パナソニック (株) 2017年3月期の動向

業績

(米国基準、単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 増減率 (%) 備考
全社
売上高 7,343,707 7,626,306 (3.7) -
営業利益 276,784 230,299 20.2 -
税引前利益 275,066 227,529 20.9 -
当社株主に帰属する当期純利益 149,360 165,212 (9.6) -
オートモーティブ & インダストリアルシステムズ
売上高 2,417,907 2,539,526 (4.8) 1)
営業利益 109,296 50,224 117.6 2)


要因

1) オートモーティブ & インダストリアルシステムズ売上高
-オートモーティブ事業は、グローバル市場での自動車販売の好調を受け、車載カメラやセンサー、スイッチなどの電装品の販売が伸長したが、為替の影響により減収。カーナビなどのインフォテインメントシステムの販売は欧州などで低調であったものの、国内および中国での販売が好調。エナジー事業では、米国電気自動車向けリチウムイオン電池の販売が好調に推移し、増収。

2) オートモーティブ & インダストリアルシステムズ営業利益
-為替の影響はあったものの、インダストリアル事業を中心とした車載・産業向け増販益の拡大などにより、前年度から591億円増加。

事業方針

車載用リチウムイオン電池(LiB)事業を拡大する計画
-車載用リチウムイオン電池(LiB)事業を拡大する計画を明らかにした。2015年度実績で1800億円だった売り上げを18年度には4千億円規模に引き上げる。これに向けて開発・生産機能を強化するとともにハイブリッド車(HV)向けでは19年に現状比1.5倍の出力密度、プラグインハイブリッド車(PHV)用と電気自動車(EV)用では同2倍のエネルギー密度を持つLiBを実用化する。同社は車載用LiBを15年3月現在で40車種に納入、受注済みが9車種、受注推進中が14車種だった。今年6月現在の納入実績は45モデルに拡大しているほか、19モデルが受注済みで、受注推進中も22モデルにまで増えている。(2016年7月9日付日刊自動車新聞より)

車載事業に注力
-同社は、成長事業と位置づける車載事業に注力する。31日に都内で開いた事業方針説明会で、パナソニック全体で2018年度に売上高10兆円を目指す目標を撤回したものの、車載事業の売上目標は1千億円の引き下げにとどめた。車載事業では、次世代コックピットや先進運転支援システム(ADAS)分野などに先行投資して収益の柱とする。事業戦略ではスペインのフィコサ・インターナショナルとの協業を加速することなどにより次世代コックピット事業を拡大する。18年度以降を見据え、ADAS分野や車載電池での開発強化、生産拠点の拡充にリソースを集中する。鉛蓄電池事業のGSユアサへの売却については「将来の発展に向けて一番良いと判断した」(津賀一宏社長)と、収益改善を進める上で事業売却は多様なオプションの中の一つの選択肢と説明した。(2016年4月4日付日刊自動車新聞より)

買収

-2017年3月、スペインの自動車部品メーカーのFicosa Internationalを連結子会社化すると発表した。パナソニックは現在、フィコサに49%出資しているが、新たに20%分を追加取得する。両社は2015年6月に資本業務提携し、電子ミラーなど協業開発品で受注するなど成果を挙げてきた。連結子会社化で両社の連携を強化し、次世代コックピットシステムや先進運転支援システム(ADAS)など、今後の成長分野での事業拡大に向けた取り組みを強化する。(2017年3月22日付日刊自動車新聞より)

-産業向け高出力ダイレクトダイオードレーザー(DDL)のサプライヤーであるTeraDiodeの全株式を取得する契約を2017年1月2日付で締結したと発表。TeraDiodeは米国マサチューセッツ州Wilmingtonに本拠を置き、一般産業向けレーザーの開発、製造、販売を行う。2009年8月設立で、資本金51.8百万ドル。自動車産業などで高精度で高品質なレーザー加工技術への期待が大きく高まっており、TeraDiodeが保有する波長合成技術を用いた高出力DDLは、これらの要求に応える。(2017年1月6日付プレスリリースより)

-車載用ソフトウエアの開発を手がける独オープンシナジーを買収。自動運転技術の進化を見据え、両社が持つ技術を組み合わせ、2020年をめどに次世代コックピットの開発を目指す。パナソニックはオープンシナジーの創業者やベンチャーキャピタルなどから全株式を取得した。現在のコックピットシステムでは、ナビゲーションやオーディオなどのマルチメディア機能と、ヘッドアップディプレーなどの運転者支援機能が別のシステム上で構築されている。オープンシナジーが持つソフトウエア技術「ハイパーバイザー」は複数の基本ソフト(OS)を統合することができる。マルチメディア系と運転支援系の二つの機能を一つのシステム上に統一・連携させることで、センサーで検知した人や道路状況など、より直感的な情報を運転者に提供することが可能になる。(2016年8月12日付日刊自動車新聞より)

事業提携

-リアルタイムデータを用いたコネクテッドカープログラムについて、コロラド州の運輸当局 (Colorado Department of Transportation : CDOT) と提携。パナソニックは、全米およびコロラド州で自動車と交通管理技術を統合したプログラムを進めていく。CDOTとその他のパートナーとの協業により、パナソニックはコロラド州の「RoadX」プログラムの一環として、まず最初に全米で最も難しい山道の1つとして知られる国道70号線 (I-70) に、コネクテッドカーならびに交通システムを導入する。「RoadX」は、衝突事故なし、傷害事故なし、渋滞なしを実現するために先進企業との提携および革新的技術の導入について、コロラド州が全米のリーダーとなることを目指しているビジョン。(2016年10月27日付プレスリリースより)

事業統合

-電気自動車(EV)リレーや車載リレーなどを開発製造するパナソニックデバイス帯広(北海道帯広市、PID帯広)と車載リレー開発製造のパナソニックデバイスタイコー(栃木県大田原市、PIDタイコー)の全額出資子会社2社を2017年4月1日付で統合すると発表。PID帯広が存続会社となってPIDタイコーを吸収合併する。(2016年12月5日付日刊自動車新聞より)

事業譲渡

-GSユアサは、パナソニックの鉛蓄電池事業の譲受に関して、パナソニック ストレージバッテリーの発行済株式の85.1%の取得を完了。これにより、パナソニック ストレージバッテリーはGSユアサの連結子会社となり、商号を「株式会社GSユアサ エナジー」に変更した。パナソニックは引き続きGSユアサ エナジーの株式14.9%を保持する。(2016年10月3日付プレスリリースより)

受注

-太陽電池モジュール「HIT」の車載タイプが、トヨタ自動車のプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」に搭載されたと発表した。駆動用リチウムイオンバッテリーにもパナソニックの車載用角形リチウムイオン電池が採用された。パナソニックの太陽電池モジュールは、先代の「プリウス」のオプションに採用されたが、12ボルト系バッテリーの補充電や駐車中の換気電源に用途が限られていた。今回プリウスPHVに採用された車載タイプは、従来の3倍以上となる約180ワットの高出力を実現した。車内アクセサリーの電源に使用できるほか、駆動用バッテリーの充電も可能。太陽電池で生成した電気エネルギーを走行電力にも使用することで、EVモードでの走行距離を延長できる。(2017年3月15日付日刊自動車新聞より)

-Fender Musical Instrumentsと共同開発した製品「Fenderプレミアムオーディオシステム」が、Volkswagenの新型SUV「Atlas」2018年モデルにオプション採用されたと発表した。「Fenderプレミアムオーディオシステム」の中でも最先端の機能を持ち、12スピーカーでアンプ出力は480Wになるという。(2016年10月27日付プレスリリースより)

-Ficosa Internationalとパナソニックは、両社の共同開発品について初めて契約を締結したと発表した。大手欧州自動車メーカー向けに内装リアビューミラーを生産する。このミラーは、料金徴収機能を搭載することで、停車させずに高速料金の自動支払いを可能にするもの。プロジェクト期間は7年間で、費用は50百万ユーロ。スペインViladecavallsにあるFicosaの工場で生産を行う予定。このプロジェクトにおいて、パナソニックはクレジットカード読み取りモジュールを開発し、Ficosaはシステム全体の電子化を担当した。(2016年9月28日付プレスリリースより)

2018年3月期の見通し

(IFRS基準、単位:百万円)
2018年3月期
(予想)
全社
売上高 7,800,000
営業利益 335,000
税引前利益 325,000
当社株主に帰属する当期純利益 160,000


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 436,100 449,800 457,300
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 189,600 189,500 181,200

研究開発活動

<オートモーティブ & インダストリアルシステムズ>
-車載向けなどのインフォテインメント関連機器、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っている。

自動運転に貢献する技術を開発、電動コミューターを試作し技術検証を実施
-電動回路、インバーター、モーターなどを1つの筐体に高密度実装した独自の統合電動化システムを開発、あわせて家電で培ったデジタルAV、画像認識、人工知能技術を活用し、自動運転にチャレンジ。道路の状況を車両が自ら把握し、停車中のクルマを避けたり、設定されたルートを自動運転する機能を搭載した自動運転電動コミューターを試作した。すでにテストコースや公道に近い環境のある同社敷地内での試験走行を開始している。

製品開発

ニ次実装アンダーフィル材
-パナソニックのオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、低温で硬化する「ニ次実装アンダーフィル材」を製品化、2017年2月から量産開始すると発表した。同製品は液状の樹脂材料で、基板への部品実装後に部品周囲に塗布することで基板と部品の間に侵入し、優れた実装補強強化が得られるという。接合強化が求められる車載カメラモジュール、車載通信モジュール(ミリ波レーダー用モジュール)、車載ECUなどへの半導体パッケージや電子部品の用途を見込む。(2017年2月3日付プレスリリースより)

クラウド車輌ソリューション
-Panasonic Automotive Systems Company of Americaは、IBMの「Watson」およびクラウド技術を使用した車輌ソリューション「Panasonic Cognitive Infotainment」プラットフォームを導入すると発表。このプラットフォームは「Watson」が備えている、質問に答えたり最適ルートを案内するディープラーニング機能を利用する。また車内での電子商取引、安全運転のためのモニタリング機能などが導入されている。CES2017では、Panasonic Cognitive Infotainmentを使ってレストランで電子商取引を行う様子が公開される。(2017年1月4日付プレスリリースより)

巻回形電気二重層コンデンサHLシリーズ
-オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、業界初となる2千時間保証の「巻回形電気二重層コンデンサHLシリーズ」を製品化。長期間使用や小型軽量化が要求される自動車の緊急ブレーキやドアロック解除システムなどのバックアップ電源回路での用途を見込む。来年1月から量産する。新製品は、独自の電解液の開発により、静電容量の減少や内部抵抗の増大などの特性劣化を抑え、巻回形で2千時間保証を達成した。電源回路の初期設計時に必要なコンデンサの員数を少なく設計できる。 (2016年12月26日付日刊自動車新聞より)

「100万対1」以上の高コントラスト新型液晶
-従来型と比べて600倍となる「100万対1」以上の高コントラストを実現する新型液晶を開発したと発表。暗いものはより暗く、明るいものはより明るく映すことができる。車載モニターに採用した場合の視認性やデザイン性の向上に寄与する。2017年1月からサンプル出荷を始め、来秋から量産開始する計画。新型液晶は、子会社のパナソニック液晶ディスプレイ(兵庫県姫路市)が開発した第7世代品で、光学特性の異なる表示用と調光用2種類の液晶材料を組み合わせた「ハイブリッドセル構造」を採用、これを独立して制御する技術を確立した。(2016年11月29日付日刊自動車新聞より)

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー
-車載用電源回路の小型化に寄与する大電流対応コイルと導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーを開発したと発表した。6月にコイル、9月にコンデンサーを順次、量産する。これら新製品を含めたノイズ除去回路を設計するためのシミュレーターを業界で初めてウェブ上で無償公開する。コイルでは2016年に年間1億円の売り上げを見込んでおり、18年には10億~20億円を計画。コンデンサーは18年に20億円の売り上げを目指す。(2016年6月1日付日刊自動車新聞より)

車載LEDランプモジュール
-車載LEDランプの設計自由度向上やデザイン性向上に貢献する車載LEDランプモジュールと基板の接続用コネクタ2種を開発したと発表した。デイタイムランニングライト (DRL) やリアランプ内の配線接続に適した「基板対FPC (Flexible Printed Circuit) コネクタ」と、LEDヘッドランプモジュールに適した「基板対電線コネクタ」で、2016年6月からサンプル対応を開始する。(2016年5月27日付プレスリリースより)

光拡散性PP樹脂成形材料
-LED照明の長期使用、軽量化や高輝度化に貢献する光拡散性ポリプロピレン (PP) 樹脂成形材料「Full Bright (フルブライト) PP」を開発、2016年4月より量産を開始すると発表した。業界初の射出延伸ブロー成形対応で、これまでの光拡散性PP樹脂成形材料では困難とされていた複雑な形状加工が可能となり、設計の自由度向上に貢献する。(2016年4月5日プレスリリースより)

設備投資額

(単位:百万円)
2017年3月期 2016年3月期 2015年3月期
全社 311,600 248,800 226,700
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 195,000 116,300 107,700


-2017年3月期、オートモーティブ & インダストリアルシステムズの投資の主な内容は、

  • 二次電池の増産
  • 車載、インフォテインメント関連、電子部品等の新製品生産および増産

設備の新設計画

(2017年3月31日現在)
計画金額
(百万円)
主な内容・目的
全社 345,000 -
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 185,000 -二次電池の増産
-車載、インフォテインメント関連、電子部品等の新製品生産および増産

海外投資

<米国>
-同社と米Tesla Motorsは2017年1月、ネバダ州にある大規模な電池工場 (ギガファクトリー)でリチウムイオン電池セルの生産を開始したと発表した。セルは同社とTeslaが共同開発した円筒形電池セル「2170」。当初はTeslaの据付型蓄電池製品「Powerwall 2」と蓄電システム「Powerpack 2」向けに生産。2017年第2四半期にはTeslaの新型車「モデル3」向けの生産を開始する。2018年にはリチウムイオン電池の世界生産の半分に相当する年間35GWhのリチウムイオン電池セルを生産する。同社とTeslaは2017年にギガファクトリーがフル稼働すれば6,500人の雇用を創出するとしている。

-Tesla Motorsとニューヨーク州Buffalo工場で太陽電池セルとモジュールの生産を開始することで合意。太陽電池モジュールの生産は2017年夏に開始する予定で、2019年までに1GWの生産能力に拡大する計画。Teslaは、バッファローで製造業500人以上、合計1,400人以上の雇用を生むというソーラーシティのコミットメントを改めて表明した。パナソニックは、太陽光発電の技術力、製造力を持ち、テスラと協力して、カリフォルニア州フリーモントにあるソーラーシティの施設で、次世代太陽電池技術を開発する。契約の一環として、同社はBuffalo工場で必要な投資の一部を負担し、Teslaはパナソニックから、工場で生産された太陽電池を長期間にわたり購入する。

<メキシコ>
-メキシコNuevo Leon州Apodaca工場での掃除機生産を中止し、シートヒーターを始めとする自動車部品の生産へシフトすると発表した。本シフトは、中国製掃除機のプレゼンスが米国市場で拡大し、掃除機の販売利益が減少しているため。自動車部品の生産は2017年4 月に開始予定。同工場は2000年から生産を開始。掃除機の生産は、マレーシアへシフトする。(2017年1月26日付Mexico-Nowより)