TPR (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 174,628 165,849 5.3 -
営業利益 21,334 19,393 10.0 -
経常利益 24,176 23,063 4.8 -
親会社株主に帰属する当期純利益 11,852 12,658 (6.4) -
日本
売上高 42,909 45,286 (5.2) -国内顧客および海外市場向けの受注の減少により、減収。
営業利益 6,919 7,409 (6.6) -生産再配置に伴う一時的な費用増、および操業度の減少により、減益。
アジア
売上高 32,191 26,200 22.9 -アジア市場では市場が後退する中、新規受注の獲得と、円安による為替換算の影響があり、増収。
営業利益 10,031 7,485 34.0 -
北米
売上高 14,670 12,165 20.6 -北米経済が堅調を維持する中、円安による為替換算の影響もあり、増収。
営業利益 1,609 778 106.8 -新拠点の黒字化により、増益。
その他地域 (*1)
売上高 2,439 2,651 (8.0) -欧州市場では、円高による為替換算の影響を受け、減収。
営業利益 538 822 (34.5) -南米の新拠点の創業費用により、減益。
ファルテックグループ
売上高 82,416 79,546 3.6 -北米・タイ・中国での受注増により、増収。
営業利益 2,564 3,052 (16.0) -日本での先行開発費用増、英国での新車立ち上げ費用増等により、減益。

*1:欧州および南米の現地法人の事業活動

事業動向

生産

  • ブラジル:シリンダーライナー生産拠点で、納入開始
  • ベトナム:生産品目の拡大、ASEAN地域の物流改善への取り組み
  • インドネシア:エンジニアリングプラスチック (機能性樹脂) である自動車用ドアガラス部品の量産開始。

多角化への取り組み

  • FOMM電気自動車向け、アルミ製ブレーキドラムインサートの採用決定
  • 東北大学金属材料研究所と同社子会社TPR工業 (株) の共同により、オープンセル型ポーラス炭素の開発に成功。
  • 電動事業において、キャパシターの営業開始。

    -2015年12月、TOCキャパシタ (株) において、電気二重層キャパシター (EDLC) の初出荷式を行った。EDLCは2014年11月に日清紡HDから事業譲渡されたもの。今回出荷となった製品は 「HVショベル」 の回生エネルギー用として搭載されるもの。今後も製品群の拡充と高性能化を進めて行く方針。

  • 中国における既存事業の更なる能増と事業の多角化に向けた取り組み。


海外事業
<米国>
-米国で自動車用エンジンのアルミ化が加速していることを背景に、現地メーカーへのシリンダーライナーの販売を強化する。独自の鋳肌技術を生かした信頼性の高さを前面に押し出し、新機種向けの受注を増やす。17年度までに月数十万本規模の新規受注を目指し、南北に構える2カ所の工場で柔軟に対応していく。(2016年2月8日付日刊自動車新聞より)

<東南アジア>
-東南アジアでの四輪車向け事業を拡大する。同地域で生産しているエンジン部品の売上高のうち、現在は30~40%となっている四輪車向け製品事業の比率を中期的に50%以上に引き上げる。主要顧客の日系自動車メーカーが同地域で生産を増やす傾向にあることから、これに追従する。ピストンリングやシリンダーライナーでトップシェアを持つ中国などで磨いた競争力の高さを生かし、新規受注につなげる考えだ。各社の生産変動も考慮して明確な期限は設けていないが、2020年度をめどに過半を達成したいとしている。(2015年3月14日付日刊自動車新聞より)

原価低減活動
-ファルテックはグループのTPRのノウハウを取り入れ、国内工場の製造原価の引き下げに着手した。省人化と工程不良率の低減を図り、低コスト国に負けない原価を実現する。これまで「ファルテック2分の1活動」と称したコスト構造改革を推進してきたが、第2弾の活動として工程ごとの技術的な改善に抜本的に取り組む。国内の全ての工場に展開し、海外事業を拡大するためのものづくりの基盤にする。(2015年5月11日付日刊自動車新聞より)

受注

-約10年ぶりに、マツダからピストンリングを受注した。従来から供給しているシリンダーライナーに加え、「スカイアクティブ」エンジン用のピストンリングやフレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)用のバルブシートでも採用が決まった。2015年10月には広島営業所(広島市東区)を開設しており、マツダへのサービスや技術提案を強化することで関係を深めていく。(2016年1月25日付日刊自動車新聞より)

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 173,800 174,628 (0.5)
営業利益 19,300 21,334 (9.5)
経常利益 22,000 24,176 (9.0)
親会社株主に帰属する当期純利益 11,000 11,852 (7.2)


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画 「17中計」

-2015年、中期経営計画 (2016年3月期~2018年3月期) を発表。主な数値目標は以下の通り:

  • 連結売上高:193,300百万円 (内、TPR分105,000百万円、ファルテック分88,300百万円)
  • 営業利益:  26,000百万円 (内、TPR分 20,400百万円、ファルテック分 5,600百万円)


-金属製品を中心としたTPR事業では「革新と拡大」をスローガンに掲げ、北米や新興国での自動車部品の販売を加速する。エンジン向け以外の新規分野では、アルミと鋳物の複合で軽量化したブレーキドラムと高性能キャパシターを今中計で発売し、次期中計に向けた足がかりとする。ファルテック事業では収益性の向上を図る。 (2015年6月13日付日刊自動車新聞より)

-複数の新製品の生産を拡大する。現時点で受注が確実となった製品群では、20年度に30億円規模の売上高を計画している。主な新製品は、「カーボンスクレーパリング」やパワートレーン用シール材、EGR (排出ガス再循環) 装置・過給器向けの金属部品など。カーボンスクレーパリングはシリンダーの上部に装着する円筒状部品で、ピストンに付着するカーボンを掻き落とす役割を持つ。ライナー内壁の摩耗防止や潤滑油消費量の低位安定化に有効なことから欧米メーカーなどが採用を始めており、20年度には年間200万本を超える生産を予定している。パワートレーン用のシール材はゴムや樹脂を素材としたもので、中国のローカルメーカーをターゲットの中心に置く。最近は中国車の高性能化が進んでいるため、成長分野の一つに位置づける構えだ。エンジン部品での既存の販売網や高いシェアを生かし、受注を増やしていく。一方、ERG・過給器向けの部品は開発中で、従来の鋳造技術などを応用したもの。国内のディーゼル車向けなどで引き合いがあり、2、3年内には実用化できる見通しだ。(2015年2月20日付日刊自動車新聞より)

長期展望

-2021年3月期、100年永続企業に向けて、以下の数字を目標に据えている。

  • 連結売上高:220,000百万円
  • 親会社純利益:20,000百万円

受賞

-2016年3月期の主な受賞は以下の通り:

授与者 受賞者 受賞名
ダイハツ TPR (株) 本社 「品質優秀賞」
三菱重工 「優秀賞」
トヨタ TPR America 「Excellence Award」 または、「Special Recognition Award」



研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 4,736 3,858 3,605
-TPRグループ (ファルテック除く) 2,568 1,881 1,826
-ファルテックグループ 2,167 1,977 1,728

主要研究開発拠点

-技術センター (長野工場内、長野県岡谷市)

研究開発活動

-低フリクション化、熱制御、軽量化への取り組みに加え、排気ガスクリーン化、代替燃料 (バイオ、CNG) 使用に対応した新製品の開発を推進している。

-製品の高精度化に対応したインラインでの計測自動化、革新的コストダウン、生産エネルギーの極小化へ対応した新工法の開発を進めている。

-海外拠点への新技術の移転構築、海外提携会社との協業による世界同一品質の実現、海外顧客への新製品および新技術PRを積極的に行っている。

-急速なEV化に対応し、非パワートレイン部品への取り組みを強化。アルミ、樹脂を中心とした軽量化複合製品とゴムを中心としたシール製品への新技術導入を積極的に実施している。

開発の主な成果
<パワートレイン部品>
1) ピストンリング
-超低フリクション & 低LOCリングの開発 (低燃費対応)
-高機能オイルリングの製品化 (信頼性向上)
-ピストンリング革新的コストダウン製造ラインの構築 (低価格対応)

2) シリンダーライナー
-小型エンジン用小径薄肉、高熱伝導ライナーの製品化 (低燃費対応、信頼性向上)
-熱制御ライナーの製品化 (低フリクション対応)
-高強度ライナーの製品化 (信頼性向上)

3) バルブシート、バルブガイド
-高耐摩耗バルブシート材料の製品化 (代替燃料対応)
-バルブシート革新的コストダウン製造ラインの構築 (低価格対応)
-焼結バルブガイドの製品化

<非パワートレイン部品>
1) アルミ製品
-新鋳造方案構築および設備導入実施による、4輪アフター向けアルミホイールの製品化
-遠心鋳造スパイニ形状FC材の応用による、アルミブレーキドラムの製品化

2) 焼結機械部品
-ターボチャージャー用小径シールリング革新的コストダウンライン構築 (低価格対応)

3) 樹脂、ゴム製品
-変速機用樹脂シールリングの製品化
-電磁弁スプール樹脂化およびゴムシール部品の高精度化

製品開発

過給器用スチール製シールリング
-過給器用スチール製シールリングを新開発し、2016年夏からIHI向けに供給を始める。焼結製リングよりも耐熱性などに優れていることから、過酷な使用条件にも対応できるシール材として拡販する。IHI向けに加え、従来から焼結製リングを供給している三菱重工業や欧米系の過給器メーカーからの新規受注も狙い、2020年には過給器用シールリング販売の倍増を目指す。(2016年2月17日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
日本 3,891 3,357 2,112
アジア 3,997 2,202 2,501
北米 623 582 2,692
その他 1,159 11 9
ファルテックグループ 4,593 3,936 3,073
合計 14,266 10,089 10,389


-2016年3月期は、海外生産拠点の拡充整備を引き続き実施し、増産投資を中心に設備投資を実施。

-2017年3月期は、設備投資額として136億円を予定。主な内容は以下の通り。

  • 中国・ベトナムでの増産対応投資
  • 開発投資 (将来のタネ) ・合理化投資を積極的に行う。
  • M&Aは別途検討する。

設備の新設計画 (自動車関連製品事業)

(2016年3月31日現在)
会社名
事業所名
所在地 設備の内容・
目的
投資予定
金額
(百万円)
着手予定
年月
完了予定
年月
完成後の
増加能力
同社
長野工場
長野県
岡谷市
研究開発、ピストンリング生産設備等 2,700 2016年
4月
2017年
3月
生産能力に影響を及ぼさない
TPR工業 (株) 山形県
寒河江市
研究開発、シリンダーライナー生産設備等 1,600 2016年
4月
2017年
3月
生産能力に影響を及ぼさない
安慶帝伯格茨缸套有限公司
[Anqing TP Goetze Liner Co., Ltd.]
中国
安徽省
シリンダーライナー生産設備 1,900 2016年
1月
2016年
12月
15%増加
TPR Vietnam Co., Ltd. ベトナム
ビンズオン省
各種製品の生産設備 1,200 2016年
1月
2016年
12月
20%増加