三菱電機 (株) 2018年3月期の動向

業績

2018年3月期、全社の売上は4兆4,311億98百万円と前年比4.5%増。
自動車事業を含む産業メカトロニクス事業部門においては、売上1兆4,449億円。今年度は売上高、営業利益ともに増加となった。事業部門の売り上げのうち、自動車機器事業による売上は6,000億円を超える。

ー要因:自動車機器事業は、北米における新車販売台数の減少があったものの、中国での日系自動車メーカーの販売増加などにより増収。

 

事業動向

ー自動車機器事業においては、電動パワートレインシステムを含めた幅広い高効率機器群および高度制御技術の連携・統合による環境配慮、安心・安全、快適性の実現を目指し、以下に取り組む。

  1. 環境負荷低減・燃費改善:幅広い高効率機器のグローバル供給と電動パワートレインシステムの提供
  2. 運転時の快適性向上:エンタメ・ナビ・コネクティビティ・ドライバー支援機能などを統合した次世代情報機器を活用
  3. 安全で快適な自動運転の実現:通信技術・インフラ事業との連携強化

自動運転技術開発

ー準天頂衛星やGPSなどの測位衛星から高精度ロケータ―を通じた正確な位置情報の取得といった、「インフラ協調型システム」と、車内に有する各種カメラ・レーダー・センサー等による「自律型システム」の双方を活用し、自動運転技術の開発を進める。

同社は、都内で開催した経営戦略説明会で、自動運転の実現に向けて自律型システムとインフラ協調型システムの両面で開発に注力する方針を示した。自律型システムでは、車両周辺監視と車外情報活用の各デバイスを組み合わせた上で制御する自律的な自動運転を開発する。インフラ協調型システムでは、準天頂衛星や路車間通信など、インフラからの情報を得るとともに、これを高精細地図生成技術と高精度な測位技術により、誤差センチメートル級で自車位置を把握できる技術の実現を目指す。自動運転に関する開発競争が激化する中、同社では今後も自律型システムとインフラ協調型システムの両面で自動運転技術の研究開発を進めて2020年以降の自動運転の実現を目指す方針だ。(2017年6月22日付日刊自動車新聞より)

  • 2017年9月、自動運転技術搭載車「xAUTO」によりCLAS信号を用いた自動運転の実証実験を開始

ー同社の自動運転技術を搭載した「xAUTO(エックスオート)」のメディア向け試乗会を赤穂テストコース(兵庫県赤穂市)で開催した。エックスオートはセンサーによる自律型と準天頂衛星を活用したインフラ型の両方の走行技術を搭載した実験車両で、2016年5月から高速道路で実証実験を行っている。エックスオートはミリ波レーダーやカメラなどの自律型と、準天頂衛星からの「センチメータ級測位補強サービス(CLAS)」信号を利用した衛星測位情報を高精度3次元地図に照合するインフラ型の走行技術を組み合わせた自動運転技術を搭載している。雪や濃霧などの悪天候下では自律型とインフラ型の両方の走行技術で対応することで安全運転支援の領域を広げられるとしている。また、ドライバーモニタリングによる乗員検知機能を生かしてドライバーが運転中に意識を失った場合など、自動で緊急退避する技術も実現する。(2017年10月18日付日刊自動車新聞より)

  • 2017年10月、オランダHERE社と高精度位置情報サービス利用拡大に向けた提携に合意

ー同社は、2030年度までに自動運転システムの市場規模が100百万台以上となると予想。自社での安全な自動運転技術の確立に向け、国内外での各種実証走行を実施。また、国内外のパートナーと連携し、競争力強化、グローバル展開、規格化を推進。
車載機器ではオランダHERE社、高精度測位ではドイツ Sapcorda Services社、高精度3次元地図ではダイナミックマップ基板株式会社など。

Bosch三菱電機Geo++u-blox4社は、マスマーケット向け高精度GNSS (Global Navigation Satellite System) 測位サービスを行う合弁会社としてSapcorda Servicesを立ち上げることに合意した。Sapcorda Servicesは、グローバルに利用可能なセンチメーター級GNSS測位サービスをインターネット配信および衛星配信を通じて提供する。このサービスは、市場規模の大きな自動車・産業用・コンシューマ向け市場に適した形で提供される。リアルタイムに利用できる測位補強情報サービスとして、オープンフォーマットで配信され、様々な受信端末やシステムで利用することができるという。 (201788日付Bosch/三菱電機プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 210,300 201,300 202,900
-産業メカトロニクス 69,500 66,400 70,800



製品開発

「器用に制御するAI (人工知能) 」

ーAIと複数センサーで対象物の状況の変化をリアルタイムに把握する。産業用ロボットが苦手とするケーブルコネクターのはめ込みなどの作業を自動化できる。まず自社の機器システムに組み込み、活用する。AIの深層強化学習を使って最適な制御アルゴリズムを自ら獲得できるため、設計者による複雑な制御アルゴリズムの再設計が不要となる。情報技術総合研究所 (神奈川県鎌倉市) で開催した説明会では、アームの先端にカメラと力覚センサーを搭載したロボットによるコネクターはめ込み作業を実演した。パソコンなど種類が多い製品のほか、AGV (無人搬送車) などへの適用を見込む。 (2018年2月14日付日刊自動車新聞より)

「コンパクトなハードウェアAI

ー同社のAI技術「Maisart(マイサート)」の一つである「コンパクトな人工知能」の計算順序の効率化と回路構成の最適化により、小規模なFPGAにも実装できる「コンパクトなハードウェアAI」を開発したと発表した。リアルタイム性の向上と低コストを実現したことで、家電、エレベーターや高精度地図など人工知能の適用分野拡大に貢献するとしている。(2018214日付プレスリリースより)

Real Texture(リアル テクスチャー)」

ー物体の質感をディスプレイにリアルに表現する質感表現技術「Real Texture(リアル テクスチャー)」を開発したと発表。車のインストルメントパネルやデジタルサイネージに本技術を適用することで、金属など光沢のある素材を実物のように表現し、高級感のある表示を演出。二次元の平面ディスプレイとカメラで構成し、低コスト化を実現したという。(2018214日付プレスリリースより)

「安心・安全ライティング」

ーライトを使って自動車事故を防止する「安心・安全ライティング」技術として、悪天候時でも判別しやすいアニメーション表示や、ドア開け・後退時に車外センサーと連動して注意喚起する表示などを開発したと発表した。表示図形の見え方を検証できる設計ツールも同時に開発。実用化に向けた研究開発を継続し、2020年度以降の事業化を目指す。新たに開発した安心・安全ライティング技術は、大きな図形のアニメで、積雪などの悪天候時でも歩行者が認知しやすくした。車側から流れるように光を出すことで、子どもなど、交通ルールに詳しくない歩行者でも車が後退するなどの挙動を認識しやすくした。(2018年2月9日付日刊自動車新聞より)

ー自動車向け「安心・安全ライティング」技術を開発したと発表した。光で図形を描き、ドア開けや後退などの車の動きを周囲に分かりやすく伝え、事故防止などに活用する。路面へのライティングを補完するボディーライティングとの併用で、昼間でも周囲の歩行者や車両が車の動きを認識しやすくなる。今後、自動車メーカーに提案し、2020年以降の事業化を目指す。事業化に向けては、法規制への適合を図るほか、より見やすい図形の照射方法や、視認性を確保できる距離などを検討する。純正だけでなく、アフターマーケットでの展開も見込む。(2017年10月11日付日刊自動車新聞より)

「電子ミラー向け物体認識技術」

ー車両後側方100メートルにある物体を検出・識別できる「電子ミラー向け物体認識技術」を開発したと発表。独自の「視覚認知モデル」と人工知能 (AI) 技術の活用で、車載向け組み込みシステムでリアルタイムでの物体認識を実現した。後ろから急接近してくる車両の存在を早めにドライバーに伝えることが可能で、車線変更時などの事故防止などに役立つ。今後、ミリ波レーダーやLiDAR (レーザーレーダー) などセンサーとの統合認識により、夜間や悪天候下での検出精度向上の研究開発を進める。視覚認知モデルは視野内にある目立つ領域に自然に注目するという人間の生理反応である「視覚的注意」を模倣した独自のアルゴリズムによって開発した。最大検出距離を従来の30メートルに対して100メートルに拡大、0~100メートルの平均検出精度を従来の14%に対し81%にまで向上した。(2018年1月18日付日刊自動車新聞より)

「48Vハイブリッド車向けエンジン出力軸直結型のISGシステム」

ー48ボルトハイブリッド車向けにエンジン出力軸直結型のISG (スターター兼ジェネレーター) システムを開発、業界で初めて量産化したと発表した。システムはダイムラーのメルセデス・ベンツ車に搭載される。今回開発したISGシステムは、エンジン出力軸にモーターを直結することで、従来のベルト駆動型に比べて、高出力化と発電量を向上し、燃費改善に貢献する。独自の分割コア巻線技術により、大電流モーターに必要な太線コイルでも高密度な巻線とした。モーターの高出力化と薄型化を両立して車両搭載性も向上した。(2017年11月17日付日刊自動車新聞より)

「広角カメラ型ドライバーモニタリングシステム」

ー1台の広角カメラで運転席・助手席搭乗者を同時にモニタリングできる「広角カメラ型ドライバーモニタリングシステム」を開発したと発表した。ドライバーと助手席の乗員を同時にモニターすることで、エアコンの最適制御など、車室内での快適性向上などに役立つ。2018年以降に実用化する計画。今回開発した広角カメラ型ドライバーモニタリングシステムは、広角カメラ1台で運転席・助手席搭乗者を同時に撮像し、双方の状態をモニタリングする。運転者の脇見や居眠り検知に加えて、運転席・助手席搭乗者の同時モニタリングによって乗員を特定した音楽の選曲や、乗員の有無に応じたエアコンの最適制御などに活用できる。また、運転席・助手席搭乗者の手の動きや、形を捉えるハンドジェスチャー認識機能により、双方がジェスチャーで車載機器を操作できる。将来的には搭乗者が急病で倒れた場合の姿勢変化なども検知する。開発したシステムは「第45回東京モーターショー2017」に出展する。(2017106日付日刊自動車新聞より)

「超小型SiCインバーター」

ーハイブリッド車(HV)向けに体積5リットルと世界最小を実現した「超小型SiCインバーター」を開発したと発表した。今後、量産開発に入り、2021年度以降の事業化を目指す。需要が拡大しているHVや電気自動車は、電動化のため、機器設置空間が必要で車内空間を確保するためのインバーターの小型化が求められている。これに対応する超小型SiCインバーターを開発した。ストロングハイブリッド車に用いられる2モーター式HVに対応する。(2017年4月7日付日刊自動車新聞より)

「自動図化技術」と「差分抽出技術」

ー高精度三次元地図を効率的に作成・更新できる「自動図化技術」と「差分抽出技術」を開発したと発表した。人工知能(AI)と三菱モービルマッピングシステム(MMS)を活用して両技術を実用化することで、自動運転の実現に必要となる、信号や周辺車両など動的情報を持つダイナミックマップを早期に整備する。10月から、同社が出資するダイナミックマップ基盤企画(東京都港区)など地図メーカー向けに高速道路用高精度三次元地図向けの「自動図化・差分抽出ソフトウエア」を販売する。(2017年4月4日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
2018年3月期 2017年3月期 2016年3月期
全社 181,513 175,542 177,801
-産業メカトロニクス 68,376 60,233 54,653



設備の新設計画

(単位:百万円)
2019年3月期
(計画)
主な内容・目的
全社 250,000 -
-産業メカトロニクス 112,000 FA機器および自動車用機器の増産等


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)