温下における部品寿命を2倍以上改善したナイロン樹脂を3種類開発したと発表した。排気系やEGRクーラーなどに対応可能な摂氏230度の耐久性を確保した仕様などで、金属部品と比べた軽量化効果や加工の優位性を提案しながら新規受注を開拓する。(2010年10月29日付日刊自動車新聞より)

内装部品
-2010年、人工大理石を素材とした自動車の内装部品を開発した。人工大理石の形状加工は切削で行うことが通例で量産が難しいため、自動車内装に活用されることがなかった。同社は大理石の質感を保ちながら射出成形での生産を可能にする技術を確立し初めて量産車への適用を実現した。自動車分野への素材技術の提案をねらい名古屋市に開設したデュポン・オートモーティブセンター(DAC)で開発。2011年から日系自動車メーカーに採用される見通し。(2010年11月16日付日刊自動車新聞より)

次世代型冷媒

-地球温暖化の抑制に向けて、カーエアコン用冷媒の切り替えが求められているが、こうした中、同社とHoneywellの共同開発した次世代タイプ「HFO-1234yf」が、早ければ2011年にも活用を開始される見通しになった。代替冷媒としては二酸化炭素(CO2)などが候補に上がっていた。しかし、1234yfは既存のカーエアコンシステムを流用できるため既存車両でも簡単に代替冷媒に切り替えられる、冷却効果が高く燃費削減につながるといったメリットがドイツ系の一部を除く日米欧の自動車メーカーから評価されて、実用化のめどがついた。(1月10日付日刊自動車新聞より)

べスペルSP―2515
-2009年4月、熱による寸法変化を抑えると同時に、摺動性能を高めたシールリング、スラストワッシャー向けの高機能樹脂「べスペルSP-2515」を開発、発売したと発表した。変速機などの駆動ユニット向けに特性を最適化したもので、軽量化や摩擦損失の低減、コスト改善につながることを訴求し拡販を目指す。熱による寸法変化をアルミなどの金属にマッチするように調整し、安定したシール特性を確保できるようにした。既存タイプと比べて4倍の熱伝導性があり、すべり表面の発熱を拡散しやすいので、採用部位の耐高速性、耐荷重性を向上できる。(2009年4月3日付日刊自動車新聞より)

シートヒーターおよび着座センサーの統合
-2009年、特殊なフィルムを使用してシートヒーターおよび着座センサーを統合、部品点数の削減や軽量化を実現する開発手法の提案を開始する。表面だけに導電可能で裏面が絶縁層というフィルムで、通電すれば表面が面状の発熱体として機能するという特性を持つ。シートヒーターに使用されるニクロム線と比べ温度上昇を早められるほか、断線防止に優れるといったメリットを訴求し、受注開拓に結びつける。フィルムは素材にポリイミドを使用し導電層と絶縁層を物理的に結合したもので「カプトンRS」という名称。これを使用したヒーターとセンサーの統合部品は、着座センサーに使用されているフィルム基盤にヒーター機能を付加するようなイメージ。着座センサーは高機能なエアバッグの展開制御に欠かせない。(2009年5月28日付日刊自動車新聞より)

設備投資

海外投資

<中国>
-2008年6月、中国・上海に建設していた塗料生産工場の操業を開始したと発表。年間生産能力は2万トン。これによりアジア太平洋市場での自動車および工業用塗料の要求に対し「迅速に対応できる生産体制が整った」(同社)とする。アジア太平洋地域外への供給も視野に入れる。自動車補修用のほか、新車用・ 大型車両や産業機械向けの塗料を生産する。今後は、欧米の工場では水性塗料と低溶剤型塗料の生産に集中し、新工場では溶剤型塗料製品を中心に生産する。現在の従業員160人を、2010年のフル操業段階には約250人に増員する。(2008年6月10日付日刊自動車新聞より)

-2006年5月、上海市嘉定区に自動車その他産業向けコーティング工場の建設を開始した。初期段階の従業員数は約250名で、2007年後半に稼動を開始予定。(2006年5月付プレスリリースより)

<韓国>
-2007年8月、韓国・ウルサンの生産拠点でポリアミド樹脂のコンパウンド(混練)能力を増強したと発表した。ナイロン6および66のコンパウンドの生産能力を年間2万トン増やし、日本国内の生産能力と同等とした。トータルの生産能力は非公表。アジア太平洋地域で急速に拡大している自動車産業からの需要に対応する。同拠点で生産されるガラス/ミネラル強化ナイロン樹脂は、非常に優れた強度、剛性、耐熱性を持つ。インテークマニホールドやシリンダーヘッドカバーといった自動車のエンジンルーム周りへの用途や電子・電気機器市場におけるさまざまな用途に用いられている。韓国での生産能力増強によって、自動車およびエレクトロニクスという同国の主要産業に対応するとともに、アジア地域でビジネスを展開する顧客企業との関係強化も狙う。(2007年8月付日刊自動車新聞より)

<英国>
-2007年7月、2カ所のバイオ燃料生産施設の建設に5800万ドル(約70億円)を投資すると発表。BPと共同で計画している世界初のバイオブタノール実証施設と、両社にブリティッシュ・シュガー社を加えた3社で建設する4億2千万リットルの生産能力を持つエタノール工場を、英国中央部に位置するBPの既存工場敷地内に建設する。稼働はそれぞれ2009年初旬、2009年後半を予定する。同社とBPは、2007年末までに市場開発を行う目的で、英国でバイオブタノールの供給を開始し、生産のインフラ試験と次世代バイオブタノールの車両搭載試験を進める。(2007年7月付日刊自動車新聞より)

<ロシア>
-2007年6月、新興市場での事業拡充策の一環として、ロシアで2番目となる事務所を新設したと発表した。セントペテルブルク事務所の新設は、ロシア自動車業界との関係強化とサポートサービス充実を目的としたもの。同社は、セントペテルブルク事務所開設に先立ち、モスクワ、キエフ(ウクライナ)、アルマティ(カザフスタン)にも事務所を開設している。同社は100種類を越える広範な自動車用製品を提供しているが、総供給量のうち3割から4割がロシアで生産される車両向け。(2007年6月付プレスリリースより)

<日本>
-2005年11月、DuPont Automotive Systemsは10百万ドルを投じ、愛知県に研究所を設立。この研究所は日本の自動車メーカーが世界中で使用する自動車塗装の技術サービスと承認作業に従事すると共に、国内の組立工場のサポートを行う。

国内投資

-2007年9月、高機能パラ系アラミド繊維「ケブラー」の生産体制を強化すると発表した。5億ドルを投資してバージニア州の工場を拡張、2010年をめどに生産能力を25%以上拡大する。軽量で剛性の高いケブラーは自動車を始め、さまざまな分野で活用される機会が増えている。供給体制を増強して、新規ニーズの吸収に結びつける。ケブラーは自動車のブレーキ、タイヤの補強材として40年以上にわたり使用されてきたほか、防弾・防刃チョッキ、航空宇宙関連の素材として実績がある。(2007年9月付日刊自動車新聞より)

-2005年6月、"Vespel"事業部がオハイオ州Circlevilleのポリイミド樹脂生産工場を拡張すると発表した。この拡張によって、直接成形ポリイミド部品"Vespel"SP-1およびSP-21の生産に使う原材料を供給する。この工場拡張は生産能力を50%増加することになっており、10月には生産が開始される予定。"Vespel"部品は、高温、低消耗、低摩擦部品として高い性能を発揮し、自動車や飛行機、半導体製造、その他のエンドユーズ産業向けのブッシュ、シールリング、スラストワッシャーなどとして使われる。(2005年6月付プレスリリースより)