Autoliv 2006年度の動向

ハイライト

業績

(単位:
百万ドル)
2006
年度
2005
年度
増減率
(%)
要因

売上高

6,188 6,205 (0.3) 下記1)参照
営業利益 520 513 1.4 下記2)参照


要因

1) -2006年の売上は、中小型車量の生産が、西欧で2%、北米で3%減少したことにより、17百万米ドル減(0.3%減)の6,188百万米ドル。為替による影響は軽微。
‐サイドカーテンエアバッグのシェアアップ、アジア及び東欧での市場成長、ステアリングホイール及び安全用電子システムでのシェアアップがプラス要因。売上減は、西欧及び北米での車両生産減、継続的価格値下げ、一部モデルのフロントエアバッグ供給契約の終了、不採算製品の生産打ち切り、と言った収益圧迫要因を、プラス要因で完全にカバーすることができなかった事による。
‐エアバッグ関係製品は1%の減、主に北米及び西欧の中小型車の生産減による。価格の値下がり、一部モデルのフロントエアバッグ供給契約の終了、不採算製品の生産打ち切りも影響があった。
-シートベルト関係製品の売上は横ばい。北米及び西欧での中小型車両の生産減による影響を、主に成長市場での伸びとプロアクティブシートベルトプリテンショナーの導入で相殺した。
- 同社の売上(企業買収や為替変動の影響を含む)は、2002年以来約39%増加。同時期の欧州、北米及び日本の3主要地域の中小型車の生産の伸びは3%。
2) -営業利益率は、2005年度の8.3%に対し、価格値下げプレッシャー、原材料のコストアップにもかかわらず、2006年度は8.4%と同水準を維持。
-2006年度、同社は購入品コストを3%以上削減、労働生産性は5%以上アップ、1,000人以上の雇用を低コスト生産国に移転した。

地域別
-売上の約50%を占める欧州では、西欧の中小型車両の生産の減少、価格の値下げ、製品ミックスの悪化、一部モデルのフロントエアバッグ供給契約の終了により、5%減少。
-売上の4分の1を占める北米では、中小型車の生産減にもかかわらず前年並みを維持。カーテンエアバッグその他のサイドエアバッグが好調、カスタマーミックスの改善、安全用電子システムでのシェアアップもあったが、価格値下げ、一部モデルのフロントエアバッグ供給契約の終了、不採算製品のインフレーターの生産打ち切りにより相殺された。
-売上の10%近くを占める日本では、市場での中小型車生産6%の伸張に対し、10%の売上増。カーテンエアバッグの需要増とステアリングホイールのシェアアップが主な原因。
-売上の10%強を占めるその他市場では、車両の生産好調とエアバッグの売上の28%増により、15%増加した。

受注
-2006年6月、同社はこれまでに受注した最大のシートベルトのオーダーよりも40%大きなオーダーを受注した。この受注は合計で約600百万ドルの売上となると期待されている。グローバルな自動車大手企業よりの受注で、世界的な規模を持ち、複数のモデルに亘る。最初のモデルは2008年秋に出荷が開始され、2010年までに順次他のモデルに拡大される。打ち切りもモデルごとで、2015年に最終打ち切りとなる。このシートベルト・システムは、衝突前にシーベルトを引き締めるプリテンショナーと、激しい衝突の際に打撲や肋骨骨折の危険を減らすロード・リミターとを含んでいる。同社 の中国、ルーマニア、ポーランド、ハンガリー及びメキシコの工場で生産される。

企業買収
-2006年7月、中国のシートベルトメーカーNanjing Honggouang-Autoliv Safety Systems Co., Ltd. (NHA)に追加投資して20%を新規に獲得、株式保有を70%とした。
-2006年12月、Autolive Philippines Inc.の株式9%を追加取得し、100%所有の子会社とした。

環境対策
‐同社としては、環境に優しい軽量の安全システムの設計・開発が、環境に対する最重要事項と認識。2006年には、1998年に初めて導入したときに比べ38%軽量化したサイドカーテンエアバッグを導入。
同社の最新の助手席エアバッグは、前々回モデルに対し30%軽量化されていた前モデルに対し更に25%の軽量化を達成。この2例のみでも、年間10,000トンの削減(主にスチール)を達成しており、そのサプライチェーン全体での環境改善に貢献している。

2007年度の計画

-2007年度、同社はコスト削減、低コスト生産国への生産移転、及びサプライヤーの集約を継続。インドにおける最初のエアバッグ工場の建設、中国南部での、主に日本の自動車メーカーの中国及び日本の工場に供給するための工場の建設等により、アジアでのプレゼンスを一層強化する。
‐同社は、メキシコでも更に一工場、ルーマニアでも受注を満たし、かつ低コスト生産国での能力増強のため一工場が必要と考えている。
‐研究開発の分野では、次世代夜間走行システムの開発をスタートさせ、アクティブセーフティの可能性を更に追求する。

展望
-2007年度、欧州、北米、日本の主要3地域での中小型車両の生産は横ばい、但し西欧重要市場では4%減と同社は見ている。同社は、この減少を、欧州及び北米での車両ミックスの改善、サイドカーテンエアバッグの導入拡大、及びアジアを中心とする成長市場での好調の継続により相殺できると考えている。この前提で、同社は2007年度、売上は最低3%の増を見込んでいる。
‐この売上増と、内部コストの削減により、粗利は前年並みを維持、構成部品のコストの原低の可能性(既に採算の悪化している納入メーカーの収益を圧迫することなく)如何では若干の改善を見込んでいる。
‐売上との関係で増加傾向にある研究開発及びエンジニアリング費用は、今後も引き続き増加する見ている。アジア(主に中国)での工場立ち上がりコストは、2006年の水準から25百万米ドル近く増加すると想定されるが、将来のコストダウンのためには必須と考えている。またAutoliv-Mandoの100%株式取得のための残存株式の買収により、12百万米ドルの償却費が増加(漸減するが2010年まで)する。これら2件は2006年に決定されている。35~40百万米ドルのこれら追加コストは約0.6%ポイントのマイナス要因となるが、8.0%を越える営業利益率を達成できると同社は見ている。

開発動向

単位(百万ドル) 2006 2005 2004 2003 2002

研究開発費

398 386 368 305 229

-2006年度の研究開発費と顧客の対応エンジニアリング費の総額は7%増の507百万ドルで、売上高の8.2%に相当(2005年度 同7.7%)。2006年度の当該経費中、106百万ドルは顧客基金課目のエンジニアリングプロジェクトと衝突テスト関連経費。純経費は売上の6.4%相当(2005年度 同6.2%)の$398百万を計上。

研究開発体制
-2006年7月、欧州の顧客向けの電子技術開発のための技術センターをルーマニアに開設した。上海にアジア市場向けの最初の電子工場と技術センターを開設して以来、同社は低コスト国での電子事業への投資先を検討していた。欧州市場向けの新しい技術センターはTimisoaraに設立された。この新しいルーマニアのセンターは主にソフトウエアのエンジニアを中心に、最終的には100人を越える従業員を雇用し、当初は電子安全技術、特にソフトウエアの開発と検証にフォーカスする。

新製品開発
-2006年9月、、車体安定のセンサー機能をエアバッグのコントロール・ユニットに統合する、新しい電子安全技術の開発・供給契約を獲得した。この世界初の電子技術のアーキテクチャーにより、安全関係システムが簡素化され、大きなコスト削減につながる。

-2006年10月、同社の新しいシート・クッション・エアバッグは新規に導入されたLexus LS460のキーとなる技術として認められた。同社は、その”世界初の後部座席用前方エアバッグ”によりトヨタの技術賞(Toyota Technology Awared)を受賞、トヨタの田原工場でトヨタの代表より、Autoliv Japan に授与された。シート・クッションに装着されるこの新しいエアバッグはシートベルト・システムと連携して作動し、衝突時の衝撃を分散し、後席乗員の被害を軽減する。新しいコンセプトにより、このエアバッグは、従来型に比べ、サイズ及び重量の大幅低減にも成功している。

-2006年10月、同社の新しいセーフティ・ベント(安全のための通風孔のある)エアバッグは、最近オートモーティブ・ニュースによる、革新技術のための第13回PACE賞の最終選考に選ばれた。新技術は膨らんだ助手席エアバッグに非常に近い位置にいる乗員の怪我の危険性を軽減すると共に、今後数年に亘り自動車業界全体に大幅なコスト削減をもたらすことができる。この新技術は最近北米のDaimlerChryslerにより採用され、既に20件以上のプログラムで使われている。エアバッグは毎年何千もの人命を救っているが、子供、小柄な女性、その他助手席に想定外のポジションで座っている人、すなわち膨らんだエアバッグに対し近すぎる位置にいる人に危険を及ぼすことがある。この新しいセーフティ・ベントエアバッグ技術はこういうエアバッグ関連のリスク軽減を目指している。

2005年9月、フランクフルトモーターショー出展
-夜間には既存のロービームヘッドライトでは100メートル先も見えなかったのに比べ、運転手が最高300メートルまで見通せるシステムをBMWグループと開発した旨、9月に開催されたIAAフランクフルトモーターショーにて発表した。このシステムの軸となるのが物体や生物から発せられる熱を感知するカメラの性能である。きわめて感度が良いので、ランプやイルミネーションがないまったくの暗闇でも見通すことができる。そのため、ヘッドライトのビームや他の赤外線ナイトヴィジョンシステムの赤外線ビームに視界が左右されなくなる。このシステムはフランクフルトモーターショーで初公開され、The BMW Night Vision Systemとして2005年後期からBMW 7 seriesに搭載される。

設備投資

単位(百万ドル) 2006年度 2005年度 2004年度
設備投資費用 328 315 324
売上高比 5.3 5.1 5.3

‐投資額は、自動車の安全関係市場の成長と生産能力増強のため、当年の減価償却を上回っている。
‐2007年の投資額は、325百万米ドルから350百万米ドルと同社は見込んでいる。

海外投資
-2006年4月、安全電子機器の工場としては世界で5番目、中国の工場としては8番目の工場を開設。新工場は上海にあり、成長を続ける中国市場向け及び韓国や日本といった他のアジア市場向けに主としてエアバッグコントロールユニットを生産する。また、製造コストの高い国にある他の工場向けに下請け生産も行なう。中国に於ける新規投資は、低コスト国の生産拡大を意味する。同工場の従業員数は300名で、エアバッグシステム用電子制御ユニットの年間売上を20%近く増加する能力を持つ。

-2006年5月、エアバッグ・インフレーターの工場を開設、これは同社の中国における9番目の製造工場であり、グローバルには6番目のインフレーターの工場である。この新工場は上海にあり、急速に発展する中国及びその他韓国、日本などのアジア市場向けに、エアバッグ・インフレーターを供給する。投下資本は現行拡張フェーズで合計50百万米ドル、今後2~3年の同社のエアバッグ・インフレーターの需要に見合う能力を満たすものと考えられる。同工場はフル操業時点で500人以上の従業員を雇用。同社のグローバルなエアバッグ・インフレーターの生産能力を20%アップさせ、年間100百万個近い能力となる。中国で生産されるインフレーターの大部分は同社自身のエアバッグに使用されるが、5-10%は他のエアバッグの組立て会社に販売される。同社のエアバッグの顧客は、Nissan, Mazda, Hyundai, General Motors 、及び華晨汽車、長安汽車等の中国自動車メーカー等である。

-2006年9月、コスト低減政策の一環として、トルコでの事業を拡大、2つの新工場をオープンした。1番目の工場は、フル稼働時、年間100万個のステアリング・ホイールの生産能力を持つ。これは、現在の同社の欧州に於けるステアリング・ホイールの生産能力の約5分の1に当たる。この新工場は、ポリウレタン・フォームと皮巻きのステアリング・ホイールの2種類を生産する。現在、トルコAutoliv は、エアバッグとシートベルトの組立工場で、同時にポリウレタンのステアリング・ホイールも生産しているが、この新工場への移転により、ステアリング・ホイールの生産は拡大し、現工場はその空いたスペースで、エアバッグとシートベルト販売の増大に対応する。新工場はイスタンブール郊外のGebzeにあるTaysad 工業ゾーンにあり、建屋は4,000平方メートル(約40,000平方フィート)。2番目の工場は、同じサイトに2,400平方メートル(約24,000平方フィート)。シートベルト・リトラクターの巻き取りカセットを組み立てる。フル稼働時、30百万個を越えるカセットの生産能力を持つ。これは現在の業界全体のグローバルなカセットの生産能力の10%近くになる。