Autoliv, Inc. 2011年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
2011年
12月期
2010年
12月期
増減率
(%)
要因
売上高 8,232 7,171 14.8 1)
営業利益 889 869 2.3 -


要因

1) 全社
-2011年12月期の全社売上高は、前年比15%(1,061百万ドル増)の増加。主に本業の売上が9% (631百万ドル増) 増加したことが要因。その他にも、為替差益 (321百万ドル増)、買収効果 (110百万ドル増) も増収要因。本業の売上は、前年比9%増加したが、これは全世界の小型乗用車の生産台数 (LVP) の増加率より6パーセンテージポイント高い。韓国、中国および北米市場で堅調に推移したことが大きく寄与。

製品別
エアバッグ
-エアバッグ製品の売上は、全世界のLVPが前年比3%の増加に対して、8%の成長を見せた。フロントエアバッグ市場より成長速度が速いサイドエアバッグ市場で堅調に推移したことが寄与。

シートベルト
-シートベルト製品の売上は、拡大する中国市場において市場シェアが増加したことにより、全世界のLVPの増加率の2倍以上である7%の成長を達成。

アクティブセーフティ
-アクティブセーフティの売上は、前年の85百万ドルからほぼ2倍の160百万ドルに増加。Chryslerから新規レーダー事業の受注を獲得したこと、Mercedesからの同社製品のオプション採用率が増加したことが主な要因。

企業買収

-米国の化学繊維会社Millikenより、エアバッグクッションのカットソー設備を買収すると発表。カットソー素材のエアバッグクッションの生産能力拡大に向け、レーザーカッター、ミシンなどの機械設備を取得するもの。これらの機械設備では、年間約7百万個のエアバッグクッションを生産することが可能。これは、世界市場で同社製エアバッグシステムに必要な布製クッションの約7%にあたる。なお、同社は米州において、カットソー素材のエアバッグクッションの生産能力を、今後3年間で8百万ユニット以上(30%超)拡大する計画。(2011年11月16日付プレスリリースより)

事業提携

-同社と長城汽車(Great Wall Motors)は戦略的提携契約を締結した。アクティブ/パッシブセーフティシステム分野における技術協力を目的とする。同社と長城汽車は、2003年より協業を開始。同社は長城汽車の「Haval SUV」向けシートベルト、「Florid」、「Coolbear」、「Voleex C30」向けパッシブセーフティシステムを開発・生産している。また、2009年には「Florid」と「Coolbear」にAutoliv製エアバッグが採用されている。(2011年7月6日付プレスリリースより)

事業概況

-レーダーやビジョンシステムなどアクティブセーフティシステムに関して、2015年の売上目標を5億米ドルと発表した。これは、世界市場シェアの約30%を占める。(2011年11月15日付プレスリリースより)

-2011年におけるパイロテクニックセーフティスイッチ(PSS)の生産量が1.6百万ユニットに達する見込みと発表した。主にラグジュアリーモデルが対象。この生産量は今後3年間で、2倍以上になる見通し。PSSは、起爆装置を用いた自動安全スイッチで、衝突時に一部の電源を遮断する。エアバッグと同様のクラッシュセンサーで作動。電力を遮断することで、損傷を受けた電気系統による発火の可能性を最小限にする。(2011年9月15日付プレスリリースより)

受注

-2012年型Fiat 「500」の北米・南米仕様車向けパッシブセーフティシステムを受注したと発表。フロント・リアシートベルト、前面エアバッグ (運転席・助手席・運転席側ニーエアバッグ)、サイドエアバッグ (骨盤・胸部保護用)、サイドカーテンエアバッグ (頭部保護用)、ステアリングホイールを供給する。この新型「500」はChryslerグループのメキシコToluca工場で生産。なお、同社は欧州仕様のFiat 「500」向けに、助手席用エアバッグおよび運転席用ニーエアバッグも納入している。(2011年5月16日付プレスリリースより)

受賞

-Autoliv Spainが4年連続でFordより「World Excellence Awards」の「Gold Award」を受賞したと発表。また、Autoliv Canadaの安全拘束エレクトロニクスユニット (safety restraint electronics unit) が「Silver Award」を獲得した。(2011年5月26日付プレスリリースより)

-トヨタの2010年「Excellence Award」を「Value Improvement」部門で受賞した。また、Autoliv Japanも品質面での貢献が認められ、トヨタから表彰を受けた。Autolivは現在、あらゆる地域でトヨタの拠点にエアバッグ、シートベルト、ステアリングホイールを供給している。(2011年3月11日付プレスリリースより)

-同社はAutoliv Koreaが現代・起亜より2010年「HKMC Supplier of the Year」を受賞したと発表。Delphi Koreaから買収した乗員パッシブセーフティ (OPS) 製品が評価されたもの。2011年に入って、Autolivは既に他のアジアのカーメーカーから3つの賞を獲得している。(2011年1月19日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
2011年
12月期
2010年
12月期
2009年
12月期
合計 568 490 428

- 2012年の研究開発費は、60百万ドル以上増加すると見込む。主にアジアの生産能力の増強に投資し、アクティブセーフティ分野を強化する方針。

研究開発体制

-同社の研究開発は約50のグループで構成されており、トップダウンアプローチで実際の交通状況に即した安全性向上策を研究している。
-約4,400人のエンジニアが製品開発、アプリケーションエンジニアリングに従事。
- 9カ国、17拠点にテクニカルセンターを保有。

技術提携

-ドイツのASTYX Communications and Sensorsより、長距離レーダーに関する技術供与を受けると発表した。同社の短距離・中距離レーダー技術を補完する目的で、ASTYXのデジタルビームフォーミング(DBF)方式の77 GHz長距離レーダー (ハードウェアおよびアルゴリズム)について、独占ライセンスを取得する。今後この技術は、フルスピードアダプティブクルーズコントロール(SPACC) システム、緊急ブレーキ (EB) システムに活用される予定。なお、Autolivの24GHzレーダーは、主に死角検知システム(BSD)、後方警報システム (RCTA)、衝突緩和ブレーキ (CMbB) に採用されている。(2011年9月13日付プレスリリースより)

-Hella KGaA Hueck & Co.のドイツ子会社Hella Aglaia Mobile Vision GmbHより、自動車用ビジョンシステムに関する技術供与を受けると発表。Hella Aglaiaが有する道路標識認識システム、車線検知システム、光源認識システムに関するモノビジョンベースのアルゴリズムについて、独占ライセンスを取得する。また両社は、乗用車・トラック向けセーフティシステムの共同開発を進めていく計画。カメラベースの次世代システムに含まれる前方衝突警告システム、歩行者検知システムが対象となる。Autolivは2012年初めまでに、Hellaの技術を同社製品に採用したい考え。(2011年4月19日付プレスリリースより)

製品開発

-自動車のブレーキシステムの制御装置と乗員拘束システムの制御装置を統合した新システムを開発した。ブレーキ制御システムは、横滑り防止装置(ESC)、アンチロックブレーキ(ABS)、トラクションコントロールシステム(TCS)など安全機能の提供が可能。これらの制御システムの統合による効率化で、自動車メーカーは大幅なコスト削減を実現。従来の分離型システムに比べて性能を向上させた。このシステムに関して、同社は既に受注を獲得している。なお、同社は2008年に初めて、ESC慣性センサーと、エアバッグや拘束システム用の制御エレクトロニクスを統合したシステムを開発した。(2011年10月25日付プレスリリースより)

-BMW向けにモノビジョンセンサーシステム(MVSS)を開発した。セーフティー機能と運転支援機能を組み合わせたもので、リアビューミラーとフロントガラスの間に搭載されるカメラや、オランダのMobilEye製チップ「EyeQ2」を搭載したECUなどを含むシステム一式を提供する。このシステムには、前方車両との衝突危険性や車線逸脱をドライバーへ警告する前方衝突警告機能が搭載されている。この他には、夜間運転の安全性を高める自動ハイビーム/ロービーム切り替え機能(Automatic High Beam Switching)、速度規制などの情報を提供する交通標識認識システムが含まれる。(2011年9月14日付プレスリリースより)

-ESV(Enhanced Safety of Vehicles)国際会議において、同社の新型フロントガラスピラーに関する試験結果を発表した。フロントガラス用の拡張型ルーフピラーに関して、従来のフロントガラスピラーに比べて3分の1の薄さを実現。これにより、ドライバーの視角が25%拡大し、10%の軽量化に繋がる。さらに、衝突時にはエアバッグ技術を利用して拡張。ガス発生装置がピラーを広げると、ピラーの剛性が45%アップするという。(2011年6月14日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
2011年
12月期
2010年
12月期
2009年
12月期
合計 357 224 130
売上高比率 4.3 3.1 2.5

海外投資

<ブラジル>
-ブラジルSao Paulo近郊のTaubate工場において、ステアリングホイールの生産能力を拡大すると発表。ステアリングホイールの成形・組立能力をこれまでの2倍となる1百万ユニットにするとともに、ステアリングホイールアーマチュアのダイカスト能力も拡大する。投資額は9百万米ドル。同社は、Taubate工場でのステアリングホイール生産を12年前に開始している。現在は従業員77名が勤務し、フル稼働時で100名近くに増員する見込み。Autoliv South Americaでは、南米市場向けにエアバッグ・シートベルト・シートベルトウェビング・ステアリングホイールの生産を行っている。主要納入先は、Volkswagen、Ford、Peugeot、GM。さらにTaubate工場では、エアバッグインフレーターの生産も開始する計画。(2011年6月13日付プレスリリースより)

<タイ>
-タイBangkokの近郊に位置するChonburiにエアバッグクッション工場を建設開始したと発表。同社は、2年前にもタイにエアバッグクッション工場を開設している。新工場ではカットソー素材のエアバッグクッションを生産する計画。生産能力は4.6百万個で、同社の世界生産能力の15%を占める。既存工場の面積2,000平方メートル、従業員数270名に対して、新工場の面積は8,000平方メートル、従業員数は800名。30,000平方メートルの敷地に建設される新工場は今後、工場面積を6,000平方メートル拡張し、生産能力を10百万個超まで拡大できるという。今回の投資額は9.4百万米ドル。2011年7月に生産開始の見込みとなっている。同社のアジア向けカットソー素材エアバッグクッションのうち、この新工場と中国工場を合わせると、50%を生産することになる。 (2011年5月31日付プレスリリースより)

<中国>
-中国広東省広州(Guangzhou)市のエアバッグ・シートベルト工場の拡張を開始したと発表。投資額は4百米ドル弱。この拡張により床面積は約70%拡大する。既存工場は2008年に稼動開始し、現在は従業員800名が勤務。拡張完了後は150名が増員される見込み。同工場は、中国国内市場および日本市場へエアバッグ・シートベルトを供給している。主要納入先はホンダ、日産、マツダ、トヨタなど。(2011年4月13日付プレスリリースより)

-中国江蘇省南京市(Nanjing)でシートベルト新工場の建設を開始したと発表。この新工場は、同市内の既存工場に取って代わる予定。第一フェーズにおいては、既存工場に比べて面積が50%拡大する見込み。面積66,000平方メートルの敷地購入費用を含め、投資額は10百万米ドルに達する。現在800名が勤務する同拠点は、拡張完了時には200名増員される予定。なお、現在の主なシートベルト納入先は上海VW(Shanghai VW)、上海GM(Shanghai GM)、神龍汽車(Dongfeng Peugeot Citroen)、奇瑞汽車(Chery)、吉利汽車(Geely)、上海汽車(SAIC)となっている。(2011年4月1日付プレスリリースより)

-中国の吉林省長春(Changchun)市で新工場を建設開始したと発表。この新工場は、同市内の既存工場に取って代わる予定。投資額は6百万米ドルで、既存工場に比べて2倍以上の床面積になる見込み。同工場ではシートベルト、フロントエアバッグ、サイドエアバッグを生産している。納入先は、一汽大衆(FAW-Volkswagen)、一汽轎車(FAW Car)、長城汽車(Great Wall)、北京奔馳汽車(Beijing Benz Automotive)、華晨宝馬汽車(BMW Brilliance Automotive)、上海通用(瀋陽)北盛汽車(Shanghai GM (Shenyang) Norsom)。また、同社は最近、中国エレクトロニクス工場の拡張も発表した。同社は現在、技術センター1拠点を含む10拠点を中国に所有している。(2011年3月29日付プレスリリースより)