Autoliv, Inc. 2017年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2017年
12月期
2016年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 10,382.6 10,073.6 3.1 1)
営業利益 605.3 847.7 (28.6) 2)
製品群別売上高
エアバッグ製品 5,342.3 5,255.8 1.6 3)
シートベルト製品 2,793.6 2,665.2 4.8 4)
拘束制御システム 997.3 1,031.0 (3.3) 5)
アクティブセーフティ製品 776.6 738.6 5.1 6)
ブレーキコントロールシステム 472.8 383.0 23.4 7)

要因

1) 売上高
-2017年12月期の全社売上高は、前年比3.1%増の10,382.6百万ドル。為替の影響と買収効果を除くと前年比1.5%増。売上高は欧州・日本・中国・インドで伸びたが、一方北米は減少。

2) 営業利益
-2017年12月期の営業利益は前期比28.6%減の605.3百万ドル。販売費、一般管理費および研究開発費、エンジニアリング費用の増加が収入減の主因。さらにAutoliv日信ブレーキシステム合弁事業に関連したのれん代減損費用や継続的生産調整、独占禁止法事柄の調停等に関連した234百万ドルの一括払いや他の事業売却がさらに営業利益を減少させた。

3) エアバッグ製品
-2017年12月期のエアバッグ製品の売上高は前年比1.4%増の5,342.3百万ドル。インド、日本、中国、南米などでの成長が強く、欧州や韓国は小幅な増収。これらの売上増は北米のインフレーターの交換販売減による販売量の減少により一部相殺された。

4) シートベルト製品
-2017年12月期のシートベルト製品の売上高は前年比4.8%増の2,793.6百万ドル。特に北米や南米を除き、全ての地域で売上が伸びており、特に欧州や日本での販売が強かった。先進的な高付加価値製品の販売増がさらに有利に働いた。

5) 制御コントロールシステム 製品
-2017年12月期の制御コントロールシステム製品の売上高は前年比3.3%減の997.3百万ドル。中国やインドでの販売増が北米、日本や韓国での販売減により一部相殺された。

6) アクティブセーフティ製品
-2017年12月期のアクティブセーフティ製品の売上高は前年比5.1%増の776.6百万ドル。ドライバー支援システムやADAS ECUsのレーダーおよびカメラ等のコア製品の2桁の販売増が主な要因。これら増収分は、北米での位置決めシステム製品や中国でのブレーキコントロールシステムのランプダウン製品の販売減により一部相殺された。

7) ブレーキコントロールシステム
-2017年12月期のブレーキコントロールシステムの売上高は前年比23.4%増の472.8百万ドル。前年比での売上は伸びたが、モデルチェンジの影響で売上高は下がった。



買収

-同社は、スウェーデンのFotonic i Nordenを買収することで合意したと発表した。Fotonic i NordenはStockholmとSkellefteaに拠点を持ち、LiDAR製品およびToF(Time of Flight)カメラの設計、開発、生産を行う企業。今回の買収によって同社は、Fotonic i NordenのLiDAR・ToFカメラ事業部門の約35名のエンジニアを含む、開発及びプロトタイピングに関する知的財産権を取得する。取引は2017年末までに完了する見込みで、Fotonic i Nordenは同社のエレクトロニクス事業部門に統合される。(2017年9月28日付プレスリリースより)



合弁事業

-同社は、ボルボ・カーと同社4月18日、自動運転およびADAS技術開発の合弁会社Zenuityが操業を開始したと発表した。同社は50:50の合弁会社Zenuityに主として現金で約11億クローナ(約135億円)を投資し、ボルボ・カーは主として知的所有権や人的資源の供給を行う。Zenuityは初のADAS関連製品の販売を2019年までに開始し、その後自動運転システムの供給を行う予定。同社は独占的にZenuity製品を第三者に販売する。Zenuityはスウェーデンのヨーテボリ(Gothenburg)に本社を置き、ドイツのミュンヘン(Munich)と米国のデトロイトにも拠点を設ける。当初の従業員数はボルボ・カーと同社からの移籍者と新規雇用あわせて300名となる。中期的には600名超まで増員する見込み。(2017年4月18日プレスリリースより)



事業再編

-同社は、エレクトロニクス事業部門を2018年第3四半期に独立化させると発表した。同社のエレクトロニクス部門はアクティブセーフティ(自動車用レーダー、運転アシストシステム用カメラ、ナイトビジョンシステム、ポジショニングシステム)、抑制制御(エアバッグ等)、センサー、ブレーキシステム事業で構成されている。独立後、パッシブセーフティ事業は引き続き同社の名称のもと事業展開し、その他の事業については新会社の名称で操業する見込み。両社とも本社はスウェーデンのStockholmに置く。(2017年12月12日付プレスリリースより)



事業提携

-同社とAdientは、未来の自動車のデザインと自動運転技術の統合に向け、シートがもたらす課題について協力体制をとることで合意したと発表した。両社は、同社の既存のシートに設置されたエアバッグシステムと、自動運転向けのシート配置を統合したEuro NCAPに適合する新たなファーサイドシステムを開発する。このソリューションの市場投入は2018年下半期を予定している。今後は、安全性、快適性、利便性を向上させるために高度な統合ソリューションの共同開発を計画中。また旅行や通勤手段等に関わらず、必要であれば非自動車業界への使用拡大についても調査を進めるという。(2017年9月12日付プレスリリースより)

-同社は、自動運転用センサーの実用化に向け、LiDARセンサー企業のVelodyneとの提携で合意したと発表した。VelodyneはLiDARセンサーの開発で同社をサポートする。提携による初のアプリケーションはRoboTaxiに搭載される予定。同社はVelodyneのコア3Dソフトウェア技術および同社製品に組み込まれたLiDAR用のASICを用いてLiDARセンサーの開発および検証を行う。(2017年7月3日付プレスリリースより)



最近の開発

-同社は、デジタル輸送ベンチャー キャピタルファンドのAutotech Venturesに15百万ドルを出資すると発表した。今回の出資により同社は、アクティブセーフティおよび自動運転分野に焦点を当てる。Autotech Venturesはソフトウェアとサービスに特化したベンチャーキャピタルファンド。(2017年6月30日付プレスリリースより)



受注

-2017年の主な受注

メーカー/モデル名 搭載部品
Jeep Compass ステアリングホイール付きドライバーエアーバッグ、インフレ-タブルカーテン、プリテンショナー付きシートベルト、レーダーシステム
ホンダ 「Accord」 助手席用エアーバッグ、サイドエアーバッグ、プリテンショナー付きシートベルト、ブレーキシステム、レーダーシステム

ホンダ 「Odyssey]

助手席用エアーバッグ、二-エアーバッグ、サイドエアーバッグ、インフレータブルカーテン、プリテンショナーとレーダーシステム付きシートベルト
Mercedes-Benz 「S-Class」 レーダーシステム、モノカメラシステム、ステレオカメラシステム、ナイトビジョンカメラ、ADAS ECU、プリテンショナー付きアクテイブシートベルト、ベルトバッグ、ケーブルカッター
Mercedes-Benz [E-Class Coupe/Cabriolet」 ステアリング付きドライバーエアーバッグ、助手席用エアーバッグ、二-エアーバッグ、プリテンショナー付きアクテイブシートベルト、ADAS ECU、レーダーシステム、カメラシステム
Tesla 「Model 3」 助手席用エアーバッグ、サイドエアーバッグ、二-エアーバッグ、インフレータブルカーテン、プリテンショナー付きシートベルト
Wey 「VVC/VV7S」 ステアリングホイール付きドライバーエアーバッグ、助手席用エアーバッグ、サイドエアーバッグ、インフレータブルカーテン、プリテンショナー付きシートベルト、セーフティエレクトロニクス
Volvo 「XC60」 ステアリングホイール付きドライバーエアーバッグ、プリテンショナー付きアクテイブシートベルト、ケーブルカッター、チャイルドシート、セーフティエレクトロニクス
Genesis 「G70」 ドライバーエアーバッグ、助手席用エアーバッグ、二-エアーバッグ、サイドエアーバッグ、インフレータブルカーテン、プリテンショナー付きシートベルト、セーフティエレクトロニクス

-同社は、自動運転用高解像度77GHzレーダーシステムが吉利汽車に採用されたと発表した。2017年初め、同社は吉利汽車から単眼カメラシステムも受注しており、レーダーとカメラは自動運転の進歩において不可欠となっている。同社の高解像度レーダーは検知ポイントを増加することによって、複数の対象物間の空きスペースや死角警報、後方交通警告を正確に検出する能力が改善されている。77GHzレーダーシステムにより高速道路走行時の自動車線変更が可能になる。また単眼カメラは車両や道路標識等を認識する先進的な画像処理アルゴリズムで構成されており、北米、欧州および中国でNCAPの安全基準5つ星を獲得している。(2017年9月14日付プレスリリースより)



受賞

-同社は、未来のアーバンモビリティの安全に関するFCAの先進的プロジェクトへの貢献が評価され、FCAから「イノベーションアワード」を受賞したと発表した。同社とVolvo Carsの合弁会社で自動運転車用のソフトウエア開発会社Zenuityも、同賞をともに受賞した。同社とZenuityは、都市環境における小型自動車の安全を実現する先進的なアクティブセーフティや先進運転支援システム(ADAS)向けのハードウエア、ソフトウエアの開発が評価された。 (2017年12月14日付プレスリリースより)

-同社のセンシング診断モジュールが「GM Supplier of the Year」を受賞したと発表した。同賞の受賞は6度目となる。同社の2016年の売上高のうち、GM向けが10%を占めている。年間約400万台のGMの車両に今回受賞のセンシング診断モジュールが搭載されている。(2017年4月5日付プレスリリースより)



2018年12月期の見通し

-2018年12月期の売上高は前年比約11%増と予測。本業での売上増加が7%、為替の影響が4%増と見ている。



研究開発費

(単位:百万ドル)
2017年
12月期
2016年
12月期
2015年
12月期
研究開発費 741 651 524
売上高に占める割合 (%) 7.1 6.5 5.7

-2017年12月期、研究開発費総額の2%を超える単一プロジェクトは無い。

-将来、同社はパッシブセーフティ関連での売上高に占める研究開発、エンジニアリング費用をこれ以上増やさない。一方エレクトロニクス関連の研究開発、エンジニアリング費用はさらに増やす予定。



研究開発体制

-2017年、1,000名の技術者を採用した。2017年末迄に研究開発要員は約9,000名。



研究開発拠点

-以下10カ国に25のテクニカルセンターを保有:

  • 中国
  • フランス
  • ドイツ
  • インド
  • 日本
  • ポーランド
  • ルーマニア
  • 韓国
  • スウェーデン
  • 米国

-同社は、EricssonやVolvo Cars、Volvo Group、Zenuityと、スウェーデンのLindholmenサイエンスパークに「MobilityXlab」を開設したと発表した。新技術の共同開発やスタートアップとの協力を推進し、スウェーデンの自動車関連企業が一体となって、将来の交通システムに対する競争力向上を図る。「MobilityXlab」は、イノベーションラボと展示スペースから成り、AutolivとVolvo Carの合弁会社である自動運転車のためのソフトウエア開発会社Zenuityと建物を共有する。(2017年10月3日付プレスリリースより)



研究開発活動

-同社は、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のAgeLabと、2年間の共同研究に合意したと発表した。半自動運転車のプロトタイプを開発し、人工知能(AI)を自動車空間で実証するのが目的。人間と機械の効果的なコミュニケーションや移動を可能にする、ディープラーニング(深層学習)アルゴリズムの開発や現実世界の評価が研究の中心となる。ドライバーの視線や感情、眠気、手の位置、姿勢などの情報と運転環境とを融合させ、安全で信頼できる自動車作りを目指す。共同研究の成果は、同社とVolvo Carsの合弁会社である自動運転車のためのソフトウエア開発会社Zenuityが、ソフトウエアの開発に使用する見通し。(2017年10月11日付プレスリリースより)



技術提携

-同社、ボルボと両社が折半出資した自動運転開発合弁会社のZenityは、2021年までにレベル4の自動運転車の市場投入を目的として次世代の自動運転技術を開発するために、米国のNVIDIAと提携すると発表した。今回の合意では、同社、ボルボ、Zenityが独自の先進的ソフトウェア開発の基礎として、NVIDIAのAI車載コンピューティング・プラットフォームを使用するという。4社は、運転環境の中で対象物を認識し、起こりうる脅威を予想し、安全に車両を誘導するために、AIの一つであるディープ・ラーニング(deep learning: 深層学習)を活用し、協力してシステムを開発する。自動運転システムは、リアルタイムで運転状況を既存の高解像度マップと比較し、安全なルートを計画することができる。また、カメラからの情報を加えて車の完全なアラウンドビューを作成するなどの重要な機能を遂行する。(2017年6月27日プレスリリースより)



製品開発

CES 2018でのラーニングインテリジェントビーイクル (LIV) 2.0
-同社は、米ラスベガスで開催される「CES 2018」で、最新の研究車両「Learning Intelligent Vehicle (LIV) 2.0」を公開すると発表した。「LIV 2.0」は、ドライバーや同乗者の声や手の動きをセンサーで追跡し、彼らの指示や気持ちを感知・伝達する、言わば「5人目の乗員」。中心となっているのは、ヒトとクルマの効果的なコミュニケーションを可能にするディープラーニングのアルゴリズムで、センサーが感知したドライバーの視線や姿勢、眠気などの情報と外部環境に関するデータを統合し、さらなる安全運転に役立てるとしている。 (2017年12月19日付プレスリリースより)

第6世代ロードスケープ GNSS モジュール
-同社は、CES 2017において、第6世代となるロケーション・ポジショニングモジュールを発表する。同社は、北米、欧州、ロシア、中国、日本のシステムをサポートするRoadScape GNSSモジュールを搭載した全地球型測位システム (GNSS) を新たに導入する。GNSSモジュールは2017年に生産を開始する予定であり、エンジニアリング・サンプルも用意されている。改良されたGNSSポジションニングをデジタルマップデータ上の道路情報 (道路標識、カーブ、丘、トンネルなど) と組み合わせることにより、高度運転支援システム (ADAS) に用いられるline-of-sightセンサーの性能を大幅に向上する。同社のRoadScape Horizonモジュールと評価キットは業界基準を満たすコンパクトで強力なソリューションであり、特別に設計された効率的なADASデジタルマップによって、優れたGNSSポジショニングと道路属性を表示する。ADAS Horizonソフトウェアは2017年に導入され、またASIL-B Horizonモジュールは2019年に生産を開始する予定。(2017年1月4日付プレスリリースより)



特許

-2017年12月時点、自動車安全および主要な支援技術に関する6,900件以上におよぶ広な特許を保有。



設備投資額

(単位:百万ドル)
2017年
12月期
2016年
12月期
2015年
12月期
合計 570 499 450
売上高に占める割合 (%) 5.5 5.0 4.9

-2017年12月期、同社は欧州、北米や中国において成長と垂直統合を支援する生産能力への投資を継続。

スウェーデン以外での投資

<米国>
-同社は、22.6百万ドルを投資してミシガン州Southfieldに工場を新設すると発表した。広さ180,000平方フィートの新工場は、現在4工場を操業する同社のミシガン州の子会社によって運営が行われる。同社はオハイオ州、ユタ州などの候補地の中からミシガン州を選択、Michigan Strategic FundはMichigan Business Programに基づいて実績ベースで2.6百万ドルの補助金を助成する。(2017年6月27日付 Michigan Economic Development Corporationより)