The Dow Chemical Company 2011年12月期の動向

ハイライト

近年の動向

業績

(単位:百万ドル)
  2011年
12月期
2010年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 59,985 53,674 11.8 1)
EBITDA 7,785 7,200 8.1 -

要因
1) 全社
-2011年12月期の売上高は、前年比11.8%増加の59,985百万ドルとなり、過去最高の売上を記録。事業売却効果を除いた場合は、同18%の増加。電子および機能性材料を除く全てのセグメント、また、全ての地域で2桁成長を達成したことが要因。

-2011年12月期の新興国の売上高は19,400百万ドル。アジア・太平洋の売上が初めて10,000百万ドルを超えるなど、史上最高の売上を記録した。

合弁事業

<Aksa Akrilik Kimya Sanayii A.S.>
-2011年、同社は完全子会社のDow Europeとトルコのアクリル繊維メーカーAksa Akrilik Kimya Sanayii A.S.が、トルコで合弁会社を設立することで正式合意したと発表。新会社では、炭素繊維の生産・製品化を行う。なお、今回の合弁会社はDowとAksaが折半出資。トルコYalovaにあるAksaの炭素繊維工場を本拠とする計画。今後5年間で、第三者からの投資を含めた新会社への投資額は10億米ドルに上り、従業員数は1,000名に達する見込み。(2011年12月20日付プレスリリースより)

-2011年、同社は完全子会社のDow Europe GmbHとAksa Akrilik Kimya Sanayii A.S. (Aksa)が、合弁会社設立に関する了解覚書(MOU)を締結したと発表。新会社では、炭素繊維の生産・製品化を行う。軽量の炭素繊維素材は、自動車の燃費向上への貢献が見込まれる。なおAksaはトルコを本拠とし、アクリル繊維、工業用繊維、炭素繊維などを生産している。(2011年6月6日付プレスリリースより)

<宇部興産>
-2011年、宇部興産は同社とリチウムイオン電池向け電解液を製造する合弁会社を米国に設立したと発表した。合弁会社の社名は「アドバンスド・エレクトロライト・テクノロジーズ」で12月から営業開始する。出資比率は宇部興産の米国子会社が50%、ダウが50%の折半出資となる。本社はミシガン州トロイ市に置く。合弁会社は順次、米国、中国、欧州に電解液を製造する子会社を設立する予定。(2011年12月16日付日刊自動車新聞より)

-2011年、宇部興産と同社はリチウムイオン二次電池向けの電解液を製造販売する合弁会社「アドバンスド・エレクトロライト・テクノロジーズ」を米ミシガン州に設立すると発表した。ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)向けを中心として需要が拡大基調にあるリチウムイオン電池の事業体制をグローバル規模で強化するのが狙い。宇部興産は電解液の技術を合弁会社にライセンス供与する。2012年をめどに米ミシガン州に工場を建設する。さらに、中国や欧州に製造設備を展開していく計画だ。(2011年7月8日付日刊自動車新聞より)

<Saudi Aramco>
-2011年、同社とサウジアラビアの石油会社Saudi Aramcoは、合弁会社「Sadara Chemical Company」を正式に設立したと発表。新会社ではポリウレタン、酸化プロピレン、プロピレングリコール、エラストマー、低密度ポリエチレン、アミンなどを生産する。(2011年11月28日付プレスリリースより)

-2011年、同社とサウジアラビアの国営石油会社Saudi Aramcoは、合弁会社「Sadara Chemical Company」の設立に関して合意したと発表。両社は2011年7月25日付けで、合弁会社設立の意向についてそれぞれ発表している。年間売上額は、数年間で約100億米ドルに達する見込み。ポリウレタン、酸化プロピレン、プロピレングリコール、エラストマー、低密度ポリエチレン、アミンなどを生産し、サウジアラビアを含む8カ国に供給する。新会社は26の生産ユニットを有する予定。このうち一部ユニットが2015年第2四半期より稼動開始となる見込み。2016年には全ユニットが稼動する予定。(2011年10月8日付プレスリリースより)

事業提携

-2011年、同社傘下でメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)の生産会社Dow Polyurethanesは、中国の吉林康乃爾化学工業有限公司(Jilin Connell Chemical Industry Co., Ltd.)との間で、米国におけるアニリン生産に関して提携することで基本合意したと発表。吉林康乃爾化学はアニリンの生産・販売会社。なお、今回の合意により両社は、米国・テキサス州FreeportにあるDowの拠点に、吉林康乃爾化学の工場を建設する可能性についても検討する予定。(2011年12月5日付プレスリリースより)

売却

-2011年、同社はポリプロピレン事業をブラジルのBraskem S.A.へ売却完了したと発表。今回の取引に含まれるのは、ドイツのSchkopau・Wesseling、米国テキサス州のFreeport・Seadriftにあるポリプロピレン工場。なお、Dowの「Polypropylene Licensing & Catalyst」部門および触媒関連工場については、今回の売却から除外されている。(2011年9月30日付プレスリリースより)

事業買収

-2010年1月、自動車用電池メーカーDow Kokamは、Dassault(フランス)の100%子会社Societe de Vehicles Electriques (SVE)を買収した。SVEは、バッテリーマネジメントシステム、パワーマネジメントシステムの開発を行っている。SVEは今後Dow Kokamのフランス子会社となるが、Dassaultは同社株式の一部を引続き保有する。(2010年1月12日付プレスリリースより)

国内事業

-2011年、同社のPerformance Monomers部門が米国テキサス州のDeer Park工場において、粗アクリル酸(CAA)の生産能力を15%増強すると発表。(2011年11月8日付プレスリリースより)

-2011年、同社のPerformance Monomers部門が複数の拠点において生産能力を増強したと発表。米国テキサス州のFreeport工場では、メタクリル酸グリシジル(GMA)の生産能力を10%、米国ルイジアナ州のHahnville工場では、アクリル酸-2-エチルヘキシル(2-EHA)の生産能力を15%増強した。また、ドイツのBohlen工場においては、粗アクリル酸(CAA)の生産能力を25%拡大。CAAは、同拠点でアクリル酸ブチル(BA)および精製アクリル酸(GAA)の生産に使用される。さらに、同事業では今後、BA、EAおよびその他2種類のアクリル酸に関しても、生産能力を増強する予定。(2011年10月4日付プレスリリースより)

-2011年、同社傘下のDow Automotive Systemsは、2013年までにポリウレタン系およびエポキシ系接着剤の製品数を2倍に拡大すると発表。また、これらの製品をそれぞれの素材によってブランド分けする。「BETAMATE」ブランドには、金属用のエポキシ系接着剤が含まれる予定。また「BETAFORCE」ブランドには、ポリウレタン系接着剤が含まれる。(2011年10月4日付プレスリリースより)

-2011年、同社のPerformance Monomers部門が、米国テキサス州のFreeport工場においてメタクリル酸グリシジル(GMA)の生産能力を10%引き上げると発表した。GMAは、自動車用コーティング、パウダーコーティングなどに使用されている。(2011年8月29日付プレスリリースより)

海外事業

<タイ>
-2011年、同社はSiam Cement Group (SCG)との合弁会社SCG-Dow Groupが、タイの酸化プロピレン(PO)工場において、2011年第4四半期のフル稼働に向けて安定生産レベルに達したと発表。Map Ta Phut近郊のアジア工業団地内に建設された同工場は、年間390キロトンのPO生産を目指す。(2011年10月4日付プレスリリースより)

-2011年、同社は2011年6月に操業開始したタイのポリオレフィンエラストマー工場が、フル稼働に達したと発表。同工場は、同社とタイのSiam Cement Group (SCG)による合弁会社SCG-Dow Groupが開設した。(2011年10月4日付プレスリリースより)

<中国>
-2011年、同社は2012年前半に、中国の四川省成都(Chengdu)に新オフィスを開設すると発表。中国西部における事業の中心拠点となる予定。同社は現在、東部・南東部・台湾を中心として中華圏に18生産拠点を保有している。2010年における同圏の売上額は、40億米ドル超を記録。これは同社にとって世界で2番目に大きな市場となる。(2011年10月4日付プレスリリースより)

<アフリカ>
-2011年、同社はアフリカでの事業拡大に向け、アルジェリアとガーナに販売オフィスを新設すると発表した。エジプト・ケニア・南アフリカの既存事業を補完する目的。同社はこれらの拠点で事業を50年以上行っており、現在は240名超の従業員を抱えている。(2011年10月4日付プレスリリースより)

受賞

-2011年、同社は東燃化学との折半出資による合弁会社の日本ユニカーが、古河電気工業より「Core Partner Award」を受賞したと発表。日本ユニカーがこの賞を受賞するのは、今回で5年連続となる。また、「Award for Excellence」を過去2年受賞している。(2011年10月4日付プレスリリースより)

受注

-2009年、ホンダとブラジルでの新型「City」の生産に関し提携することで合意。「Fit」「Civic」に続き、「City」搭載用部品の原材料を納入するもの。供給するポリプロピレン(PP)樹脂「INSPIRE」は、インストルメントパネル、ドアサイドパネル、コラム用ライニング、 シートといった内装部品に加工される。(2009年8月13日プレスリリースより)

-2009年、Dow Automotiveはエネルギー吸収フォーム「IMPAXX」をGMに供給。「Buick LaCrosse」2010年モデルのヘッドライナーに使用される。これは、ポリウレタン素材やポリプロピレン素材に比べて低コストを実現。(2009年4月20日付プレスリリースより)

-2009年、車体のスポット溶接の代わりになる構造用接着剤について、複数の日系自動車メーカーに供給するめどをつけた。早ければ2012年ごろにも発売される車種に採用される見通し。日系自動車メーカーはこれまでは高い強度を要求される部位には、構造用接着剤は使用しておらず、採用されればこれが初めての例となる。鋼板同士を接着し軽量化と高剛性化を両立する。当初、採用は限定的な車種にとどめ、フロアパネルやサスペンション周辺など特に剛性が求められる部位に適用し、スポット溶接と併用する見通し。溶接工程の簡略化、線接合による板厚の薄肉化などが可能になり、コストや重量の低減、また振動・騒音特性の改善にもつながる。(2009年4月10日付日刊自動車新聞より)

-2009年、同社の耐衝撃接着剤「BETAMATE」がOpelの新型セダン「Insignia」に採用されたと発表。同モデルの組立に使用される接着剤として、GMより選定されたもの。(2009年3月11日付プレスリリースより)

-2009年、異種材結合接着剤の新製品を開発。この2液性接着剤「BETAMATE」は、BMWの新型「7シリーズ」に採用。アルミルーフとスチールボディーの接合などに使用される。なお、2液性接着剤がアルミルーフモジュールの組立に使用されるのは業界初となる。(2009年3月10日付プレスリリースより)

-2009年、対衝撃性接着剤が独アウディの「A8」に採用された。連続接合が可能となることでボディーの剛性や衝突性能の向上に貢献するとともに耐湿性と腐食性の向上を実現したことが評価された。アウディA8に採用されたのは同社の自動車事業部門であるダウ・オートモーティブが製造した「ベタメイト」。(2009年3月2日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2011年12月期 2010年12月期 2009年12月期
全社 1,646 1,660 1,492

-2011年、同社は米国の大学とのプロジェクトに対する投資を、年間25百万米ドルに引き上げたと発表。期間は10年間で、11大学が対象となる。研究分野には、触媒作用やプロセス開発をはじめ、エレクトロニクス・エネルギー・輸送・民生製品の新素材に関するものが含まれる。(2011年10月4日付プレスリリースより)

研究開発拠点

-過去5年間で、中国、韓国、中東、ブラジル、スペインにテクノロジーセンターを新設。現在、約6,300名が研究開発に従事。

-2010年、Dow Brazilは、ブラジルのサンパウロ州Jundiaiにポリウレタン製品に関する技術・市場開発センター(Technology and Market Development Center)を新設する。200万米ドルを投資し、2011年1月に開設の予定。面積1200平方メートルの施設で様々なサービスを提供する。化学および物理化学的分析、広範囲にわたるポリウレタン製品の生産シミュレーション、物理的特性の評価および顧客へのサンプル準備などが含まれる。(2010年11月29日付プレスリリースより)

-2009年6月、中国の上海に「Dow Center」開設を発表。アジア・太平洋地区における、地域本部および研究開発拠点としての機能を兼備する。このセンターでは、輸送、エネルギー、電子機器など様々な分野を対象とする開発を行う。輸送分野では、自動車の安全性能や燃費の向上に関して重点的に取り組む方針。(2009年6月2日付プレスリ リースより)

技術提携

-2011年、同社は、蓄電技術や代替燃料車の開発・生産会社であるクァンタム・フューエル・システムズ・テクノロジーズ・ワールド・ワイド社とトラックのプラグインハイブリッド車(PHV)の共同開発について合意したと発表した。フォード・モーターのピックアップ車「F-150」をベースに同社の子会社が生産するリチウムイオン電池とクァンタム社のハイブリッド機構を搭載しPHVに改造する。ダウはPHVトラックを社用車として活用する考えで、2012年末までに100台導入する計画だ。PHVトラックは電池のエネルギーだけで35マイル(56km)の距離を走行可能にする。リチウムイオン電池はダウとグループ・ダッソーなどの合弁会社であるダウ・コカムが供給する。トラックをPHVに改造する作業は今年12月に開始する予定。ダウはPHVトラックの運用とともにEVで通勤する従業員の支援をねらい各事業所に順次、充電ステーションを設置する。(2011年6月8日付日刊自動車新聞より)

-2009年6月、Dow AutomotiveはPolyOne Corporationとの協業契約を締結した。PolyOneのマスターバッチとDow Automotiveの熱可塑性天然樹脂を組み合わせた製品を開発し、欧州自動車産業向けに供給する計画。PolyOneは米国オハイオ州に本拠を置く、ポリマー素材メーカー。(2009年6月24日付プレスリリースより)

研究開発活動

-2011年、同社と米国エネルギー省のArgonne国立研究所は、先進バッテリー向け次世代素材の長期共同研究に関する了解覚書(MOU)を締結したと発表。両者は今後、エネルギー貯蔵産業における先端素材の性能向上・コスト競争力強化・採用拡大を目指し、数種類の新素材開発を共同で行う予定。(2011年10月4日付プレスリリースより)

製品開発

遮音フォーム
-2011年、同社傘下のDow Automotive Systemsは、全米大豆基金財団より助成金を受け、再生可能材料を用いた大豆油含有の遮音フォーム「BETAFOAM Renue」を開発した。現在、北米の大手カーメーカーに試験納入中で、2011年12月までに製品化する計画。従来の遮音フォーム「BETAFOAM」と同様に、「BETAFOAM Renue」はAピラー、Bピラー、Cピラー、ロッカーパネルなどに使用され、騒音低減に貢献する。また、これらの部品で使用されるバッフルが不要となるほか、低密度のため車両重量を軽減する。(2011年10月4日付プレスリリースより)

新接着技術

-2009年3月、Dow Automotiveは24日、アルミ製ルーフをスチールの骨格と接着する新接着技術を開発し、BMWの新型7シリーズに採用されたと発表。熱膨張率が異なる2種類の素材に対応しつつ、高温環境下でも構造体としての安定性を保つ性能を両立した。BMWと共同で既存の2液型接着剤製品「ベタメイト」を改良した。同社によると自動車メーカーの組み立て工程で、2液型接着システムがアルミ製ルーフの組み立てに使用されたのは初めて。2液型ポリウレタン製接着剤のガラス転移度を改良することで接着性能と高温対応などの条件を満たした。異種材料の組み合わせが可能になることで、車体の大幅な軽量化につながる。(2009年3月25日付日刊自動車新聞より)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2011年12月期 2010年12月期 2009年12月期
全社 2,687 2,130 1,683

-2011年、同社はメタロセンEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)工場の建設を検討開始したと発表。このEPDMは、炭化水素ゴム「NORDEL IP」として販売されている。主な用途は、自動車用ウェザーストリップ、ホース、ベルトなどの製品。(2011年10月4日付プレスリリースより)

海外投資

<タイ>
-2010年12月、同社はタイMap Ta Phutにおいてプロピレングリコール(PG)工場を建設すると発表している。現在、設計段階に入っており、年間生産量は150キロトンを見込む。(2011年10月4日付プレスリリースより)

-2009年8月、タイに建設中の特殊エラストマーの合弁生産拠点が2011年初頭に稼働する見通しであると発表。同社グループにとって初のタイ工場であるとともに、アジア最大のエラストマー工場となり、欧・米・アジアの3極体制が整うという。新工場はサイアム・セメントグループ(SCG)との合弁会社、SCG・ダウがラヨン県のアジア工業団地に建設する。進捗は順調で、1年半後には量産を開始。自動車向け熱可塑性樹脂などに使われるポリオレフィンエラストマー「エンゲージ」、高温・低温での加工性に優れ包装材などに用いられる同プラストマー「アフィニティ」などを生産する。(2009年8月18日付日刊自動車新聞より)

<スコットランド>
-2011年、同社傘下のDow Plastics Additivesは、スコットランドのGrangemouth工場において設備を増設すると発表した。これにより、メチルメタクリレートブタジエンスチレン(MBS)ベースの添加剤の生産能力が大幅に拡大する。2011年第4四半期にフル稼働となる予定。年間1万トンの生産量増加を見込む。なお、Dow Plastics Additivesは同工場で、耐久消費財・輸送製品に使用されるエンジニアリング樹脂用の添加剤「PARALOID EXL」を生産している。(2011年8月4日付プレスリリースより)

国内投資

-2009年5月、同社と合弁事業パートナーで製造する次世代ハイブリッド車(HV)および電気自動車(EV)向けのバッテリー生産工場を同社の本社があるミシガン州ミッドランドに建設すると発表。オバマ米大統領が打ち出したプラグインハイブリッド100万台実用化プログラムに対応、リチウム・ポリマーバッテリーを製造する。投資金額は6億ドルで施設面積は7万4000平方メートルを予定。建設に向け、米国エネルギー省に連邦助成金を申請した。同助成金は年間6万台のHV/EVバッテリーの生産、800人以上の「グリーンカラー」雇用の創出などを条件としている。工場は同年9月末に着工、2011年央の稼働を予定している。(2009年5月23日付日刊自動車新聞より)