住友電気工業 (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年
3月期
2015年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 2,933,089 2,822,811 3.9 -米国等の海外を中心に自動車用ワイヤーハーネスや防振ゴムの需要が堅調だった。携帯用FPC (フレキシブルプリント回路) 等の需要増も寄与。
営業利益 143,476 134,457 6.7 -先行投資による減価償却費や研究開発費の増加があるも、円安効果やコスト削減により増益。
経常利益 165,658 160,597 3.2
親会社株主に帰属する当期純利益 91,001 119,771 (24.0) -前年度に住友スリーエム (現社名 スリーエム ジャパン)の株式売却等に伴う特別利益の計上があったため減益となった。
自動車関連事業
売上高 1,541,985 1,488,214 3.6 -ワイヤーハーネスと防振ゴムの米国等海外における需要が堅調だった。
注)両年度ともセグメント間の内部売上高または振替高を含む。
営業利益 88,654 89,252 (0.7) -一部ワイヤーハーネス連結子会社において、日銀によるマイナス金利導入を背景に退職給付費用が一時的に増加したことにより減益となった。

製品開発

軽量ワイヤーハーネス
-住友電装(三重県四日市市)は、2017年度までにアルミ電線を採用した軽量ワイヤーハーネスの販売をハーネス全体の約10%に引き上げることを目指す。アルミ製は銅電線に比べて約5割の軽量化が可能で、10年からトヨタ自動車向けに供給を始めた。当初は銅製に比べて耐振動性、耐腐食性にネックがあったが、改良を重ねて耐久性を向上。親会社である同社も16年度までにタイ工場のアルミ電線の生産能力を現状の約5倍となる月 300トンに引き上げることを決めた。住友電装は日米欧のメーカーに同製品を訴求し、目標達成につなげる。(2014年11月25日付日刊自動車新聞より)

パワートランジスタ
-炭化ケイ素 (SiC) を材料とする独自構造のパワートランジスタ 「V溝型金属-酸化膜-半導体構造トランジスタ (VMOSFET)」を開発した。このトランジスタは、電子の流れをオンオフするチャネル部分に特殊な面方位 (0-33-8) を利用しているため、欠陥の少ない酸化膜界面を形成でき、これにより十分な低オン抵抗を実現している。また、低欠陥特性を反映し高安定性も確保した。電気自動車やハイブリッド車、太陽光パワーコンディショナなどの用途に適している。(2015年6月4日付プレスリリースより)

受注

<ホンダ>
-ホンダは、新型ステーションワゴン「Shuttle」のガソリンエンジン車に、回生電流効率を従来比2割高めたキャパシターシステムを搭載した。キャパシターの充放電コントローラーに住友電気工業製を採用。同時にアイドリングストップ専用鉛バッテリーを採用することにより、JC08モード走行では発電なしで電装システム全てをカバーできる蓄電容量を確保した。(2015年5月16日付日刊自動車新聞より)

受賞

OEM 受賞名 備考
トヨタ Superior Award -住友電装子会社のSumitomo Electric Wiring Systemsが受賞
日産 Japan Regional Quality Award (Electric Category) -同社が受賞。同賞受賞は2回目
FCA 年間仕入先最優秀賞(欧州電子電装部門) -同社のイタリア子会社であるSews Cabindが受賞



持ち株比率の変更

<ブレーキメーカーのアドヴィックス>
-トヨタ自動車は、同社、アイシン精機デンソーと、ブレーキメーカーのアドヴィックス(愛知県刈谷市)の増資と持ち株比率の変更で合意したと発表した。今年9月にアドヴィックスが103億3800万円の第三者割当増資を行い、アイシン、トヨタ、デンソーが引き受ける。併せて、デンソーは同社から株式譲渡を受ける。この結果、持ち株比率はアイシン精機が55%から51%へ、デンソーが 18%から34%へ、同社が18%から6%へ変更される。トヨタは9%で変わらない。増資は、アドヴィックスの事業基盤強化に活用する。(2016年 5月2日付日刊自動車新聞より)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 110,839 105,604 99,520
-自動車関連事業 68,402 64,431 62,069


-2017年3月期の研究開発費は、全社110,000百万円、自動車関連事業68,000百万円を計画している。過去最高であった前年度と同水準になる見込み。

研究開発活動

ワイヤーハーネス/車載エレクトロニクス機器事業
-同社と住友電装、および両社の共同出資によるオートネットワーク技術研究所を中心に、安全・快適・環境のニーズに対応した新製品の開発を実施。
-ワイヤーハーネス:

  • 次世代車載システムに対応できるハーネスアーキテクチャーを構築し、それに必要な要素技術の開発を推進している。
  • 環境対応としてハーネスの軽量化に取り組んでおり、銅に比べ軽量なアルミを使ったワイヤーハーネスを量産し、さらに高強度な電線を開発し適用範囲拡大の取り組みを進めている。
  • 市場規模が拡大しているEV/HEV車用高圧ハーネスやコネクター、バッテリー内配線モジュール等の開発を推進している。

-車載エレクトロニクス機器:

  • 電源系、情報系のネットワーク化に対応すべく、電源制御機器や半導体デバイス、ボディ制御ECU、次世代の車載LAN (Local Area Network) 製品の開発を進めている。

-住友理工

  • 高い安全基準を満たす技術開発や次世代自動車への新製品開発に取り組んでいる。
  • 燃料電池自動車に搭載されるFCスタック向けゴムシール材 「セル用ガスケット」 を量産し、さらなる性能向上に向けて技術開発を続ける。

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 167,282 148,213 150,823
-自動車関連事業 76,274 75,561 88,237


-自動車関連事業では、ワイヤーハーネス・防振ゴムの増産および合理化のための投資を実施。

設備投資の見通し (2017年3月期)

-全社で200,000百万円の投資を計画。
-自動車関連事業では、87,000百万円の投資を予定している。

2017年3月期の見通し

(単位:百万円)
2017年3月期
(予測)
2016年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 2,950,000 2,933,089 5.8
-自動車関連事業売上高 1,480,000 1,541,985 (4.0)
営業利益 160,000 143,476 11.5
経常利益 185,000 165,658 11.7
親会社株主に帰属する当期純利益 100,000 91,001 9.9


-2017年3月期の自動車関連事業の取り組み方針は以下の通り:

  • 環境対応車向け高電圧ハーネス、電子制御対応の電装部品等の開発・拡販
  • 非日系顧客向けシェア拡大、グローバルでの生産性の向上
  • 住友理工は防振ゴム・ホースにおいて、買収した海外事業との相乗効果、事業拡大、収益力強化

>>> 次年度業績予想 (売上、営業利益等)

中期経営計画

-2018年3月期を最終年度とする新中期経営計画「17VISION」の数値目標は以下の通り:

(単位:億円)
2017年3月期
(予測)
2018年3月期
(中計最終年度目標)
売上高 29,500 33,000
営業利益 1,600 2,000
営業利益率 5.4% 6.0%以上


-2017年度までの中期経営計画 「17VISION」 の修正分を発表した。グローバル事業環境の変化や円安の進展などから17年度の数値目標を見直し、 売上高3兆3千億円、営業利益2千億円、投下資産営業利益率 (ROA) 9%以上に設定した。新たな指標として株主資本利益率 (ROE) 8%以上を追加した。自動車事業では総合的な自動車部品サプライヤーを目指し、ワイヤーハーネスやコネクター、防振ゴムで非日系向けのシェア向上に取り組む。自動車エレクトロニクス商品ではコミュニケーション (ICT) との融合領域である非ハーネス製品の拡大を図る。(2015年5月27日付日刊自動車新聞より)

自動車関連事業
-めざす姿:総合的な自動車部品サプライヤーをめざす
-修正した目標値に向けた戦略は以下のとおり;

1) 非日系市場シェアの拡大

  • ハーネス/コネクター、防振ゴムの市場シェアの拡大

2) 新製品開発の加速

  • 軽量化 (アルミハーネス等)、モジュール化への対応
  • エレクトロニクス製品 (セントラルゲートウェイ等) の拡大