武蔵精密工業 (株) 2017年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2017年
3月期
2016年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 180,522 164,397 9.8 -買収したHAYグループの業績加算及び中国・インドネシアを中心としたアジア地域の増加により増収。
営業利益 11,166 13,398 (16.7) -円高影響、買収費用、無形固定資産およびのれんの償却費の計上により減益。
経常利益 10,323 11,449 (9.8)
親会社株主に帰属する当期純利益 6,315 6,809 (7.3)

事業動向

<欧州>
-HAYグループの買収により欧州有力顧客網への販売を促進し、パワートレイン事業における商品ラインアップを拡充し、当社グループの技術の融合による商品開発力の強化に着手する。

<北米>
-米国及びカナダの現地法人内にテクニカルセンターを開設し、北米市場に密着したパワートレイン事業およびリンケージ&サスペンション事業の商品開発体制の拡充を行った。

買収

-2016年5月、Hay Group各社の持ち株会社であるHay Holding GmbHの全株式を取得することでThe Gores Groupと合意。取得金額は361百万ユーロ。2016年6月30日に買収手続きを完了した。Hay Groupは、ドイツに本社を持つ鍛造・機械加工メーカー。ドイツ、ハンガリー、スペインの欧州3カ国8拠点よりエンジン部品やギア部品などの供給を行っているほか、中国では新たに鍛造工場の稼働を開始した。(2016年5月9日付プレスリリースより)

-2016年8月、Hay Holding GmbHに住友商事が資本参加することで基本合意したと発表。住商は武蔵精密が全株保有しているHay Holding GmbHの株式の25%を取得する。武蔵精密が持つ技術開発力と住商の営業力などのノウハウを融合することで、Hay Holding GmbHの事業基盤を強化する方針だ。(2016年8月13日付日刊自動車新聞より)

-Hay Holding GmbHの技術

  • 高速大量生産を可能とする、ハテバ社製鍛造機
  • 3,000~5,000トンの大型鍛造インフラ
  • 世界最高レベルの冷間精密鍛造技術 (冷間シャフト)
  • 独自のローリング鍛造技術とインフラ (リング形状ギア)

-買収により、主に欧州生産拠点が強化される。欧州地域向け売上高比率が33.2% (2016年3月期4.0%) となる見通し。

-2016年12月26日付のBangkok Postは、タイのコングロマリットであるSiam Cement Group (SCG)は自動車部品事業を売却し、コアビジネスのセメント事業に集中すると報じた。SCGは、自社が保有していたMusashi Auto Parts Co., Ltd.の株式21%を、日本の武蔵精密工業へ売却する。売却額は9億7,000万バーツ (約32億円) になる見込みで、この取引でSCGは1億5,000万バーツの特別損失を計上するという。(2016年12月26日付Bangkok Postより)

-同社が全数を保有するドイツのHay Holdingの株式25%の住友商事への譲渡手続が2017年3月31日に完了したと発表した。今回の譲渡の対価は81.6百万ユーロ。(2017年4月3日付プレスリリースより)

受注

-2017年3月期の主な受注は以下の通り:

顧客/モデル 製品 生産工場 供給時期
Astra Daihatsu Motor 小型車向けのカムシャフト Musashi Auto Parts Indonesia 2016年6月
Dana 中型車向けのベベルギア Musashi Auto Parts Thailand 2018年中
アイシン・エイ・ダブリュ FF用オートマチックトランスミッション部品 本社 2018年初旬
BYD 四輪車に適用されるボールジョイント 武蔵精密汽車零部件(中山)有限公司
[Musashi Auto Parts (Zhongshan) Co., Ltd.]
2018年中




2018年3月期の業績予想

(単位:百万円)
2018年3月期
(予測)
2017年3月期
(実績)
増減率 (%)
売上高 213,000 180,522 18.0
営業利益 13,000 11,166 16.4
経常利益 12,500 10,323 21.1
親会社株主に帰属する当期純利益 7,800 6,315 23.5


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 2,910 2,373 1,880

研究開発体制

担当部門 役割
開発部 -シャシー系、エンジン系、駆動系商品の開発
-次世代商品に向けた技術開発
-知的財産の管理
生産技術部・塑型技術部 -新生産技術方案の研究開発
-新塑型技術方案の研究開発
九州武蔵精密 (株)
技術部
-二輪、汎用ギア、カムシャフト等の生産技術に関する研究開発

研究開発活動

PT事業部 (Power Train) 商品開発
駆動系商品開発
<デファレンシャル>
-同社の小型・高精度べべルギアを適用し、従来比10%軽量化となる軽量デファレンシャルASSYの量産開発および適用拡大を図っている。
-自動車排気量ごとの軽量デファレンシャルASSYが着実に受注へと繋がっている。
-今後も軽量化開発および現地調達化開発を継続的に行い、新規受注に向けた拡販活動を継続する。

<プラネタリィギア>
-日本で培ったノウハウを各海外拠点へ水平展開し、日本と同等の品質を確保した競争力の高いプラネタリィASSYの量産を開始し、今後は同社の生産技術力を活かした拡販活動を展開していく。

エンジン系商品開発
-品質工学や最新のシミュレーション技術を積極的に取り入れ、効率的な商品開発を行っている。
-環境ニーズの高まりに合わせて進化する製品仕様に無駄なく追従可能な次世代ラインを開発し、新規顧客の獲得、事業の拡大を目指す。

L&S事業部 (Linkage & Suspension) 商品開発
足廻り系商品開発
-環境負荷の低減に更に貢献する為、アルミを使用した軽量化商品の開発・受注活動も推進。
-材料置換による軽量化だけでなく、高精度シミュレーションを活用した軽量化設計の商品開発を継続。

先進技術開発
-ハイブリッド車や電気自動車、電動パーソナルモビリティ向けに高効率、小型、軽量である独自電動ユニットの研究・開発を推進。
-CAEによるシミュレーションやラピッドプロトタイピングを活用した電動ユニットの制御モデル研究。
-ISO26262に基づいた要求機能分析を実施。

生産技術開発
<加工技術開発>
-加工領域においては、自社ブランド商品の現地調達化に向けた最適工程設計の確立を図っている。
-デファレンシャルにおいて、現地の特性を生かした工程設計や現地設備の活用を強力に推進している。
-新たに開発された、軽量・コンパクトな多段オートマティックトランスミッション用の高精度プラネタリィアッセンブリィの製造方法を確立し、日本およびメキシコ工場で量産開始。

<塑型技術開発>
-「ボンデレスによるタイロッドエンドハウジングの成型方法」に成功し、2017年量産開始。
-「HAYとのシナジー効果」をテーマに、武蔵鍛造技術とHAYの独自技術を融合した「世界で戦える最廉価ベベルギヤ」の鍛造共同開発に着手。

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 13,303 9,295 16,324

-2017年3月期 地域別設備投資内訳 (単位:百万円)
地域 新機種対応 増産対応 合理化投資 既存設備の更新 全社
日本 1,047 250 220 - 2,149
北米 2,186 826 - 321 4,296
欧州 636 865 - 467 2,589
アジア - 1,819 541 336 3,869
南米 306 - - - 400

海外投資

-2016年度中にもメキシコでオートマチックトランスミッション (AT) 用プラネタリィギアを生産する。機械加工も手掛けて、部品の加工から組み立てまで一貫生産体制を整える。これまでメキシコでは組み立てのみを行ってきたが、新たに機械加工も現地で行うことによりコスト競争力を高める。14年に稼働したメキシコ工場 (サンルイスポトシ州) では、ボールジョイントやデファレンシャル、無段変速機 (CVT) 用のプラネタリィギアを生産している。生産品目を増やすことでメキシコの売上高を早ければ17年に年間100億円以上に引き上げる。北米市場は燃費性能や走行性能向上のため、自動車メーカーがATを多段化する動きを加速している。ATの構成部品であるプラネタリィギアの需要増加が見込まれるため、生産能力の増強とともに工程の現地化も推進して競争力を高める。(2016年4月14日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画

(2017年3月31日現在)
地域 計画金額 (百万円) 設備等の主な内容・目的
全社 18,000 -
-日本 5,400 新機種対応、研究開発、四輪部品の生産能力増強、既存設備の更新
-北米 2,700 四輪部品の生産能力増強、新機種対応
-欧州 3,200 四輪部品の生産能力増強、合理化、既存設備の更新
-アジア 6,200 既存設備の更新、合理化、二輪・四輪部品の生産能力増強
-南米 500 既存設備の更新、新機種対応