旭硝子 (株) 2015年12月期の動向

業績

(IFRS、単位:百万円)
2015年
12月期
2014年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,326,293 1,348,308 (1.6) -円安などの増収要因はあったが、ディスプレイ事業が減収となった。
営業利益 71,172 62,131 14.6 -欧州および北米における建築用ガラス事業の構造改革効果
-原燃材料価格の下落
税引前利益 84,522 41,163 105.3 -退職後給付制度改定益などの計上
当期純利益 46,287 20,475 126.1 -
親会社の所有者に帰属する当期純利益 42,906 15,913 169.6 -
ガラス部門
売上高 691,411 684,607 1.0 -自動車用ガラスは、日本・アジアの一部の国や東欧などで自動車生産台数は減少したものの、北米の堅調な需要や西欧の需要回復に加え、円安効果もあり、増収
営業利益 13,046 (238) - -



製品開発

車載ディスプレー用カバーガラス
-同社は曲面型車載ディスプレー向け高機能カバーガラスを実用化する。ディスプレー形状の複雑化や大面積化によって保護面の耐傷性や耐候性がさらに重要になることから、樹脂製のカバーよりも信頼性の高い部材として自動車メーカーや部品メーカーに提案し、数年以内の実用化を目指す。特に、カバーガラスの需要が高い欧州市場での採用を想定する。旭硝子グループのAGCディスプレイグラス米沢 (山形県米沢市) が曲面ディスプレーに対応する三次元形状の加工量産技術の確立に成功した。平面型向けに納入実績のある欧州自動車メーカーに対して既に曲面型カバーガラスのサンプル出荷を開始している。今後は試作品を製作し、実評価に移る見通し。(2016年6月23日付日刊自動車新聞より)

-同社は車載ディスプレー用カバーガラスの供給体制を拡充する。増強中の生産設備を4月に本格稼働させる。カーナビや運転情報表示用パネルの視認性、操作性を高める高性能カバーガラスの引き合いが増えており、生産能力を増やして対応する。ディスプレー用カバーガラスを手がけるグループのAGCディスプレイグラス米沢 (山形県米沢市) が増産する。具体的な生産量は非公表だが、今回の増強によって生産能力が倍増する見通しという。車載向けでは既存の供給車種を含めて30車種以上での採用が決まるなど、持続的な成長が見込めるため。今後は、デザイン性に優れた三次元曲面形状のカバーガラスについても量産準備を進めていく。(2016年3月30日付日刊自動車新聞より)

紫外線 (UV) ・赤外線 (IR) カットガラス
-2016年6月、トヨタ自動車がマイナーチェンジして発売した 「エスティマ/エスティマハイブリッド」 の上級グレードに高機能ガラスが採用されたと発表した。後部ガラスを含めた全面に紫外線 (UV) ・赤外線 (IR) カット機能を持つ特殊ガラスが採用された。全てのガラス (三角窓を除く) を99%UVカット対応したミニバンは世界初。旭硝子の 「UVベールプレミアム・プライバシールド」 が、エスティマの 「アエラス・プレミアムG」 と 「アエラス・スマート」 の2グレー ドの全てのガラスに採用された。(2016年6月17日付日刊自動車新聞より)

-2015年12月、紫外線 (UV) を約99%カットするリアドアガラス/リアガラス 「UVベールプレミアム・プライバシールド」 が米国の皮膚がん財団の認証を取得したと発表した。認証取得済みのフロントガラスとフロントドアガラスを合わせ、自動車の全方位で同財団認証の窓ガラスを提供できるのは世界初。 (2015年12月22日付日刊自動車新聞より)

-2015年11月、紫外線(UV)の透過を99%遮断できる自動車用リア・リアドアガラス 「UVベールプレミアム・プライバシールド」 の販売を開始すると発表した。UVと同時に赤外線 (IR) も大幅にカットすることが可能。フロントガラス・ドアガラスに加え、後部ガラスにも99%のUVカットの機能を付加したのは同社が初めてとなる。(2015年11月25日付日刊自動車新聞より)

低融点接着フッ素樹脂
-2015年10月、様々な他素材との積層が可能な低融点接着フッ素樹脂を発売した。本来は非粘着性を有するフッ素樹脂に特殊加工によって接着性能を付与し、低融点化を図ったもの。融点の低さを応用することで、積層用部材としての新たな用途開発が可能になったとしている。(2015年10月6日付日刊自動車新聞より)

受賞

-同社傘下のAGC Automotive Americas Co. (米国テキサス州San Antonio) は、Fabricated & encapsulated glassの品質について、トヨタ「Excellence Award」を受賞した。(2016年3月16日付プレスリリースより)

研究開発体制

-グループの総合的な技術戦略を推進する 「技術本部」 が以下の研究開発組織を統括している:

  • 中央研究所: 新材料・新商品開発および共通基盤技術開発
  • 生産技術センター: 生産技術に関する研究・開発・設備化
  • エンジニアリングセンター: 生産設備の建設・既存設備に関わる開発・メンテナンス等
  • 知的財産センター: 知的財産の調査・分析・出願・権利化・権利行使、知財戦略の策定・推進
  • 事業部研究開発部署: 現行事業およびその周辺に関わる新商品・新品種開発、生産技術改良等

-2016年1月1日付で、「技術本部」 内の組織を再編し、中央研究所、生産技術センター、エンジニアリングセンターに代わり、先端技術研究所、商品開発研究所および生産技術部を設置。また、知的財産センターを 「知的財産部」 に変更。

-AGCオートモーティブは、日本 (中央研究所、商品開発センター)・米国 (Detroit R&D Center)・ベルギー (Gosselies Technovation Center) に技術開発拠点を置き、自動車用ガラス成形技術、および新商品の開発に取り組んでいる。AGCグループの5つのコア技術 (ガラス材料設計技術、ガラス生産加工技術、フッ素化学技術、薄膜形成技術 (表面処理)、光・電子関連設計技術) をベースとし、デジタルデザイン技術、表面処理技術、自動車ガラス生産技術などの要素技術を融合させている。

技術供与契約

(2015年12月31日現在)
相手先 国名 契約内容 契約期間
PT Asahimas Flat Glass Tbk インドネシア フロート板ガラス製造技術の提供 1993年1月1日より10年間 (以降1年毎に自動延長)



研究開発費

(単位:百万円)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
グループ全体 38,927 44,758 46,882
-ガラス部門 7,466 8,190 8,529


-2016年12月期の研究開発費は42,500百万円を見込む。



設備投資額

(単位:百万円)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
グループ全体 125,100 118,200 138,500
-ガラス事業 42,300 44,600 73,800


-2015年12月期、ガラス事業においては、インドネシアにおける建築用および自動車ガラス素板用等のフロート板ガラス製造設備の新設等に設備投資を実施。

-2016年12月期の設備投資計画は150,000百万円。

-2015年から2017年の中期計画では、設備投資は減価償却費の範囲内の4,000億円を前提とする。成長分野に集中して実施することにより、総額の配分はガラス事業および電子事業に各35%、化学品事業に30%となると想定。

海外事業

<インドネシア>
-インドネシア子会社Asahimas Chemical (Jakarta) はアニール工場 (バンテン州) で 「増強設備・初出荷式」 を開催した。増産用設備の竣工を記念したもので、間もなく新設備での商業生産を開始する。増強したのは苛性ソーダや塩化ビニール樹脂 (PVC) の製造設備で、自動車生産などが拡大する東南アジアの需要増加への対応を目的としたもの。(2016年2月17日付日刊自動車新聞より)

<ベトナム>
-2016年6月、ベトナム子会社であるPhu My Plastics & Chemicals (PMPC) の社名を 「AGC Chemicals Vietnam Co., Ltd.」 に変更したと発表した。また、同社の東南アジア向け塩化ビニル樹脂 (PVC) 製品のブランド名を、インドネシア子会社Asahimas Chemicalが製造・販売する 「ASNYL」 に統合し、同地域におけるAGCブランドの浸透・拡大を図る。 (2016年6月30日付プレスリリースより)

-2015年3月、ベトナム子会社のPhu My Plastics & Chemicals (PMPC、Ba Ria - Vung Tau省) が塩化ビニル樹脂 (PVC) の生産能力を5割増強すると発表した。東南アジアの旺盛なPVC需要に対応し、域内市場でのシェアを高めるのが狙い。設備増強後の2016年には、同子会社の生産能力が現状の年間10万トンから同15万トンに拡大する。軽量かつ難燃性や電気絶縁性などを特徴とするPVCは、自動車用のアンダーコート材をはじめ、 産業分野での幅広い用途に使われている。東南アジアではタイやインドネシアに次ぎ3番目のPVC市場を持つベトナムは、今後も需要の増加が見込まれるため、生産基盤の増強に踏み切る。東南アジア全体でのPVC生産能力は、ベトナムの増強後に年間70万トンとなる。(2015年3月26日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-2016年3月、中国・蘇州の自動車ガラス生産子会社の社名を変更すると発表した。現在の旭硝子特殊玻璃 (蘇州) から、旭硝子汽車玻璃 (蘇州) に改称する。「汽車」 の単語を社名に組み込むことで、自動車ガラスの生産拠点であることを広く印象づけるのが狙いだ。今回、中国の他の同製品生産子会社の旭硝子汽車玻璃 (中国)、旭硝子汽車玻璃 (仏山) と横並びの社名とし、改称を機に3社の連係を強める。(2016年3月7日付日刊自動車新聞より)

<ポーランド>
-2015年4月、AGC Automotive Europeを通じて、ポーランドの投資会社Enterprise Investorsより同国を本拠とするNordGlassを買収すると発表した。NordGlassは、中欧・北欧市場を中心に自動車用補修ガラスの製造・販売を行っている。(2015年4月28日付プレスリリースより)

<モロッコ>
-2016年8月、モロッコで自動車用ガラスを製造する拠点を新設すると発表した。同社グループが北アフリカに進出するのは初めて。現地企業との合弁で新会社を設立し、モロッコに進出している欧州系自動車メーカー向けに自動車用ガラスを供給する。同社のベルギー子会社AGC Automotive Europeが、モロッコのガラスメーカーであるInduverと自動車用ガラスを製造する合弁会社を設立することで基本合意した。合弁会社は、2019年までにモロッコに工場を新設する計画。車載用合わせガラスや強化ガラスなど、旭硝子が持つ高品質製品の製造技術と、Induverの現地でのネットワークを融合して、競争力の高い製品を供給して事業の成長を図る。(2016年8月3日付日刊自動車新聞より)

<メキシコ>
-2016年4月、メキシコ子会社が自動車用ガラス新工場の開所式を実施したと発表した。2013年に設立したメキシコ子会社のAGC Automotive Glass Mexico (San Luis Potosi) は、年産能力約75万トンの自動車用ガラス工場を建設し、2015年後半から商業生産を開始している。メキシコ工場の本格稼働により、旭硝子グループ北米での自動車用ガラスの生産能力は年間360万トンから435万トンに拡大した。(2016年4月23日付日刊自動車新聞より)

<ブラジル>
-2016年3月、ブラジル子会社のAGC Glass Brazil (Sao Paulo) がフロートガラスの新工場を建設し、同国での生産能力を年間22万トンから2.4倍の同53万トンに増強すると発表した。費用は約180億円で、ブラジル南東部での工場建設を予定している。新工場は2018年内に完成させ、「ブラジル第2フロート工場」 として稼働する。AGC Glass Brazilでは、自動車用のガラス素板や合わせ・強化ガラス、建築用ガラスなどを製造している。現在は年間22万トンの生産能力を有するが、同国では自動車生産などの拡大によって中長期的な経済成長と共にガラス製品の需要拡大が見込まれる。(2016年3月14日付日刊自動車新聞より)

2016年12月期の見通し

(単位:百万円)
2016年12月期
(予想)
2015年12月期
(実績)
増減
(%)
売上高 1,400,000 1,326,293 5.6
営業利益 75,000 71,172 5.4

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

-ガラスや化学品の出荷増により増収。営業利益は、販売価格下落の影響があるも、出荷増により増益。
-自動車用ガラスは、一部新興国で自動車需要に減速感が見られるものの、全体としては出荷は堅調。

中長期経営計画

-2015年~17年度中期経営方針 「AGCプラス」 を発表した。17年度の営業利益を14年度比で6割増の1千億円に引き上げる。売上高の目標は、同18.6%増の1兆6千億円とした。グループの強みとする 「多様性を最大限に活用」 し、収益を生み出す新たな製品や技術、市場などを開拓していく。自動車分野では、欧州向けの受注が拡大している調光ガラスを始め、収益性の高い高付加価値ガラスをグローバルに拡販する。また、中東や東南アジアではローカル企業との合弁や提携などを進め、旺盛な市場の新規需要を取り込む。 (2015年2月10日付日刊自動車新聞より)

-同社は営業利益に占める戦略事業の構成比を10年間で倍増する。モビリティー分野などを中心に、同事業の利益構成比を現在の20%から2025年には40%台まで引き上げる方針だ。従来の年間2千億円規模の設備・開発投資に加え、今後の5年間に3千億円の「戦略投資枠」 を追加し、新規分野での企業の合併・買収 (M&A) を進めていく。高付加価値商品のビジネスを拡大することで、グローバル企業としての持続的成長を図る。(2016年2月9日付日刊自動車新聞より)

2017年度財務目標

  • 売上高: 16,000億円
  • 営業利益: 1,000億円以上
  • ROE: 5%以上
  • D/E: 0.5以下